著者 岡田斗司夫
発行所 マガジンハウス
発行年月日 2012.12.20
価格(税別) 1,500円
● 本書のキーワードは「評価経済社会」。前提にあるのは誰もがネット(SNS)を使うということ。SNSはプライバシーを自ら進んで公開するもの。したがって,ネット上では誰もが評価の対象になる。そこで「いいひと」戦略が活きてくる,と。
ネットに対するリスペクトが基本にあるわけだ。その些細な例として著者があげているのが“食べログ”。今,“食べログ”がなかったら,どうやって行くべき店を特定するのか。かつてのように店構えを見て判断するしかない。それよりも“食べログ”を見て決める方が間違いがないではないか。
● このあたりが著者の価値観(?)に対する賛否が分かれるところだろう。“食べログ”なんぞよりも,店構えの方が雄弁だと思う人がいるはずだからだ。
“食べログ”を書いた人と自分とでは,好みも年齢も違うだろうし,そもそも信頼できる味覚の持ち主かどうかはわからないではないか。それよりは自分の勘の方が信じるに足る。そう思う人が,少なくない数いると思う。
● そもそもがネットやSNSをそんなにリスペクトしていいのか。「ネットはバカと暇人のもの」ではなかったのか。SNSを怖いものとして捉えている人もいると思う。それが間違っていると言えるだろうか。
評価されるのがイヤだからSNSは使わないというのは,怯懦なのか賢明なのか。
● 結局,ぼくには著者の見解を判定することができない。著者の十分の一もネットを使いこんでいないだろう。経験の絶対量が足りない。
しかし,だ。「評価経済社会」といっても,ネット上で評価してもらえるところまで行ける人は少ないと思う。大半の人は,評価以前,誰の目にもとまらないで終わるのじゃなかろうか。
というわけなので,SNSの裾野が広がるほど,ネットは貴族社会になる。貴族にあらずんば人にあらず。そういう状況になるのではないか。で,大半の人たちはネット上で広場の孤独をかこつことになる。
● ただし,著者の助言にしたがって,Twitterでフォローしてくれている人には,すべてフォローを返した。
● 以下にいくつか転載。
「いっけん損に見える言動が,実は長期的には利得になる」 これが本書で述べている「いいひと戦略」です。(p7)
現在では,今いる場所や夕食のメニューなど,情報価値がほとんどゼロの内容をつぶやくのは,違和感のない行動です。私たちは既に,ネットが登場する以前のように考え,行動することができなくなっています。(p17)
モノや情報を提供する人と,それを受け取って利用する人。この両者が相互に評価し合うシステムが経済評価社会です。これまで評価する側だった私たちが,同時に評価される側になる日が,既にやってきているのです。(p19)
アドバイスを素直に聞き入れられる人は,10人に1人いるかいないかでしょう。人の欠点を探したり,改良点を提案したり,悪口を言うのは,全て「イヤな人戦略」です。(p22)
「心」の美しさや綺麗さなどではなく,人に親切にするという「行為」が自身の幸せを決めているのです。(p25)
日本の景気が良くなったとしても,二度と広告なんかに使うことはないでしょう。お金で評価を買うことの効率の悪さに,みんな気づいてしまったから。(p41)
スキルが高い人なんて,外注で充分です。(中略)本当に必要な人間は,周りの人の仕事の邪魔をせず,楽しく強力し合えるグッド・ネイチャード・パーソンというわけです。(p66)
娯楽作品とうものはその時代その時代で失われつつある価値観をベースにしているものです(p108)
相手の懐へもう一歩だけ踏み込んで,まず共感してあげる。改善点の提案はそのあとで充分。(p124)
ブログやTwitterやFacebookといったメディアは,個人のプライベートな情報を映し出すものです。(中略)そして,この情報公開の波はもう止めることができません。プライベートな情報-実名や年齢や顔写真などを公開すればするほど,信頼できる人間に見えるようになるから。(p126)
批評性は物事をいろんな観点から考えるうえで大切です。これがあるからこそ,私たちは思考を深め,進めることができる。でも,それを人に対してのべつまくなしに発揮してたらダメ。距離を置かれてしまいます。(p136)
クローズドなコミュニティで集まっていると(中略)「伝える力」も失いやすくなります。(中略)だから,組織やコミュニティは常に外部に対して開かれていなければならない。「パブリック」な存在として外部の視線に晒されていなければならない。(p142)
新人が入らない組織というのは,必ず時代に取り残されます。(p143)
有名人のフォロー数とフォロワー数のバランスって極端ですよね。(中略)その戦略は,せっかく自分に興味を持ってくれた人を自ら手放してしまうようなものです。(中略)フォローされたら,とにかくフォロー返しする。これを原則にしましょう。(p149)
私たちは「得られるもの」よりも「失うもの」に目を向けてしまいがちです。これは思考の癖のようなものですが,だから情報を公開することのリスクばかり考えてしまう。でも,「得られるもの」にも目を向ければ,そんなに怖いものではないことが分かります。(p152)
学びは4つのプロセス--「理解する」「やってみる」「成果を得る」「教える」で完結します。(中略)とりわけ最終段階の「人に教える」という仕上げのプロセスで,学びは飛躍的に向上します。(P166)
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