2020年3月1日日曜日

2020.03.01 野口悠紀雄 『話すだけで書ける究極の文章法』

書名 話すだけで書ける究極の文章法
著者 野口悠紀雄
発行所 講談社
発行年月日 2016.05.20
価格(税別) 1,500円

● 音声入力による文章作成を論じている。2016年の発行。ということは,2016年ですでにこういうことができるようになっていたのか。知らんかったわ。これにGoogleレンズの話を加えたものが『「超」AI整理法』ということになるか。
 スマホの音声入力は1分間しか保たないらしい。ウルトラマンの3分の1のスタミナだ。が,そこを改善するアプリがある。そのあたりの解説もある。

● 以下に転載。
 音声入力機能を用いれば,PC(パソコン)のキーボードで入力するのに比べて,約10倍の速さで文章を書くことができます。つまり,文章を書くという作業の性質が一変してしまったわけです(p4)
 一昔前のアメリカ映画を見ると,会社のボスが秘書に手紙を口述させる場面がよく出てきます。これは,書くという作業よりも話すほうがずっと楽であることを示しています。(p18)
 これまで私は,文章を書く作業を,机に向かって座り,PCのキーボードを叩くという形で行っていました。音声入力を用いるようになって,それがさまざまなスタイルに拡散しました。スマートフォンを用いる入力は,どこでもできるからです。(p23)
 仕事のスタイルというものは,固定化しがちなものです。そのときの最先端の技術に適合した仕事の仕組みをいったん構築すると,それが固定化してしまいます。その後に技術進歩が生じても,それを受け入れなくなるのです。(中略)これまでスマートフォンの仮想キーボードを頻繁に使っていた人たち(とくに,フリック入力方式に習熟していた人たち)は,音声入力の価値を過小評価し,それを利用できることを知っていても利用していない人が多いのではないかと思われます。(p25)
 とくに愕然としたのは,「自分は話す内容を持っていない」と気付く場合があることです。散歩時間にスマートフォンに話しかけようとしても,何も出てこないことがあるのです。つまり,「私は何も考えを持っていない」ということです。(中略)音声入力をすることによって,私の頭の中の状態が明白になったのです。音声入力は,頭の中を「見える化」する手段です。これは,重要な発見でした。(p27)
 これまで,私にとってスマートフォンは,主として閲覧装置(出力装置)でした。しかし,音声入力機能が使えるようになって,スマートフォンは,いつでもどこでも簡単に使える入力装置に変わったのです。この変化は非常に大きなものです。(p32)
 音声入力を用いればキーボードを用いなくても入力ができるため,スマートフォンを積極的に使うことができます。これによって,高齢者のスマートフォン利用は格段に進むでしょう。そしてそれは高齢者の生活を豊かなものにしてくれるでしょう。(p37)
 音声入力機能の最も有効な使い途は,長文のテキスト化であると私は考えています。長文を簡単に入力できることは,知的作業において新しい可能性を開きつつあります。(p41)
 書いたことさえ忘れてしまったメモがスマートフォンにきちんと残っているのを見ると,きわめて強力な「外部脳」が出現したと実感し,感激します。(p54)
 これまでは書くスピードに限界があったので,「考えていることのすべてを書き終わらないうちに忘れてしまう」ということもありました。しかし,いまや,頭の中で考えていることを,きわめて迅速に文字という形にすることが可能になりました。(中略)キーワードだけの要点メモではなく,文章そんものを書いてしまうことができます(音声入力は,切れ切れに話すよりは,長い文章を速く話すほうがうまく変換してくれます)。(p54)
 後から編集はいくらでもできるので,どんどん入力していくべきです。思いついたこと,アイディア,新聞や書籍に書いてあったこと,買いたい書籍,買いたいもの等々。どんなことでもメモできるし,したほうがよいでしょう。そのうちに使い方が分かってきますし,メモしたことの中に,思いがけない宝物が見つかるかもしれません。(p55)
 文章を執筆する場合も,「何を書くか」というアイディアが重要です。(中略)文章の価値は,どのようなテーマを見出すかで,ほとんど決まります。(p78)
 問題に集中する能力が優れていることが,創造のための第一の条件です。アイディアを発想する能力は,集中する能力とほぼ同じだと言ってもよいでしょう。(中略)よく,「あの人の頭の中は空っぽだ」と言います。しかし,実際には,空っぽなのではなく,いろいろなことを考えているために,考えがまとまらないのです。(p85)
 では,集中するにはどうしたらよいでしょうか? きわめて有効な方法は,メモを「見る」ことです。それによって,考えが,考えが,その案件に固定されます。(中略)何も見ずに注意を集中するのは難しいと,私は思います。(p89)
 メモを書く理由は,「備忘」ということだけではなく,「集中の支援」ということもあるのです。(p90)
 メモを残しておかないと,10分前に考えていたことでさえ忘れてしまうことが,往々にしてあります。そのため,重要なヒントを逃してしまうのです。(p91)
 アイディアは,何もないところに突然現われるのではなく,ほかのアイディアとの関連付けによって生まれます。いわば,「ほかのアイディアの肩に乗って生まれる」のです。(p92)
 私は,しばしば講義をアイディアを得る目的のために利用しています。講義の際の質問から,アイディアを得ることがあるのです。このため,私はできるだけ多くの時間を質疑にあてることにしています。(p94)
 人間の話し相手はアイディアを生み出すための理想的な触媒なのですが,しかし,見つけるのがまことに難しい対象なのです。それに対して,音声認識による自己対話なら,誰でもすぐに始めることができます。考えていることを音声認識によって文章の形にし,それを後から見れば,相談相手とおなじような刺激を与えてくれることがあります。(p95)
 短い言葉で世界の真理を表現できる人は,ごく少数です。われわれ普通人とは,あまり関わりのない世界だと言っても良いでしょう。われわれが通常関わることについて言えば,内容の充実度とその量はほぼ比例関係にあります。1時間分の分量を持っていれば,そのテーマについてエッセイや論文を書くことができるでしょう。しかし,(中略)1分しか話せないというのは,あなたがその問題について素人だということです。それを引き延ばしてブログに書いたとしても,誰も反応はしないでしょう。(p112)
 多くの人は,口頭でも文章でも,150字程度のメッセージは頻繁に発信していますが,1500字程度以上のメッセージは,受け入れるだけであって,自分から発信する機会はあまりありません。また,そのレベルのメッセージを順序立てて述べるという訓練をしていません。(中略)150字と1500字の間には,「構造を作る必要があるかどうか」という点で,決定的な差があるのです。(p126)
 メモを取るのに特別のコストがかかるわけではありません。後で使わなかったとしても,それで損失が生じるわけでもありません。ですから,「メモを取るべきか否か」などと考えず,どんなことでもメモします。また,音声入力で作ったメモは,紛失することがありません。(p134)
 文章を書くために最も重要なことは,「とにかく書き始める」ことです。ところが,スタートさせるのは,容易なことではありません。書き始めようとしても,非常に大きな慣性が働くのです。(中略)しかし,音声入力を用いると,この関門を突破することができます。なぜなら,思いついたことをしゃべるだけで文章が出てくるからです。(中略)文章を書く作業のスタートがこんなに簡単になったのは,革命的なことです。(p146)
 では,どのようにしてテーマを見つければよいのでしょうか? この問いに対する答えは,「とにかく考え抜くこと」です。「切羽詰まれば何か出てくる」というのが,私の経験です。ただ,いくつかのノウハウもあります。(中略)まず問題意識を持っていなければなりません。そして,アイディアは,別のアイディアに関連して出てくるので,とにかく仕事をスタートさせることが重要です。(p152)
 自分自身の視点を持つには,専門分野を持つことが重要です。「この分野のことに関しては,世の中の誰にも負けない」という分野です。それを出発点として,関心を広げていけばよいのです。(p155)
 本を書く場合には,(中略)各章の最後に「まとめ」を作ることも,有効です。これは,もちろん読者の便宜のために作ったものですが,実は,私自身のために作っているという側面もあります。これによって,各章のメインの内容が何であるかを,常に把握しようとしているのです。(p166)
 電子的なメモの大きな利点は,順序を簡単に変えられることです。(中略)これまでも,複雑な内容の文章を書く場合,頭の中だけで論理構成を組み立ててきたかといえば,そうではありません。(p167)
 知りたいことがあったら,すぐに「話して検索する」習慣をつけることです。「知りたいことのほとんどは検索でわかる。そして,検索するには話すだけでよい。だから,話そう」と考えること。そうした習慣をつけることです。(p193)
 音声入力ができるようになって,(ディジタルスケジュール表も)紙の手帳と同じような書き方をするようになりました。つまり,終日予定の欄,あるいはメモ欄に,時刻も含めて予定を記入してしまうのです。このほうが,時刻ダイヤルをあわせたりすることなく即座に入力ができるので,簡単です。(p228)
 与えられたスケジュールを記録しておき,それを実行するというだけの受け身のスケジュールしかなければ,スマートフォンで十分でしょう。しかし,積極的に時間を管理しようとすれば,どうしても紙の手帳が必要になります。(中略)「即時対応可能性と一覧性」という2つの点において,紙を超える装置はいまだに登場していません。(p237)

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