2020年2月22日土曜日

2022.02.22 出口治明 『世界史の10人』

書名 世界史の10人
著者 出口治明
発行所 文春文庫
発行年月日 2018.09.10(単行本:2015.10)
価格(税別) 760円

● 『世界史の10人』の中で最も印象に残ったのは,ロシアのエカチェリーナ2世。人間的な,あまりに人間的な。といっても,あり得ないほどに強靭な。
 ロシアとは縁もなく,ロマノフ家の血は一滴も入っていない。“自分のため”が“ロシアのため”と結果において一致した。その基底にあるのは彼女の覚悟。

● 以下に転載。
 四人の歴史上のj性をリーダーとして選びましたが,彼女たちの歩みをみていくと,その前に力強いロールモデルがいたことがわかります。(p10)
 それは,軍隊と役人,つまり軍事組織と官僚組織です。このシステムを備えないかぎりは,リーダーが言えればその集団も消滅してしまう。(p10)
 大都は二つの特徴を持っています。いとつは,海につながるように設計されていること。もうひとつは,中国歴代の首都の中で,何もない更地にゼロから立ち上げた都はここだけだということです。(中略)これはマンスールがやはり更地に開いたバグダードと同様の発想です。(p68)
 仏教は,今から二千五百年くらい前にブッダの教えという形で始まったものです。当時は気候も温暖で,鉄器の使用によって世界各地で高度成長が始まり,社会が豊かになってしました。(中略)食うや食わずの社会では,どれだけ立派な人物でも誰も面倒を見ないので知識人は生きてはいけず,また文化も生まれません。事実,ソクラテス,孔子,ブッダは同時代に活躍しています。(p76)
 そもそも宗教は,それ自体にエネルギーがあり,是が非でも布教したいと思う人々がいてこそ,遠くにまで伝わるものだと思います。(p78)
 朱子学は,モンゴルのグローバル政策に乗り遅れた人々にとってのうっぷん晴らしだったという一面があります。(p83)
 大陸・亜大陸は,横にいくら旅をしても気候は変わりません。よって,そこに生息する病原菌は同じですが,縦に長い場合は,気候が変わるため病原菌も異なります。そうなると抗体も違ってくるので,人間が南北に移動して別の土地に映ると,未知の病気にかかって死亡する確率が高まる。これを経験から知っていた人々は,移動を控えるようになったのでしょう。(p106)
 白村江以前にも,倭国は何度も半島に派兵していますが,それは,倭国が(中略)傭兵を輸出する政策をとっていたからではないか,という説があります。(中略)倭国が傭兵を派遣したことに対する報酬の最たるものが,実は,中国から半島に伝わっていた漢字や仏教だったのではないか。(p119)
 どの国でも整合的なパッケージで政策を遂行するのはとても難しいことで,普通なら部分最適を集めても全体最適は得られないものです。それを王安石がやってのけたからこそ,軍事力が強くなくても,宋は長続きできたのです。(p160)
 われわれが頭に描く日本文化は,もとをtだせば,ほとんどすべてが宋の文化です。禅や浄土教,茶道も宋から日本に伝わり,日本で発展したものです。(p160)
 大英帝国に追いつき追い越せが至上命題であったドイツの人びとにとって,「あちらがローマなら,こちらはそのローマを破ったゲルマンだ」と考えたのは,けっして悪くないアイデアだったと思われます。(中略)そもそもゲルマンとひとくくりにできるような民族はいなかったという説が有力となっています。(p166)
 (アリエノールが)こうした強い意志をもってやりたいことをやりとげたのは,ロマンティストだったからこそだろうと,私は思っています。歳をとっても夢見る気持ちがなければ,人は保守に傾きがちです。(p188)
 リーダーを評価するとき,人はともすれば,大きな方針を立てて強引に引っ張っていくベンチャー経営者型,理想化肌のリーダーを高く評価しがちです。でも何もしなくても,要は従業員や市民が幸せになれば,それでいいのです。(p252)
 この反乱でエカチェリーナ二世はリアリズムに立ち戻ります。夢のような理想論はよくない。民主主義も議会もまだまだ時期尚早であって,大貴族や軍隊の力を借りなければこの国は治められないと,悟るのです。(p273)
 人間,人生の岐路に立たされたとき,身近にロールモデルがいるかいないかが決定的に重要だと,私は思います。(p277)

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