2021年6月15日火曜日

2021.06.15 弘兼憲史 『弘兼流50歳からの定年準備』

書名 弘兼流50歳からの定年準備
著者 弘兼憲史
発行所 東洋経済新報社
発行年月日 2018.08.23
価格(税別) 1,000円

● 50歳からどうすべきかを書けるのは,60歳とか70歳になってからになる。ぼくもその歳になっているわけだが,50歳の人に対して何か語るべきことがあるかといえば,あまりないような気がする。
 というか,60歳で定年退職をしたばかりの頃はあったような記憶があるのだが,すでに往事茫々として,詳しいことは憶えていない。

● ただ,言えるとすれば,本書のタイトルのことだ。定年後のことを定年になってから考えたのでは遅すぎる。定年後の人生がどうなるかは,定年になった時点では決着がついてしまっている。すでに勝負は決している。
 だから,50歳から考えていないといけない。考えただけではダメで,具体的に準備を始めていなければいけない。具体的にどうすればいいかといえば,定年になって時間ができたらやってみたいと思っていることを,50歳から始めてみることだ。できる範囲でやっておくこと。やり続けること。
 そうして,それが本当にやりたかったことなのかどうかを確認しておくこと。これじゃないというのであれば,また考えて試してみること。要するに,定年後の予行演習をやっておけということだ。

● 以下に転載。
 会社で自分が将来どんな処遇になるのか,なんとなく見えてくるのも50代です。(中略)一発逆転は,よほどのことがないかぎり難しいでしょう。それでもいいじゃないかというのが,本書の一番のメッセージです。(p4)
 アランの『幸福論』の中に,「悲観主義は気分によるもの,楽観主義は意志によるものである」という有名な言葉があります。日常は気分に流されがちだからこそ,しっかり意志を持つことが大事なのだと思います。(p6)
 ピンチが多いということは,むしろ従来にないチャンスに出会える可能性が高いということでもあります。(p8)
 隣の芝生が青く見えるのは人間の性ですが,人は人,自分は自分と割り切る。50歳といえば,もうそういう分別がつく年代のはずです。(p23)
 世間の常識や世間体に縛られることは,決して幸福ではありません。結果はどうであれ,自分で考えて道を選ぶことこそ,真の幸福につながるのではないでしょうか。(中略)その際に基準にすべきは,「どうすればもっと自分が楽しめる人生になるか」ということです。(p32)
 人間社会においてもっとも気をつけるべきは,孤立することです。(中略)「逆らわず,いつもニコニコ,従わず」(p49)
 効率一辺倒ではなく,あえて非効率なことに身を置いてみると,新たな価値観に気づけるはずです。単純に言えば,何かバカバカしいことをやってみればいいのです。(p58)
 僕は,ひとりの時間を大事にしたい。(中略)傍から見れば「孤独」かもしれませんが,ひとりだからこそできることはたくさんあるし,それこそが人生を豊かにしてくれると信じています。その結果としての「孤独死」なら,文句なし。(p65)
 概して日本の高齢者はお金持ちなのです。そのお金持ちの高齢者を,お金持ちではない現役世代が支えて汲々としている。(p93)
 70~80歳にもなって,豪邸に住む必要はありません。高齢になってもっとも気楽な空間というと,せいぜい六畳一間か二間といったところでしょう。(p96)
 幸せとは「幸せと感じる心」のことです。(中略)身体が動くうちに,どんどんお金を使ってどんどん楽しんだほうが,幸せの度合いは大きくなるはずです。(p98)
 家の中にいて役に立たないから嫌われるのです。(p102)
 私見によれば,家族サービスに熱心な父親は,会社であまり出世しません。家族を優先するということは,必然的に仕事は後回しになるわけです。逆に出世する人は,だいたい家庭が壊れている。(中略)つまり仕事と家庭というのは,なかなか両立できないというのが現実ではないでしょうか。両方ともうまくいっている人は稀です。(p109)
 アメリカでは,イェール大学やハーバード大学のようなエリートの学生ほど大企業は志向せず,自らでベンチャー企業を起こそうとする傾向があると言われています。それが軌道に乗ってきたら,その事業ごと大企業に売却して,またゼロから会社を起ち上げたりする。(中略)このバイタリティが,アメリカ経済の強さの根源でしょう。(p123)
 もともと成績が良かったり好きだったりする科目をもっと集中的に勉強させたほうが,ひょっとしたら将来突出した人物になるのではないでしょうか。平均的に全体を力を上げるより,よほど効果的な気がします。(p127)
 フランス料理の第一線で活躍している人は,大学まで行っていない人が多いと思います。ところが料理の腕はもちろん,フランス語も流暢に話せたりする。修行の過程で,どうしても必要になって学んだのでしょう。これは言葉ばかりでなく,すべての技術や知恵にも当てはまることだと思います。(p128)
 多くの子どもは,緩めれば緩めるほど,楽なほうへと流れるだけです。多様化・個性化とは,人と違う道を行くということです。それを本格的に目指すなら,今までよりももっと厳しい世界が待っている。(p131)
 子どものうちは,知識が圧倒的に足りないわけです。それを一度は網羅的に知っておかないと,自分は何が好きか嫌いかもわからない。(p133)
 漫画家にとって重要なのは,絵の上手下手より,物語を作る能力があるかどうかです。物語が面白ければ,たとえ絵が下手でも,それがかえって味になったりするのです。(p138)
 今は雑誌ごとにいろいろな新人賞があり,入賞するのは毎年10~20人にものぼります。しかし,その中で数年後にも漫画を描いてメシを食えている人は,ほとんどいません。(中略)一方で,『ビッグコミック』などの連載陣は何年も変わならなったりします。これは既得権が新人を排除しているわけではありません。ベテランを押しのけるほどの人材が,登場していないのです。こうした現状から考えられることは1つ。漫画家志望の若い人には,圧倒的に努力や根性が足りないということです。(中略)まず当然ながら,毎日必死に描く覚悟を決めること。質はともかく,量で上回るくらいでなければ,勝負になりません。(p139)
 認知症の高齢者に思い出話を聞くと,つらかったことはすべて忘れ,楽しかったことやおいしかったことはびっくりするくらいよく覚えているそうです。これは,人間の防衛本能なのかもしれません。(p150)
 僕の漫画に登場する男女は,ステキに出会って恋愛に発展することがよくあります。しかし現実では,なかなかそううまくはいきません。ストーリーは取材や実体験をもとに練ることも多いのですが,ステキな部分はほとんどフィクションです。(p156)
 かつて名優ジョン・ウェインがガンで亡くなったときも,最後まで「痛い」とはひと言も言わなかったそうです。どれほど痛くても,それだけは言うまい。カッコいいイメージのままで死にたいと心に決めていたのでしょう。(p183)
 日常で腹の立つことはいろいろあります。しかし次の瞬間,「怒るのはエネルギーと時間のムダ」と自分に言い聞かせる。そのリソースを楽しいこと,面白いことに振り向けようと考えるわけです。(p188)

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