2018年3月26日月曜日

2018.03.26 茂木健一郎 『アタマがよくなる勉強会』

書名 アタマがよくなる勉強会
著者 茂木健一郎
責任編集 田原総一朗
発行所 アスコム
発行年月日 2010.04.02
価格(税別) 1,400円

● 茂木さんのような脳科学の研究者がなぜこういう本を出すか。しかも,茂木さんは矢継ぎ早に出している。その答えを茂木さん自身が語っていたような記憶もある。
 出版社にしてみれば,売れる目算を立てやすいからだろう。固定ファンが付いていて,この程度は売れるという目安が立つ。安心して出版できる。

● ぼくも茂木さんのその手の本をずいぶん読んできたけれども,本書はその決定版的な存在かも。

● 以下に転載。
 実は脳ブームには,安易な偽薬作りや偽薬売りみたいなものが多い。人びとが不安を感じている時代は,不安につけ込んで偽物がいろいろ横行しますね。脳ブームは,それに近い状態だと思うんです。(p16)
 大学が淘汰される時代とおっしゃったけど,大学それ自体には何の権威もないということが,みんなわかってきた。だから,どの大学も必死になっている。大学が権威にふんぞり返っていた時代よりいいでしょう。(p18)
 いろいろな方にお目にかかって,僕がああ輝いているなと思う人は,みんなフリーランスなんですよ。(中略)組織に守られている人は,かなりの部分時代遅れになっちゃっている。官僚やビジネスマンも同じで,かなりいい人でもほとんどそうです。この感覚が,僕の中に絶対的にあるんですよ。(p18)
 それなのに,日本の親たちが考えることは,いかに「百ます計算」をやらせて,わが子を一流中学に入れるか。いかに東大生の美しいノートの書き方をマネさせて,一流企業や役所に入れるかだけ。みんな沈みかけた船に必死で乗せようとしている。そのために脳をこう使えと,偽薬を売るヤツがいる。(p21)
 脳を成長させるのは,楽しちゃダメです。やっぱり脳に負担をかけることですよ。現実に立ち向かうのはつらいことだけど,それが脳をいちばん成長させます。(中略)それこそが「生命力」です。脳が喜ぶし,その人にとってもっとも価値のあるものを生み出すことにつながると思います。(p23)
 この本を読んだだけで万事わかったと思う人は,もうダメなんですよ。そんなはずはないだろう,もっと先があるだろうと思えるかどうか。ここが極めて重要です。(中略)この対談も,もちろんほかの僕の本も,書いていることは全部本当です。だけど,それを鵜呑みにすることは,頭がよくなることにあまりつながらない。本には手がかりやヒントが書いてある。それを自分なりに咀嚼し,自分に合った方法を工夫しないと。(p26)
 誰かの作ったパターンは,自分には必ず限界がある。パターンをあてはめるのは楽だけど,楽しちゃダメです。(p28)
 苦しいことや辛いこと面倒くさいことなどをいろいろやって脳内の快楽物質が出ると,その面倒くさいことで学習した内容がちゃんと定着する。しかし,麻薬で快楽を得ると,麻薬をやることしか覚えない。(p30)
 脳は暗示にとても弱いので,とにかく「大丈夫だ」「何の問題もない」と楽天的な暗示をかけること。(p33)
 脳に関するどんな本を読んでも構いませんが,自分で自分の責任が取れない人は,頭というか脳が伸びません。これは極めて重要なことで(中略)つまり,自分の意見を持ち,それを表明し,その結果を自分で受け止めることができなければ,頭はよくならない。脳は他人まかせではダメです。(p40)
 田原 そう。使えるネタや資料は限られている。昔はインターネットなんて便利なものもないし。自分の考えや経験をもとに,集中してダーッとやっつけるしかないね。 茂木 そんな「瞬発力」みたいなものが,僕は知性の本質なんだろうと思います。脳の本質,脳の本当の力と言ってもいいですね。(p51)
 ゲーム脳に関しては,僕はインチキだと思っています。IT時代に知能指数は上がっているという証拠もある。(p67)
 楽観的なときに脳がもっともよく機能することは,もともとわかっています。ただし,楽観とは「ま,何とかなるだろう。きっといい方向にいくよ」という,実は根拠のない自信ですね。裏付けに欠けた自分勝手な思い込みと言ってもいい。だから,その根拠なき自信を,自分の努力で裏付けなければならない。(p68)
 0.1秒くらいの間に,脳のかなり広い範囲にわたって神経細胞が一斉に活動します。その活動の結果,脳の神経細胞の結びつきのパターンが変化し,一瞬にして世界の見え方が変わり,新しい学習が成立している。これがひらめきです。パラダイムシフトが起こるような学習は,ひらめきが起こすんです。(p81)
 田原 一時パソコンでやろうとして書いてみたんです。でも,これは何となく違うなと思って,手書きに戻りました。 茂木 脳のためには手書きのほうがいいですね。(p84)
 日記を書くのは,脳にとてもいいことです。(中略)思い出そうとすればするほど,使えば使うほど脳にはいいんです。(p90)
 若いときのような意欲が出ないと嘆く人がいるけど,やる気や意欲は欠乏から生まれるわけで。(中略)やる気や意欲を出すには,自分には持っていないものがこんなにある,こんなに空白だらけだと認識する必要があります。高齢者がいかに意欲を保つかは,自分の経験をいかに捨て去るかと同じことだ,とも言えますね。(p95)
 鍛えれば鍛えるほど確かに脳は伸びていくんですけど,そのためには課題をつねに自分で工夫していかなければいけない。課題を見つけること自体が創造的なんだと思います。(p96)
 それを学者が老化だと定義したって,自分は変化だと思えばいいじゃないですか。脳には楽観が大事なんだから。(p99)
 面倒くさいことをやるというのがとても大事です。面倒くさいことほど,脳の回路を使いますから。(中略)自分がこれまでやってないことをやるのがいい。(中略)それがいちばんのアンチエイジングですね。(p100)
 僕は中曽根康弘さんに(中略)1回だけ会ったことがありますが,91歳なのにすごく元気だった。なぜこんなに元気なんだろうと思ったら,日常の細々したことをなんでも自分でやるそうです。(中略)中曽根さんが風呂に入ったきりなかなか出てこないので秘書の方が心配して見にいったら,洗い場で自分の下着を洗っていたと。(p101)
 くそまじめに「わが社のこの事業の意味は何であるか」と言っている人は,脳の潜在能力を全然発揮していない。だから,会社にほとんど貢献していない。(中略)ダメな芸人ほど「笑いとは何か」みたいな話を始める。(p108)
 そこ,とても大事です。野球に将棋盤を使うとか,サイコロにカードとか,パチンコ玉に鉛筆って,あり合わせで間に合わせていたわけです。その物本来の使い方ではなくて。実はこれ,脳の回路とよく似ているんですよ。(中略)脳って現場主義でして,その場その場のあり合わせで間に合わせるんです。(p117)
 遊びのなかでフロー状態を経験しておくと,仕事でもその状態が使える。ある脳の回路は,それをどういう文脈で鍛えたかということに関係なく,使い回しができる。(p124)
 人間の脳は孤立していると,潜在能力を発揮することができないんです。他の人と向きあうことによって初めて,異なる資質がかけ算されて,互いに高めあうことができるんですよ。(p133)
 日中戦争や太平洋戦争に反対した新聞は一つもなかった。反対すると弾圧されるからか? 違う。弾圧される前から賛成なんです。みんな賛成だから,少数の反対を弾圧するんです。(田原 p138)
 どんな場所のどんな境遇で育った人でも,自分の中に宝物が必ずあります。それを見出すことが,そても大事ですね。(p150)
 僕は堀田力さんという元検事に,容疑者を落とす技術,吐かせる技術って何だと聞いたことがある。すると,思いがけない答えが返ってきた。堀田さんは「それは相手に惚れることだ」と言ったの。(中略)「強盗殺人犯にも惚れられるか」と聞いたら,「惚れる」と。強盗殺人をした人間は,しない人間よりもギリギリのところまで追い詰められているから,その魅力があるんだと言っていた。(p153)
 われわれの人生の時間って,実はかなり切迫しているんじゃないですか。僕は,人生の時間って意外とそんなものじゃないかと思うんですよ。(中略)個人の生活でも,一度ゆっくり話を聞いて,それからおもむろに反論するという悠長なことをやっている時間は,いまはないんじゃないかと思う。(p170)
 親鸞が各地で説法したというけど,逆に多くの時間,人びとが言うことをただ聞いていたんじゃないかと思う。最後に短く決定的なことは言ったとしても。(中略)親鸞さんは30代半ばまでは京都ですね。京都を本拠地に考え続け,理念を作っていった。でも,理念は完璧なものに近づいていても,それは現実と食い違う。だから,むしろ全国を回り,聞いて回ったんじゃないか。(田原 p171)
 脳の中では同じ部分が喜んでいる。ということは,利己主義と利他主義は,まったく正反対のことのように思えるけど,脳にとっては,かなり近いことなんですね。だからこそ人間の社会は,これだけ発達してきたわけです。(p193)
 その「自分の利益」ということ自体が,そもそもよく考え抜かれていないんです。要するに,個々人が利己的に動くのが自由主義社会や資本主義社会だという考えそのものが,実は脳の仕組みからすると違うんです。(p194)
 おそらくこの国は,ドライに徹することができないと思います。(中略)徹底的にドライになれと強制したら,おそらく日本人は分解しちゃう。もう日本が日本ではなくなってしまう。(p208)
 竹下登という政治家が僕によく言いましたよ。「歌手1年 総理2年の 使い捨て」と。(田原 p213)
 ごく普通の人がフリーで生きられるような条件を考えればいいんじゃないですか。まずネットを活用する必要があります。僕がよく言うのは「グーグル時価総額」っていう造語です。自分の名前をグーグルの検索窓に入れて,検索してください。それでどれくらいの情報が出てくるか。それがあなたのグーグル時価総額ですよ,と。(p219)
 僕は09年6月以降,自分のことが書かれた日本語のウェブサイトを一切見ないことにしたんです。精神衛生上よくないし,時間のムダなので。(p226)

2018年3月25日日曜日

2018.03.25 郷ひろみ 『NEXT 明日の僕がいちばん!』

書名 NEXT 明日の僕がいちばん!
著者 郷ひろみ
発行所 講談社
発行年月日 2009.05.25
価格(税別) 1,200円

● もちろん,ライターが書いている。当然だ。本人に自分で書くほどの暇があるわけがない。郷ひろみは雑誌『GOETHE』でもエッセイを連載している。この連載エッセイ,ぼくはわりと好きなのだ。
 『GOETHE』を買うと(毎月買っているわけではないのだが),まず読むのはこれだ。

● 戦後の大歌手といえば,ぼくはこの人だろうと思っている。美空ひばりとか北島三郎とかじゃなくて,郷ひろみ。
 ジャニーズを袖にして独立した草分け的な存在。二谷友里恵との離婚。その他,色々と話題を作ってきた人だけれども,今から振り返ってみれば,ジャニーズも二谷友里恵も松田聖子も後藤久美子も野口五郎も西城秀樹も彼の脇役にすぎない。郷ひろみという骨太の主人公がいて,彼に関わった人すべてが彼の盛り立て役のように思えてくる。

● それほどに彼の生き方は際立っている。NHKの大河ドラマにも登場したし,バラエティーもやってきているけれども,歌手という軸にブレはなく,その歌手という自らの役割に対する忠誠心がハンパない。
 ぼくは木村拓哉がかなり好きで,彼は俳優として戦後を代表できる人だと思っているのだが(SMAP解散の逆風などいずれ乗り越えていくだろう),その木村拓哉にして郷ひろみに匹敵できるかどうかは,少しく曖昧だ。

● 以下に転載。
 何かを目指して努力する過程は大切なんだけど,「僕を観て!」という意識があるうちは,周囲は評価してくれない。(p15)
 「若さ」なんて,どんだけ必死にしがみついたとしても,一瞬でしょ。永遠はありえない。そもそも僕はそういう土俵で勝負する気もないし,外見に関しは本当にもう,あるがままでいいって感じ。(p21)
 周囲からはマニアックとも思われるほどの運動をすることは,朝晩の食事をするのと同じくらい,僕にとっては自然な行為だ。もしも体を動かさない期間が一週間も続いたら,逆に体がだるくて,不快感に耐えられないと思う。(p21)
 体は楽器そのものだからね。フィジカル・トレーニングを続けるのは,歌うためでもあるんだよね。ベースとなる体がきちんと整っていなければ,喉だけ鍛えても効果は半減してしまうだろうね。(p25)
 トレーニングの前提として,腹筋以外の筋肉は,基本的には集中して使った後,48時間は休ませることが必要なんだそうです。つまり,1日おきにしないとよくない,ということ。その理由は疲労を蓄積させないためと,運動によってこわれた筋肉を修復させるため。休ませて,修復するときに筋肉は前より強くなる。それが大切。(p27)
 僕の場合,ゴルフもそうだし,英語も英文タイプも泳ぎも,もちろん歌も,とにかく全部同じなんだけど,できなかったことを人から習うことによって,違うステージを見つけてきたんだよね。これはもう,実感している。つまり,「習うことは自分の限界を超えていくこと」。逆に言えば「我流には限界がある」ことを,いろんなジャンルで経験しているんだよね。(p33)
 僕はそもそも,“ネガティブな要素”を,見るのも聞くのも,ましてや体に取り込むこと自体が,嫌いなんですよね。ほら,ネガティブな発想の人って,必ずそれが顔に出て,いかにもといった風情を醸し出すことが多いでしょ?(p33)
 僕自身が体力的な衰えを感じていないのに,自分がやりたいことや,精神的な年齢までを,実年齢に合わせる必要などないよね。(p36)
 何年もエクササイズを続けているうちに,「健全なる精神は健全なる身体に宿る」という言葉の意味を,体で理解する瞬間がやってきた。それもう本当に,「あっ,なるほど」と,「体を鍛えるということは,心を鍛えるということなんだ」と,一気に腑に落ちる瞬間だった。(p39)
 20代前半の頃だったか,ユダヤの格言集を読んだことがある。曰く,「神は越えられない試練を人に与えない」 僕流に解釈すると,「できるまでするのが努力」ということ。つまり,「物凄く努力したけれど,できなかった」というのは単なる言い訳で,実際には努力したうちに入らないということ。(p43)
 嬉しかった。40代になっても,年齢に関係なく,限界を超えたいと渇望する自分を発見できたことが。(p64)
 そもそも僕は,自分のポジションとか人気とか,守りたいものをじっと眺めているタイプじゃない。むしろ「次の山に登るために」,今いる山からは早く下りてしまいたいと考えるほうだ。(中略)このまま何もしないで「郷ひろみ」を続けていれば,いずれ「先」には進めなくなる日が,多分くるだろう。何もしないで後悔するよりも,渡米した結果,駄目になったほうがずっとマシ。(p65)
 あのとき,なぜ彼が「次」と言ってくれたのか,僕にもわからない。ただひとつ,言えるのは,僕にやる気を感じなければ「次」のレッスンなどしてくれるはずがないし,やはり,僕のただならぬ真剣な気持ちが,彼に通じたに違いない。(p68)
 彼とのトレーニングを始めて3年近くになる頃だった。歌を真剣にやっている人以外にはわかりにくいかもしれないけど,「その瞬間」,僕には「自分の声が見えた」。目の前できれいに共鳴し,みごとに渦巻いている声が。「うわ~,これが僕が探していた本当の声なんだ!」という衝撃。(p68)
 神様はやはり,僕らをどこかで見ている。そして,大きな代償を払う覚悟を持った人だけに,「望んだ運命を手繰り寄せる」チャンスを与えてくれるのだ。今は素直にそう信じられる。(p69)
 その目標を達成するためには,「思考」と「行動」,そして「継続」が必要不可欠だと思う。僕の中には,常にこの3つしかないと言ってもいい。(中略)「思考」に「行動」が伴ったら,最後はもう「継続」しかない。これがもっとも大切なことだ。(中略)ところが現実には,ほとんどの人が,「思考,行動,継続」の中で,「継続」の段階に入ったところで,我慢できなくなったり,自分のやっていることを疑ってしまったりして,挫折してしまう。結果,潜在能力は「潜在」したまま,埋もれていってしまう。(p70)
 「やらなきゃよかった」という結果のみに囚われる「後悔」には,問題の抽出や分析がない分,学びも少ない。(中略)こう考えているせいか,僕は失敗してもあまりくよくよしないし,「起こってしまったことは仕方ない」「こんなこともある」という程度に,さらっとやり過ごせる。大切なのは,常に「次」のステップ。前に進んでいくことだと思う。(p76)
 僕はいつも思う。人の幸せと,その人が背負わなければならない「負」の部分は,常に同等であると。だから周りから見て,とてつもなく成功しているように見える人は,確かに幸せも大きいのだろうけど,彼らが背負っている負の部分もまた,大きいものなのだ。(中略)大きな幸せを享受しながら,小さな負ですますことは,多分,神様は許さない。(p81)
 男性諸君には是非,今まで「来年あたりから始めよう」と先延ばしにしていた体のメンテナンスを,今日から始めてほしい。取り返しがつかないような状況になる前に。僕自身は,体を健康に保つことが自分の内面を活性化させ,充実させることに繋がると感じている。(p88)
 少なくとも,心は閉じずに「友達」との出会を待ちたいものだ。(p92)
 芸能界でも実業界でも,男社会で頑張っている女性には,筋がビシッと通っていて,さばさばと男っぽい人が多いものだ。(p99)
 今まで数々のスキャンダルで世間を賑わせてきた僕だけど,どんな噂が飛び交っても,言い訳はしない。最終的には「沈黙」が一番強いと知っている。(p101)
 そもそも僕の仕事は,尋常じゃない集中力が求められる。生半可なものでは,とても通用しない。多分,恋愛のせいで僕が集中力を欠くようだったら,プロとしては間違いなく失格だ。その程度の自覚なら,10代の頃から持っていた。(p137)
 今でも,「他人と自分の比較ほど無駄なことはない」と断固として思っている。なぜならば,そこには無駄な優越感と劣等感しか,生まれないから。他人と自分を比較して,もしも自分のほうが勝っていたとしても,それが一体何になるのだろう。(p147)
 誓って言える。僕は人のことを悪く言ったことはないし,裏切ったこともない。神様の視線を怖れる僕の人生には,嘘がないのだ。そして,そういう自分でない限り,運やツキが巡ってくることはなかったと信じている。(p153)
 素晴らしい人と出会うには,どうしたらいいのか。それは,自分自身がピュアでいる以外にない。(p155)
 ゴルフに行ったときには,厚手の長袖ウェアを着て,日焼け止めを顔に塗って,日傘をさして。それが僕が「郷ひろみ」として人前に出ていくために必要なことだと思えば,僕自身はまったく苦にはならない。皆さんにできるだけ「完成度の高い郷ひろみ」を見ていただくために,自分ができる努力は,常に惜しまないつもりだ。(中略)コンサートにきてくれた人,CDを買ってくれた人に対する,プロとしての礼儀,僕なりのマナーであると思っているから。こういった,ファンをリスペクトする気持ちがなくなってしまったら,やはり歌を聴いてくれる人たちを引き込むことなど,不可能だ。(p159)
 僕が生きていくのはショービジネスの世界しかない。そもそも僕は,歌手という職業に対する自分の適性を,疑ってみたことすらない。(p168)

2018年3月24日土曜日

2018.03.24 浅見帆帆子 『出逢う力』

書名 出逢う力
著者 浅見帆帆子
発行所 宝島社
発行年月日 2015.11.09
価格(税別) 1,400円

● 副題は「あなたに必要な人・情報・モノを今,引き寄せる!」。こういうものを読むのは気持ちが弱っているときだろうか。たぶん,気持ちには波があって,その波が下を向いたときに,こういうものに逃げるということなのだろうか。
 となると,社会人になってからは,ぼくの気持ちは下を向いていたときの方が長かったかもしれない。

● いくつか転載。
 自分の夢や望みについて楽しく考え続けている人は,その夢を実現させてくれる人,モノ,環境を引き寄せます。夢のことを考えながらも,「所詮かなわないもの」と思っている人は,「夢はあっても所詮かなわないもの」という現実を引き寄せています。(p28)
 あなたがエネルギーをかけられるもの,つまり,好きなもの(こと)は必ずうまくいくし,逆から言えば,そこまでのエネルギーをかけられないものはやる必要はない,ということです。(p69)
 引き寄せの法則から言えば,その人自身のエネルギーと同等のものが引き寄せられてくるので,「中傷が来たらどうしよう」と思っていれば確実にそうなります。(p72)
 ネット上に悪意のある書き込みをする人たちが,そのエネルギーと同じものを自分に受けていないはずがありません。(p73)
 それを考えている時間が長ければ長いほどパワーがたまり,それが一定量を超えると実際に現実に形をとり始める・・・・・・ということは,「考えても解決しないこと(どうしようもないこと)は,考えなくていい」ということになります。(p99)
 「思い込んだもの勝ちよ!?(笑)」 「一生,ひとりよがり(笑)」 ある意味,名言のような気がします。(p127)

2018年3月22日木曜日

2018.03.22 天外伺朗 『経営者の運力』

書名 経営者の運力
著者 天外伺朗
発行所 講談社
発行年月日 2010.09.15
価格(税別) 1,600円

● 「運力」とは,自らの運命に対するマネジメント力(p56)だと定義される。ただし,このマネジメントを日常用語のマネジメントとして理解するのは,ちょっと違うようだ。
 本書を読んでわかるのは,運命はマネジメントできないものだということ。運命に対するこちら側の対応の仕方をマネジメントしろということのように思われる。

● 以下に転載。
 運命には周期性があること,自分に起こっていることをすべて受けとめること,運命に直面すること,どん底状態でもブレないでしっかり準備をすれば,次の飛躍の種が潜んでいること,準備にひたむきさがないと運は呼び寄せられないこと(p40)
 逆境でものをいうのは,経営学の知識や,孫子の兵法や,ランチェスター戦略とかいった方法論ではなく,表面的な商売の才覚でもない。もっと人間の土性骨に近いところの実力であり,それこそが「経営者としての土台」になるのだ。(p45)
 MBAなんて,ピザでいえば,トッピングのようなものさ!(p48)
 人間の中で,知識として頭から入ってきたものと,実際の活動を通じて体験として入ってきたものは,まったく異質の体系になっている(中略)言語で記述された知識というのは,ロボットのプログラミングと同様,平板で,質感や情動を伴っていない。(p51)
 人や集団や社会の動きの底には,宇宙の流れがあり,その自然な流れに沿って,あるべき方向に落ち着かせることが大切なのだ。(p57)
 運命というのも海の波と同じようなものではないかということだ。たしかに目で見るとピークが在り,ボトムもある。しかしながらボトムといえどもエネルギーがない訳ではない。ピークとまったく同じエネルギーを保有する。(p75)
 ピークだろうとボトムだろうと,私たちが遭遇する出来事は,本当はどれも「宇宙のはからい」なのだ。「悪い運命」というのは外からやって来るのではなく,本人の精神的未熟さが,それを捏造してしまうのである。(p77)
 私自身は,(卦は)「当たるからすばらしい」という心境には到底なれない。あまりにも多くの闇を見てきてしまったからだ。いまの心境は,「当たるから恐い」「当たるから危険」「できれば近寄りたくない」というのが,正直なところだ。(p81)
 私は「易」に頼って会社をつぶした経営者を二人知っている。ひとりは名の知られたベンチャー企業の社長で工学博士だったのだが,どうしたわけか「易」に凝ってしまった。(p83)
 占いというのは,どうでも良いことは心が乱れないのでいくらでも当たる。どころが,人生の勝負を賭けたとき,危機に瀕したとき,欲がからんだとき,あせっているときは邪念に支配されてしまい,当たらなくなってしまう。結局,いちばん必要なときに当たらないという困った傾向があるのだ。(p86)
 たしかにね。並のボトムでもジタバタしない人は,「これは何かいいことの予兆に違いない」と,心の底から思える人ですよ。この心の底からというのがミソで,心の底からそう思えない人が,表面だけ真似をするもんだから怪我をする。だからね,波のボトムでジタバタしないようになりたかったら,まずはしっかり心の底からジタバタする以外に道はない。(p93)
 ボトムであせりまくり,絶望してジタバタしている人が,次のピークに向かって有効な手を着実に打てる訳はない。必死な努力というのは,未来に希望をもっているからこそできるのだ。(p105)
 山あり谷ありの波乱万丈の人生を歩んでいる人は,進行する運命のエネルギーが大きい。つまり,成功が大きいほど,失意のボトムも深くなる。逆に,山も高くなく,谷も浅い平穏無事な人生を歩む人は,エネルギーが小さいといえる。(p120)
 ヒンズー教の僧侶は,たとえ交通事故で重傷を負ったとしても,あるいは愛する家族が惨殺されても,会社が倒産したとしても,ひたすら「ああ,それは良かったね」という。あらゆる出来事に対して絶対的に肯定するのだ。(p130)
 アメリカ流成功哲学は,原理的な部分をヒンズー教の競技からつまみ食いしているが,その深遠な哲学はまったく無視されており,何とも安直なハウトゥーものにアレンジされている。そのほうが,人々が飛びつき,本が売れるのだ。(p131)
 当時私は上席常務で,部下には部長も課長も大勢いましたけど,評価シートなんか無視しろ,と宣言しました。会社の方針に,公然と反旗をひるがえしたのです。評価というのは命をかけて独断と偏見でやれと。それ以外に,まともな評価はあり得ない,とね。この,命をかけてというところがミソなんですね。(中略)評価シートなんか使って,これは何点,これは何点,合計すると・・・・・・なんてやっていたら,命をかけて,というところがどこかにいってしまう(p136)
 一九九五年にトップが替わり,それまでのソニーの伝統だった「フロー経営」を捨て,アメリカ流の合理主義経営を導入してしまった。(中略)その結果はどうなったか? 外部には二〇〇三年春のソニー・ショックとして知られているが,ソニーは凋落の一途をたどり,社内は地獄の様相を見せ,心身をこわす社員が続出した。(p149)
 出井伸之さんのことだが,著者と出井氏はソリが合わないのだろうね。出井さんが社長のときのソニーは,前半は好調で後半は失速したイメージがあるが。
 このとき精神的にも不安定になったことから,成功体験というものは,それがどんなに世間から評価されようとも,まったく心の支えにはならないことを思い知った。心の平穏というのは,成功体験を積み重ねれば自動的に得られるのではなく,それとは全然別のアプローチが必要なのだ。(p160)
 人数が半分以下になれば,残った人たちの覚悟は定まる。つまり,「変容」に対する準備が整うのだ。「大きな変革をするときには,人数を減らすべきだ」というのは,マネジメントの世界ではよく知られている。(p165)
 モンテッソーリ教育では,教師は,子どもたちに指示・命令を一切しない。それどころか,手助けすることも,間違いを訂正することも,褒めることもほとんどない。子どもたちは,いつ,どこで,何をするか,まったく自由であり,すべてが本人の判断にまかされている。じつは,それくらいの自由が与えられていないと,人はなかなかフローには入れないものだ。(p168)
 企業でも,下手な報奨制度は「燃える集団」の火を消す。ソニーの創業者の井深大氏は,ことあるごとに「仕事の報酬は仕事だ」というメッセージを発信していた。いい成果を挙げれば,もっと面白い仕事に取り組めるようになる,という意味だ。そういう雰囲気があれば「燃える集団」は生まれやすい。(p170)
 どうも,求めると与えられないんだね。それを僕らは,「執着の呪縛」といっている。(p186)
 科学というのは,新皮質の論理で全部記述しようとするから,古い脳の知恵にはまったくお手上げ。だから,科学的に説明できる世界だけで生きていると,古い脳の知恵にアクセスできない。(p187)
 プロジェクトを信念を持って,しっかり遂行すれば,専門家はすぐ育つし,ノウハウもあっという間に蓄積できる。(p193)
 士気が高ければ成功するし,低ければ失敗する,と思われている。これは基本的に間違いだ。(p194)
 謙虚でなければならない。どんなに自信があっても,それを絶対と思い込んで発言してはならない。もう一つは,笑いがなければならない,ということだ。どんなにきちんと正しく身を処していても,その過程でまったく笑いがない場合には,どこかで破綻が生じる(米長邦雄 p197)
 事実にもとづいて常識があるのではなく,常識にもとづいて事実が起きてしまうこともあり得るのだ。(p203)
 「癌になったら死ぬ」という常識が定着している。逆に,「想いを変えれば癌は治る」などといおうものなら「そんな馬鹿な!」と反撥されてしまう。つまり,癌患者は藁をもつかむ心境でサイモントン療法を受けに来るのだが,心の底のほうではそれを否定するという傾向がある。それは,治療法や個人というよりは社会全体の問題だ。(p207)
 祈りには感謝のことば以外はいらない,という師匠の教えは,いまの私は確信を持って語ることができる。(中略)人はすべて,自分を中心として宇宙全体の秩序を形成しているように思う。一人ひとりがその秩序の責任者なのであって,誰かが作った秩序に受動的に参加しているわけではない。(中略)人間という存在は,一人ひとりが宇宙全体の秩序の支配者であり,一瞬一瞬の言動により,その秩序がゆれる。(中略)感謝の祈りというのは,まさにその秩序を強力にし,整える力を持っている。(p218)
 天外塾では,あらゆる問題は一〇〇%,自分の内側にある,と教えています。それを掘り下げていくと,結局死の恐怖に行きつくことが多い。だから,死と直面できている人は,悩むことが少ないんです。一般の経営学では逆ですよ。問題は全部外側にあると教えている。それをよく観察して,分析して,合理的に論理的に解決策を考える。僕も昔はそういうやり方をやっていたけど,あまりうまくいかない。(p228)
 「プラス思考」を説く人はきわめて多いが,これはかなり危険な方法論だ。表面的な意識レベルの想いと,無意識レベルの認識が大きく食い違って苦しんだり,自己否定に陥ることがある。しばしば,うつ病を誘発することもある。「運のいい人の真似をしなさい」と説く人も多いが,このアドバイスはでたらめだ。運力の弱い人が,強い人の真似をするのは危険だ。(中略)逆に,運力の弱い人は,まずそれを自覚しないといけない。(p248)

2018年3月21日水曜日

2018.03.21 永江 朗 『65歳からの京都歩き』

書名 65歳からの京都歩き
著者 永江 朗
発行所 京阪神エルマガジン社
発行年月日 2017.10.01
価格(税別) 1,380円

● 京都は人を選ぶ。京都に呼ばれる人と呼ばれない人がいる。ぼくは高校の修学旅行以来,都合6度,京都を訪ねたことがあるんだけど,ついに京都に呼ばれることはなかった。
 金沢にも同じものを感じる。奈良はそうじゃないんだが。

● 著者は京都に家を建てたくらいだから,京都に呼ばれた人だ。しかも,東京にずっといた人だから,京都を外から見る視点も当然ある。

● 以下にいくつか転載。
 わたしも行列を見ると,「そんなに素晴らしいのか」「そんなに美味いのか」と,一瞬,並びたくなりますが,冷静に考えてパスします。並ぶ時間がもったいない。体力ももったいない。わたしが並ぶのは[出町ふたば]と大晦日の[花もも]だけです。(p55)
 人気の甘味処などでは,行列がなかなか進みません。なぜかというと,京都の人は店の外に行列ができていても意に介することなく,のんびりとマイペースですごすからです。(中略)お店の人も,「食べ終わったら早く出ていってください」といった態度はチラとも見せません。「どうぞ,ゆっくりしてって!」という気分がありありなのです。(中略)そして気がつきました。これが京都の時間であり,京都の「あたりまえ」なのだと。(p56)
 若者に「お寺と神社の違いはなんだと思う?」と訊ねたら,「お寺は拝観料を取られるけど,神社はただで見られる」と返ってきました。(p62)
 目が覚めたらぜひ,ホテルで朝食をとる前に散歩することをおすすめします。できれば朝食もホテルのレストランではなく,街なかの喫茶店で。(p81)
 わたしは,たまに大阪に行くことがあっても,晩ごはんは京都に戻って食べることが多い。(中略)大阪よりも京都のほうがおいしい,大阪よりも京都のほうがおいしい店が多い,というのがここだけの本音です。(p93)
 料理の味や店の雰囲気,接客など,さまざまは要素を考慮した上で,想定的に高いと感じるのは,観光客を主要客層に想定したお店です。エリアでいうと祇園や四条河原町界隈の店。木屋町や先斗町も高めです。四条烏丸や新町通も。(p96)
 京都は和食以外においしい店がたくさんあります。なかでも中華料理は独特の発展を遂げています。(中略)どの店でも「京都ならではだなぁ」と感心するのが春巻です。(p98)
 年末年始の京都はしっかり休むお店が多いので,この時期に旅をするときは注意が必要です。(中略)この「国際的な観光都市といわれても,盆暮れ正月はしっかり休む」「ビジネスよりも伝統行司が大事」という姿勢こそ京都らしいところです。(p137)
 本が好きな人にとって,京都は天国のような街です。街のあちこちに本屋があり,それぞれが個性的です。(中略)たしかに,新刊本はどこででも手に入るし,どこで買っても同じ。でも,本屋という空間は一つひとつ違います。京都の本屋は京都に行かなければ味わえません。(p142)
 「大は小を兼ねる」という言葉が本屋には当てはまらないということがわかります。わたしはアバンティブックセンターにも大垣書店にもなかった本を,ふたば書房で見つけたことがあります。(p145)
 以前,女優の浜美枝さんから,こんな話をうかがいました。浜さんはデビュー間もないころ,写真家の土門拳から「いいものを見なさい」とアドバイスされたそうです。(p156)
 茶の湯に用いる道具類のなかで,最大のものが茶室です。茶室はお茶を点てて飲む「場所」ではなく,茶道具のひとつなのです--というのは,建築史家の藤森照信さんの受け売りですが。(p174)
 柳が「民藝」ということばを与えた瞬間,それまで誰も鑑賞の対象だと思っていなかった茶碗や水瓶や箪笥などが美しく見えてきました。千利休が数百年前にやったこと-侘び茶の創造-に匹敵する美意識の革命です。(p208)
 木曽義仲が都に攻め入るところでは,義仲の田舎ぶりが嘲笑されます。義仲は粗野で無教養な武士として描かれます。これは『平家物語』が都人,つまり京都の人の視点で描かれているからでしょう。都会人が非都会人を見くだすところが木曽義仲の描き方に反映されています。(p242)

2018年3月20日火曜日

2018.03.20 茂木健一郎 『続ける脳』

書名 続ける脳
著者 茂木健一郎
発行所 SB新書
発行年月日 2018.01.15
価格(税別) 800円

● 本書の要諦は「はじめに」にある次の一文。
 私たちは,成功した人の功績を見るとつい「才能があったから」と思い込んでしまいます。しかし,それは既に達成された偉業に注目するからで,その過程には私たちとまったく同じ困難や挫折があるはずです。彼らはただそれを乗り越えて,続けられただけなのです。(p6)
 つまり,継続することの重要性が説かれている。継続するためには何に注意すればいいか。右から左から上から下から,いろいろと解かれている。

● 以下に転載。
 ダメだといわれても,けなされても,とにかく続ける。才能に恵まれていようがいまいが,とにかく粘り強く継続する。それこそが,最終的には結果につながるのです。(p20)
 根性論は,「正解は一つ」というモノカルチャー的な考え方に陥りがちなのです。(p29)
 宿題をやらなければならないとき,それ以外をゼロにする必要はありません。それこそが「モノカルチャー(単一的)」思考。これは理想的なようでいて,他者に従っているだけの指示待ち常態です。まずは,「何をどれだけやるか,いつ初めていつやめるか」を自分で決めてみる。(p35)
 やっかいなもの,無駄に見えるものでも,どんな役割があるかわからないのです。(p41)
 「ハーバード大学がいい」というのは,誰もが知っている名門大学なわけですから当たり前で,他人の決めた価値観に従っているだけです。(p42)
 最後までやり続ける力と聞くと,一つだけに集中するイメージをもつ人もいるでしょう。集中できる環境を整えようと,「他に手を出すのはやめておこう」「しばらく飲み会の誘いは断ろう」などと考えがち。しかし,続けるためには逆効果です。なぜなら条件を整えて,一つだけをやろうとすると,条件が整わなかったら,続けられなくなってしまうからです。(p46)
 長く何かを続けようというとき,「完璧主義」は大敵です。(中略)なぜなら,継続が途絶えるのは,当たり前だからです。どんな人間でも,一日も休まず,一つのことを続けるなんて,まず無理です。(p48)
 実は目標とは,他人に言うと叶いづらくなると研究で明らかにされているのです。(中略)目標を他人に宣言すると,「目標に近づいた気分」になってしまうと考えられるのです。(p58)
 村上(春樹)さんは,作品を最後まで書いてから,いきなり人に渡すのです。小説を書くには長い時間がかかります。作品を書く長い時間の中で,村上さんはひたすら書いているだけで,周囲から反応をもらうという満足を得ていないのです。(p60)
 新しい英語の本を読んで,いままで知らなかった物語に出会うとうれしい。知らなかった単語に出会うとうれしい。「知らない」に出会うとは,何かをしるチャンスの前触れだからです。しかし,テストで満点を目指している人は,知らないことに出会うと,おびえてしまいます。満点を妨げられるからです。(p65)
 一生かけて追いかける目標とは,「これだ」と運命的に出会うイメージがありますが,そうではありません。むしろ最初はなにがなんだかわからなくても,続けているうちに見えてくるものなのです。(中略)つまり,夢は「育てる」ことが必要なのです。(p70)
 一万時間の法則とは,どんなことでも,一万時間続けるとエキスパートになれるという法則です。(中略)一万時間の継続が,才能や素質よりも重要なパラメーターになる(p75)
 他人の評価が報酬ではなく,行為自体が楽しいから,続けられる。行為自体が楽しいと思える人は,周りがどんな状況であれ,幸福でいられる。(p87)
 柴(那典)さんは,意外にもかつてより今のほうが,ミュージシャンの寿命が長くなっていると指摘します。収入は主に,コンサートやフェス。(中略)かつては,大ヒットしては消えていく「一発屋」が問題になっていましたが,今やたった100人のファンがついてくれれば,十分キャリアを積んでいけます。(p88)
 生物として唯一意味のある継続性とは,生き延びること。生き延びるための居場所(ニッチ)さえ見つかれば,生きる場所の優劣はないはずです。(p91)
 マイノリティの権利に対する意識の高まりも,それぞれの生き方を大事にするという個人の問題だけでなく,社会全体としてもそのほうが進歩し,イノベーションが起きやすいという認識が共有された結果でしょう。(p92)
 単一知性が重視される時代は終わりました。現代では,「何かができない人は,何かができる」ということが常識になっています。(p93)
 エリートという考えは,社会の限られた資源を奪い合うときに現れるものです。一つの椅子を100人で争い,得た一人がエリートと呼ばれる。これは,100人中99人が幸せになれないゲームです。(p96)
 チクセントミハイのフローの概念の中で大事なのは,「その課題に意義があるかは関係ない」ということです。意味がないように見える仕事も,フローに入れば楽しくなります。(p105)
 邪魔だと感じる仕事の中にも本質的な仕事のヒントがあるのです。邪魔な仕事からもヒントを見つけるには,その仕事に打ち込んでいる必要があります。(中略)「今,ここ」の仕事がどんなものであれ,大事なのだという感覚は大切です。その人が伸びるかどうかの分かれ道になるからです。(p106)
 モーツァルトは,ばかばかしいほどに遊んでいました。作品をつくるときも,友人と酒を飲むときも,同じ「集中した1分」を続けていたのです。(p108)
 持続可能なグリットは多様性の中にこそあるのです。私たちが多様性を身につけるために,「今ここにあるすべてのものに,一切の判断を挟まずに目を向ける」という姿勢は,助けになります。(中略)「好きなものは取り込む」「嫌いなものは避ける」とう単純な判断では,多様性を身につけられません。(p109)
 世界とは,すぐに判断できるものだけで構成されているわけではありません。むしろ言葉にしないほうが,存在している物事を丸ごと保持できるのです。言葉以前の形で,自分の中に取り入れることが,多様性を蓄えるコツといえるでしょう。(p116)
 AIは定義した問題を解き続けることは得意だけれども,そもそも問題を定義することが苦手であると考えることができます。(中略)つまり,それをやるのが人間だということになります。(p118)
 頻繁に会う人たちよりも,年に一回程度しか会わない関係性が薄い人たちのほうが,自分が危機におかれたときに助けになる傾向があるのです。なぜでしょうか。頻繁に会う人物は趣味が似ていたり,持っている情報が似通ったり(するからです)。(p127)
 もしかすると夢の実現とは,すべての期待が消えてからが本番なのかもしれません。過度な期待を持たずに,具体的な努力の仕方が見えるところまできたなら,夢の実現まではもう少しといえるでしょう。(p131)
 「基準を知る」ことは助けになります。目指す分野で最高のものに,なるべく早くふれてしまうのです。(中略)まず「無理だな」とわかる。それこそ,基準を知ることです。「無理だな」はプロの基準を身につけたことなので,それから具体的な努力ができるようになるのです。(p132)
 本質を見抜く力をつけるためには,次の二つが必要です。 1 サンプルをたくさん見せる 2 体を動かして,実際にやってみる (中略)とにかくたくさん見ると,法則と型が見えてくるのです。さらに,自分の体を動かしてやってみると,「できる・できない」がはっきりします。すると,ものごとがより具体的に見えるようになります。(p163)
 なぜ本物を見るのがよいのかといえば,必ず手間がかかっているからです。(p171)
 「茂木さん,女性のナチュラルに見えるメイクには,手間がかかるんですよ」 いかにもメイクしていますというメイクはすぐにできるけれど,一見化粧していないように見えるメイクは,細かい作業が必要で時間がかかる。たしかに,レオナルド・ダビンチの『モナリザ』は,ただの薄化粧に見えるけれど,あの肌をつくるために,ダビンチが加えた工数は膨大だったに違いありません。(p175)

2018年3月17日土曜日

2018.03.17 茂木健一郎 『成功脳と失敗脳』

書名 成功脳と失敗脳
著者 茂木健一郎
発行所 総合法令出版
発行年月日 2015.12.07
価格(税別) 1,300円

● 茂木さんが矢継ぎ早に出している啓蒙書を後追いで読んでいるわけだが。そろそろいいかなと思わないでもないんだけど。ただし,カンフル剤的な効果もあるし。
 少なくとも,栄養ドリンクを飲むよりはいいだろうと思う。

● 結局,自分は何のために本を読んでいるのかということだ。ぼくの場合は暇つぶしってことになるのかも。消費としての読書でいいと思ってきたし,実際,それにとどまっているのだ。
 だから,読みやすいものを読んでいる。

● 以下に転載。
 人間の脳は,成功と失敗をはっきり区別しています。最も重要な報酬物質ともいわれるドーパミンが放出される中脳から前頭葉に向かっている回路は,成功したときには強化され,失敗したときには戦略を立て直してします。(p18)
 とにかく短い時間で仕事をやる癖づけをするのです。自分自身に適度なプレッシャーをかけ続けていれば,人間の脳というのは自然にアクティビティを上げるようにできているのです。(p25)
 脳というのは非常に面白いもので,実は「失敗の貯金」があればあるほど成功したときのドーパミンの放出量が多いといわれています。(中略)つまり,成功ばかりしていてもいけないということです。(p34)
 人間というのは自尊心を持たないと成長できません。ここでいう自尊心の本質というのは,「自分にダメ出しができる」というプライドを持つことなのです。(p47)
 ぜひとも,(中略)「根拠のない自信」というものを持ってみてください。これは,幼少期には誰でも持っていたものです。しかし,そこから大人になるにつれて失ってしまっているのです。何かで失敗してしまったときに,それがトラウマとなってしまい,新しいことに挑戦しようというときに脳が抑制をかけてしまっています。(p52)
 私の周りにいる仕事ができる人,成功している人ほど,仕事と遊びの区別がないように見えます。(中略)そのような人の脳を分析してみると,仕事における脳への報酬構造と遊びにおける脳への報酬構造がひとつながりになっているのです。(p65)
 教養というのは,何かを学び知っているということのほかに「いろいろな物の見方ができる」ということも含まれています。つまり,人の生き方を考える上で,「見方を変えると全然違った視点が得られる」ということが教養でもあるのです。結局のところ,一人の人生ではとてもカバーできないくらいの,人類の歴史の中でさまざまな人が経験してきた,いろいろな物の見方を濃縮したのが「教養」ということではないでしょうか。(p74)
 実は,人間の脳の限界がどの程度のものかなど,科学的に断定することはできません。つまり,脳が成長する可能性は無限といってもいいわけです。ですが,自分ができることには限界があるという思い込みをしてしまうことが,脳の成長を妨げてしまいます。(p84)
 大切なのは,自分にとって輝ける「ニッチな居場所」を見つけるということです。(中略)ひきこもりで学校に行けない学生は,学校に行けないという自分の個性に合った居場所を見つければいい。毎日会社に行けない人は,会社に行けない自分に合った居場所を見つければいい。それこそが,成功への基本的定義だと私は思います。(p88)
 嫌いなことというのは,実はそれをちょっとでも取り入れることで自分の可能性が伸びるケースが多い(p93)
 おそらく,「成功している人は,きっと自分よりも苦しいことをやっているんだ」と思っている人が多いのではないでしょうか。しかし,これは完全に間違った認識です。成功脳をうまく使って集中力をいかんなく発揮し,成功している人というのは,実はすごく楽しい仕事生活をしているものです。(p106)
 あれこれ考えずに1秒目から何でもすぐにやり始めてしまえばいいのです。(中略)思い立った瞬間にやることで,脳はどんどんマルチタスクをこなしていけるようになるのです。(p108)
 誰にでも緊張する瞬間はあります。しかし,それらを一つひとつ乗り越えることで脳は次第に成長してフローに入る時間がどんどん長くなていきます。ですから,フローを体験するには,新しいことに繰り返しチャレンジするという姿勢が必要だということです。(p116)
 結局のところ,人間の創造性というのは,自分の周辺視野がどれくらい広く見えるか,自分とどれくらい対話ができるかということによって決まってくるものです。(p126)
 一度負け癖がついてしまうと,それに安住してしまって,そこからなかなか抜け出せないという人は,自分自身の認識をつかさどる脳の回路において,「どんな自分でも自分らしい」と勘違いしてしまっているのです。(p136)
 負ける勝負しかしていない人は,すでに負けるとわかっている時点でどこか本気になっていない,全力を出していない自分がそこにいるはずです。(p145)
 個性的な外国人は決して空気を読んでいないわけではないのです、かえって,そのような人ほど空気を読んでいるものです。日本人がいう「空気を読む」というのは,空気を読んでそれに合わせるということまで含んでいます。ところが,空気を読んだ上で,あえて個性を出していくという選択肢もあるはずです。(p159)
 脳科学的にいえば,他人という鏡を使えず,自分が見えなくなってしまっている人というのは,脳の老化によってメタ認知が弱まっているということにもなります。(中略)例えば,年配の方が電車に乗るときに,周りに気を遣わずに我先に席を取るとうのは前頭前野の衰えともいえる行動です。(p161)
 「多様性こそが,イノベーションにおいては大事だ」 このようなことがしきりにいわれている昨今ですが,これは脳科学的な立場からもその通りだと断言できます。というのも,多様性がなければ,自分の特性がメタ認知による鏡に映らないからです。実は,人間は似たような人と一緒にいるとメタ認知が立ち上がりにくいという性質があります。(p165)
 メタ認知がしっかりと働いていないときというのは,どうしてもベストシナリオを考えがちになります。ところが,大抵の場合でいえばベストシナリオでうまくいくことはまずないといえますので,メタ認知のアシストを借り,成功するためにリアリストになる必要があるのです。(p167)
 私の場合でいえば,ツイッターがミラーニューロンの働きを担ってくれています。(中略)ソーシャルメディアの中にいるかどうかは,現代においては今の同時代性を支える一つの基準になっているものです。場合によっては,ソーシャルメディアは誹謗中傷するようなものも含めてあるわけですが,そこも含めていろんなものがサラウンドで聴こえてくることがあります。(p177)
 成功している人たちのコミュニケーションの基本は,「常に対等である」という意識を持っているということです。(中略)対等なコミュニケーションの本質とは,まずは相手をしっかりと敬い,思いやりを持ってお互いの考え方や行動に対して本音で意見をいい合うということです。(p186)
 コミュニケーションが苦手な人ほど,キャリアや肩書き,あるいは名声を気にし過ぎたり,逆にそれらを自分の武器として相手に振りかざしてしまう傾向があるのではないでしょうか。(p189)
 最近よく口にする言葉は,「勉強ができるというのは,一つの欠点ですらある」というものです。(中略)勉強ができるというのは典型的なオタク体質だということがいえます。オタクというのは,やはりコミュニケーションが苦手な人が多く,広い世界が見えていないことが一つの欠点として浮かび上がります。さらにいえば,オタクは他人と何かをするといったコラボレーションが苦手という側面もあります。(p195)
 現代社会において,「運動ができている」というのは,ある意味では成功者の一つの指標といっても過言ではありません。(中略)仕事で行き詰まったときや,ストレスを感じているときに運動をすることで,「無意識を耕す」作用があるからです。(p201)
 脳の仕組みは,「非線形である」ということも大切なポイントになります。(中略)つまり,1+1が2以上になるのが脳の特徴でもあるということです。これは一つひとつのステップが小さくて,あまり進歩していないように見えていても,ふと気づくと1+1が100にも1000にもなる瞬間がやってくるということなのです。(p207)
 「何かを選択する」というときに使う脳の容量というのは,実は限られているということが研究でも明らかになっています。つまり,私たちが何かを選択するたびに,脳は活動容量を減らしているというのです。(中略)自分があまり重要視していないことの意思決定において脳を消耗させずに,自分の好きなことに全力で取り組むためにも,自分のビジネスに関係ないことにはルールを定めてみてはいかがでしょうか。(p218)

2018年3月13日火曜日

2018.03.13 堀江貴文 『多動力』

書名 多動力
著者 堀江貴文
発行所 幻冬舎
発行年月日 2017.05.30
価格(税別) 1,400円

● ここでいう「『多動力』とは,いくつもの異なることを同時にこなす力のこと」と定義されている。
 マルチタスクの同時進行。直列処理ではなく並列処理。だったら,世の女性の多くは得意としているところじゃないか,と思って読み始めたんだけど。
 ま,そういうことではないですよね。

● 以下にいくつか転載。
 テレビなどの家電はもちろん,自動車も,家も,ありとあらゆる「モノ」がインターネットにつながるということだ。すべての産業が「水平分業型モデル」となり,結果“タテの壁”が溶けていく。(中略)かつてない時代に求められるのは,各業界を軽やかに越えていく「越境者」だ。(p8)
 時代は大きく変わろうというのに,日本人は「石の上にも三年」に代表されるような「一つのことをコツコツとやる」という価値観からまだ脱せられていない。(p11)
 日本人は,修行や下積み,球拾いなど,苦しいことを我慢して行う美学が相変わらず好きだ。この本を読んだあなただけでもそんな空っぽな幻想から目覚めてほしい。(p25)
 いくらでも代わりのいる存在であれば,給料も上がらないだろう。ダイヤモンドがなぜ価値があるか? それは美しいからではなく,珍しいからだ。(p31)
 価値とはつまるところ稀少価値のこと。そこまでは誰でもわかる。では,自分に稀少性を付けるにはどうすればよいか。
 一つのことに1万時間取り組めば誰でも「100人に1人」の人材にはなれる。1万時間というのは,1日6時間やったと考えて5年。(中略)ここで軸足を変えて,別の分野に1万時間取り組めば何が起きるか。(中略)「1万人に1人」の人材になれる。(中略)さらに飽き足らずまったく別の分野にもう1万時間取り組めば,(中略)「100万人に1人」の人材が誕生する。ここまですれば,あなたの価値と給料は驚くほど上がる。(p32)
 「全部自分でやらなきゃいけない症候群」にかかっている人が多すぎる。自分の貴重な時間は,自分の強みが一番発揮できる仕事に集中させるべきだ。(中略)自分にしかできない仕事以外は,他人に思いっきり任せよう。(p40)
 『本音で生きる』はインタビュー時間ゼロでも完成しただろうし,なおかつ30万部のベストセラーになったと思う。なぜなら,過去にインタビューや本で僕が散々言ってきたことしか書いていないからだ。『本音で生きる』のインタビューは心底退屈だった。今まで何度も繰り返し言ってきたことを改めて聞かれ,僕はその度に「過去の本を読んでくれ」とインタビュアーであるライターに怒った。(p40)
 今後僕が発刊する書籍の多くは,キュレーションメディアのような作り方で「取材時間ゼロ」で進めたい。メルマガとHIUという,自分の有料メディアやグループでは,僕にしか書けない堀江貴文の核となるものを残しておく。本などなその僕の核からネタを引っ張ってくれば何冊でも作れると思う。(p41)
 時間をかければクオリティが上がる,真心をこめれば人に伝わるというのは,妄想にすぎない。(p42)
 共働きで仕事をしていれば,お母さんが子どもの弁当を毎回バッチリ作るわけにもいかないだろう。「今日は時間がないし疲れているから,冷凍食品を適当にレンジでチンしよう」こう割り切れると人生は一気に好転する。(p45)
 メッシのような超一流選手は90分の試合のうち大半をサボっていて,ここぞというときに一瞬の隙を突いて得点を奪う。緩急を使いこなすことこそ仕事の本質だ。(p47)
 目指すべきは,完璧ではなく,完了だ。(p48)
 大事なことは,見切り発車でもいいからやってみることだ。(中略)何かに向けて準備していることはないか? フルマラソンに出るために毎朝ランニングしてはいないか? 気になる女性とデートするためにダイエットしてはいないか? 準備している時間は無駄だ。今すぐ直近のフルマラソンにエントリーしよう。気になる女性と食事に行こう。(p54)
 何か一つのことに極端なまでに夢中になれば,そこで培った好奇心と集中力が他のジャンルでも同じように生かされる。僕が思うに,日本の「バランス教育」は子どもの集中力と好奇心をそぐようにできている。(p59)
 一つのことにサルのようにハマるが,実は飽きやすい。飽きやすいということをネガティブに捉える人もいるが,実は成長が速いということでもある。どんな分野でも,80点までには簡単にたどり着けても,100点満点を達成するまでには膨大なコストと時間がかかる。(中略)僕は80点を取れるようになるとあっさり飽きてしまうことが多い。(p65)
 いつも多動でいるために一番大事なこと。それは,1日24時間の中から「ワクワクしない時間」を減らしていくことだ。嫌な仕事はどうしたって気が進まない。効率も悪くなるし,能力だって発揮できない。そんなものを背負っていたら,身軽に,そして大量のプロジェクトを動かして生きることなんてできやしない。(p73)
 電話は多動力をジャマする最悪のツールであり,百害あって一利ない。(中略)驚くべきことに,メールやファクスを送ったあとに「今メールを送りましたから」「今ファクスしましたから」と電話を鳴らしてくるバカもいる。(p79)
 他人の目を気にしすぎて,「自分の時間」を生きていない人が多い。限りある人生,「自分の時間」を無条件で譲り渡すようなことをしてはいけない。多くのビジネスパーソンは,上司や先輩の怒りを買わないように無意味なルールに縛られ,「他人の時間」を生きている。自分が参加する必要もない打ち合わせに出て,上司の話をボーッと聞いている。(p85)
 何しろ僕は,どこかのお偉いさんと会っているときも,相手によって太祖を変えたりしないし,先方が天気の話題などどうでもいい話をしているときには,すぐスマホに目を落とし,「自分の時間」を過ごす。(p87)
 「堀江さんの本を読んですごく感動しました。ありがとうございます!」と言われても,「だから何?」としか言いようがない。そんなことは感想文としてアマゾンのレビューやツイッターにでも書いてくれれば済む話だし,わざわざ人の足を止めて伝えるべきことではない。自己満足の報告のために,「僕の時間」を奪わないでほしい。(p93)
 仕事なんていくらでもあるのだから,自ら望んでブラックな現場に留まらなければいいだけだ。「これしか仕事がない」というのは完全な思いこみだ。むしろ,ブラックバイトを辞めない人間がいるからブラックバイトがなくならないという事実に気づいたほうがいい。誰もやらなくなれば,その仕事はなくなるか,時給が上がるか,ロボットがやるようになる。(p99)
 時間の流れは確実に速くなっている。5年前の時間軸で生きていたら,時代に取り残されてしまうだろう。(中略)スマホがあらゆる,隙間時間を埋めるようになったことで,人の「時間間隔」は確実に速くなっている。昔は2時間の空き時間をヒマと言ったが,今は2分の空き時間も耐えられない。(p103)
 誰もが1日24時間で生きているはずなのに,とんでもない数の仕事(遊びのようなものも含め)とやっている活動的な人と,動きの少ないつまらない人がいる。それは努力や仕事量の差ではなく,「原液」を作ることができているかどうかの差だ。(中略)その限られた時間は,自分にしか思いつかないアイデアを出すことや,自分にしかできない発言をすることに集中すべきだ。関わっているプロジェクトの数が少ない人は大体,カルピスの原液を作れていない。他の誰かの作った原液を薄める仕事しかしていないのだ。(p111)
 では,いかにしたら原液を作れるようになるか。それは「教養」を身につけることだ。教養とは,表面的な知識やノウハウとは違い,時代が変化しても変わらない本質的なことを言う。僕は疑問に思うことは,とことんまで徹底的に掘り下げる。(中略)表面的な情報をいくら集めてもわからない。歴史を深掘りし,海外事例まで調べることで,知識の幹となる本質にたどり着くことができる。(p117)
 2016年9月に発刊された『サピエンス全史』は上下巻で分厚いが,教養を体系的に身につけるための格好の書だ。(p119)
 打ち合わせ中に知らない言葉が出てきたら,スマホでさっと調べればいい。わからないことがあれば,目の前の人に聞けばいい。世の中には,そんな簡単なこともできない人があまりにも多くて驚く。(p123)
 パティシエの世界では計量が基本であって,目分量なんてあり得ない。パティシエの世界の常識をちょっと応用するだけで,和食を一変させることができるのである。(p124)
 感情論が何かを解決することは永遠にない。(p136)
 僕は今,自分でも全貌を把握できないくらいにたくさんのプロジェクトを同時並行で進めているが,そのほぼ100%をスマホでこなしている。パソコンすらあまり使わない。スマホの普及によって,僕の仕事の効率は飛躍的に高まった。以前メルマガの原稿を書くときは,MacBookAirを使うことが多かったが,フリック入力のスピードがパソコンのブラインドタッチなみに速くなった今,パソコンを原稿書きに使う必要もない。(p143)
 スマホでApplemusicにアクセスすれば音楽を聴き放題だし,Amazonプライムに登録すれば,音楽だけではく映画やドラマもコンテンツが死ぬほど山積みされている。仕事も遊びも,コミュニケーションも買い物も,スマホで全部事足りる世の中なのだ。僕はスポーツジムでの運動中もスマホは手放せない。15分ランニングしたあと,インターバルを置いて少し休みながら15分歩く。歩いている間にスマホを開き,仕事を進める。(p145)
 仕事が遅い人は決まってリズムが悪い。大切なのは「速度」より「リズム」である。(p149)
 仕事がデキる人には「レスが速い」という共通点があり,忙しい人ほど持ち球を手元に溜めないものだ。(p155)
 仕事がデキない人,仕事がやたらと遅い人は,入り口の段階で仕事の仕分け作業ができていないことが多い。(中略)仕事で行列ができてしまうのは,単純にオペレーションが悪いのだ。(p157)
 僕は刑務所にいる間だって一度もメルマガを休刊しなかった。もちろんパソコンやスマホが使えないのは不自由極まりなかった。(中略)しかし,略語や短縮用語を多用し,できるだけたくさん漢字を使って1枚の便箋に大量のメッセージを凝縮していった。それをスタッフがワードで打ちこみ,メルマガとして発信する。(p161)
 僕が休むことなく週1のメルマガを続けられているのは,マメでも真面目だからでもなく,継続するためにストレスのかからない工夫をしているからにすぎない。(p162)
 僕は毎日,分単位のスケジュールで動いている。目まぐるしいスピードで移り変わっていく予定に,あまりに詰めこみすぎじゃないかと言う人もいるが,僕から見ると他の人が止まっているようにしか思えない。集中するとき,情報をインプットするときはとことんまで詰めこんでやったほうが効率もいい。(p167)
 多くの人は,自分の枠を勝手に決めてしまっているのだ。会食は1日1組,ライブは1日1回,デートは1日1人・・・・・・などなど。そんな常識は誰かが勝手に決めただけで,何の根拠もない。猛烈に何かを極めたければそんなストッパーなんか外して,極端なまでに詰めこまないといけない。(p170)
 「やりたくないこと」はやらない,「付き合いたくない人」とは付き合わないことが鉄則だ。(中略)最初はそんな環境(刑務所)に戸惑いもしたが,次第に,突っかかってくる者がいたとしても,華麗にスルーすればいいのだと悟った。劣悪な人間関係を乗り越えるには「スルー力」が欠かせない。(p179)
 僕は今まで散々世間を騒がせてきた。しかし,その度に思うことがある。「人間の記憶というものは都合良く塗り替えられる」もう少ししたら,ぼくが逮捕されたということすらほとんどの人が忘れてしまっているだろう。人間なんて本当にそんなものだ。(p189)
 恥をかく勇気,失敗する勇気さえもてば,どんどん免疫ができてリスクを取ることを恐れなくなる。この勇気をもつことが何よりも重要なのだ。(中略)成功している社長にはバカが多い。バカだから「恥ずかしい」とか「失敗したらどうしよう」などという「感情」を通り越してやってしまう。(p190)
 たとえ素っ頓狂な意見であっても,膠着状態を破り,一番最初に手を挙げて意見を言える人間は,それだけで価値がある。一人が手をあげれば,あとの人間も手を挙げやすくなる。(p196)
 ディープ・ラーニングの分野は驚くべき速度で開発が進んでいるそうだ。数年前の修士論文に書かれていたレベルの内容を,今は機械学習によって15歳の中学生がたった3日間で完全に理解できるというのである。となると,資格をもっているとか,高学歴であるといった過去の積み重ねは,あまり意味をなさない。今学びたいと思う意思さえあれば,すぐに身につけることができるのだ。つまり,今の時代に生きる僕たちは,マインド次第でいくらでも若返れる。(p203)
 資産や資格をもっていることで,むしろ腰が重くなる人が多い。そんなものさっさと捨てて,やりたいことをやったほうがいい。(中略)なぜ,みんな今もっているものを何とか生かそうという発想になるのだろうか? こういった貧乏根性があると,結局は損をしてしまう。(中略)「●●をしたい⇒●●が必要」というのが筋であって,「●●をもっている⇒●●しないともったいない」というのは大体うまくいかない。(p207)
 あなたが1000万円で買った株が200万円になりました。売るべきですか? 売らないべきですか? みなさんはどう考えるだろうか。 これは東電株の話だったが,ここで重要なのは,800万円の損をしたことはとりあえず忘れるということだ。そして,フラットな目で,今から東電の株を買うとしたら200万円出すに値するのか,それとも200万円あるならば,他の株を買ったほうがいいのかを考えることだ。(p209)
 成功するとみんなハワイに別荘をもちたがるのが,僕には理解できない。安全で快適だとは思うが,新しい発見があるとは思えない。(p213)
 僕が海外を飛び回ったり,たくさんの人と会うことには何か目的があると考える人がいるようだが,そんなものはない。いろいろな人と会ってしゃべればビジネスの新しいアイデアが生まれるからとか,人脈が広がるからといった理由によって,僕は行動しない。ただ楽しいからやるだけだ。(中略)何か具体的な目的のための手段として人生を送ってはいけない。楽しむことだけがすべてなのだ。(p220)

2018年3月5日月曜日

2018.03.05 松浦弥太郎 『自分で考えて生きよう』

書名 自分で考えて生きよう
著者 松浦弥太郎
発行所 中央公論新社
発行年月日 2017.02.25
価格(税別) 1,300円

● 『暮しの手帖』からクックパッドに移り,「くらしのきほん」をスタートさせた。環境が大きく変わったろう。松浦さんって,もともとITに対してのめり込んでいた方ではなかったと思うんだが。どちらかといえば,アナログ派というイメージだった。情報カードにペンシルで手書きというイメージ。

● その松浦さんがクックパッドに移ったんだから,文字どおりの新人の気分だったろう。が,機器の使い方だの,ネットの取り扱いなんぞというのは,すぐに慣れる。
 大切なのはやはりコンテンツ。あとは,本人も言っているけれども,のめり込む度合い。たとえば,更新頻度や間違いの修正に要する時間の短縮など。そういうところで,松浦さんに手抜きはないのだろう。

● といって,本書でクックパッドでのとまどいを詳しく語っているわけではない。松浦流の仕事論,生活論,人生論を本書でも語っている。

● 以下にいくつか転載。
 どんなに立派といわれる仕事や学びよりも,料理や掃除,洗濯という,日々繰り返される家事全般の仕事こそがもっとも尊い行為であり,そこにこそ真実があり,本当の学びや楽しみがある。(p11)
 本来のおいしい味とは,食べながら自分で探して見つけるもので,ひと口食べてすぐにわかるようなものではないのだ。(p15)
 勝負において,圧勝というのは一時は心踊るものである。しかし,圧勝の恐さを忘れてはいけない。というのは,その後に必ず大きな負けも作用するということだ。作用には常に反作用が働くのも自然の摂理。なので,勝ち続けたいなら,たまに負けるのが良い。(p19)
 優れた人は,きっと自分が真似をしたい型を見つけることが得意であるということだ。実はそこに独自性があらわれる。もっと言うと,型を見つけることができたら,目的のほとんどは済んでしまっているようなものである。(p24)
 行き詰ったときは,まわりの人に助けを求めるのが一番いい。もうダメだと思ったら早いほうがいい。(p50)
 英国の老舗靴店で靴を注文したことがある。その店の主人に靴の手入れで大切なのは何かと聞いたら,見えるところではなく見えにくいところの手入れをすることだと言った。とくにヒールだという。(p71)
 おもてなしはしてもらうのが当たり前ではなく,お客としての協力があってのこと。客ぶりの良い自分であれば,いつでもどこでも,すてきなおもてなしを受けることができるだろう。(p73)
 「ありがとうを一〇〇回言うことが,夢や希望を叶える最高の秘訣なんだよ」 知人は実業家として大きく成功している人だから,言葉に説得力があった。(中略)「いや違うんだ。ありがとうを言うのは人だけでなく,モノや植物,空や太陽というような,どんなものにも,ありがとうと言葉をかけるんだよ。そうすれば一日に一〇〇回言うのはむつかしくはない」(p88)
 この知人っていうのは,斎藤一人さんではないかと思った。
 女性が強くなっていくと,さらにわがまま坊やな男性が増えるに違いないのだ。(中略)世の女性たちよ。男を甘やかさないでほしい。(p93)
 自宅であっても退屈したらパソコンを開くのではなく,靴を履いてぶらっと外に出るほうが,どれほど豊かな時間の使い方なのかと思う。(p211)
 餃子は,餡に味つけをして,できればタレを使わないほうがおいしいのだ。(p231)
 蕎麦はわざわざ音を出してすすって食べるのがよいとされているけれど,それは違う。(中略)すする音が出てしまっても許される料理とされてきただけ。(p233)
 「料理は結局,材料である。材料を選ぶことである」という,芸術家の北大路魯山人の言葉がある。(中略)豊かな暮らしとか,心地良い暮らしとか,確かな仕事,価値のある仕事というのは,いかにして良い材料を知り,選ぶかということなのだろう。(p250)

2018年3月4日日曜日

2018.03.04 和田秀樹 『勉強したくなった人のための 大人の「独学」法』

書名 勉強したくなった人のための 大人の「独学」法
著者 和田秀樹
発行所 大和書房
発行年月日 2017.03.25
価格(税別) 1,400円

● 和田さんはすでに,受験生や社会人に向けて,勉強の本を何冊も書いている。その多くをぼくも読んでいる。
 思いだした。ぼくは受験生のときも,合格体験記というのを好んで読んでいた。受験雑誌に載っている勉強法のところを読みひたっていた。そうして,勉強そのものはしなかった。そうだった,そうだった。

● こういう困った性癖は,大人になってからも直らないものだね。和田さんの勉強法の本はかなり読んだのに,勉強じたいが自分の生活の中心になることは,やっぱりなかったな。

● 以下に,多すぎるかもしれない転載。
 独学のメリットは,勉強の時間や進め方を自由に設定できるなど,さまざまあります。ただ,もっとも重要なのは,既成の権威や価値に左右されないところにあると私は考えます。(p4)
 あなたは,知性とはほど遠いような学者もたくさんいるという現実を,きちんと認識しているでしょうか。(p4)
 相手が専門家であろうがなんであろうが,疑問に思ったことがあれば,率直に疑問をぶつける。専門家であっても,正しいことを言うとは限らない。私は,それこそが本物の知性であると考えている(p9)
 私は,勉強熱心な社会人の多くが,ただインプットすることに夢中になっているように思えます。(中略)大切なのは,インプットするだけではなく,学んだ知識を自分なりにアウトプットすることです。(中略)どれだけ独自の観点からアウトプットできるか。勉強の成果は,そこにかかっています。(中略)つまり,これからの時代,本当に必要とされるのは,他の人とは違う視点からアウトプットできる人なのです。(p12)
 日本人の多くは,学校を卒業してから勉強をしないまま一生を終えているのではないでしょうか。(中略)人生を分けるのは,大人になってから勉強をしているかどうか,です。(p29)
 資格試験やカルチャースクールなどでは,基本的に先生から一方的に教えを受ける形式で勉強します。このとき,私たちはなんとなく「正解を教えてもらう」という意識で先生のお話を聞いています。(中略)けれども,私は「これしか正解がない」という発想は非常に息苦しいと考えます。(p34)
 健康寿命を延ばすには,体を鍛える必要があるのはもちろんですが,脳の老化対策も重要となります。(中略)1人でコツコツと勉強する意欲がある人は,超高齢者会にあっても,健康的で若々しくいられるのではないか,と私は考えます。(p40)
 勉強のテーマは多種多様ですが,とにかく楽しい勉強,面白い勉強に取り組むのが基本です。(p42)
 私が提案したいのは,普段使いのパソコンとは別に,勉強用のパソコンを別に1台持つ,という方法です。(中略)ネットにつながないパソコンは,原稿を書くためだけに使用します。(中略)余計な機能はいりませんから,低価格のパソコンでも中古品でも十分です。(中略)書くことにしか使えないパソコンがあれば,単純に「書く」という行為に集中できます。勉強用パソコンを使っているときは勉強に集中する,というルーティンが完成すれば,こっちのものです。(p63)
 政治であれ,歴史であれ,科学であれ,ワインであれ,勉強した内容を面白く語る。それができれば大人としての魅力は高まります。(p69)
 あなたがもし独学を志すのであれば,既存の学説をたくさん身につけるなどという,情けない目標を持たないでほしいのです。(p74)
 何を学ぶにあたっても,既存のフレームワークに類型化して安心していると思考停止に陥ります。あらゆる可能性を模索するスタンスを忘れないようにしてください。(p77)
 ユニークな意見を言うために必要なのは,大胆な仮説を立てることです。どれだけ荒唐無稽な説であっても,仮説を立てるのは自由です。一度仮説をたてると,その仮説を立証するための材料を得ようと努力します。大切なのは,その努力です。(p78)
 日本人が「ノーベル賞」や「有名大学の教授」といった肩書きに弱すぎる証拠に,万が一,ノーベル賞学者が週刊誌で不倫疑惑を報じられたら,一転して世論のバッシングの嵐に遭うはずです。私にしてみれば,研究者の人格に問題が会っても研究の価値自体は揺るがないと思うのですが・・・・・・。(p87)
 数学オリンピックで金メダルを獲得するような人は,数学者としては大成しないと有名な数学者から聞いたことがあります。数学者の中では数学的な「問い」を立てられる人こそが優れているのであって,問題を解くだけの人は二流以下とみなされるからだそうです。(p90)
 私は知識を詰め込む教育を否定はしません。日本だけでなく,諸外国でも初等中等教育は詰め込み式の発想で設計されています。(中略)ところが日本の場合は,大学に進学しても,一方的に教授の学説を教えてもらうだけで,自ら考える場にはなっていません。(p96)
 大人にとっての頭の良し悪しを分けるのは,知識量ではなく,「答えが1つだと思っているかどうか」と私は考えています。頭が悪い人は,正解が1つしかないと決めつけています。(p98)
 「儲けたい」という人間のインセンティブよりも,「損をしたくない」というインセンティブのほうが3倍強く働く--端的にまとめるとカーネマンはこのような理論をきちんと数式化して,2002年にノーベル経済学賞を受賞しました。(p105)
 日本では精神分析の治療で医者や心理学者が食べていくのは至難の業です。ところが大学の教授になれば食べていけるので,理屈ばかり言って,論文ばかり書いている人が分析の世界では主流です。結局は,その手の大学の先生が何十年も前の理論をもとに,患者さんの心を平気で踏みにじるような「治療」を行っているわけです。(p108)
 外国の人は,「会話はできるけど話の中身がない人」よりも「会話はおぼつかないけど話に中身がある人」の話を聞きたがります。それは立場を逆にしてみれば当然です。(p119)
 仕事ができる人,勉強ができる人ほど,休むべきときにはきちんと休んでいます。大切なのはメリハリです。力を出し切ったと思ったら,とにかく体を休めるのが先決です。(p137)
 ビジネス書にいたっては,売れているものでも3~5万分が相場ですから,内容のあるビジネス書を読んでいれば上位1%どころか,0.5%に入ることができます。知的レベルが上位1%に入れば,少なくとも失業の心配は不要でしょう。ちなみに,ビジネス書やビジネス誌の購読層は首都圏に集中しているのが実情です。(p156)
 今ほど,読書によって周囲を差をつけられる時代はないと痛感します。(p157)
 たとえば,簿記の試験に合格するという目標を立てたときに,会計学のテキストを購入するのは順序として間違っています。資格試験を受けるなら,まず過去問を集めた問題集を入手するのが基本中の基本です。(p158)
 若い人にぼくが最も伝えたいのはここだ。実践知として,有益このうえないのは,ここのところだ。まず過去問にあたってみること。そのときの自分の学力は度外視していい。とにかく過去問にあたること。
 当然,大部分はわからない。だから解答と解説を読む。そうしてとにかく,3年分なり5年分(それ以上は無意味)の過去問にすべてあたること。
 で,解答と解説を読んだあと,さらに同じ過去問を解いてみるのだ。すでに解説を読んでいるのだから,今度は半分くらいはできるだろう。そして,また解答と解説を読む。2回目からは解説を読んでもわからないところは,人に訊くなり参考書にあたるなりしてもいいだろう(今ならネットをググるという手もある)。
 それを繰り返す。5回も繰り返せば,全問正解に至るだろう。5回でダメなら全問正解になるまでやるのだ。それでおそらく,大学受験や資格試験はパスするだろう。なぜなら,本番でも同じ問題しか出ないからだ。どういうわけかそうなのだ。
 この勉強法を若い頃に知っていれば,まぁ東大くらいは入れたかもしれない。そのくらい有効な方法だ。
 何か新しいテーマを知ろうとするときに,著名な著者のテキストや定評のある教科書から読もうとするのはリスクが高すぎます。(中略)まずは,見栄を張らずに手ごろな「入門書」から手にとればよいのです。(p158)
 精神分析の本でも,自分に基礎的な知識があれば,一部分を読んだだけでも著者の理論をある程度把握できます。むしろ部分的に読むだけでも,1冊を隅々まで読むのとあまり変わらないのではないか,と思えるようになったのです。(p174)
 熟読する部分の選び方がわからないという人には,あれこれ考えずにとりあえず1章だけを熟読する読み方をおすすめします。私が著者としてたくさんの本を執筆してきた経験からいうと,著者が本を通してもっとも主張したい内容は1章に書いてあるケースがほとんどです。(p178)
 「正しさ」にとらわれすぎると,考えの幅が広がりません。他の人とは違う視点で,どのような主張を提示できるか。それを考えてほしいと思います。(p199)
 ブログでは主張したいことを妥協しないで書いているので,ストレスの解消に大きく貢献しています。そして何より文章を書く行為は,日々の勉強を下支えしています。(p204)
 私はたくさんの本を出版しているので,博覧強記のように思われることもありますが,まったくの誤解です。本を書くという仕事があるから,いろいろとものを調べたり,人から話を聞いたりします。そうやって学んだ材料を,著書を通じてアウトプットする過程で知識が自分のものとなっているわけです。(p205)
 つまらない文章になるのをおそれず,わかりやすく書けばいい(p207)
 一般的な論理展開に,「①問題提起」「②意見提示」「③展開」「④結論」の4部構成があります。(中略)この論理展開をマスターすれば,文章が格段に論理的になります。型にはめて書けば,いろいろなテーマで文章を量産できるようにもなります。(p208)
 私の場合は,まずコンテづくりを行います。コンテというのは,どんな内容を,どんな順序で書くかという見取り図です。(中略)短いコラムのような文章を書くときも,最初は簡単なコンテを作るのをおすすめします。箇条書きでも十分です。内容のモレを防ぐ効果もあります。(p212)
 「相手はわかっているはず」と思う内容であっても,実際には相手が知らないケースがはるかに多いのです。(中略)省略するよりも,むしろ丁寧すぎるくらいの文章を書いてください。(p218)
 灘高校に通っていた当時,英語の先生が「英作文は英借文だ」と語っていました。(中略)自分が表現したい内容に近い英語の文章を見つけてきて,単語を入れ替えたほうが書きやすいし,自然な文章になるというわけです。(p220)
 定年になれば,時間がいくらでもできるから,それからにしようとか,今はちょっと忙しくて,と思う人も多いかもしれません。しかし実は,人間の脳の前頭葉と呼ばれる部分は,40代から萎縮が目立つようになります。ここが萎縮すると,なにごとも意欲がだんだん衰えてしまうのです。(中略)結局のところ,時間ができたころには意欲が衰え,「ま,今さらいいか」ということになりがちなのです。そういうことを避けるためにも,意欲のある今のうちに勉強を開始したほうが懸命です。(p227)
 毎日進化を続けられるなら,歳をとることはなにも怖くありません。長く生きるほど強くなれるし,賢くもなれるのです。そして,そのために残された時間も十分あります。うまくいかないことがあっても,またやりなおせる。(p229)

2018年3月3日土曜日

2018.03.03 茂木健一郎監修 『脳に効く写真』

書名 脳に効く写真
監修者 茂木健一郎
発行所 エムディエヌコーポレーション
発行年月日 2017.04.01
価格(税別) 1,300円

● 監修者の茂木さんによれば,「脳の中では,喜怒哀楽などの感情に関する情報処理は,すばやく行われることがわかっています。(中略)そのように感情の「準備」ができた後で,大脳皮質が,ゆっくりと情報処理をしていきます」(p2)ということらしい。
 写真は感情に直接訴えるということだろうか。そこに本書の意義がある,と。

● ぼくはサラッと読んだ(見た)だけなので,こういうものが本当に「脳に効く」のかどうかは未検証。

2018.03.03 フレデリック・ヴァン・レンスラー・ダイ 『マジック・ストーリー』

書名 マジック・ストーリー
著者 フレデリック・ヴァン・レンスラー・ダイ
訳者 野津智子
発行所 ソフトバンクパブリッシング
発行年月日 2004.12.14
価格(税別) 1,000円

● “プラスの私”と“マイナスの私”。どちらを自分の支配者にするか。それによって成否は決まるよ,ってのを物語仕立てにしたもの。同じようなものがこれまでずいぶん出ている。

● 自分でも読んでおきながらこう言うのはルール違反だと思うんだが,これは大衆が読むもの。つまり,普段は本を読まない人に読ませようとして出版されたものだろう。あわよくばベストセラーに,と。
 つまりだ,こういうのを読んでるようではとてもダメだな。

● けれども,働き盛りの人たちの中にウツになるほど気が弱る人がかなりいるはずだが,そこまで落ちこむ前に,一服のカンフル剤として読むのはありかもしれないと思う。
 しかし,カンフル剤としても効果は限定的であることを承知しておくこと。