2021年4月16日金曜日

2021.04.16 和氣正幸 『続 日本の小さな本屋さん』

書名 続 日本の小さな本屋さん
著者 和氣正幸
発行所 エクスナレッジ
発行年月日 2020.10.28
価格(税別) 1,800円

● 続編は正編で取りあげなかったものを集めて出すのだから,正編よりも薄まった内容になる。と思いがちなのだが,この「日本の小さな本屋さん」に限っては続編の方が面白かった。
 第一には,堀部篤史さんが恵文社一乗寺店を辞めて新たに始めた「誠光社」が入っているからだ。著者の取材にも熱が入っている。

● 続編では次の24の本屋が紹介される。
 Pono books & time(岩手県盛岡市)
 BOOK NERD(岩手県盛岡市)
 八戸ブックセンター(青森県八戸市)

 Title(東京都杉並区)
 本とコーヒー tegamisya(東京都調布市)
 museum syop T(東京都国立市)
 本屋イトマイ(東京都板橋区)
 コクテイル書房(東京都杉並区)
 フリッツ・アートセンター(群馬県前橋市)

 石引パブリック(石川県金沢市)
 オヨヨ書林(石川県金沢市)
 ひらすま書房(富山県射水市)
 古本いるふ(富山県滑川市)

 誠光社(京都市上京区)
 ホホホ座 浄土寺店(京都市左京区)
 マヤルカ古書店(京都市左京区)
 FOLK old book store(大阪市中央区)
 居留守文庫(大阪市阿倍野区)
 Calo Booksyop & Cafe(大阪市西区)

 うずまき舎(高知県香美市)
 solow(香川県高松市)
 へちま文庫(香川県高松市)
 BOOK MARÜTE(香川県高松市)
 な夕書(香川県高松市)

● これらの書店は今回のコロナでどうなっているだろうか。カフェを併設しているところが多いので,そのあたりでどうなのか,と。
 家で本を読む人が増えたからかえって追い風になった,とは思いにくい。

● 以下にいくつか転載。
 本屋は旅する人にとっての止まり木だ。観光で疲れた心を身体を少しだけいつもの調子に戻してくれる。(p3)
 なりたいものではなく,なれるものを探していくのが人生なのだと思い込んでいた。それがあの瞬間変わった。「なりたかったものになろう。そう思ったんです」(Pono p7)
 ニューヨークにはカルチャーを中心にしたコミュニティーがあって,それに影響を受けました。言葉にしにくいですが,何かが生まれようとしている感覚というか。そういう場所を盛岡でも再現したいなと思ったんです。(BOOK NERD p13)
 本屋は他業種と比べて “集まりやすい” と言われている。それぞれの得意分野を持ち寄って神保町のような街となるのだ。(p19)
 生命の細胞が入れ替わるように本屋でもいつも本が入れ替わっていくことが大切です。(Title p25)
 江戸時代の本屋になりたいんです。当時の本屋は古本も新刊も扱って出版もする。場所によっては寺子屋も開いていた。(中略)色々な寄合に使ってもらいたいんです。(コクテイル書房 p49)
 ジャンルレスで後半な知識のつながりを眺めていると,目の前の景色が啓いたような不思議な感覚になってくる。(p91)
 テンポやコード感,アレンジに共通点があれば,ジャンルを超えた音楽を無理なくつなげることができる。その意外性やスムーズさこそがDJ的センスです。既存の分類をばらしていかに違うジャンルから編集して自然に並べるかなんです。それには自分がどれだけたくさん聴いているか,感心の幅がどれだけあるかってことが重要なんです。(誠光社 p91)
 ときにはお客さんからわかりにくいと言われることもあるがブレない。「誰を相手にするかをはっきり自覚するっていうのは商売の鉄則だと思うんです」。だからこそ守れるお客さんがいる。(誠光社 p91)
 中高生のころに通っていた京都の名店・三月書房にその原点があるという。コミックから始まり,周辺の漫画家や小説家,美術家など,少しずつ本を買って自らの知識の地図を広げていった。それらが音楽とも,映画ともつながっていき,実はすべてがどこかでつながっていることに気が付く。(誠光社 p92)
 人類学のコーナーにはフィールド録音のCDを並べる。決してここにしか置いていないわけではないのに,ここにしか置いていないように思える。(誠光社 p95)
 この物件に出会ったときに演劇をしていたときの感覚が戻ってきたんです。演劇は空間づくり。この場所で本屋をすることにそれまでの自分の活動との連続性を感じました。(居留守文庫 p115)
 開業に踏み切らせたのはオーナーや上の世代への怒りだった。(中略)負の感情は爆発力があるが長くは続かない。それでも続けたのは人との出会いがあるからだ。(Calo p121)
 面白い人がいるから面白い場所になるんだと,ぶっ飛ばされたように気が付いて,それだったら地方の方が面白いかなと思って。(solow p135)
 こういった本屋で写真集や美術書がメインでないというのは珍しい。(p141)
 物として愛でることのできる本はそれ自体に力がある。それらが集まって形成する空気のようなものが心地良さにつながっていく。本を売るための場所としてではなく,本のある空間として「どんな場所であるべきか」質にこだわっているのだ。(中略)「売る」のではなく「見せる」ことに重きを置く。(へちま文庫 p141)

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