書名 サキャ格言集
訳者 今枝由郎
発行所 岩波文庫
発行年月日 2002.08.20
価格(税別) 560円
訳者は「フランスのラ・ロシュフーコーの『箴言集』と比肩して遜色ないであろう」(p206)というが,ロシュフーコーの小気味良い辛辣さはサキャにはない。ロシュフーコーは人間の狡猾さや間抜けさを個別に取り出して,これでもかというほどに晒してみせるのだが,サキャは処世術をあれこれと語っているような印象を受けた。
● 格言集から転載するのもなんだけども,いくつか引いておく。
人は医大な人の欠点を探すが 劣った人の欠点は探さない。(p30)
心にねたみを持つ愚者は 害を及ぼす前に態度に表す。(p38)
愚者がためになると思ってすることは とんでもない害になる。(p73)
悪人はどんなに矯正したところで 本性は善くならない。(p81)
一般に人は自分と同じものに邪魔される。(p95)
慈しみが過ぎると 憎しみのもとになる。世間の争い事の多くは 親密さから生じる。(p100)
人は長寿を願いつつ 老いを恐れる。(p119)
悪い池に水がたまると どこかで決壊する。金持ちになって 続く家系は稀である。(p129)
未来のことは考えないで 起きた時に努めて対処する。川に出くわせば靴を脱ぐが 出くわす前からどうして脱ぐか。(p131)
敵に害を与えたいなら 自分が功徳を積むことだ。敵は嫉妬で心を焦がし 自分は福徳が増える。(p148)
慈しみに満ちた言葉を言うことはたやすくて 人を集め喜ばせる最上の方法だ。財産で誰を満足させられようか。身命を捨てても半分の人も満足しない。(p172)
貯めた財産は蜂蜜のようで いつかは人が取って行く。(p176)
敵は害をなすから征服すると言うのなら 自分の怒りこそ征服せよ。怒りは無始の昔以来 自分に対して無限の害をなしている。(p184)

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