2018年4月6日金曜日

2018.04.06 出口治明 『ビジネスに効く最強の「読書」』

書名 ビジネスに効く最強の「読書」
著者 出口治明
発行所 日経BP社
発行年月日 2014.06.09
価格(税別) 1,400円

● 副題は「本当の教養が身につく108冊」。

● 「まえがき」に次のような記述が出てくる。
 今は,ベンチャー企業の経営に手いっぱいなので,平均すれば,週4~5冊を読むのがやっとです(昔は,その倍くらいは読んでいました)。寝る前の1時間本を読むことは,歯磨きと同じくらいの習慣になっています。活字中毒のきらいがあるので,新幹線や地下鉄で移動中も眠っていなければ,大体は本を読んでいます。読み始めるとすぐに没入してしまうタイプなので,今でも,週に1回ぐらいは地下鉄を乗り過ごしてしまいます。週末は予定がなければ,ほとんどの時間を読書に充てています。(p2)
 ちょっと待てや。経営に手いっぱいなのに,週4~5冊を読むって,おまえは人間か,と言いたくなるではないか。しかも,本書で紹介されている本は,いわゆる自己啓発系の無内容な本とは違うのだ。本格派だ。
 それを週4~5冊読むとは何ごとか。年間なら260冊だ。サラリーマン時代は年に500冊を超える本を読んでいたということだ。さて,そういう怪物が語ることが凡人の役に立つのだろうか。

● 本編にはこんな記述もある。
 しばし熟考して,頭を保有から貸借に切り替えました。ちょうどロンドンへの赴任が決まった時期(1992年)でした。社宅も引っ越さなければなりません。思い切って,蔵書はすべて古本屋さんに引き取ってもらいました。(中略)それからは近くの図書館で借り,図書館にない本に限って購入する,というパターンに変わって現在に至っています。(p83)
 そりゃそうだ。そうしないと家中が本で埋もれてしまう。家は家族の生活の場なのだ。本が占める面積は一定範囲に抑えないと,生活が破綻してしまう。ついでに,読み終えた本はどう処分しているのかも教えてほしい。

● 本の読み方については,次のように言っている。
 読書はスポーツと一緒です。(中略)ある程度読み応えのある本を読んで脳に負荷をかけなければ,「考える力」が鍛えられませんし,貴重な先人の経験も身につきません。(p51)
 学生時代に,恩師から次のように教わりました。「古典を読んで分からなければ,自分がアホやと思いなさい。現代に生きている人が書いた本を読んで分からなければ,著者がアホやと思いなさい。読むだけ時間の無駄です」と。(中略)私はどんな本でも最初の4~5ページをきちんと読んで,そこで面白くなければその本は捨てます。面白ければ一字一句,腹落ちするまで精読します。オールオアナッシングです。(p148)
 私は人の話を聴く場合でも原則としてメモは取らず,集中力を高めて頭の中に取り込むタイプなので,本に線を引いたり書き込んだりすることは全くありません。(p150)
● 以下にいくつか転載。
 「花には香り,本には毒を」,あるいは「偏見なき思想は香りなき花束である」。本についての箴言では,この二つがたまらなく好きです。(中略)読後に,毒素が体の奥深く沈殿して,時間をかけてゆっくりとその毒が体中に回ってくるような,そんな本が大好きです。(p1)
 私が個人的に尊敬している歴史的なリーダーは,紀元前6~5世紀に活躍したアカイメネス朝・第3代王のダレイオス1世大王と,13世紀に生きたモンゴル帝国・第5代皇帝のクビライが双璧です(p16)
 リーダーシップを学ぶ際,リーダーシップを抽象的に論じるよりは,生きた人間のケーススタディーを通じて具体的に学ぶ方が役に立つと私は思います。塩野(七生)さんの本(『ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以前』)は,カエサルについての総まとめに最適です。(p22)
 リーダーに必要なのは,たくましさなどといった表面的なイメージではなく,強い思いを持っていて絶対にそれを捨てないという内面の資質です。思いを捨てなければ望みはかなうのです。(p26)
 「経済指標はGDPだけじゃない,人々の幸福度を測る幸福指数の方が重要だ」などと言う人もいますが,幸福については,ともかくご飯代をサステイナブルに稼げるようになってから考えましょうと言いたいです。私はGDP派です。そもそも高齢化が進む中で,お金がなかったらセーフティーネットもつくれません。(p35)
 『韓非子』と『ブッデンブローク家の人びと』は高校生の時,『王書』は社会人になってから読みました。大学を出て日本生命に入社した時,『韓非子』の登場人物のいわばミニチャ版が会社の中にたくさんいることに気がつきました。(p37)
 仕事に悩んでいる時に心の支えとなるのは,どんなすごい人でも実はみんな悩んでいた,という当たり前の事実を知ることではないでしょうか。人の悩みのほとんどは,実は人間関係から生じます。(中略)それは古来変わっていないと思います。(p47)
 本当に仕事で悩んでいるエグゼクティブが軽いものを読んで癒されると思うのは大きな間違いです。悩みに匹敵するような,ずっしりと重いものを読まなければ,どだい解決にはなりません。(p49)
 人間の歴史を見ていると,世界を変えようと思って立ちあがった人の99%以上は失敗しています。「成功なんかするはずがない」というのが人生の真実です。その通りです。この事実をきちんと理解したうえで,自分の頭で考えて行動するのです。(中略)行動しなければ世界は一切変わらない。宝くじを買ったつもりでダメモトで自分も頑張ろうと思った人の中の1%以下の,たまたま成功した人が世界を変えてきた。それが人間の歴史です。(p54)
 世界政府ができると亡命先がなくなってしまうように,一元管理ほど人間にとって危険なものはないのかもしれませんね。(p79)
 人間は楽観論よりもむしろ悲観論を好むということに気づかれたのではないでしょうか。人間は必ず死ぬ運命にあるので,どうしても未来を悲観的に見たくなる動物なのかもしれません。(p80)
 女性は恐ろしいということかもしれませんね。誰かが言っていた言葉の受け売りですが,「地球上で最も太い神経を持っている男性の神経の太さは,地球上でもっともか弱い女性の神経の太さの半分にも満たない」。(中略)男って女性から見たら本当に甘っちょろい,精神的にも弱い動物かもしれません。(p94)
 政治とは,つまるところ税金の分配。税金の分配とは何かと言えば,公共財や公共サービスの提供です。であるならば,政治のベースにあるのは「公」であるはずです。(p110)
 最近,「支持する政党や政治家がいない場合は白票を投じよう」「選挙に行かないことも市民の一つの意思表示だ」などという人が増えています。自己満足のためならそれでもかまいませんが,今の政治制度の下では,選挙に行かないこと,あるいは白票を投じることは比較第一党に入れることと結果的には同じです。(中略)白票を入れととか棄権しろなどという一種の感傷主義からは早く脱却してほしいと思います。(p113)
 (エドマンド)バークは何を言おうとしたのか。私の理解では,バークは人間を本質的にものすごくアホな存在であると考えていたのだと思います。そのアホな人間がいくら理性で考えても,大したことは考えられない。だから理性万能主義ほど恐ろしいものはないのだ,と捉えていたようです。(p118)
 国際政治の底流には,表層的な情報を追っているだけでは絶対に分からない何ものかが横たわっています。ゆえに,国際関係における突発的な問題が起こった時,メディアの情報だけを追っていては何も本質が理解できません。(中略)これからの国際政治を考えるためにはマッキンダーとマハンぐらいは勉強しておかなければダメだよと教わりましたが,今でもこの教えは色あせていないと思います。(p142)
 「ふりをして」忙しくしてみることも情念にかんじがらめにされないで生きるコツかもしれません。ヒマだと人間はろくなことを考えませんから。(p172)
 「『済んだことに愚痴を言う』『人を羨ましいと思う』『人に褒めてもらいたいと思う』,人生を無駄にしたければ,この3つをたくさんどうぞ」という言葉がありますね。(p177)
 旅が楽しいのはなぜでしょうか。人間をホモ・モビリタスと呼ぶ人もいるぐらいで,人とは実は移動する動物なのです。(p182)

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