2020年10月28日水曜日

2020.10.28 今枝由郎訳 『サキャ格言集』

書名 サキャ格言集
訳者 今枝由郎
発行所 岩波文庫
発行年月日 2002.08.20
価格(税別) 560円

● 本書の著者,サキャ・パンディタは13世紀のチベットの人。学者であり政治家であったそうだ。
 訳者は「フランスのラ・ロシュフーコーの『箴言集』と比肩して遜色ないであろう」(p206)というが,ロシュフーコーの小気味良い辛辣さはサキャにはない。ロシュフーコーは人間の狡猾さや間抜けさを個別に取り出して,これでもかというほどに晒してみせるのだが,サキャは処世術をあれこれと語っているような印象を受けた。

● 格言集から転載するのもなんだけども,いくつか引いておく。
 人は医大な人の欠点を探すが 劣った人の欠点は探さない。(p30)
 心にねたみを持つ愚者は 害を及ぼす前に態度に表す。(p38)
 愚者がためになると思ってすることは とんでもない害になる。(p73)
 悪人はどんなに矯正したところで 本性は善くならない。(p81)
 一般に人は自分と同じものに邪魔される。(p95)
 慈しみが過ぎると 憎しみのもとになる。
 世間の争い事の多くは 親密さから生じる。(p100)
 人は長寿を願いつつ 老いを恐れる。(p119)
 悪い池に水がたまると どこかで決壊する。
 金持ちになって 続く家系は稀である。(p129)
 未来のことは考えないで 起きた時に努めて対処する。
 川に出くわせば靴を脱ぐが 出くわす前からどうして脱ぐか。(p131)
 敵に害を与えたいなら 自分が功徳を積むことだ。
 敵は嫉妬で心を焦がし 自分は福徳が増える。(p148)
 慈しみに満ちた言葉を言うことはたやすくて 人を集め喜ばせる最上の方法だ。
 財産で誰を満足させられようか。身命を捨てても半分の人も満足しない。(p172)
 貯めた財産は蜂蜜のようで いつかは人が取って行く。(p176)
 敵は害をなすから征服すると言うのなら 自分の怒りこそ征服せよ。
 怒りは無始の昔以来 自分に対して無限の害をなしている。(p184)

0 件のコメント:

コメントを投稿