書名 めざせ,命日が定年
著者 弘兼憲史
発行所 幻冬舎
発行年月日 2020.04.15
価格(税別) 1,100円
● また読んでしまったよ,弘兼憲史さんの老人向け生き方本。この人,若いときから人生論,仕事論の本をたくさん書いている。自分から望んだのではなく,出版社からのリクエストに応じてきただけのことだろうけど。
老いてから弘兼さんの説くようにできる人は,老いる前にも弘兼さんの説くようにできていた人なんだろうかな。
● たぶん,人は脱皮できるのだと思う。しかし,それができるのは何歳までだろうか。60歳になっても70歳になってもできるとは思えない。
定年を迎えた時点で,定年後の人生がどんなものになるか,その勝負は決している。定年になってからバタバタしても手遅れだ。こうした本も定年後に読んでも遅い。
● 副題は「終わり笑えばすべてよし」。憶えておきたい言葉でしょ。あるいは,頼りたくなる言葉でしょ。
生涯現役のすすめであるわけだが,現役の内実は仕事でなくてもいい。遊びでも何でもいい。時間をうっちゃるのではなくて,世間や家族のためではなく,自分のために楽しく過ごす術を持て,というのが本書の説くテーゼ。
● 以下に転載。
人生はあるがままに生きて初めて輝きます。(中略)本当の人生は,むしろ定年後に始まると言っても過言ではありません。(p4)
人間には,生まれたら必ず死ぬというプログラムがある。僕らはみんなそのプログラムの中で生きている。老いるということは,そのプログラムの最後の到達点に向かって,着実に歩を進めているということである。(p14)
僕は「何かを成し遂げる人は年齢に関係なく何かを始める人」だと思っています。当たり前の話だけれど,何かを成し遂げるには何かを始めないといけない。(中略)会社のためでも家族のためでもなく,自分自分のために何かを成し遂げてみせる。おれは高齢者になったからこそ与えられる,大きなチャンス,大きな楽しみの一つなんじゃないでしょうか。ただし,チャンスはじっとしていたら掴めません。(p23)
立てていた計画を修正するって,ものすごいエネルギーがいります。精神的にかなり疲弊します。そんなことになるくらいなら,最初から予定なんて立てずに,「先はどうなるかわからないけれど,まあまあ行くところまで行ってみよう」くらいの感じでいたほうが,ずっと楽に生きられるんじゃないでしょうか。(p27)
人生というのは,逆らったところでどうにもならない,だからムダに考えすぎちゃいけない,ケセラセラ,なりゆきまかせでいいんだよ,ということだと思うんです。(p28)
先のことはあんまり考えない。でも,今目の前にある仕事については考えて考えて考え抜く。(中略)むしろ計画がないからこそ全力投球できるというのが,僕の率直な感想です。(p28)
叱るって,エネルギーがいるでしょ。(中略)僕の場合,叱る前に必ず30分くらい,あれこれシミュレーションして考えるんですよ。で,いろいろ考えるうちに,疲れちゃって,面倒臭くなっちゃって,結局叱らないで放っておく,となってしまう。(中略)年がいったら,エネルギーを使って消耗してくたびれるようなことは,できるだけ避けるに限りますよ。(p35)
いくら一人でがんばったって,周囲からの応援がなければ何も始まらない。声援を得られるような言動を身につけて初めて,議員なり何なりになれるわけですよね。(中略)結局人生って,ある意味すべてが人気投票だと思うんですよね。(p38)
僕の知る限り,成功者になって第一線を走り続けている人は,みんな概ねいい人です。コンプレックスや欠点もあるのでしょうけど,それを感じさせない,おおらかさや朗らかさがある。(p41)
そういう時って,あまり深く考えないほうがいいです。大事なことだから真剣に,失敗できないから慎重に,と思う気持ちもわかりますけど,深く考えすぎるとかえってうまくいかないということもあります。(p46)
反省するのは悪いことじゃないんですけど,そこにずっとこだわっていると,次もまたうまくいかなくなる。(p48)
「失敗したらどうしよう」じゃなく「失敗してもいいや」で振り切るのがいいんです。(p49)
特に年がいったら,ムキになるより頭下げたほうがスマートですよ。(p53)
蓄えも年金も十分にあって,働く必要がなかったとしても,ゴロゴロしてちゃいけません。何かしら打ち込めるものを見つけたほうがいいんです。イキイキやれるなら,仕事でなくてもいい,遊びだって構いません。(p57)
一人暮らしってやっぱりいいですよ,最高ですよ。本当に,これほどいいものはないって心底思いますよね。(p68)
ただ,一人ぼっちで引きこもってしまうような一人暮らしは,やっぱりよくないですね。コミュニケーンをとるのがイヤで,とことん人を避けて暮らす。そういう極端な一人暮らしだと,むしろ人に迷惑をかけてしまうことになりかねません。(p70)
見栄も世間体もかなぐり捨てて,一人で楽しいことをしたらいいんです。(p71)
一度上げた生活はなかなか下げられないとか言いますけど,ンなもん,いくらでも下げられます。「金がないんだからしょうがねえな」って思うだけですよ。(p73)
「手持ちのものでどう乗り切るか」という考え方が身についていれば,何があってもなんとかなると思えます。(p74)
取り越し苦労に悩まされないためには,「何かあったらあったで,その時そこで考えればいいや」という胆力を養っておくこと。(p74)
自分で言うのもなんですけど,速いんです,仕事が。というか,せっかちなんだな。何ごとにつけても,決めたらさっさとやるのが僕の強みかも知れません。(p75)
漫画家ってこういう時,大人になれない人がとても多いんですよ。才能があるのに途中で終わってしまう人は,たいていそれです。編集者の意見を聞かないでごねたりする。これ,ものすごく損なことですよ。(中略)結局,実力一本の世界に見えて,マンガの世界も人間関係が重要なんです。なんだってそうですけど,一人でやれることなんて一つもない。(p77)
仕事に関しては一人でやるより,何人かいてワイワイやってたほうが,やっぱりはかどるんですよね。というのも,一人でやってるとどうしても怠けちゃうんですよ。(p78)
僕のオススメは,誰かと待ち合わせをした時に,約束時間の30分前に待ち合わせ場所い行くことです。で,その周りをちょっと歩いてみる。関心を持って眺めてみる。(中略)きっと面白そうなものと出会えますよ。(中略)待ち合わせ相手からは「30分も時間があったら退屈でしょう?」と言われますけど,とんでもない,30分家にいるほうがよっぽど退屈ですよ。楽しいことは,家の中より外の世界にあるんですから。(p83)
なかなか眠れなくてもちょっと我慢すれば,10分ほどでパタッと寝られるともいうんですけど,(中略)僕,せっかちですからね,10分じっとしてるのがダメなんです。(p89)
世の中腹を立ててもどうしようもない,抗ってみてもどうにもならないこともある。先に進むためには,潔く諦めることが必要な時もある。「まあ,いいか」は,前向きな意味での諦観でもあるんです。(p95)
好き勝手にするまって損をするより,周囲から好かれて助けてもらったほうがずっと得。謙虚になるということは,老後を生きる術の一つと心得て,「身勝手山」からは下りるべきなのです。(p103)
最近,シニアの間で「一人カラオケ」が流行っていると聞いたことがあります。と言っても,歌を歌うわけではありません。仕事をするための事務所代わりに使うのだそうです。(中略)でも,僕はやっぱりファミレスが好きです。(中略)一人こもって考えるより,大勢の中のほうがはかどるからです。(p110)
よくインタビューなんかで「この作品のメッセージは何ですか?」って聞かれますけど,ないんです,そんなもの。みんなほとんどないと思います。(中略)メッセージ云々ではなく,好きだから描いている。(p117)
ビートたけしも映画について同じような発言をしている。「メッセージなんてないよ! ジェットコースターに乗るのに理由なんてなくて,「面白い」からでしょ。映画はやっぱり面白ければいい」と。
普通の本ならたいていネットで買えます。(中略)絶版になってしまった僕の漫画もアマゾンで入手可能でした。ですから,本は一度読んだら捨てる。必要になったらまた購入する。そういう付き合い方で十分なんじゃないでしょうか。(p125)
あの良寛さんや一休さんも,70歳を過ぎて現役バリバリで恋愛を楽しんでいたそうです。良寛さんには貞心尼という尼さんが,一休さんには森女という盲目の恋人がいたのだとか。(p129)
女たらしの役をやらせたらピカイチと言われた,ある俳優さんの話です。彼,女性と一緒に寝ている時に「私と一緒に死んでくれる?」って言われて,すんなり「いいよ」って言ったんだそうです。なんの迷いもなく,堂々と。なんだかもうそれだけで,「うわぁ,すげえ」って思いますよね。(p136)
降りたことのない駅で降りて,その辺をぐるぐる歩いて,お寺や商店街なんかを見て回る。「これはいい」と感じた景色があったら,スマホやデジカメで撮ってみる。うまそうなうどん屋があったら,うどんを食って帰ってくる。これだけでも,立派に旅になるじゃないですか。(p164)
冒険しようとするなら好奇心が大事です。漫然とじゃなく,しっかり観察しながらものを見る。でないと,せっかくの風景も「なんだ,どこにでもあるものじゃないか」としか思えないですからね。(p166)
僕はツイッターとかインスタとか,いわゆるSNSというのは全然やりません。「自分の近況を人に知らせて何の意味があるんだ」と思いますし,そもそも忙しくてそんなことをしている時間がありません。(中略)最近は政治家も大統領もよくSNSをやってますけど,思うに,彼らはヒマなんじゃないですかね。(p175)
SNSなどやらなくても,自分の外に自分を押し出していく手段を持っているからってのもあるかもね。実際,SNSの世界でインフルエンサーと呼ばれる人たちはSNSがなくても困らないんじゃないですかねぇ。
会社のトップになる人ってキレイ好きな人が多いです。(中略)中には全然気にしない人もいますけど,きれいにしてる人と比べるとやっぱり野暮に見える。要するに本物の紳士というのは,公共の水回りも美しく使うということなんですよね。(p179)
僕の場合むしろ「俺にやらせてくれ」って感じなんですよ。何しろ動いてないと死んじゃう回遊魚だから,人の分まで動きたくてしょうがない。(中略)積極的に体を動かすのは健康にもいいです。手足や指先をこまめに使うのはボケ防止にもなります。そう考えたら,動くっていうのはじっとしているより得なことが多いはずです。(p182)
自分をよく見せたくて,服やアクセサリーにやたらお金をかけたがるお金持ちも多いですよね。でも,孫さんレベルともなるとまるで逆。毛玉ができたから新しく買い換えようなんて,そんなケチくさいことは考えない。毛玉を気にするヒマがあったら,新しい事業プランを考える。(中略)「お金があるからいい服を着よう」という発想が,もはやないんですよね。(p186)
僕の高校時代の恩師が,亡くなる直前,こんなことを言ってました。「自分はもうすぐ死ぬけど,死ぬ瞬間自分がどういうふうになるのか,ちょっと楽しみだ」(p202)
生も死も同じ人生の地続きだと考えれば,どう生きたかがどう死ぬかに結びつくことになる。結局僕らにできることは,どう死ぬか以前に,残された今をどう生き切るかということなんじゃないでしょうか。(p209)

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