著者 大島 清
発行所 新講社
発行年月日 2006.03.13
価格(税別) 1,300円
● 大島清さんといえば,“歩け”の人というイメージ。本書ではそのほかに,異性への関心を失うな,語彙を増やせ,若い人の意見を拒むな,好奇心を失うな,ということが説かれている。
そうしなければ老いを早めるのであろうし,老いないからそういうことができるのでもあるだろう。鶏と卵になるけれども,ぼくらは老いに直接手を突っこむことはできない。
だとすれば,異性への関心やお洒落心を忘れないように努めるほかはないのだろう。
● 以下にいくつか転載。
「老化」というのはものごとを後ろ向きにしか考えられないということだ。新しいことに挑戦する意欲もなく,あたかも枯れ葉が風に吹かれて同じところをグルグル回っているような,そして風がやめば地にへばりついてしまうような状態のことである。(p21)これって,若い人の中にもいるかもね。っていうか,ぼくはずっとそうだったかもしれない。
老いというのは年齢だけの話ではない,というのは本当なのかね。
昔の本は,そもそも黙読用でなく,声を出して読むようにリズムが整えられていた。あるご高名な方のエッセイだが,親鸞の「歎異抄」をいくら読んでも内容がわからなかったのが,声を出して読んでみたらスラスラと意味が頭に入ってきたとあった。(p21)
「自分は頭が悪い」と思っている人は,そう思うことで実際に頭が悪くなっている。(p24)
人生の成功というのは,脳が気持ちいいと感じる時間をどれだけ持てるかにある。「やった」という瞬間,「わかった」という瞬間をどれだけ持てるかにある。そういう体験の多さこそ脳年齢の若さになる。(p29)
定年を迎えるとタップリ時間がある。さて暇なときと忙しいとき,どちらがたくさんの趣味や勉強をこなせるだろうか。暇なときのように思えるが,案外これが逆である。(p34)
好奇心は,脳細胞を活性化させるのに欠かせないものである。なくなってしまえば,脳年齢はどんどん老化する。聞くのが恥ずかしいと思うのは,この流れを加速することである。脳にとって,「恥」は巨大なフタになる。(p40)
語彙が増えるということは,脳の回路がそれだけ複雑になることだし,増えた語彙の言い回しは,新たな思考回路の成立ですらある。語彙の不足は脳の危機だ。(p51)
ふだんから自分の意見をまとめる訓練をしておくのはよいトレーニングになる。新聞の投書欄,雑誌の投稿欄を活用するのはひとつの手だ。(p56)今だとTwitterなどで自分の意見を簡単に公表できる。Twitterを活用するのも手なのだろう。ただ,編集者という第三者の関門なしに流通させることができるから,Twitterの現実はゴミの山ではあるのだが(→オマエが言うな)。
食事はゆっくり楽しんでするものである。食事を視点にして人生を見れば,人生とは食事と食事の間に,仕事をしたり寝たり恋をしたりすることだとわかる。(p71)
料理は前頭連合野の創造性はもちろん,味つけの段階で大脳辺縁系が加担する全脳的な行為である。(p75)
年齢に関係なく異性との会話は知らない間に脳の刺激になっていることが多い。男性と女性では脳の使い方が違い,それゆえ発想が異なるからだ。(p86)
すべて,一般論でくくってしまうのである。若い女性のヘソ出しルックを見れば,恥ずかしくないのかと眉をひそめる。募金には偽善という言葉が頭にまず浮かぶ・・・・・・。感性が大味で視野が狭い。自分と同じような環境,同じような世代としかつき合わないからこういう無惨なことになるのだろう。(p94)
聞き役に回るのはいいものである。わたしは年下の人と話すときは,聞き役に徹する。(p95)
年を取っても足腰が丈夫な人は若い。脳もハッキリしている。なぜ若いのか。歩くことで脳が刺激を受けるからだ。(中略)歩く努力は惜しまないほうがよい。(p105)
つねに新しいことに挑戦し続ける前向きな姿勢こそが脳を元気にさせる。好奇心,冒険心,探求心が脳を刺激する。「おカネがないから」のひと言で,昼寝を決め込むようなことをしていたら,ないのはカネ以前の能力だということにもなりかねないだろう。(p113)
こういう「~しない」「~できない」という姿勢も,脳のフタである。そんなことを言って酒を飲みながら,五年も六年もうだつの上がらないサラリーマンをやっている人がいるが,五~六年と言えば,やる気さえあればどんなことでもできる時間だ。能力のない人は時間も無駄にするようだ。(p113)
少しでもかっこよく見られたいと思う意識は,若さを保つ秘訣である。異性に関心がなくなったとき,脳年齢は確実に老いる。(p125)
上手い悩み方は,脳にただようモヤモヤを全部言葉にして吐き出してしまうことだ。(中略)脳は言葉でもって考える。悩みごとやトラブルは言葉として脳の中にある。いつまでも脳の中で反芻していたら感情が高ぶっていけない。(p132)
決めつけてしまっては何も新しさは生まれない。型にはまっていれば安心ではあるが,言葉を換えれば,それは脳の怠惰である。それを避ける方法は,変なもの,非常識なもの,バカバカしいものを笑わないことだ。(p141)
失敗とかミスや偶然を,神の啓示と見なせるのは相当に蓄積があってのことである。「セレンディップ」という幸運は,そのような脳に訪れる。けっして果報は寝て待てということではない。(p143)
0 件のコメント:
コメントを投稿