読書で人生が変わるなどということは,まずもってないものでしょう。読書が人を賢くすることも,たぶん,ないと思います。 読書は安価でお手軽な娯楽であり,時間消費の手段です。それでいいというより,娯楽でない読書は可能な限り避けたいものです。 娯楽としての読書があれば,老後もなんとかしのげるのではないでしょうか。というか,しのげると思いたいわけですが。
2013年3月25日月曜日
2013.03.23 早坂 隆 『僕が遍路になった理由』
書名 僕が遍路になった理由
著者 早坂 隆
発行所 連合出版
発行年月日 2000.12.05(新装版 2009.02.28)
価格(税別) 1,700円
● 著者が大学4年の夏に体験した四国遍路を本にしたもの。「野宿で行く四国霊場巡りの旅」という副題のとおり,野宿をメインにして,ときどきユースホステルや民宿に泊まりながら八十八ヵ所を歩いた。
ユースホステル部に所属して,しばしば国内外に行っていたらしいから,その延長に四国遍路があったのかもしれないが,なぜ四国に出たのかは,最後まで説明されない。なんとなくだったのかもしれない。
● 面白くて一気に読めた。理由はふたつ。
ひとつは,内容の面白さ。いかにも青春っていうか,青春という単語からぼくらが想像するイメージにピッタリはまっているっていうか,若さが爆発していることによる面白さですね。
この遍路をしている最中の著者は,就活に励んでいる同級生を尻目に,それに背を向けて四国を歩いているわけで,青春どころではなかったかもしれない。でも,そこを含めて,いいぞ,青年,って声援を送りたくなるわけね。
● 当然,こういう青春のモニュメントを建てることができた著者に対する羨望の念もある。オレには何にもなかったぞ,っていうね。大方の人はそうだと思う。就活にいそしんでいる同級生の側に属するわけですよね。要するに,その時々の多数派。
著者はそうではなかった。多数派に属さないって,できそうでできないからね。たいていの人は,いい大人になっても「茶の間の正義」を得々と語ってやまない,見にくい多数派に甘んじているもんね。しかも,その自覚なく。
● もうひとつは,文章の素晴らしさ。本書の初版は,四国を歩いてさほど期日が経過していない間に出版されている。このときの著者は20代半ばか。
それでこういう文章が書けるとは。文才ってことになるんでしょうかねぇ。大学を卒業したあと,著者はルポライターになったわけだけども,なるほどと思いますな。
● だいぶ前から,四国八十八箇所を歩いて回る,歩き遍路が増えているらしい。本書のほかにも,その体験記がたくさん出版されているし,ネットにはさらに多くの体験談が綴られている。
じつは,ぼくも10年くらい前から,機会があれば四国を歩いてみたいと思って,その何冊かを読んだことがある。それぞれに面白いのが不思議。
● でね,わが地元にも「那須三十三所観音霊場」というのがありましてね。四国に行くのは叶わないとしても,せめて地元の観音霊場くらいは歩いてみようと思って,10年前に,休日を利用して巡礼の真似事を始めてみたんですよ。
が,3分の1ほど廻ったところで挫折。そのまま今日に至っている。自分の不甲斐なさを棚にあげて申しあげると,この観音霊場が場として弱いんですよね。
廻っている人があまり(というか,ほとんど)いないわけです。札所のお寺にしても,巡礼者がいるなんてあまり想定していないようでもあった。
そこを歩いて廻るのは,何ていうか,妙に目立っちゃって(自意識過剰か),歩いているところからしてすでに居心地が悪かった。
● 近い将来,老いをひきずりながら四国を歩ければなぁと思うんですけどね。
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