著者 宮田珠己
発行所 旅行人
発行年月日 2003.06.24
価格(税別) 1,300円
● 宮田さんの比較的初期のエッセイ集。知的,技巧的,といった言葉が本書の形容としては相応しいだろうか。
知的だったり,技巧が見えてしまったりすると,意外に飽きられるのも早いのではないかという危惧もあり。
● 以下に転載。
最近知ったのだが栃木県の宇都宮はギョウザの町らしい。たまたま訪れる機会があり,宇都宮駅の売店のおばさんに,このへんでは一番と教えられた駅近くの店へ行ってみると,ギョウザの研究を一五年続けてきたという店で,ウナギギョウザとかワサビギョウザとか何でもかんでもギョウザ化していた。面白そうであり,さっそくあれこれ食ったら特にうまくなかった。 気を取り直して今度は逆に,焼きギョウザと水ギョウザしかないこだわりの有名チェーン店に行ってみると,行列になって期待したのに,食べるとまたもやうまくなかった。まずいとは言わないが,こんなギョウザならどこでも食えると思ったのである。(p28)栃木に住む者としては聞き捨てならない。とは思わない。しょせんは餃子,という言い方ははなはだ穏当ではないけれど,画期的に旨い餃子は食べたことがない。
が,「王将」よりは「みんみん」や「正嗣」の方が旨くないかい?
グルメはもともと食べるのが好きだから,食べてるだけでうれしいのであり,どうしたって食べ物に甘い。その点私は,食いたくないのに食っているので,まずいもの食うぐらいなら何も食わないという分別があり,舌が客観的である。(p29)
私はいつも何となく食っているだけなので,極端にうまいか極端にまずいものしか判別できない。したがって,その私がうまいと言うものは,本当にうまいのであって,さぬきうどんは,宇都宮のギョウザと全然違って真にうまい。(p29)ぼくも四国に住んでいたことがあるから,讃岐うどんの旨さは知っているつもり。初めて讃岐うどん を食べたのは,今は昔,宇高連絡船の立ち食いスタンドでだった。
立ち食いスタンドでも讃岐うどんは旨かった。“名物に旨いものなし”に例外があることを初めて知った経験だった。
が,讃岐うどんが例外なんだと思う。宇都宮の餃子に限らず,言っちゃなんけども,喜多方ラーメンも“まずいとは言わないが,こんなラーメンならどこでも食える”というものだったし,札幌ラーメンもそうじゃないか。長崎チャンポンもしかり。讃岐うどんが例外なのだ。
趣味ができないのは面白かったら腰を上げて突っ込もうと思っているからで,趣味なんか最初は面白くないに決まっており,少しずつ始めていたら面白いところまでちっとも到達しない。だからやるときは,ためらうことなくどーんと一気に駒を進めなければならない。(p32)
世界一周はもったいないというのが私の持論だ。(中略)いろいろな国や地域,そしてそれぞれの大陸の個性をじっくり味わって旅をするのが面白いわけだから,簡単に一周するのは雑だと私は思っているのである。(p81)
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