著者 成毛 眞
発行所 SB新書
発行年月日 2018.06.15
価格(税別) 800円
● 子育て戦略は生き方戦略でもあって,どう生きるのがいいのかをプラクティカルな視点から解説。
いい大学→大企業(官庁)のコースに乗れば安泰という昭和の価値観では大損をこく。「何に」熱中するかではなく,対象が何であれ熱中できる能力そのものが大切。ということが説かれている。
● 以下に転載。
すでに「ガリ勉をして東大」というルートはヤバい。私の肌感覚から言うと,東大卒で本当に使える人は10人に1人いるかどうかだ。(p4)
よく「才能+努力」と言われるが,正しくは「素質+のめり込む才能」である。(中略)両方とも遺伝で受け継がれるものである。(p23)
いろいろな人を見ていて不思議に共通しているのは,人間は同レベルの友だちと一番仲がいいということだ。(中略)マイルドヤンキーが地元から出ないというのは,みんなレベルが一緒で居心地がいいからに決まっている。(p27)
道は無数にあるのだから,1つは他人より傑出している分野があるはずだ。今ではいい大学に行く以外の選択肢が増えてきている。いい大学に行くより,市穴太を発揮できる分野で活躍したほうが幸せに決まっている。(p29)
よく「子どもの体力が落ちた」などと言われることがある。でも,本当に子どもの体力がおちているのか疑わしいものだ。(中略)おそらく,子どもたちの体力が下がっているのではなく,みんなが学校の体育を軽視しているだけではないか。(p32)
スポーツも勉強も平均値は落ちているように見えるが,個々のレベルはとてつもなく上がっている。この状況に,「オール5」を良しとする学校教育が追いついていないだけだ。(p33)
世の中には,自分で自分の才能に気付いていない人がたくさんいる。なんとももったいない話だが,才能にあふれているのに無自覚なまま生きているのだ。(中略)今はSNSを通じて,誰もが文章やイラストや音声やダンス姿などを発信できる時代なので,以前よりも才能が発掘されやすい環境は整っている。(p37)
くれぐれも注意してほしいのが,「今好きなこと」という基準で考えないことだ。(中略)重要なのは,あくまでも子どもの頃好きだったかどうか。子どもの頃好きだったことのほうが本来の才能を表している可能性が高い。(p39)
親の中には,一度始めたものは何でも最後までやり通すべきだと信じ込んでいる人たちがいる。(中略)続けさせることで,根性がつくとか,やり抜く力がつくと考えているのだろうが,正気の沙汰とは思えない。(p44)
親(特に父親)がよかれと思って子どもをキャンプに連れ出すことがあるが,たいていの子は実際のところ楽しんではいない。(中略)キャンプはたいてい父親1人が楽しんでいる。ただ,父親が喜んでいると子どもはやっぱり嬉しい。どんな子だって親の喜んでいる顔を見たいので,それなりにがんばる。(中略)いい子であればあるほど,両院の喜ぶ顔が見たいがために無理を重ねてしまう。そうやって無理を重ねて努力しても,何かに上達することはあり得ない。(p47)
知り合いの水彩画のセミプロによると,普通の人は同じようなスタイルで100枚も絵を描いていたら飽きてしまうのだという。これに対して,プロは1000枚くらい飽きずに描き続けられるのがすごい,と語っていた。よく,プロの画家が思いきり画風を変えて,まったく違った作品を描くことがある。これも1000枚近く描いてきて飽きてしまったからなのだという。(p50)
リハビリの世界では,1つの筋肉が動くようになると,それに引きずられて周囲の筋肉も発達することがあるそうです。それと似たような原理で,(中略)プログラミングに熱中して作品を作った子が,それを伝えるためにプレゼンのスキルをアップさせることがよくあります。(長谷川敦弥 p63)
適応できてしまうがゆえにつらい人生を送るというわけですね。とくに成績のいい子は,ある種の柔軟性があって適応できてしまう。でも,それを小学校からずっとやり続けていくと,大人になったときにもう取り返しがつかない。(p70)
障害者の就職支援をやってきてつくづく感じるのは,「結局,人って自分らしくしか生きられない」ということです。(長谷川敦弥 p71)
ポンコツ系に共通するのは,親からガリ勉を強いられて,なんとか東大に引っかかったという点だ。(中略)勉強にモチベーションがなく,大学4年間を漫然と過ごすから,卒業するころには唯一の拠り所だった学力さえも失ってしまう。だから,東大卒のポンコツ系は圧倒的に頭が悪い。(中略)いろいろ言われる以前に,単純に頭が悪すぎる。(p83)
本当に賢い東大卒は普通の民間企業にはやってこない。彼らはそもそも卒業後に向かう世界が違う。(中略)民間企業には残りの7割しか回ってこないから,使える人材の割合が10人に1人くらいになってしまう。(p85)
新しい技術に目を向けない人は,徹底的に取り残される。たとえば電子決済技術について知らない人が,ビットコインが登場したときに反応できたはずがない。同じようなことが,これから何度も何度も繰り返されるだろう。(p97)
「日本の大学では勉強しないが,アメリカなら真面目に勉強するから意味がある」 これもよく聞く話だが,結局のところ大同小異である。ハーバード大学も含めて,本当に時間のムダだと思う。(p88)
日本マイクロソフトでもポスドク(博士課程修了者)を2~3人採用した経験があるのだが,まったく戦力にならずに1~2年で全員が辞めてしまったという過去がある。私が思うに,MBAや大学院にこだわる人たちは,世の中に学位以上に面白くて大事なことがあるという事実にまるで気付いていない。時代が変われば学位など紙くず同然になるという想像力が著しく欠如している。(p90)
東大以外の学歴でも,閣僚ともなれば頭のいい人がそろっている。官僚だって相当賢い人が多いが,有能な政治家は官僚以上に賢い。官僚から「やっぱりこの人は自分よりすごい」と思われない限り,政治家は力を持ち得ないからだ。一方,暴言報道で議席を失った豊田真由子氏や,不倫スキャンダルを起こした山尾志桜里氏などは,誰がどうみても頭が悪い。(中略)受験勉強においては賢いのかもしれないが,政治家としての行動に致命的なまでに知性が欠けている。(p98)
10年近く前から企業の人事部では「SFC出身者が使えない」というのが定説になっている。うまく言えないが,鼻っ柱の強さに能力が伴っていない。(p99)
英語が使えるだけなら,そもそもアメリカに留学していたような学生が山ほど存在するわけだが,留学経験者もまた使えない人材が多い。(p100)
新しいものに興味を持つ能力や,答えのない問いに答えようとする能力を削いでまで受験勉強をさせるのはあまりにリスクが大きすぎる。そこまでして東大に行かせる意味など一つもない。(p101)
明治エッセルスーパーカップの「超バニラ」しか食べないという人は,かなり文系脳といえる。新しいものに興味を持たないから,変化に対応できない。(p108)
コミュニケーションについてはもともとの能力差が大きすぎるため,才能がない人がそこそこ能力を高めたところで焼け石に水という気がする。言葉に対する才能は,音楽や美術の才能と一緒で,勉強したからといって身につくものではない。(p116)
一般にアウトドア=運動好き,インドア=運動嫌いと思われているが,大きな誤解である。アウトドアとインドアの市街は,本質的に人見知りかどうかの違いである。アウトドアは体を動かすこと以前に,人と会うのが好きな人たちだ。彼らは人見知りをしない社交的な人たちだ。(p118)
一般にインドア派のほうが精神的に弱そうに見えるが,本質的にはアウトドア派のほうが弱い。少なくとも,人と会うのが嫌で本ばかり読んでいる人のほうが,年中キャンプをしている人たちより精神的には成熟する。(p119)
出版社の元編集者で喫茶店のマスターをしている人は山ほどいるが,喫茶店のマスター出身の編集者というのはいない。よほどの例外を抜きにすれば,人の流れは上流から下流へと決まっていて,逆流することは考えられない。必然的に,上流の会社に就職したほうが「つぶしがきく」ということは言える。(p156)
最初に入社した会社は,どこまでも自分を追いかけてくる。早稲田大学卒でも日本大学卒でも,電通に入社してしまえば,それ以降のキャリアは「電通出身者」としてみなされることになる。だから,どの大学に入学するかよりも,最初にどの会社に入社するかのほうがはるかに重要である。(p158)
そもそも仕事の好き嫌いと向き不向きは別の問題である。(p163)
私がベンチャーキャピタルで新卒採用をした経験でいえば,会社員や公務員の子よりも,自営業の家庭に育った学生のほうが,能力を発揮する傾向が強かった。(p164)
才能が遺伝するといっても,最初から才能が明らかなフィジカルな遺伝と違って,抽象的な思考は,ある程度年齢を重ねなければ完成しない。つまり,ビジネスマンが本当の意味で天職に出会えるのは30代以降になってからで,20代で才能を決めるけるのは早すぎる。(p165)
今後,社会起業家やシャキ貢献につながるビジネスは確実に増えるだろう。これは「いい人」が増えているからというより,単純に食べるのに困らない人が増えてきたからだと言える。(p173)
経験上,ボランティアを積極的にやりたがる人と,まったく興味を持たない人は明確に分かれている。ボランティアに積極的な親を持つ子は,ボランティアに興味を示す傾向が強い。これも,言ってみれば遺伝の影響である。(p175)
お金というのは,面白い仕事をしてうまくいった結果,ついてくるものである。お金になりそうな仕事をしたことで得られるわけではない。だから,結論から言えば,お金の教育はしないほうがいい。(p177)
私の周りでも,お金儲けがうまい人というのは,利に賢い人ではなくて,損得抜きで自分のキャリアに投資できる人だ。(中略)そういう人は,直感に任せて動いているので,最終的にどんな商売をするというビジョンが明確なわけではない。ただ,みんながよく口にする「夢」とか「目標」を持っていない代わりに,「今やっておくべきこと」に対する嗅覚が圧倒的に鋭い。(p177)
お金を儲ける人は,1つのことが続かず,どこかで飽きてしまう人でもある。飽きずに「○○一筋」というような人は,案外,お金に縁遠いことが多い。(p178)
今後,AIの進化によって10年後,20年後に我々の社会生活を根本から変えるような歴史的なイノベーションが東欧することだろう。そのとき10%の専門家は「どえらい物が出てきたぞ」と驚愕し,残りの90%の人は拒否反応を示すだろう。(中略)でも,時間が経てば誰もが新しい技術を当たり前のように使いこなすに違いない。かつてたどってきた道なのだから,手に取るようにわかる。とのとき,新しい技術にいち早く飛びついた人は,新しいビジネスやサービスを生み出すだろう。出遅れた人は,新しい技術に使われる生活を余儀なくされるだろう。(p182)

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