2020年5月19日火曜日

2020.05.19 成毛 眞 『成毛流「接待」の教科書』

書名 成毛流「接待」の教科書
著者 成毛 眞
発行所 祥伝社
発行年月日 2018.04.10
価格(税別) 1,300円

● ノーパンシャブシャブとか官官接待とかで,接待はだいぶイメージを悪くした。いや,昔から接待は必要悪とされてきたか。銀座のクラブで飲む社用族を品性下劣と言ったのは山口瞳さんだったか。とまれ,接待の総量は減っているらしい。
 しかし,だからこそ,接待はやりようで効果があるのだと,天邪鬼氏は言う。正統派の教科書だが,読み物としても面白い。

● 以下に転載。
 接待は時間がかかる,金がかかる。だから無駄だという経営者やコンサルタント,やりたくないという現場もいる。(中略)そう考えるのは,接待のようでいて接待ではない接待もどきを接待と思い込んでいるか,接待についての悪意ある創作を信じているからにほかならない。要するに,本当の接待を知らず,したがって,接待の絶大なる効果も知らないのだ。まったくもって,無知は損と言わざるを得ない。(p5)
 人と会わなくても進められる仕事が増えた。(中略)では,合理的なだけで仕事は進むのだろうか。資料はデータで届けるのが当たり前の時代に,手書きの資料を届ける人がいたらどうか。実に非合理的だが,印象には必ず残る。(p15)
 営業マン,営業ウーマンにとって,年賀状や記念日の贈り物はプラスのアピールにはならない。そんなものは,やって当たり前のものだからだ。はっきり言おう。やらないのは失格だ。戦いの土俵に立つことなく負けている。不戦敗だ。(中略)では,プラスを得るにはどうするか。周りがやっていないアピールをするしかないだろう。それが接待だ。今,接待をすべき理由,私が接待を薦める理由は,接待の数が減っているからだ。それを軽視する人が増えているからだ。(p16)
 昨今,打ちあわせなどの際にパソコンでメモをとるのは失礼かどうかという議論が,定期的に起こっている。私はそうされても失礼とは感じないどころか,紙にメモをそるのは前時代的とすら思うが,失礼と思う人がいまだ存在していることは知っている。ならば,パソコンでメモはとらない方がいい。(p18)
 接待の目的は,相手と仲良くなることだ。それ以上でもそれ以下でもない。そして,仲良くなるとは,相手を知ること,こちらを知ってもらうことだ。(中略)人間は,近くにいてよく顔を合わせていると,仲が良くなるようにできているのだ。(p21)
 Windowsは,パソコンメーカーに大量に買ってもらうBtoBの商品だ。もしも私が,店頭で販売する商品の営業担当だったら,さほど接待について考えなかっただろう。(中略)しかしBtoBの場合は違う。顧客の数は限られていて,その顧客とは長い付き合いになる。新規開拓の必要はない。決まった顧客に,変わらずのお付き合いを願うためのもの,それが私にとっての接待だ。(p24)
 どんな店を選ぶのか,どんなものを食べて飲むのか,どんな話をするのか,二軒目以降にどんな店を用意しておくのかには,接待する側のセンス以上に,本気度が問われる。(p29)
 準備されていない接待は,接待される側にすぐに伝わる。(中略)準備が不十分な接待なら,しない方がましだ。(中略)しっかりと準備されたぬかりのない,芸術的な接待は相手の心に残る。その芸術性を左右するのは,生まれ持っての感性などではなく,準備だ。(p30)
 どれだけそつがなくても,印象に残らない接待はなかったに等しい。一方で,強烈なインパクトを残す接待は,語り継がれる。(p33)
 接客担当者として最もまずいのは「お客様は神様です」と言わんばかりにへりくだるタイプだ。客は,少なくとも私は,接客担当者に私の言いなりになってほしいとは思わない。(中略)へりくだる接客担当者の悪い点は,自分を神と勘違いした客を集めてしまうところにある。(p49)
 一番恐れなくてはならないのは,接待の相手に「自分はこの程度の店での接待がふさわしいと思われているのか」と思わせてしまうことだ。(中略)だからこそ,味のチェックよりもまず,人のチェックを優先すべきだ。(p50)
 接待では,テーブルは狭ければ狭い方がいい。なぜなら,テーブルの奥行きはそのまま相手との距離感だからだ。(中略)なので,中華はNG。あのラウンドテーブルの広さは,人との距離を縮めるのに不向きである。(p53)
 私の経験上,外観が素晴らしく,スタッフもプロフェッショナルで,古さと新しさをうまく調和させている店の料理がまずかったことはこれまで一度もない。(中略)だからこの順に店を絞り込むのが効率的だし,楽なのだ。外観による絞り込みをしないままひたすら旨い店を探すとなると,時間が何時間あっても,胃がいくつあっても,予算が湯水のごとく使えても,なかなか難しいはずだ。(p55)
 こういった「外し」ができるのも,一軒目でスタンダードな接待をしているから。驚きは,一軒目とのギャップで生まれているのだ。(p72)
 一角の人物は必ず,面白い武勇伝のひとつやふたつは持っている。その奇想天外でロマン溢れ,血湧き胸躍る物語は,聞いておいて損はない。というか,シンプルに面白い。(p87)
 かつて,一緒に接待に臨んだ部下がこのお見送りをないがしろにしたことがあって,私はかなり強く叱責した。車が視界から消える前に,お辞儀をした頭を上げたのだ。(中略)その行為は,丁寧にだしをとり,いい食材だけで作った一皿に仕上げに,市販のマヨネーズをどばどばかけるような行為だ。(中略)終わり良ければすべて良しとは,終わりがダメならまるでダメということだ。(p100)
 一人だけが特別に楽しいより,全員がそこそこに楽しい方がいい。それが最も効率のいい飲み会だ。同じだけ予算と時間を使うなら,一番,遠慮しがちな一番若い人が楽しめる飲み会が,最もコストパフォーマンスが高いと言える。(p124)
 接待は,いい関係をより良くするものであり,さほど良くない関係をプラスに変えるにはあまり向いていない。このことをきちんと理解しておく必要がある。(p132)
 接待ゴルフは僅差で負けるべきものとされている節もあるが,そんな曲芸のようなことはする必要がない。(p156)

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