著者 櫻井秀勲
発行所 東京堂出版
発行年月日 2012.10.30
価格(税別) 1,400円
● 副題は「ひとつの才能では,もう伸びていけない」。と言われると,そのひとつの才能も持っていない人は途方に暮れるだろう。つまり,圧倒的多数が途方に暮れる。
ぼくはもう長く生きる必要はない年齢になっているので,気楽といえば気楽なものだが,若い人たちは大変な時代を生きて行かなければならないのだなぁと思った。ため息が出そうだ。
● でもね,ぼく自身の経験からいうと,20歳まで無事に生き延びてきたのなら,おそらく何とかなるよ。社会人になってから,20歳になるまでに味わった苦悩に勝る体験をすることは,たぶんないんじゃないかなと思う。
学校より職場の方が楽だ。ぼくはサラリーマンの世界しか知らないんだけど,あえてそう断言してしまおう。
● 理由は3つある。ひとつは,同級生かせいぜい前後2年の幅しかない世界から,数十年の幅がある世界に出るということ。後者の方が楽なのだ。
もうひとつは,会社より学校の方が閉鎖性が高いことだ。会社の方が息抜きできる。最近はそれがしづらくなる傾向にあると思えるんだけど,それでも学校に比べれば自由がきく。
そして最後に,学校(特に高校)に比べると,暇ができるということ。大学でも部活なんかやってた人は,サラリーマンになると暇ができたと思うだろう。意外に思われるかもしれないけれど,そうなのだ。ただし,結婚して子どもができると,状況は一変するんだけどね。
● だから,あまり怖れない方がいいのだ。仕事をするのに頭は要らないと思ってもらいたい。どんな仕事でも,仕事じたいは単純作業の組合せでできていると考えて,まず間違いはない。
出世したいとか,人の上に立ちたいとか,仕事を生きがいにしたいというのであれば別だよ。たんに仕事をするだけなら頭は要らないんだよ。
● とはいっても,ぼくの過去の経験は,これからの役には立たないだろうな。本書の著者は80歳を越えている人だけれども,雑誌の鬼編集長を経てきている人で,大過なくというのとは対極にある密度の濃い人生を生きてきた人だ。しかも,80歳を越えてなお現役だ。
本書から示唆されるところは多いと思う。どうやって仕事を見つけるか,会社でどう泳いでいくか,何が仕事の役に立つか,どうすれば異性にモテるか,上司の覚えをめでたくできるか・・・・・・などなど,多くの経験知に触れることができるだろう。
● 以下に多すぎる転載。
私が信じられないのは,なぜ学生たちがそのとき絶好調の企業に就職したがるか,という点です。「上がれば下がる」という原則を考えれば,下手をすると,将来,自分が役員になる寸前に,潰れる危険性だってあるからです。それに,そういう企業,業種には最優秀のメンバーが行く可能性が高く,二流,三流校出身者では歯が立ちません。また,そんな簡単な原理がわからないようでは,どの道,成功するなど,不可能でしょう。(p17)
それも日本だけでなく,外国の裏通りに,将来注目されるような事業が転がっている,ともいわれています。(p19)
私の経験では,週刊誌が一週間に必要なテーマは,最低五〇本です。テーマの大小は問いません。(中略)これはどういうことかというと,現代人は普通ならば,それだけのジャンルの話題を必要としているのです。(p20)
ここが重要なのですが,雑学は女性のほうが,はるかにたくさん持っている,ということです。(中略)その理由は,男は好きなタイプを決めているのに対し,女性は常に新しいタイプの男性から誘われるからです。(p35)
人生で最も重要な点は,目標をはっきりさせることです。結婚してもいいし,しないでもいい,と思っていたら,最良の結婚相手を逃がすに決まっています。(中略)何事にも中途半端な人は,自分自身に自信がないのです。(p35)
人にかわいがられるには,かわいがられるだけの理由が必要です。無芸大食,無芸多飲でかわいがられることはありません。(p45)
私は東京下町で育ったことから,町の老人たちに将棋を仕込まれたことが,大きなプラスになりました。(中略)私の失敗は,茶の湯を学ばなかったことでした。もちろんいまからでもいいのですが,茶の湯を知っていたら,もっと人脈が広がったものをと,残念でなりません。(p45)
いまの若い人たちは,先憂後楽型ではありません。「若いうちに苦労を体験するから,あとで安楽になれる」といったことをいっても,笑われるだけです。(中略)若いうちに,できるだけ先に楽しんでおこうというわけで,私はこの生き方に大賛成です。(p48)
うまく若者を使えない人たちは,彼らの信頼をかち得られないのです。(中略)こちらが信頼しないことには,彼らも信頼してくれません。(p49)
この先楽型の若い男女とつき合うからには,こちらも相当幅広い知識を知っていなくてはなりません。明石家さんまは現在五七歳です。それでいて若い芸能人たちを,自由自在に操る芸は,天才といっていいでしょう。私が驚くのは,その知識の豊富さです。実によく勉強しています。(p50)
スペシャリストは女性が断然有利であって,もともと男には向きません。スペシャリストとは,基本的に守備型であって,それ以外に目を向ける必要がありません。(p55)
大量入社させる仕事は,誰でもできるものであり,あなたでなくてもいいのです。ということは,入社一日目からリストラ候補だ,と思わなければなりません。中でも男女が交じっている職種は,男子が圧倒的に不利です。(p56)
男はもともとサラリーマンになるのを当然と思っていますが,女は個人能力を優先します。(p57)
女性には敵も味方もなく,華やかな能力の男に引き寄せられる習性があります。なぜなら自分を華やかにしてくれる実力があるからです。(p57)
それは男という生きものが,大から小を考えるのに対し,女性は小から大に上がる種族だからです。これを総体(大)から主体(小)と考えてもいいでしょうし,理論と実際と分けてもいいでしょう。これをわかりやすくいうと,男は「会社へ出かけて行く」と考えるのに対し,女は「会社から帰る」ことを主眼として考えます。(p60)
女性の活用法について,ときどき他人の講演を聞くことがあります。ところが(中略)女性の目を輝かせられません。その理由は,会社側にとってプラスの話ばかりであり,そんなことを毎日していたら,自分の家が崩壊してしまいます。そこで「ワーク・ライフ・バランス」の問題になるのですが,私にいわせると「ライフ・ワーク・バランス」でないと,女性は興味を持ってくれないのです。(p61)
三〇分で少なくとも二,三回は女性を笑わせなければダメです。女性を笑わすことができる人は,どんな仕事でも上に立つことができます。(p61)
いまの世の中,どんなに実力があっても,誰かの助けを借りなければ,なかなかうまくいきません。(中略)私は若い頃から「櫻井牧場」という名称で,八人の女性を身近に置いています。それぞれ仕事や職業,それに年齢が違いますが,彼女たちの知識力情報力によって,編集長生活を無事つとめることができました。学生,OL,主婦,デザイナー,海外航空CA,銀座ホステス,女優,それにもう一人は,その時代のトップ職業の女性を入れていましたが,これだけの女性たちから集まってくる最新情報は,私を大きく助けてくれただけでなく,トップ週刊誌の編集長にまでもち上げてくれたのです。(p62)
女性にいわせると「男はなんでも広がりのあるほうがいい」ようです。人脈はもちろんですし,話題もそうです。食の趣味はなお一層,広い男性が歓迎されます。和食しか食べない,といった男たちは,必ず敬遠されます。(中略)私は自分でいうのも気が引けますが,高年齢になっても,女性にモテます。若い時期と同様,八〇歳を超えていても,モテ方は衰えていません。それはなぜでしょうか? すべてに広いからです。女性の希望であれば,自分の気に添わなくてもOKしますし,なんでも許容します。自分から「イヤだ」とは,まったくいいませんし,むしろ初体験を歓迎します。(p67)
女性は経験しないものを経験したい,という生きものなのです。その点では,男と較べものにならないくらい大胆ですし,勇気があります。(p68)
一カ国語に堪能になるよりは,ちょっぴりずつでもいいですから,三カ国語,四カ国語をしゃべれるほうがいいでしょう。(p79)
私はどちらかといえば,(フェイスブックで)積極的に発信している一人です。その理由は,バーチャルであっても,多種多様な人たちと接触することで,新しい考えがわかりますし,ときに熱烈なファンになってくれる人たちもいるからです。またどのくらい私の原稿を読んでくれるのか,さまざまな実験を行うこともできます。(p87)
私はこのフェイスブック上では,相当時間を費やしています。私自身の経歴,考え方,人脈を知っていただくために,毎日,書きつづけています。それが面白いと,大勢の固定ファンがついていますが,これがいわば名刺代わりになっています。(中略)それと同時に,息子や娘たちにも,父親の生きざまを知ってもらうことにもなるのです。(中略)また面白いことに,息子や娘の友人たちともつながることにもなり,異世代,異性という新しい人脈を広げることにもなるのです。(p150)
私の長年の経験では,現実の世の中では,意外に臆病な人が多いのです。(中略)こういった人たちにとって,バーチャルな世界は,住み心地がいいはずです。(p88)
ある投資家と話していたら「一〇年ほど前に郵便貯金の定期に預けていた人が,一番儲かっていた」と笑っていましたが,金儲け本の著者の現実は,それどころではありません。本は売れても,投資した金はスッカラカンになっている,という泣き笑い状態なのです。(p89)
私は彼女(佐藤綾子)としばらくの間,一緒に仕事をしたことがありますが,いつも笑顔でいる点に感心しました。笑顔を絶やさないのです。これは日本人のように,顔の表情を動かさない民族にとって,とても大事なことだと私は思ったものです。(p92)
「なんでもすぐやってみる」というスピード性は,あらゆる分野,あらゆる業種に通じます。答えが一日でも一時間でも早く出るほうが,失敗の確率が少なくなるからです。(p128)
「流行の法則」には- 一年後-みずぼらしい 一〇年後-みにくい 二〇年後-こっけいだ 三〇年後-オモシロい 五〇年後-古風 一〇〇年後-ロマンチック 一五〇年後-ビューティフル という順序で評価されるようです。(中略)これは社会は循環していることを暗示しています。(p128)
私としては,酒を飲んでムダなおしゃべりをするくらいなら,その分を読書に回すほうが,必ずプラスになると思うのです。いや,読まなくてもいいのです。不思議なことに,背表紙の題名を見ているだけで,情報が目から入っていきます。もしその上に帯の文字を読めば,半分くらい読んだつもりになれるかもしれません。それくらい有効です。(p132)
作家で大成するには,主人公などの会話が面白くなくてはなりません。私は多くの作家を育て,付き合ってきましたが,例外なくそうです。その理由は,会話には雑学が入る率が高いからです。それが時代背景を表す場合もあり,作家本人の生活であることもあって,会話の面白さが,作家の教養や知性の深さを表すからです。(p137)
勉強でも資格でも,できるだけ変わったものに挑むほうがいいように,私は思います。そもかく多くの人の視点とは異なる方向に,目を向けることです。(p141)
なにか突出した力をつければ,人脈は大きく広がるでしょう。それによって,多彩な人々と交わる可能性が生まれてきます。(p145)
「念ずれば花開く」という言葉がありますが,私はこれを「常念必現」という四文字にして,座右の銘にしています。思いつづけていれば必ず実現することは,私の六〇年間のビジネス人生が証明しています。(p147)
「秘密を持つ」ということは,大人になるということであり,だからこそ,性格に深みが出てきます。(中略)私の経験では,妻に隠れて遊んでいる男には,それなりの魅力がついています。それは,女性心理,妻の心理を,しっかり陰で勉強しているからです。(中略)隠しごとを持たない生活は,きびしくいえば,人生をサボっているのです。浅い人間,話のつまらない男は,結局,淘汰されていくと,私は思っています。(p152)
ズバリいうと,失敗談を堂々と話せる人ほど,いい人脈を持っています。ある年齢になると,失敗を隠して,成功談ばかり話す人は,信用されなくなります。なぜなら,そんな人生はあり得ないからです。(p153)
以前,ある高僧に教えられた中に「姿勢が大事」という一項目がありました。やる気のある人は姿勢がいい,つまり姿の中に勢いがある,というのです。椅子の座り方にかぎらず,立つ姿勢も同じであって「勢いを感じさせなさい」という教えは,いまでも私の中に生きています。(p163)
現在,女性たちの社会進出はまだまだ上昇中で,中でも三〇~三四歳は,きわ立って元気です。ところが女性たちの潜在能力は? というと,それほど高くありません。(中略)性差学的にいうと,守備型だからです。自分の主義範囲は完璧にこなしますが,範囲を超えたものには興味を示しません。実際には潜在能力はたくさんあるのですが,女性特有の「成功への恐れ」が出てしまうのです。(中略)あまり仕事ができてしまうと,男性からよく思われない,という恐れです。(p171)
私には一つだけ,大げさにいうならば「人生哲学」というべきものがあります。それは「人間に備わっているものは,すべて死ぬまで使いつづける」という考え方です。足にしても,幸いにして二足揃っているならば,歩くべきであり,できれば走ることも厭ってはなりません。(p190)
歯がなくなって,しゃべれないというなら,安い入れ歯にせよ,入れるのが人間の尊厳を守る義務だと私は思っています。(p190)
照明が暗すぎるから,華やかな色彩が生きないのです。死ぬまで,自分に備わっているものを使い切るには,環境をにぎやかにしておく必要があります。(p192)
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