2021年10月9日土曜日

2021.10.09 島田潤一郎 ほか 『ブックオフ大学ぶらぶら学部』

書名 ブックオフ大学ぶらぶら学部
著者 島田潤一郎 ほか
発行所 夏葉社
発行年月日 2020.11.05
価格(税別) 1,300円

● ブックオフは最近まで利用したことがない。本を売ることはないので(本を処分するときはゴミステーションに出すか,地元図書館のリサイクルコーナーにそっと置いてくる),売り手としてブックオフを訪れたことはないし,買ったのも一度か二度あったかどうか。
 ぼくにも年に100万円を本代に使う若い時期があったのだが,その頃はブックオフはなかったのだし(ブックオフの創業は1990年),中年以降は本を買わなくなった。もっぱら図書館で借りて読むものになってしまったからだ。

● たまに買うときも駅ビルの新刊書店を利用することが多い。ブックオフは以外に遠い存在だった。
 が,最近,新潮文庫の宮沢賢治本を買おうとして,わが家から一番近い氏家のブックオフに行った。そこにあるのは買ったけれども,ないのもあったので,川崎や錦糸町のブックオフも覗くことになった。

● というときに本書を見つけた。タイトルも秀逸というか,惹かれるものがあった。読み始めると面白くて,一気通貫。

● 以下に転載。
 日本中になぜブックオフがこんなにもあるのか。そのこたえはいたって単純だろう。ブックオフが大量生産・大量消費の申し子だからだ。本がたくさん売れ,CDがたくさん売れたから,部屋に収まりきらない本とCDが売りに出される。(p3)
 今,モノを書く人間になり,同業者を見て,「なんで,必要な本ばかり読んでいるんだよ」と心の中でちょっぴり憤る。不必要な本を買い,不必要な本を読もうよ,と思う。(p7)
 ブックオフにあり,新刊書店や目利きのいる古本屋には無い点とは何か。「本のことをよくわかっていない人が,これはたぶんこっちじゃないかと並べてみちゃった感じ」である。(p10)
 ちょっとした郊外で,「今日のうちに岩波文庫のアレが欲しい」となれば,ブックオフがもっとも便利だ。ちくま学芸文庫でも,講談社学術文庫でも同様。(p12)
 新刊書店は体調が悪くても楽しめるが,ブックオフは体調が悪いと楽しめない。(p13)
 ブックオフはCDだけじゃなくて,本もDVDも全部そうやけど,均一以外の商品は意外と値段が高いんですよ(p21)
 ブックオフの魅力って,やっぱり圧倒的な在庫量と幅にあるわけです。(p29)
 東京のブックオフはやっぱりレベルが違いますよね。(中略)そんだけ東京では本が回転しているんだなあと(p31)
 いちばん集中して見るのは,作家別に並んでいる棚が終わったあとの出版社別の棚。(p32)
 ぼくは珍しい本を探すっていうんじゃなくて,純粋に読む本を探しているから,飽きないんだと思いますよ。(p35)
 相場より安いという理由で買った本って,たいてい読まないんですよね。(p36)
 少し前までのブックオフは,本を半額で売っていました。(中略)ブックオフはどんな素人でも買取と値付けができるシステムを作り上げました。本の値付けが面倒なら,いっそのこと値付けをしかねればよい。そんな発想の転換を店舗経営の場に落とし込んだのが,「本半額」システムです。このシステムは,本を定価の一割程度で買い取り,定価の半額で売るという単純明快な図式です。(中略)細やかな値付けが必要になる古い本は最初から買取せず,扱うのは新しい本だけ。(p62)
 ブックオフの買取基準は「きれいかどうか」のみで,古く汚い本は廃棄していたと言われています。(中略)「きれいかどうか」の買取基準では,古本愛好家が喜ぶような稀覯本が入荷する確率は著しく低くなります。そのため,古本好きだけではなく,かつての目利き系せどり師もブックオフを軽視していたと思われます。(p69)
 当時のブックオフはセールの旨味に溺れていた感があります。セールを乱発しすぎれば,セール以外の日は買い控えて,セールの時にだけせどらーが押し寄せるのは自明の理です。(p97)
 本は読むために買っているのだという原則を私はどこかで守ろうと考える人間だが,読みたい本を見つけるのではなく,じつは,見つけた本を読んでいるにすぎない。(p124)
 私はよく見かける。たかが百円の本を買うのに何時間も迷った挙げ句,やっぱり買わないおとなを。子どもでなくなった今でも,子どもの頃の金銭感覚を維持している。そのようなおとなは案外といるもので,私もそのひとりである。(p126)
 お前,どうやら四刷なんだってなあ。そんなに刷られて,いったい誰に読まれたかわかったもんじゃないぜ。きっと,陳腐なことしか書かれてないのだろう,お気の毒に。(中略)珍しい本たちはひそひそ話を始めるだろう。あれは馬鹿が読む本だと。ありふれた本にとっては青天の霹靂であった。俺は馬鹿が読む本だったのか。(中略)馬鹿に読まれるくらいなら,俺なんて出版されてこなければよかったんだ。(p131)
 ほかのお客様のご迷惑となりますのでご遠慮ください。(中略)実際は店が迷惑なのに,それをほかのお客の迷惑になるとはなんだ。(p140)
 ブックオフの醍醐味は量が多いことと,もし欲しい本があったらそれは確実に定価以下で買えるというところにあると思います。(p151)
 たった一冊の本がその後の人生に大きな影響を与えることがあります。その可能性がどの書店よりも高いのがブックオフだと言ってもいいかもしれません。なにしろ店舗数が多く取扱いジャンルも幅広いですから。(p157)
 ぼくと同じように学校にも仕事にも行っていなそうな人を見るとほっとした。(中略)ブックオフはまるでセーフティネットのようだった。社会に行き場のない人たちが集い,カルチャーをなんとか摂取しようとしていつまでも粘る場所。(p165)
 お金さえ潤沢にあれば,こんなにブックオフに嵌まらなかったかもしれない,と思う。人生が順風満帆に進んでいれば,こんなにも本にCDに心を預けることはなかったかもしれない。でも人生はうまくいかなかったし,たいてい喜びよりも悩みのほうが多かったから,ブックオフに通った。(p168)

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