2020年1月27日月曜日

2020.01.27 伊集院 静 『一度きりの人生だから 大人の男の遊び方②』

書名 一度きりの人生だから 大人の男の遊び方②
著者 伊集院 静
発行所 双葉社
発行年月日 2019.04.14
価格(税別) 926円

● このタイトルを著者はあまり気に入っていないようなのだが,かといって編集者に文句をつけることもない。大人の男とはそういうものなのだろう。
 著者は女性にも男性にもモテる人だけれども,その理由がわかるような気がする。かといって,凡人が迂闊に真似ようなどとは思わない方が見のためだとも思う。

● 以下に転載。
 毎週,読者が感心するようなものを書くと,どうも嘘っぽくなる。人が感動したり,涙するものはどこかに企みがあると私は考えている。(p4)
 男が自立をする折,一番大切なのは,自分がまだどこの何者でもないことを,いつの時期に知るかということである。たとえその若者が,王の子供で,王子であっても,実は,その若者はただの若者でしかないことを知ることができるかどうかが肝心なのである。(p15)
 人類の歴史がはじまって以来,人間が平等なことは一度だってあったためしはない。(p17)
 若い時に度に出なかったら,それは人生の中のかなり大切なものを失うことになるのは事実である。(p17)
 なぜ荷物は最小限の方が良いか? それは旅というのはいつも危険を孕んでいるからである。(中略)危険を察知すれば,逃げるしかないのである。そんな時に,荷物をまとめなくてはいけないという状況は,愚か者の旅なのである。(p19)
 近頃の雑誌がよく特集しているような,度に必要なアイテム,なんてのはバカがやることである。(p20)
 現役時代に人一倍働き,仕事で成果を上げ,会社からも評価され,部下も育てたという人が,実は,潔く退職してから上手く行かなくなるケースが多い。(中略)なぜか? 再出発ができないのである。(p22)
 人生は晩年をどう過ごせるかで,当人の生きざま,死にざまが決まるケースが大半なのである。(p24)
 だいたい私には的中車券以外,欲しいものがない。家,車,時計,洋服・・・・・・まったく興味がない。だから家も,車もすべて私のものはない。(p25)
 私は貧乏たらしいギャンブルが嫌いなので,競輪でもそうだが,開催地へ着くと,まずその街で一番美味い料売を出す店へ行き,一番酒が美味い,バーなり,クラブへ行く。そのくらいの金を使っても何と言うことはない勝ち方をするのが“旅打ち”だと思っているからだ。(p61)
 私が言いたいのは,一人のギャンブラーがいたとして,そのギャンブラーが勝ち得る金額は限度があるということである。(中略)それは,その人の生まれ持った度量である。(p74)
 人間の手でこしらえるものの量には限界がある。それがウィスキー,スコッチの本来の姿なのである。(p93)
 私が知り得る限り,ギャンブルをする人,ギャンブルが何より好きな男たちはお洒落な音尾が多い。(中略)大前提に,--くたばる時にみっともない格好をしない。ということがあったのではないかと思う。(p116)
 まずユニホームの着方を覚えなさい。どんな格好のユニホームの着方をしても勝てばいい,という発想をするな。勝つ者は,勝つかたちをしてるんだ。(p118)
 やたらと光り物(装飾品)を付ける男で,格好のイイ男はほとんどいない。だからち言って光り物だらけの男でも,そこにバランスがあれば,それはそれで良いと私は思う。(p119)
 お洒落の基本は,何事においても無頓着にならない姿勢を持っていることが大切である。(中略)流行を追う必要などはならさらないが,流行に無頓着であったり,これを自分の中に受け入れない姿勢では,お洒落がおかしくなる。(p124)
 ほとんどの人は,スーツの上着なり,ジャケットを着た後,背中をきちんと直さない。(p126)
 私は,今でもそうだが,基本としてパーティー,宴会,慶事で人が集まる場所へ行かない。結婚式もほとんど欠席する。そういう関は苦手なのである。フォーマルと呼ばれる服装をすると,それだけで着せかえ人形をやらされているようで嫌になる。(p135)
 肝心なのは主旨がきちんと書いてあることで,基本としては簡単で,明瞭で,余計なことを言わぬことである。長い手紙にロクなものはない。(p143)
 手紙だけではなく,絵画も小説も,音楽も・・・・・・すべてにおいて“上手くやろう”と下こころを抱くとまず上手くいかない。(p148)
 手紙は夜半に書くものではない。むしろ朝早く起きて仕事の前に書く方が良い。なぜか? 夜半はどうしても人間が情緒的になる。(p148)
 目上の人へ書く時は,いつもより大きな文字で書くようにした方がよい。相手が読み辛いこともあるが,文字というものは,ちいさく書くものではない。(p149)
 それよりも少し,先を見てやれば,羨ましい,とか妬み,嫉妬というつまらない感情はなくなる。(中略)嫉妬の対象である金持ちのボンボンと自分の先ゆきを見ればいいのである。(p163)
 今から四十年近く前,作家デビューをした頃,色川武大さんから,「伊集院君,週刊大衆を支持して読んでくれている人こそ,私は本物の大人の男だと思います。そういう人たちに面白いと思われるものが書けなくちゃいけませんよ」と言われた。(p164)
 人間の身体というのは少々のことではくたばらないようにできているのだが,いったんマイナスの領域に入ると,驚くほど呆気なく一巻の終りになる。(p174)
 (ゴルフの)スロープレーに関しては良い点がひとつとしてない。(p184)
 “出逢い”こそが,もしかして生きることの,すべてかもしれないと,私が思うようになったのは,自分のこれまでの歳月を思い返してみてのことである。誰一人,出逢わなくて済んだ人がいないのである。(p191)
 プロスポーツにとって素晴らしい新人の登場ほどありがたいことはない。一人のルーキー,新人が,その世界を,今まであった常識を,こともなげに変え,そのスターを中心として,プレーヤーたちも,ファンも変わっていくのである。(p197)
 私は器用より,不器用な方が将来,大成する確率が高いと思っているし,ゴルフに限らず,ひとつの仕事をきちんとこなせるようになり,やがてその分野で素晴らしい仕事をする人の大半は,不器用なタイプだ。(p220)
 なぜ星野はあれほどのチーム作りができたのか? その答えは,情熱しかない。(中略)いったん情熱というものがひとつのかたまりになると,技量,才能を超えてしまう。(p244)
 本を読む愉しみというのは,人間に生まれて来て,かなり贅沢な趣味なのだなとあらためて思った。(p285)
 私は食とか味の話はほとんど書くことがない。それはグルメと称する評論家や,その道のエキスパートの書く文章と,当人たちの面が気に入らないからである。この連中の文章はまあひどいもので話にならないが,面はもっとひどい。(p289)

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