2020年3月22日日曜日

2020.03.22 A-Works編 『JOURNEY』

書名 JOURNEY
編者 A-Works
発行所 サンクチュアリ・パブリッシング
発行年月日 2015.12.24
価格(税別) 1,400円

● 世界遺産の写真集でもあり,旅や人生に関する箴言集でもあり。基本,箴言に惹かれる状態というのは,気持ちが弱っている場合が多いから,注意せよ。

● 箴言集から転載するのもどうかと思うけど,いくつかを。
 人生には二通りの生き方しかない。ひとつは,奇跡などないかのような生き方。もうひとつは,すべてが奇跡だるかのような生き方。(アインシュタイン p6)
 想像力は,知識よりも大切だ。知識には限界がある。想像力は世界を包み込む。(アインシュタイン p16)
 大切なのは,疑問を持ち続けることだ。(アインシュタイン p152)
 あらゆる旅は,その速さに比例してつまらなくなる。(ジョン・ラスキン p134)

2020.03.22 水戸岡鋭治 『ななつ星 in 九州 画集』

書名 ななつ星 in 九州 画集
著者 水戸岡鋭治
発行所 河出書房新社
発行年月日 2014.11.30
価格(税別) 2,600円

● 元祖クルーズトレイン。日本鉄道史に画期をなすと言っても過言ではないだろう。などと,ぼくが言う資格はないのだけどね。
 言うも愚かながら,「ななつ星」には乗ったことがないのだから。この先あるとも思えん。

● 豪華というだけなら,「北斗星」(上野~札幌)に連結されていた「夢空間」を嚆矢とするんだろうか。
 「北斗星」はA個室ツインに二度乗ったけど(自慢),「夢空間」は指をくわえて見てただけ。

● さて,「ななつ星」の車内。柿右衛門窯の洗面鉢など贅を尽くした,しかし,日本的な煩くない空間になっているんですな。
 が,こうして画集に接すれば気がすむ。実際に体験してみなければという意見もあるだろうけど,画で見ただけで実体験を凌げる想像力を身につける方が,体験よりも価値がある。って,これは明らかに負け惜しみですけどね。

● そもそも,どうすればその想像力が身につくかがわからないもん。想像が及ばないのに気がすんじゃってるわけで,つまりは志が低いということだ。
 っていうか,これは諦めざるを得ないでしょうよ。

2020.03.22 『Only in Tokyo』

書名 Only in Tokyo
発行所 Hardie Grant Boooks(London)
価格(税別) 4,600円

● 東京の喫茶店,寿司屋,ラーメン屋,バルなど,酒や食べ物を供する店の店主,従業員,客を撮ったもの。
 カメラマンは(たぶん)英国人。見ているこちらも,撮った人の視点に沿って見るようになるのだろう。銀座や新宿の店が外国のどこかのように思えてくる。
 で,日本はどうしてすごい国ではないかと思う。

● 自慢じゃないけど,ぼくは英語が読めない。完璧に読めない。が,これは写真集なのでね。当然ながら,英語リテラシーは問われない。よかった,よかった。

2020年3月21日土曜日

2020.03.21 ひろゆき 『凡人道』

書名 凡人道
著者 ひろゆき
発行所 宝島社
発行年月日 2019.09.26
価格(税別) 1,300円

● インターネットの普及によって,人の幸せに及ばすお金の影響力は低下したと感じる。本書を読むに及んで,それが確信に変わった。ぼくらはお金のクビキから解放されるフェーズに入ったのかもしれない。
 その具体的な方策はベーシックインカムの導入。ぼくも時間の問題だと思っている。

● 以下に転載。
 日本が新産業に乗り遅れる理由の1つに,すぐに法律で規制して技術やビジネスの発展を制限してしまう点があげられます。(p15)
 貧すれば鈍してしまうのが世の常で,社会のモラルも下がる可能性があります。お金がなくなると,社会全体が一発逆転を狙いがちになるんですね。(p18)
 僕が見てきた限り,投資歴1年の人と10年の人で差があることはなく,結果が出せるかどうかは,単に投資に向いている能力を持っているか,もしくは運がいいだけの問題でしかないように思えました。(p46)
 やりがいや生きがいを求めず,仕事はあくまでも稼ぐための手段と割り切る価値観が広がればいいと個人的には思います。そうやって仕事は仕事と割り切って,それとは別に趣味や好きなことを楽しむほうが,健全ではないでしょうか。(p63)
 搾取されやすのが,アニメーターやゲームクリエイターやプロゲーマーといった,やりたい人がたくさんいる仕事。(中略)こういった多くの人が憧れる職業は,安くてもやりたいという人もいるために,低賃金構造から抜け出しにくいんです。(p65)
 大卒でないと就労ビザを取れない国が多いことにも注目すべきかなと思います。(p93)
 いわゆる富裕層って,株の売却益や配当金とったことで儲けている人が大半です。(p107)
 男性って,清潔な格好をして髪型をちゃんとしていたら,意外に「雰囲気イケメン」になれちゃうんですね。もtろん顔立ちや骨格の問題で限度はありますが,かなりの割合でごまかせちゃうと思っています。(p116)
 モテる人って,世界中の全員が自分の恋人になる可能性があると思っているので,間口がとにかく広いです。そういう人は顔やプロポーションがいい人だけではなく,たいしてルックスがよくない人とも付き合っています。その結果,「この人って見た目で人を選ぶ人じゃないのね」ということが相手にも伝わって,モテる。(p117)
 モテる人って肉食系とか話が面白いとかではなく,話を聞くときにいかにも興味ありますって感じの態度を示せるタイプ。(中略)そういう態度が取れるのも,やっぱり経験があってこそだと思います。(p118)
 お金を持っていることと幸せって,別に相関関係はないんですよね。(p137)
 現代って,いろんな技術が進歩したおかげで,お金持ちもお金を持っていない凡人も,やっていることは大して変わらないんですね。(中略)今は億万長者も時給1000円のフリーターもスマホを使って同じオンラインゲームで遊んでたりします。(p143)
 今の時代って,お金があっても「お金があるからこそできること」って少ないんです。せいぜい食べ物くらいでしょうか。でも,10倍のお金を払って食べる料理が,10倍美味しいかといえば,そんなこともない。(中略)だいたい,レアで高いものって,基本はマズいと思うんですよね。だって,もしおいしくて需要が高かったら,さまざまな技術が進歩するにしたがって,量産されて安くなってるはずですから。(中略)みんなが欲しくてたまらないものは,最初は高価であっても,どんどん安く手に入りやすくなっていくのが,人類の歴史の必然です。(p145)
 お金を貯めておいたほうがいい理由の1つに,思考力を落とさないためというのがあります。というのも,自分の懐具合を心配してお金に欠乏を感じていると,人間の思考力って大幅に落ちるんです。(p149)
 仕事をせずにシェスタしているスペインなんて,2040年には日本を抜いて世界一の長寿国になるとアメリカの研究期間が発表していますから。無理をせずストレスを貯めたいことが幸せになるいちばんの秘訣かもしれません。(p154)
 努力って100パーセント報われるかというとそんなことはないのですが,結局,努力は報われると思っている人が成功する確率が高いというのはあるかと思いますね。努力を継続して行える人が最終的に成功をつかめるのは,たとえうまくいかないことがあったとしても,途中でやめないためです。日本だけでなく世界中のどこでも,継続している人が,結果としてうまくいってますので。(p166)
 スマホを使う人って,基本的には消費者。生産者から与えられる情報なり商品なりをスマホで受け取ることで満足が得られてしまうから,消費者思考になりがちなんです。(中略)プログラムや音楽,アニメを自分なりに作ってみたいと思ったとき,パソコンが身近にあるほうが,興味のある分野でより高レベルのクリエイティブな技術を身につけることができますし,その結果,生産者思考になりやすいんですね。(p169)
 インフルエンサーや著名人ら成功者が,「そんなことを気にするな。リスクを取れ!」などと,自分の能力や経験だけを物差しにして,無責任に背中を押してきます。踏み出した先に確かな道があればいいですが,断崖絶壁からまっさかさまになりがちな世の中です。(p199)
 凡人でも,いや,凡人だからこそ,非凡な人たちが知ることのできない人生の楽しみを味わっていければと思います。(p204)

2020年3月17日火曜日

2020.03.17 ひろゆき 『働き方完全無双』

書名 働き方完全無双
著者 ひろゆき
発行所 大和書房
発行年月日 2018.04.25
価格(税別) 1,300円

● 著者は日本の先行きについては悲観的。検索エンジンだって日本から出ても不思議はなかった。ドローンも然り。が,日本は“わからない”という理由で規制してしまう。新しいものを寄ってたかって潰してしまう。足を引っぱる。
 その結果,これらの分野で大きく立ち遅れてしまった。

● しかし,国は国として,個人が幸福に生きていくには何をどうすればいいのか。贅沢するのではなく,緩く生きられればいいじゃないかという観点からの切り口。

● 以下に転載。
 スキルはコモディティ化するものです。どういうことかというと,人が身につけたことは,マニュアル化され,誰でも再現可能になり,価値が下がるということです。(中略)まして,今は人工知能(AI)の技術が成長していますから,これまでは食いっぱぐれのなかった医者や弁護士でも,国家資格を持っているだけでは,これからの時代,つらくなってきます。資格(スキル)プラスアルファが求められるのです。(p5)
 僕は,個人の「能力」というのは,かなり怪しいものだと思っています。(中略)世界史を学ぶと,世界で覇者になる民族がいくつか現れますが,それは彼らが優れた能力を持っていたからではなく,地政学的に有利な場所にいたことが要因として大きいのです。つまり,「たまたま,そこにいたから勝てた」のです。(p6)
 2007年以降,アメリカやイギリスで,10代の子が,「核分裂」をさせることに成功しました。(中略)10代の子でも,情報や材料を集めてガレージで核分裂炉を作れたというわけです。(中略)知識が独占されていない今の時代,個人が勉強しえ調べれば,「核」まで作れるわけです。ようは何でもできる時代に突入したといえるでしょう。(p31)
 全員が同じように頑張るのではなく,一部の頑張りたい人が勝手にどんどん頑張っている状態が最も理想的だと思います。(中略)今の日本は,働きたくない人までもが生活のために働かされて,そのせいで一部の金持ちに嫉妬してしまうという構造になってしまっています。(p38)
 「悪評も評判のうち」ということもあって,知名度が上がってくれることも,もちろんメリットなのですが,それとは別に,バッシングをされると,「他社が参入してこない」といおうメリットもあります。クレームや悪評に耐えられる人は,僕が知る限り,そこまで多くないので,あえてそこに参入してくる人は少ないのです。(p49)
 人間って,何かをやり始めることは苦手ですが,一度やってしまえば継続するようにできています。一度始めたことは,今度はやめてしまうことのほうが難しくなってしまうのです。(p56)
 「なんでもやります!」という姿勢でいると,どんどん利用し尽くされてしまいます。企業にとって,こういった精神の人材ほど,オイシイものはありません。なぜなら,社員にやらなければならないことを押し付けて,それができないのは個人の努力のせいにできるからです。(p58)
 文章でも,ブログやツイッターで書きたいことを書いて,もし,「間違えていますよ」と指摘があれば,そこで訂正をすればいい。世の中に出す前に細かいところまで予測して議論してもムダだと思うんですよね。(p62)
 人に声をかけるのが苦手な人って多いですよね。でも,それと同時に「声をかけられることにも弱い」ということが言えます。(中略)そういう考え方をしていると悪い人やブラック企業に付け込まれるので,早めに脱したほうがトクだと思いますよ。(p67)
 いちばん幸せなのは,無名な金持ちだと思います。日本はテレビの影響が強いので,有名税が海外と比べて高く付きがちです。(p85)
 海外旅行が好きなのも,そこで何者でもない状態になれるからです。誰にも認められない状況で,それでも何とか生きていく術を見つけていく作業が,ゲームのようで面白いからです。(p92)
 言葉が通じなくても,僕は終始,「ニコニコする」ことにしています。(中略)日本以上に礼儀を大切にする国は意外と多くて,(中略)人って,接点を持ったときに笑顔で挨拶をしておかないと,違和感が残ったままなんですよね。(p94)
 たとえば,ホームレス対策においてぢ味なのは,「場所を移動させること」ではなく,「社会復帰させること」です。(中略)どうも日本の政策では,「移動させるだけ」という解決方法が多いです。(p103)
 一部の個別犯を制限するために,すべてを禁止してしまうというのは,全体の幸福度を下げてしまう(p162)
 法律以外で面倒なことが起こるのが,日本の悪い部分だと思うんですよね。(p166)
 バラエティ番組やワイドショーは,基本的に頭が悪い人向けのものが多いです。頭の悪い人向けの番組を作って,頭の悪い人がCMを見て,モノを買わせるという効率のいいシステムになっています。ワイドショーという大衆文化こそ,「足を引っ張る」「人を叩く」の元凶です。(p179)
 それぞれのカジノに大きな違いがあるのではなく,単純に「中国人がどこにお金を落とそうとしているか」というのが重要で,遠くのアメリカに行くよりは,マカオのほうが近場だという立地的な理由が大きいのです。そうすると,中国がマカオを持っている以上,日本にカジノを作っても,わざわざ来るメリットがありません。(p207)
 世界中には,アラブの石油王のように,ケタ外れのお金持ちがいます。彼らにお金を落としてもらうのが,外貨を稼ぐ一番の近道なのですが,彼らは,安いホテルには泊まりたくないと思っています。だいたい,1泊100万円以上でなければ,ちゃんとしたホテルだと認めていないのですが,東京でそれくらいのクラスのホテルは,ほとんど見当たりません。(p211)
 「あれば便利だけど,なくてもいいよね」というレベルの産業が,どんどん減っていき,ちゃんと外貨を稼げる仕事だけが残ることになるでしょう。(p215)

2020年3月12日木曜日

2020.03.12 成毛 眞 『AI時代の子育て戦略』

書名 AI時代の子育て戦略
著者 成毛 眞
発行所 SB新書
発行年月日 2018.06.15
価格(税別) 800円

● 子育て戦略は生き方戦略でもあって,どう生きるのがいいのかをプラクティカルな視点から解説。
 いい大学→大企業(官庁)のコースに乗れば安泰という昭和の価値観では大損をこく。「何に」熱中するかではなく,対象が何であれ熱中できる能力そのものが大切。ということが説かれている。

● 以下に転載。
 すでに「ガリ勉をして東大」というルートはヤバい。私の肌感覚から言うと,東大卒で本当に使える人は10人に1人いるかどうかだ。(p4)
 よく「才能+努力」と言われるが,正しくは「素質+のめり込む才能」である。(中略)両方とも遺伝で受け継がれるものである。(p23)
 いろいろな人を見ていて不思議に共通しているのは,人間は同レベルの友だちと一番仲がいいということだ。(中略)マイルドヤンキーが地元から出ないというのは,みんなレベルが一緒で居心地がいいからに決まっている。(p27)
 道は無数にあるのだから,1つは他人より傑出している分野があるはずだ。今ではいい大学に行く以外の選択肢が増えてきている。いい大学に行くより,市穴太を発揮できる分野で活躍したほうが幸せに決まっている。(p29)
 よく「子どもの体力が落ちた」などと言われることがある。でも,本当に子どもの体力がおちているのか疑わしいものだ。(中略)おそらく,子どもたちの体力が下がっているのではなく,みんなが学校の体育を軽視しているだけではないか。(p32)
 スポーツも勉強も平均値は落ちているように見えるが,個々のレベルはとてつもなく上がっている。この状況に,「オール5」を良しとする学校教育が追いついていないだけだ。(p33)
 世の中には,自分で自分の才能に気付いていない人がたくさんいる。なんとももったいない話だが,才能にあふれているのに無自覚なまま生きているのだ。(中略)今はSNSを通じて,誰もが文章やイラストや音声やダンス姿などを発信できる時代なので,以前よりも才能が発掘されやすい環境は整っている。(p37)
 くれぐれも注意してほしいのが,「今好きなこと」という基準で考えないことだ。(中略)重要なのは,あくまでも子どもの頃好きだったかどうか。子どもの頃好きだったことのほうが本来の才能を表している可能性が高い。(p39)
 親の中には,一度始めたものは何でも最後までやり通すべきだと信じ込んでいる人たちがいる。(中略)続けさせることで,根性がつくとか,やり抜く力がつくと考えているのだろうが,正気の沙汰とは思えない。(p44)
 親(特に父親)がよかれと思って子どもをキャンプに連れ出すことがあるが,たいていの子は実際のところ楽しんではいない。(中略)キャンプはたいてい父親1人が楽しんでいる。ただ,父親が喜んでいると子どもはやっぱり嬉しい。どんな子だって親の喜んでいる顔を見たいので,それなりにがんばる。(中略)いい子であればあるほど,両院の喜ぶ顔が見たいがために無理を重ねてしまう。そうやって無理を重ねて努力しても,何かに上達することはあり得ない。(p47)
 知り合いの水彩画のセミプロによると,普通の人は同じようなスタイルで100枚も絵を描いていたら飽きてしまうのだという。これに対して,プロは1000枚くらい飽きずに描き続けられるのがすごい,と語っていた。よく,プロの画家が思いきり画風を変えて,まったく違った作品を描くことがある。これも1000枚近く描いてきて飽きてしまったからなのだという。(p50)
 リハビリの世界では,1つの筋肉が動くようになると,それに引きずられて周囲の筋肉も発達することがあるそうです。それと似たような原理で,(中略)プログラミングに熱中して作品を作った子が,それを伝えるためにプレゼンのスキルをアップさせることがよくあります。(長谷川敦弥 p63)
 適応できてしまうがゆえにつらい人生を送るというわけですね。とくに成績のいい子は,ある種の柔軟性があって適応できてしまう。でも,それを小学校からずっとやり続けていくと,大人になったときにもう取り返しがつかない。(p70)
 障害者の就職支援をやってきてつくづく感じるのは,「結局,人って自分らしくしか生きられない」ということです。(長谷川敦弥 p71)
 ポンコツ系に共通するのは,親からガリ勉を強いられて,なんとか東大に引っかかったという点だ。(中略)勉強にモチベーションがなく,大学4年間を漫然と過ごすから,卒業するころには唯一の拠り所だった学力さえも失ってしまう。だから,東大卒のポンコツ系は圧倒的に頭が悪い。(中略)いろいろ言われる以前に,単純に頭が悪すぎる。(p83)
 本当に賢い東大卒は普通の民間企業にはやってこない。彼らはそもそも卒業後に向かう世界が違う。(中略)民間企業には残りの7割しか回ってこないから,使える人材の割合が10人に1人くらいになってしまう。(p85)
 新しい技術に目を向けない人は,徹底的に取り残される。たとえば電子決済技術について知らない人が,ビットコインが登場したときに反応できたはずがない。同じようなことが,これから何度も何度も繰り返されるだろう。(p97)
 「日本の大学では勉強しないが,アメリカなら真面目に勉強するから意味がある」 これもよく聞く話だが,結局のところ大同小異である。ハーバード大学も含めて,本当に時間のムダだと思う。(p88)
 日本マイクロソフトでもポスドク(博士課程修了者)を2~3人採用した経験があるのだが,まったく戦力にならずに1~2年で全員が辞めてしまったという過去がある。私が思うに,MBAや大学院にこだわる人たちは,世の中に学位以上に面白くて大事なことがあるという事実にまるで気付いていない。時代が変われば学位など紙くず同然になるという想像力が著しく欠如している。(p90)
 東大以外の学歴でも,閣僚ともなれば頭のいい人がそろっている。官僚だって相当賢い人が多いが,有能な政治家は官僚以上に賢い。官僚から「やっぱりこの人は自分よりすごい」と思われない限り,政治家は力を持ち得ないからだ。一方,暴言報道で議席を失った豊田真由子氏や,不倫スキャンダルを起こした山尾志桜里氏などは,誰がどうみても頭が悪い。(中略)受験勉強においては賢いのかもしれないが,政治家としての行動に致命的なまでに知性が欠けている。(p98)
 10年近く前から企業の人事部では「SFC出身者が使えない」というのが定説になっている。うまく言えないが,鼻っ柱の強さに能力が伴っていない。(p99)
 英語が使えるだけなら,そもそもアメリカに留学していたような学生が山ほど存在するわけだが,留学経験者もまた使えない人材が多い。(p100)
 新しいものに興味を持つ能力や,答えのない問いに答えようとする能力を削いでまで受験勉強をさせるのはあまりにリスクが大きすぎる。そこまでして東大に行かせる意味など一つもない。(p101)
 明治エッセルスーパーカップの「超バニラ」しか食べないという人は,かなり文系脳といえる。新しいものに興味を持たないから,変化に対応できない。(p108)
 コミュニケーションについてはもともとの能力差が大きすぎるため,才能がない人がそこそこ能力を高めたところで焼け石に水という気がする。言葉に対する才能は,音楽や美術の才能と一緒で,勉強したからといって身につくものではない。(p116)
 一般にアウトドア=運動好き,インドア=運動嫌いと思われているが,大きな誤解である。アウトドアとインドアの市街は,本質的に人見知りかどうかの違いである。アウトドアは体を動かすこと以前に,人と会うのが好きな人たちだ。彼らは人見知りをしない社交的な人たちだ。(p118)
 一般にインドア派のほうが精神的に弱そうに見えるが,本質的にはアウトドア派のほうが弱い。少なくとも,人と会うのが嫌で本ばかり読んでいる人のほうが,年中キャンプをしている人たちより精神的には成熟する。(p119)
 出版社の元編集者で喫茶店のマスターをしている人は山ほどいるが,喫茶店のマスター出身の編集者というのはいない。よほどの例外を抜きにすれば,人の流れは上流から下流へと決まっていて,逆流することは考えられない。必然的に,上流の会社に就職したほうが「つぶしがきく」ということは言える。(p156)
 最初に入社した会社は,どこまでも自分を追いかけてくる。早稲田大学卒でも日本大学卒でも,電通に入社してしまえば,それ以降のキャリアは「電通出身者」としてみなされることになる。だから,どの大学に入学するかよりも,最初にどの会社に入社するかのほうがはるかに重要である。(p158)
 そもそも仕事の好き嫌いと向き不向きは別の問題である。(p163)
 私がベンチャーキャピタルで新卒採用をした経験でいえば,会社員や公務員の子よりも,自営業の家庭に育った学生のほうが,能力を発揮する傾向が強かった。(p164)
 才能が遺伝するといっても,最初から才能が明らかなフィジカルな遺伝と違って,抽象的な思考は,ある程度年齢を重ねなければ完成しない。つまり,ビジネスマンが本当の意味で天職に出会えるのは30代以降になってからで,20代で才能を決めるけるのは早すぎる。(p165)
 今後,社会起業家やシャキ貢献につながるビジネスは確実に増えるだろう。これは「いい人」が増えているからというより,単純に食べるのに困らない人が増えてきたからだと言える。(p173)
 経験上,ボランティアを積極的にやりたがる人と,まったく興味を持たない人は明確に分かれている。ボランティアに積極的な親を持つ子は,ボランティアに興味を示す傾向が強い。これも,言ってみれば遺伝の影響である。(p175)
 お金というのは,面白い仕事をしてうまくいった結果,ついてくるものである。お金になりそうな仕事をしたことで得られるわけではない。だから,結論から言えば,お金の教育はしないほうがいい。(p177)
 私の周りでも,お金儲けがうまい人というのは,利に賢い人ではなくて,損得抜きで自分のキャリアに投資できる人だ。(中略)そういう人は,直感に任せて動いているので,最終的にどんな商売をするというビジョンが明確なわけではない。ただ,みんながよく口にする「夢」とか「目標」を持っていない代わりに,「今やっておくべきこと」に対する嗅覚が圧倒的に鋭い。(p177)
 お金を儲ける人は,1つのことが続かず,どこかで飽きてしまう人でもある。飽きずに「○○一筋」というような人は,案外,お金に縁遠いことが多い。(p178)
 今後,AIの進化によって10年後,20年後に我々の社会生活を根本から変えるような歴史的なイノベーションが東欧することだろう。そのとき10%の専門家は「どえらい物が出てきたぞ」と驚愕し,残りの90%の人は拒否反応を示すだろう。(中略)でも,時間が経てば誰もが新しい技術を当たり前のように使いこなすに違いない。かつてたどってきた道なのだから,手に取るようにわかる。とのとき,新しい技術にいち早く飛びついた人は,新しいビジネスやサービスを生み出すだろう。出遅れた人は,新しい技術に使われる生活を余儀なくされるだろう。(p182)

2020年3月8日日曜日

2020.03.08 成毛 眞 『人生も仕事も変わる! 最高の遊び方』

書名 人生も仕事も変わる! 最高の遊び方
著者 成毛 眞
発行所 宝島社
発行年月日 2019.08.09
価格(税別) 1,400円

● 5章で構成されているが,最後(第5章)の六角精児と著者の対談を最初に読んで,第1章から読んでいくのがいい。第5章さえ読んでおけば,あとはどこでやめても構わない。

● 以下に転載。
 話題の映画を観ることや,流行りの音楽を聴くことは,遊びとは言えない。遊びは意図的にやらなければ,遊びではない。(p10)
 人々が最高に楽しんでいる場所では,必ず未来が見つかるのだ。未来を発明するのはいつだって,うまく遊んでいる人間たちなのである。(p11)
 実益を考えず,ただ単純に遊ぶことを提案したい。間違っても,「遊び」でやっていたものを本業にしようとは思わないことだ、趣味はひとりで極めるものだが,遊びは誰かを巻き込んでやろう。(p16)
 遊びでプロを目指してはいけない。プロになるなら,仕事と同じだ。(中略)中途半端なままで終わらせることができるのも,また遊びの醍醐味だ、(p17)
 目的があるようでない,何かを達成するものではない,というのが遊びの定義だとすると,日本人には「遊び上手」の素質があるように思える。それに比べると,アメリカ人は遊びが下手な人が多いかもしれない。彼らはその気になると,遊びではなくて,本格的な趣味にしてしまうのだ。(p19)
 どうせ遊ぶなら人がやらないようなことをやったほうがいい。みんながやっていることは,あえてやらないことだ。何をして遊ぶかを考えるときに,みんながやっていないことは何かを探すことが,すでに面白い。(p20)
 3000時間もやればプロ級になってくるが,そうなると面白いことばかりでもないだろう。(中略)遊びであれば1000時間ほどやって,他に面白そうなものがあれば,すぐに移るのをオススメする。無理に苦しい思いをすることはないのだ。(p30)
 ピカソやダヴィンチの作品など,アートにはある種のいかがわしさがある。アートは,現在の価値と違うものを提示しなければ売れないのだ。(中略)美術史のなかで,従来の価値観に対するアンチテーゼを描くことで評価を得る。(中略)時代に合わせつつ,いかに時代をリードするか,ということはビジネスでも同じである。よって,ビジネスマンはアーティストを見ておかなければならない。アートが極端に変化するときは,ビジネスも変化する。(p37)
 自分にとんでもない才能があるかもしれないのに,やらないからわからないのだ。今の若い世代の人たちは,やってみないとわからない,ということを理解している。(p38)
 真面目な人に多いのが,基本に忠実でありたい,最初から本格的でなければならないと,思い込むことだ。そんなことはない。あくまで遊びであるから,楽しみ優先でいいのだ。(p39)
 今あることの積み重ねでイノベーションは起こらない。大きなジャンプをするためには,奇想天外な発想が要るのだ。広い視野を持って,大きく考えることが必要になる。壮大な空想を描く力は,天賦の才ではない。空想力を高める上でSFは実に役立つ。だから頭の柔らかい10代,20代のうちに読んでおきたい。(p48)
 仕事でも遊びでも,「やらないこと」を決めるのが楽しむためのコツだ。ボクが遊びでやらないと決めていることは,銀座のクラブなど,女性が席につくようなお店に行かないことだ。お金ありきで寄ってくる女性に囲まれて,何が楽しいのかわからない。(p72)
 今では公私ともみ必要のない選択を極力減らしている。例えば,サラリーマンを辞めてから20年間,毎日ほぼ同じ服を着て,ほぼ同じ昼飯を食べている。(p76)
 スティーブ・ジョブズなども発達障害があって服や食事などにさほど興味を持つことのない子どものまま大人いなったがゆえに,子どものような発想ができ,それを我々はクリエイティブだと思い込んでいるのかもしれないのだ。(p78)
 ある程度の資産を持っている仲間と飲んでいて,全員が同意した共通点がひとつあった。若い頃から毎日1回,寝る前の数分間などに,次のふたつを無双する習慣があるというのだ。 ・どうやって資産を増やそうか(どうやって少しでも稼ごうか) ・どうやって資産を減らさないか(無駄遣いしないか) しかも,その夢想はほとんど実行されない。ふと夢想するだけなのだ。大したことではないが,意外とその積み重ねが重要なのかもしれない。(p82)
 巨大企業を困らせるのは,実はそれほど困難ではない。彼らの収入源をピンポイントに,最少コストで狙うだけだ。戦国時代とはそういうものだ。(p85)
 天才と呼ばれる人たちは,得意なことが飛び抜けてでき,普通の人なら当たり前にできることができなかったりする。(p124)
 通常のキャンプを見ていると,コーヒー一杯,沸かして飲むのに火をつけて水を沸かしたり,豆にこだわったりと,あくせくしている。(中略)キャンプを楽しむ違う形があってもいい。コーヒーを飲むなら,ネスカフェのアンバサダーであってもいいわけだ。(p176)
 ギャンブルを真剣に勝たなきゃいけないと思ってやっていると,不思議とどんどん負けていくんですよ。だから真剣にやらないほうがいいですよ。(中略)やっぱりギャンブルは軽い気持ちでやったほうがいい。そうでないと,大人の嗜みとは言えませんね。(六角精児 p193)
 自分の金の9割くらい賭けて,勝った負けたなんてやっていると,勝ったときの高揚感と負けたときの虚脱感は,とどのつまりどちらも同じなんです。どちらも快感なんですよ。(中略)真剣にやるんではなく,いい加減にやらないとダメです,あんなもんは。全部,運なんですから。(六角精児 p194)
 芝居の世界には芝居だけっていう人がいるし,ギャンブルの世界にはギャンブル一本槍っていう人がいる。そこでしか生きられない人がいっぱいいる。あれが面白いんですよね。(中略)その世界でしか生きられないっていう人をはた目で見たり,話を聞いたりするのが僕の大好物なんですよ。(六角精児 p196)
 尿酸値も,尿結石も,糖尿も全部,当てはまるんですけど,僕は。でもいいんです。そんなものは,なんとかなる限りは薬で適当に対処していれば。(中略)医者の言うことをちょっと小馬鹿にしながら聞いているヤツのほうが,ずっとそのまま元気なんじゃないかな。(六角精児 p209)
 みんなからモテたってろくなことないでしょう。100人いたら,実際は2人か3人とかの人から本当に愛された方が世の中,絶対,幸せですよ。(六角精児 p211)

2020.03.08 MdN編集部編 『いまいちばん美しい日本の絶景』

書名 いまいちばん美しい日本の絶景
編者 MdN編集部
発行所 徳間書店
発行年月日 2018.09.01
価格(税別) 1,900円

● 吉野山やいくつもの棚田の写真を見ると,日本人は海洋民族ではなく,山岳民族なのだと思えてくる。

2020.03.08 蜷川実花 『earthly flowers,heavenly colors』

書名 earthly flowers,heavenly colors
著者 蜷川実花
発行所 MATOI PUBLISHING
発行年月日 2017.03.17
価格(税別) 1,800円

● この色彩感覚は独自のものでしょうね。テイストはだいぶ違うけれども,草間彌生さんの衣鉢を継ぐのは蜷川さんでしょうか。
 開ききってマックスに達するエネルギーの乱舞。官能の美。

● 接写すると,自然が人工物のように見える。なんだか不思議。ひょっとして本当に人工物を入れているんだろうかと思うほどだ。

2020.03.08 佐藤信太郎 『非常階段東京』

書名 非常階段東京
著者 佐藤信太郎
発行所 青幻舎
発行年月日 2019.03.10
価格(税別) 3,800円

● 巻頭の“千代田区丸の内からの眺め”が圧巻だけども,あとは新小岩,平井,八広,南千住といった下町を多く撮っている。
 夜になる前あるいは夜明け前の,淡いの時間帯の写真かと思う。高いところ(非常階段やビルの屋上)から街を面的に切り取る。

2020.03.08 熊切圭介 『東京ワンダー 揺らぐ街』

書名 東京ワンダー 揺らぐ街
著者 熊切圭介
発行所 クレヴィス
発行年月日 2019.04.03
価格(税別) 1,852円

● ビルのガラス壁面に映ったいわゆる映り込みと,工事現場の写真(とりわけブルーシートに覆われた何ものか)の写真が多い。
 今は誰でもスマホを持って街を歩いているだろうから,こういう写真は誰でも撮れるんじゃないかと思ってしまいがちなのを,素人の浅はかさと言うんでしょうね。

● いくつか転載
 古いお寺の横に近代的な建物。そのコントラストが非常に鮮やかで,街に発見と驚きがある。その連続が東京の特徴的な景観だ。(p126)
 僕は1枚か2枚しか撮らない。しつこく撮ると,撮られた方も意識する。ところが通りがかりにパッと撮って終わると,相手の人も撮られたという感覚がない。素早くその状況を捉えるというのがスナップ写真の面白さだ。(p127)
 スナップは,その場の状況を自分の中で整理しないこと。整理すると,面白くなくなる。見たままの情景をとにかくまず撮る。(p127)
● 最も印象に残った1枚をあげろと言われれば,“前財産を自転車にくくりつけて移動する人”だ。
 世間ではホームレスというのだが,小さいけれど覚悟がこもった工夫をすれば,そういうことができるのだ。

2020年3月4日水曜日

2020.03.04 堀江貴文 『仕事も人生も娯楽でいい』

書名 仕事も人生も娯楽でいい
著者 堀江貴文
発行所 宝島社新書
発行年月日 2018.06.07
価格(税別) 780円

● 「覚悟を決めた個人は国家より強い」(p198)。
 本書は堀江発言のアンソロジーということになるんだろうけど,その中で最も強烈なメッセージはこれだと思った。

● 他にも転載。
 よく「堀江さんの人生の目的は何ですか?」と聞かれるが,そんなものは存在しない。とにかく自分が面白いと思うことをやりたい。ワクワクした毎日をとにかく積み重ねる。過去も未来も関係ない。とにかく今を楽しむだけだ。(p20)
 講演会に来てくれるお客さんには悪いが,「botでいいじゃん」と思うし,「僕の考えを知りたければ,本を読んでよ」とも言いたい。本のほうがよほど内容の密度は濃いし,人によって早く読める。1時間も2時間も僕の話を聞いている必要もない。お客さんにとっても時間の効率がいいはずだ。(p22)
 炎上には,情報拡散力があるし,さまざまな問題提起をするうえでも効果は大きい。僕の発信力をさらに育てるための「養分」だというくらいに考えているのだ。(p23)
 変化というものは突然ではなく,徐々に起きるものだ。そして一瞬では終わらない。そこで「生き残れる人」がいるとすれば,それは状況に合わせてとっさの判断や行動ができる人だろう。たとえば,株式の世界では,「暴落のときは損切りをせよ」というのが鉄則。(中略)そのうえで,儲かるところへ投資すればいい。そうやって冷静に切り替えられる人は生き残るだろう。しかし,多くの人は,「~円損した」という考えにとらわれ,売れなくなる。(p27)
 「人から認められたい」という承認欲求を捨てれば,人生はずっとラクになる。他人の非難や嘲笑など,気にするだけ時間のムダだ。(p34)
 他人の評価はあてにならない。世間の常識に合わせようとするのではなく,自分の基準で生きよう。批判も賞賛も含めて,「自分が世間を振り回してやる」というくらいの気概を持っていれば,あなたも「同志」と出会えるはずだ。(p34)
 才能なんて,やってみないと,自分にあるかないかなんてわからないのではないだろうか。やりもしないで「自分には才能がない」と言って最初から諦めてしまう人が,どれだけいることか。(p39)
 人と同じことをするのは,いちばん損をすることなのだ。人と違うことをするからこそ,超過利潤が生まれるのであって,同じことをしていたらいちばん高いものを買わされるだけである。(p44)
 私の周りの人たちのノリの良さは,突き抜けている。普通の人ならちょっと引いてしまうぐらいだろう。そのノリを私は共有できるし,ついてこられない人とは,たぶん仲良くはなれない。(p51)
 情報を持たなければ,人は恐怖にかられる。人間の恐怖の大半は,情報不足が原因だ。新しい情報を獲得し続けていれば,不安や恐怖は克服できる。(中略)これから先の事態を怖がっているのは,情報弱者である証拠だ。(p54)
 そもそも仕事は,見ようによれば,みな娯楽なのだ。(p62)
 庶民は搾取されるのが時代の常で,借金してお金を賭けても長い目で見ればその額を返すことは叶いません。(中略)ギャンブルに限らず娯楽に使う借金は意味がありません。(p68)
 仕事もお金も喜びも,それを独り占めしたところで心は満たされない。みんなとシェアするからこそ,ほんとうの幸せを実感できるのだ。(p81)
 突き抜けられる人と,そうでない人の違いは,次の一点に尽きる。物事を「できない理由」から考えるのか,それとも「できる理由」から考えるのか。それだけだ。突き抜けられるかどうかは能力の差ではなく,意識の差なのである。(p87)
 過ぎ去ったものに価値はないし,取りもどすこともできない。時価換算上では価値ゼロだ。今あるもの,使えるものが価値のすべて。(中略)ここにある,この瞬間だけが価値なのだ。(p91)
 大切だと思っているのは二つだけ。力を抜いて流れに身を任せること。そして目の前のことにひたすら熱中すること。(p96)
 世界は越えなくちゃいけない障害だらけだという,勝手な思い込みを解くことが大切だ。(p107)
 ビジネスにとって最も重要なこと,それはスピード。新しい事業を起こそうとしたとき,時間がかかってしまえばどんどん競争相手は増え,コストは嵩み,失敗のリスクは雪だるま式に増えていく。(p133)
 塀の中にいても,僕は自由だった。(中略)僕の頭の中,つまり思考にまでは誰も手を出すことはできなかった。だから僕は,ひたすら考えた。(p145)
 これまで,「堀江さん一緒に写真撮ってください」と言ってきた人で一流になった人はいない。(p146)
 損切りのコツは,とにかく勇気を出すことだ。どの段階にきたら,やめたほうがいいのか,自分ではっきりと意識しておくべきだろう。(p147)
 結局,やり方とかセンスではなく「トライアルアンドエラーをどれだけ続けるか」ということだと思うのだ。(p160)
 打席数を少なくして打率を上げるのではなく,打率は低いけれど打席に多く立っていたほうが絶対にいい。(p192)
 日曜など休日に家族サービス優先して,やりたいことをやらない人もいるけれど,私には理解できない。あらゆるしがらみや人間関係を振り切ってでも,ハマってしまうぐらいじゃないと,本当の面白さは見えてこない。(p215)
 個々の情報は記憶するのではなく,浴びればいいのだ。情報は取り入れたら,そのまま忘れてしまって構わないのだ。それではm情報を取り入れる意味がないかもしれないと思われるだろうが,本人が忘れたつもりでも重要な情報は脳の片隅にちゃんと残っている。大切なことだけが,ちゃんと残るものなのだ。(p225)

2020年3月1日日曜日

2020.03.01 野口悠紀雄 『話すだけで書ける究極の文章法』

書名 話すだけで書ける究極の文章法
著者 野口悠紀雄
発行所 講談社
発行年月日 2016.05.20
価格(税別) 1,500円

● 音声入力による文章作成を論じている。2016年の発行。ということは,2016年ですでにこういうことができるようになっていたのか。知らんかったわ。これにGoogleレンズの話を加えたものが『「超」AI整理法』ということになるか。
 スマホの音声入力は1分間しか保たないらしい。ウルトラマンの3分の1のスタミナだ。が,そこを改善するアプリがある。そのあたりの解説もある。

● 以下に転載。
 音声入力機能を用いれば,PC(パソコン)のキーボードで入力するのに比べて,約10倍の速さで文章を書くことができます。つまり,文章を書くという作業の性質が一変してしまったわけです(p4)
 一昔前のアメリカ映画を見ると,会社のボスが秘書に手紙を口述させる場面がよく出てきます。これは,書くという作業よりも話すほうがずっと楽であることを示しています。(p18)
 これまで私は,文章を書く作業を,机に向かって座り,PCのキーボードを叩くという形で行っていました。音声入力を用いるようになって,それがさまざまなスタイルに拡散しました。スマートフォンを用いる入力は,どこでもできるからです。(p23)
 仕事のスタイルというものは,固定化しがちなものです。そのときの最先端の技術に適合した仕事の仕組みをいったん構築すると,それが固定化してしまいます。その後に技術進歩が生じても,それを受け入れなくなるのです。(中略)これまでスマートフォンの仮想キーボードを頻繁に使っていた人たち(とくに,フリック入力方式に習熟していた人たち)は,音声入力の価値を過小評価し,それを利用できることを知っていても利用していない人が多いのではないかと思われます。(p25)
 とくに愕然としたのは,「自分は話す内容を持っていない」と気付く場合があることです。散歩時間にスマートフォンに話しかけようとしても,何も出てこないことがあるのです。つまり,「私は何も考えを持っていない」ということです。(中略)音声入力をすることによって,私の頭の中の状態が明白になったのです。音声入力は,頭の中を「見える化」する手段です。これは,重要な発見でした。(p27)
 これまで,私にとってスマートフォンは,主として閲覧装置(出力装置)でした。しかし,音声入力機能が使えるようになって,スマートフォンは,いつでもどこでも簡単に使える入力装置に変わったのです。この変化は非常に大きなものです。(p32)
 音声入力を用いればキーボードを用いなくても入力ができるため,スマートフォンを積極的に使うことができます。これによって,高齢者のスマートフォン利用は格段に進むでしょう。そしてそれは高齢者の生活を豊かなものにしてくれるでしょう。(p37)
 音声入力機能の最も有効な使い途は,長文のテキスト化であると私は考えています。長文を簡単に入力できることは,知的作業において新しい可能性を開きつつあります。(p41)
 書いたことさえ忘れてしまったメモがスマートフォンにきちんと残っているのを見ると,きわめて強力な「外部脳」が出現したと実感し,感激します。(p54)
 これまでは書くスピードに限界があったので,「考えていることのすべてを書き終わらないうちに忘れてしまう」ということもありました。しかし,いまや,頭の中で考えていることを,きわめて迅速に文字という形にすることが可能になりました。(中略)キーワードだけの要点メモではなく,文章そんものを書いてしまうことができます(音声入力は,切れ切れに話すよりは,長い文章を速く話すほうがうまく変換してくれます)。(p54)
 後から編集はいくらでもできるので,どんどん入力していくべきです。思いついたこと,アイディア,新聞や書籍に書いてあったこと,買いたい書籍,買いたいもの等々。どんなことでもメモできるし,したほうがよいでしょう。そのうちに使い方が分かってきますし,メモしたことの中に,思いがけない宝物が見つかるかもしれません。(p55)
 文章を執筆する場合も,「何を書くか」というアイディアが重要です。(中略)文章の価値は,どのようなテーマを見出すかで,ほとんど決まります。(p78)
 問題に集中する能力が優れていることが,創造のための第一の条件です。アイディアを発想する能力は,集中する能力とほぼ同じだと言ってもよいでしょう。(中略)よく,「あの人の頭の中は空っぽだ」と言います。しかし,実際には,空っぽなのではなく,いろいろなことを考えているために,考えがまとまらないのです。(p85)
 では,集中するにはどうしたらよいでしょうか? きわめて有効な方法は,メモを「見る」ことです。それによって,考えが,考えが,その案件に固定されます。(中略)何も見ずに注意を集中するのは難しいと,私は思います。(p89)
 メモを書く理由は,「備忘」ということだけではなく,「集中の支援」ということもあるのです。(p90)
 メモを残しておかないと,10分前に考えていたことでさえ忘れてしまうことが,往々にしてあります。そのため,重要なヒントを逃してしまうのです。(p91)
 アイディアは,何もないところに突然現われるのではなく,ほかのアイディアとの関連付けによって生まれます。いわば,「ほかのアイディアの肩に乗って生まれる」のです。(p92)
 私は,しばしば講義をアイディアを得る目的のために利用しています。講義の際の質問から,アイディアを得ることがあるのです。このため,私はできるだけ多くの時間を質疑にあてることにしています。(p94)
 人間の話し相手はアイディアを生み出すための理想的な触媒なのですが,しかし,見つけるのがまことに難しい対象なのです。それに対して,音声認識による自己対話なら,誰でもすぐに始めることができます。考えていることを音声認識によって文章の形にし,それを後から見れば,相談相手とおなじような刺激を与えてくれることがあります。(p95)
 短い言葉で世界の真理を表現できる人は,ごく少数です。われわれ普通人とは,あまり関わりのない世界だと言っても良いでしょう。われわれが通常関わることについて言えば,内容の充実度とその量はほぼ比例関係にあります。1時間分の分量を持っていれば,そのテーマについてエッセイや論文を書くことができるでしょう。しかし,(中略)1分しか話せないというのは,あなたがその問題について素人だということです。それを引き延ばしてブログに書いたとしても,誰も反応はしないでしょう。(p112)
 多くの人は,口頭でも文章でも,150字程度のメッセージは頻繁に発信していますが,1500字程度以上のメッセージは,受け入れるだけであって,自分から発信する機会はあまりありません。また,そのレベルのメッセージを順序立てて述べるという訓練をしていません。(中略)150字と1500字の間には,「構造を作る必要があるかどうか」という点で,決定的な差があるのです。(p126)
 メモを取るのに特別のコストがかかるわけではありません。後で使わなかったとしても,それで損失が生じるわけでもありません。ですから,「メモを取るべきか否か」などと考えず,どんなことでもメモします。また,音声入力で作ったメモは,紛失することがありません。(p134)
 文章を書くために最も重要なことは,「とにかく書き始める」ことです。ところが,スタートさせるのは,容易なことではありません。書き始めようとしても,非常に大きな慣性が働くのです。(中略)しかし,音声入力を用いると,この関門を突破することができます。なぜなら,思いついたことをしゃべるだけで文章が出てくるからです。(中略)文章を書く作業のスタートがこんなに簡単になったのは,革命的なことです。(p146)
 では,どのようにしてテーマを見つければよいのでしょうか? この問いに対する答えは,「とにかく考え抜くこと」です。「切羽詰まれば何か出てくる」というのが,私の経験です。ただ,いくつかのノウハウもあります。(中略)まず問題意識を持っていなければなりません。そして,アイディアは,別のアイディアに関連して出てくるので,とにかく仕事をスタートさせることが重要です。(p152)
 自分自身の視点を持つには,専門分野を持つことが重要です。「この分野のことに関しては,世の中の誰にも負けない」という分野です。それを出発点として,関心を広げていけばよいのです。(p155)
 本を書く場合には,(中略)各章の最後に「まとめ」を作ることも,有効です。これは,もちろん読者の便宜のために作ったものですが,実は,私自身のために作っているという側面もあります。これによって,各章のメインの内容が何であるかを,常に把握しようとしているのです。(p166)
 電子的なメモの大きな利点は,順序を簡単に変えられることです。(中略)これまでも,複雑な内容の文章を書く場合,頭の中だけで論理構成を組み立ててきたかといえば,そうではありません。(p167)
 知りたいことがあったら,すぐに「話して検索する」習慣をつけることです。「知りたいことのほとんどは検索でわかる。そして,検索するには話すだけでよい。だから,話そう」と考えること。そうした習慣をつけることです。(p193)
 音声入力ができるようになって,(ディジタルスケジュール表も)紙の手帳と同じような書き方をするようになりました。つまり,終日予定の欄,あるいはメモ欄に,時刻も含めて予定を記入してしまうのです。このほうが,時刻ダイヤルをあわせたりすることなく即座に入力ができるので,簡単です。(p228)
 与えられたスケジュールを記録しておき,それを実行するというだけの受け身のスケジュールしかなければ,スマートフォンで十分でしょう。しかし,積極的に時間を管理しようとすれば,どうしても紙の手帳が必要になります。(中略)「即時対応可能性と一覧性」という2つの点において,紙を超える装置はいまだに登場していません。(p237)