2021年1月31日日曜日

2021.01.31 茂木健一郎 『もうイライラしない! 怒らない脳』

書名 もうイライラしない! 怒らない脳
著者 茂木健一郎
発行所 徳間書店
発行年月日 2020.03.31
価格(税別) 1,500円

● 日本のお笑いについて怒りのツイートをして炎上・・・・・・。その体験から怒ってはいけないと思ったのかどうか,“怒らない” に焦点を合わせて論述。
 怒ってもいいことは何もないという,まぁ,すでによく知られている命題についての解説と,どうしたら怒らないようにできるかという方法論の解説。これも,しかし,あまり新味はないと思う。すでに誰かが説いている。

● が,ネットで炎上したときの対策はなるほどと思った。ブロックしてはいけないというところには,特に。
 しかし,参考になるというのではない。SNSをやっていたりブログを書いていたりする人は星の数ほどもいると思うのだが,ほとんどの人にとっては炎上を心配する必要はない。100人にしか読まれないTwitterや1日に50PVしかないようなブログが炎上することはあり得ないからだ。
 多くの人に読まれていればこそ炎上もする。炎上を体験できる人は,SNSやブログで何らかの発信をしている人の中のエリートだけだ。おそらく,100人に1人もいまい。1,000人の中の2人か3人ではないか。
 で,炎上に群がって,罵声や正論を浴びせるのは,残り998人か997人の人たちということになる。そういう図式だろう。
 エリート対大衆,ということだ。炎上させて手痛い目に遭うのがエリートで,叩いて気晴らしをしているのが大衆。いつの時代でも救いのないのが大衆だよ。

● 以下に転載。
 怒っても,何も変わらない。むしろ事態を悪化させてしまう・・・・・・。その事実に気づいたから,怒らなくなりました。気づくまでに何十年とかかりましたが(p2)
 怒らない人になってよかったことを挙げるとすれば,人間関係が円満になること。もう一つ挙げれば,脳が活性化すること。怒らない人は,脳の機能を十分に活かすことができます。(p5)
 日本ほど怒りが満ちている国はほかにはない・・・・・・。あくまでも私の体感ですが,そう言っても過言ではないでしょう。(中略)SNSをはじめとするインターネットの世界にも,怒りがあふれています。(中略)世間を騒がした人への誹謗中傷,個人攻撃があとを絶ちません。(p14)
 私自身は「怒らない人生を生きることが人類の究極の目的」だと見なしています。これからの人生をそのように過ごしたいと,心から思っています。(p43)
 脳が怒りに「ハック」されてしまっています。怒りにハックされた脳は,もはや自分自身をコントロール不能な状態にさせます。(p49)
 怒ると,脳の働きが不十分になって言葉で説明するのも難しくなります。こう考えるほうが自然ですが,実は逆です。説明するのが面倒くさいから,怒ってしまうのです。(p62)
 脳には「ミラーシステム」と呼ばれるものがあります。目で見た人の動きを無意識にマネしてしまう働きが,脳にはあります。(中略)誰かが怒っていると,それを見ている人にもその怒りが波及することがあります。(中略)悲しいことに,怒る人は,自分自身が怒りの発火点になっています。(中略)怒る人は相手を怒らせる名人。(p65)
 怒る/怒らないは性格によって決まるものではないこと。脳の前頭葉がコントロールできるかどうかが,深くかかわってきます。(p78)
 気持ちがささくれ立ってきたら,笑顔になりましょう。ニッコリ微笑むだけで,怒りの気持ちは消えていきます。(中略)つくり笑顔でも大丈夫。照れ笑いでもいいでしょう。(中略)それだけで怒りを抑えるのには,十分です。(p94)
 子どものころは,ケンカをして「絶交だ」と言って別れても,数日もすれば,どちらからともなく歩み寄って,仲直りできたものです。(中略)大人になると,そうカンタンに一度こじれた関係は戻りません。(p144)
 「それを言ったらおしまい」ということは決して口にしてはなりません。(中略)言った瞬間にゲームオーバー。(p145)
 脳は本来,無限とも言える回路を持っていて,これまでまったく接点がなかった神経細胞がつながることで,新たな発想やひらめきが生まれたりします。問題が発生しても脳が正常に活動できていれば,打開策や起死回生のアイデアが出てくるかもしれません。ところが,怒りにハックされてしまうと,新たな回路がつくられることもなくなります。(p157)
 常に回路が作られるようにするには,脳を「とらわれない」状態にしておく必要があります。とらわれがあると,脳は特定の回路しか使われなくなりがち。(p158)
 雑談には,目的もルールもない・・・・・・。無計画とか無節操と言われれば,そのとおりなのですが,逆に言うと,「だからいい」のです。(中略)雑談しているときは,脳がたくさんの回路を使っています。(中略)このように脳のあらゆる回路を使う習慣がついていると,イライラしても怒りの回路がつくられるのをブロックします。(p167)
 慣れないことをすると,自分の未熟さや勝手に決めつけていたことなどが見えてきます。自分の無力さを痛感することで,許容範囲が広くなります。(p171)
 集中していても,脳はありとあらゆることに即座に反応できるようになっています。(中略)何かに集中して取り組んでいても,それ以外の回路も開かれています。(p178)
 一度に二つ以上のことをする「ながら仕事」はよくないことのように思われがちですが,脳の複数の回路を同時に働かせることになりますから,なんら悪いことではありません。むしろ脳を活性化させます。(中略)こうしたながら仕事やながら勉強をしていると,脳が多方面で活動することになりますから,特定の回路だけを使うことを回避するようになります。イライラしてきても,脳が怒りにハックされにくくなります。(p178)
 言葉は,その人の分身。使う言葉には,その人の思考や行動,価値観が色濃くにじみ出ています。(中略)脳を「快」にするキレイな言葉を使うと,相手の脳も快になります。(p181)
 私は前日の夜にどんなに遅くまで仕事をしたり飲んだりしても,朝は6時前に起きるようにしています。朝早く起きるのは,することがあるから。(中略)ジョギングするために,朝早く起きていると言っても過言ではありません。(中略)いつまでもグズグズ寝ていないでパッと起きたほうが脳にとってもいいのです。(p184)
 悔しさはあるに違いないのに,勝った人を祝福するのは,そのほうが自分自身も快になるからです。(中略)ある意味では,相手から「成功のおすそ分け」をしてもらっています。(p192)
 「今に見ていろ!」と悔しがると,やる気がフツフツとわき上がっているように感じますが,これは,錯覚です。(中略)攻撃性や闘争本能を高めるためのものなので,誰かを傷つけずにいられないし,長続きしません。(p193)
 私自身,過去にツイッターへの投稿が炎上したことがあり,実にたくさんの人が匿名による怒りのコメントをしてくるのを身をもって体験しました。その負のエネルギーはすさまじく,うつになったり人間不信に陥ったりしてしまう人がいるのもうなずけるほどです。(p220)
 第三者があれこれ口を出すことではないし,正論をぶったり怒りを表明したりするのは,余計なお世話。第三者がSNSで不祥事を起こした当事者に怒りをぶつけるのは,筋違いです。火事場の野次馬と大して変わりありません。(中略)本人は正義の人になったつもりで怒りに任せて正論を述べているのでしょうが,価値観の押しつけです。(p220)
 もしあなたがこのような怒りの投稿をしているとしたら,やめる方法は,第一に炎上した不祥事のニュースを見ないこと。炎上したネット上は罵詈雑言の嵐ですから,それを避けることが自分を怒りから遠ざけることになります。(p223)
 ネット上で怒りをぶつけてくる相手への対応として,大原則と言うべきものが二つ挙げられます。一つは,反論しないこと。(中略)反論するのは,まさにこちらが怒りに感染している証拠。相手はさらにかさにかかってきます。ツイッターの世界では,「トロールにエサを与えてはいけない」という有名な格言があります。(中略)もう一つは,ブロックしないこと。(中略)別の捨てアカウントをとって,攻撃してくるのは可能で,しかもその気になれば何十,何百と取得できます。ブロックされると,むしろ相手の闘争心に火をつけることになり,追求の火の手が激しくなります。(p224)

0 件のコメント:

コメントを投稿