書名 おくりものがたり
著者 伊藤まさこ
発行所 集英社
発行年月日 2014.02.28
価格(税別) 1,500円
● 「おくりもの」をもらったりあげたり。こういうのは文化なのだなぁと思う。で,自分はその文化をネグレクトしてきたなぁと思う。
贈答って苦手。もらうのもあまり好きじゃない。今風の世相にどっぷりと浸かってしまっている。
● 贈答は社交表現の代表例で,その社交をできれば避けて通りたいと思ってきた。畢竟,面倒だからですね。
あの人に何を贈ればいいかを考えるのが面倒だ。かえって邪魔になるかもしれない。迷惑かもしれない。そこを避けるには,相手の好みや生活の仕方を知悉していないといけない。
ところがどっこい,そこまでの興味と関心を,自分以外の人間に抱いたことがない。それが贈答嫌いの究極の理由かも。
● 自分のために時間と手間を使ってくれたというそのことがありがたいじゃないかとは,なかなか思えない。要らないものをもらったとき,ぼくは腹立ちを感じてしまう方だ。処分の手間が増えたじゃないかって。
自分がそうだから,人もそうなのだろうと思ってしまう。
● 結婚披露宴の引出物なんか,典型的にそうだ。新郎新婦の名入りの食器はさすがに使えないだろう。「寿」なんて文字が入ってしまったものもこれに準ずる。だいたいが,どの家にもモノが溢れてしまっている。もらっても置き場がない。
ああいうものはモノが稀少だった頃の習慣だ,よろしく廃止すべし,みたいな風潮がくすぶっているだろう。
● お土産というのも買わなくなって久しい。もらってもあまり嬉しくない。海外土産もそうだ。エッジウッドのコーヒーカップをもらってみても,こちらにも趣味というものがある。
その趣味を外さないためには,まさに針の穴を通すコントロールが要求される。つまりは,できないということだ。
● が,そういう間隙をぬって贈答が文化として成りたつことを,この本は教えてくれる。こうした文化を伝えるのは女性であることも。また,そうした文化に応えるもの作りを続けている人たちがいることも。
ただし,そのためには相当以上のセンスとていねいさと心配りが必要になる。自分にもそれがあると安易に思わない方が身のためだ。
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