著者 外岡秀俊
発行所 河出書房新社
発行年月日 2015.09.30
価格(税別) 1,300円
● 河出書房新社の“14歳の世渡り術”の中の1冊。中学生でもわかるように書けとは,本書にも出てくる言葉で,よく使われるけれど,中学生をなめちゃいけないやね。
“中学生でもわかるように”とは,“アンタじゃわからないかもしれないけど”の後に続く言葉かもしれないねぇ。
● 内容は,「ジャーナリストの心構え」とでもいうべきもの。たとえば,ブログやSNSのPVを増やしたいと思って,本書を読んでもあてが外れるだろう。
著者は新聞社に長く勤務した人だけれども,ここに書かれているとおりに仕事をしている記者がさてどの位いるのかという問題は,別途,存在するだろうね。
● 以下にいくつか転載。
どんな人でも,一日に何度か,喜怒哀楽や驚き,興味を感じることがあるでしょう。その心の変化や気づきをそのままにせず,掘り下げていく。それが,私のいう「自分の井戸を掘る」作業なのです。(p15)
記者の当時,先輩からこういわれたことがあります。「大切なのは,『エッ?』と『へーえ』なんだ。それを『そうなんだ』と納得してもらうのが新聞記事だ」(p15)
いつも自分を起点に「問題意識」を持って自力で情報を集める。それだけが,ほんとうに「知恵」が身につく方法なのです。(p28)
一冊の本には,ぼうだいな時間と労力が注ぎ込まれています。著者が下調べをし,データを取捨選択して組み立て,編集者がわかりにくい点や間違いを指摘して,はじめて本が生まれるのです。いってみれば,さまざまなデータの流れを一つの場所でせきとめ,豊かな水をたたえるダム湖のようなものです。データの海におぼれないためにも,その保水力を利用しない手はありません。(p34)
百科事典は基本書の中の基本なので,執筆者は多数の本を読み,間違いがないかどうかを確認します。それだけで,項目ごとに一冊の本が書けるほどの労力を注いでいます。いわば知識の一番搾り,「知のエッセンス」といってよいでしょう。(p37)
図書館にあってデータベースにないもの。それは,こうした道草で起きる思いがけない「出会い」です。(中略)検索エンジンは,キーワードによって,最短時間に最短距離で探しているものに行き着く道具です。しかし,図書館で開架図書を眺めるのとは違って,余計なものや「遊び」を排除してしまいます。いわば,自分に関心のあることにしか,関心が向かない。裏を返せば,関心の幅を広げることには不向きな道具なのでしょう。オリジナリティ(独創性)をはぐくみ,実らせるのは,検索したデータの積み重ねというよりは,こうした偶然の出会いや,「ひらめき」にあることが多いのです。(p40)
どうすれば,「情報通」になれるのでしょう。答えは,「人に聞く手間を惜しまない」という言葉に尽きます。(中略)人と話すことを好きになる。それが,「情報通」になる秘訣です。(p61)
すでに書かれた情報を頭に入れて現場に行くと,その情報に沿ったものしか見えない,ということが起こります。(中略)自分で「仮説」を立てて現場に行くと,その「仮説」では説明できないこと,「仮説」に反することが見えてきます。「仮説」が裏切られたら,それがニュースなのです。(p67)
論説委員室では毎朝,二十人以上の論説委員が集まり,翌日に掲載する社説のテーマについて話し合いをします。(中略)その話し合いの結果をまとめて「社説」とします。おおぜいの討論の結果をまとめるので,「社説」には署名がありません。(p176)
直感で思ったことを先に言い,そのあいだに,「なぜそう思うのか」を考え,話しながらまた考える(p178)
コミュニケーションとは,この「熱意」と「誠意」のやりとりのことだと思います。ですから,コミュニケーションの力をみがく一番の方法は,技をみがくことではなく,自分に素直になり,相手に伝える熱意を持ち,誠意をもって表現することです。(p182)
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