著者 茂木健一郎
発行所 東京書籍
発行年月日 2015.07.04
価格(税別) 1,500円
● 著者がすでに何度も書いていることを聴衆相手に講義した。それを文字化したのが本書。
内容をひと言でいうと,ドーパミンが出るような生き方をせよ,ということ。では,具体的にどうすればドーパミンが出るのか。それが本書で語られている。
● 以下にいくつか転載。
脳の神経細胞がつなき変わることを「学び」といいます。(中略)生まれた時から死ぬ時まで学んでない瞬間なんてないんです。(p13)
優等生だけで集まると,人間の幅が狭くなる。テロリストってインテリが多いんだよね。(中略)だから,優等生ばかりもあまりいい状況じゃない。(p19)
ドーパミンというのは,初めてのことをしないと出ないんです。(中略)ドーパミンって挑戦しないと出ないんですよ。「うれしい」時に出るっていっても,「うれしい」だけではそんなに出ないんです,チャレンジしないと。(p28)
新しいことに挑戦している時は時間が長く感じられるということは,実は脳科学で証明されているんです。(中略)ということは,最近,時間が速く経つと感じる人は,新しいことをやっていないっていうこと。(p30)
自分の常に慣れ親しんだ領域で何かをやるんじゃなくて,アウェイでどうするか。これがですね,実は脳が生き生きとまなんでいくためにも,いちばん不可欠なことなんです。(中略)だから自分にとって,まだ知らない世界に挑戦し続けるということが,ね。一番のアンチエイジングなんだよ。(p31)
脳は基本的に感覚と運動のループが成立しないと,本当にあるものをマスターしたとはいえません。(中略)「話す・書く」という運動性の学習と,「聞く・読む」という感覚性の学習とのループができて初めて,人間は,脳の中で,言葉というものを自分のものにすることができると思うんです。(p47)
感覚的な学習は運動の学習に先行するということは事実なんです。(中略)側頭連合野というところに,素材が入らないとダメなんです。まずはインプットが大事なんです。(p55)
本というのは,読んだ本が自分の足の下に積み重なって,その高さの分だけ世界が見える。広い世界が見えると,僕は思ってる。(中略)インプット,大事なんだよね。世界が広がる。やっぱり,どんどん読まないと。(p56)
ある人について評論を書こうと思ったら,その人の全著作を繰り返し読まなければ書いちゃいけないというのが,小林秀雄さんの基本的なスタンスなんです。だから,大変なんですよ。本当にちゃんとした仕事をしようと思ったら。(p61)
僕は車の免許をとるのがすごく遅くて,30才をすぎて取った。イギリスで取ったの。日本の教習所には,途中で行かなくなっちゃった。(p104)
楽しいと感じられないことには,脳はなかなか本気にならないことが分かっています。(中略)それに,脳には,自分が得られる利益を最大にしようとするはたらきがあります。新しいことに挑戦しても,できない時は,脳が拒絶している可能性があるんです。努力しても無駄だと脳が判断してしまえば,やる気は起こらない。(p107)
生まれもった脳の出来で,得意・不得意が決まっているわけじゃない。できる人も,苦手な人も,ドーパミンは出る。それにね,脳には可塑性というものがあって,いくれでも変えることができるんです。いくらでも,自分の努力で変えることができるんです。(p132)
苦手意識をもっている人ほど,実は最初のひと回りが回ればチャンスなんです。(中略)英語が苦手な人ほど,それができるとドーパミンが出るわけだから。(p133)
僕はたまたま勉強ができたけど,僕みたいに勉強ができる人のことを何て言うか知ってます? これ,意外と理解されていないんですけど,「オタク」っていうんです。(中略)僕は小学校の時から,講談社の『ブルーバックス』とか,そういう科学の本を読んでたんですよ。あと,『日経サイエンス』って『SCIENTIFIC AMERICAN』というアメリカの雑誌の日本版とか。僕は小学校の高学年でこういうのを読んでた。(p140)
好きなことって,かたよっているかもしれない。でも,底がうんと深いと,他のことにもつながっていくわけ。広がっていくんです。(中略)だからね,これってすごく大事なポイントなんだけど,勉強できる子って,別に学校の勉強をやってるわけじゃないんだよ。何かのオタクで,すごく興味あることを勉強しているうちに何か地頭ができてきたとか。(p142)
英単語10個,1分で覚えるのはきついと思う。普通に考えると,これ,つづりまで含めて,30分ぐらいって思っちゃうんじゃないかな。でも,あえて1分でやってみる。そうやってみると,勉強が極端に違ってくるわけ。人間って,無理だと思っても意外と(中略)プレッシャーをかけてやるとできるんだよ。(p148)
集中するのに,静かな勉強部屋なんてなくてもいい。親父が隣でプロ野球見ながらビール飲んでても集中できる,本当の集中力を鍛えなくちゃ。(p152)
自分のためにがんばるっていったって,そんなの1人分のエネルギーしか出ないんだけど,みんなが困っていることがあって,みんなのために何かしようってできたら,すごいエネルギーが出るわけ。百人分,千人分の。でもさ,みんなのためにがんばるためには,ものすごくいろんなことを勉強しないとがんばれない。(p162)
いちばん肝心なことっていうのは,やっぱり「学びの喜び」っていうことなんですよね。(中略)東大に入ることを目的でやってきた受験秀才は,みんな失速してますから,ほんとに。そりゃそうだよ,東大ごときに入ることが人生の目標だったらさ。(p182)
やっぱり,最初に感動がないと,子供の脳は勉強する気にならない。(中略)人間って,人を蹴落として自分だけ甘い汁を吸おうみたいな,そんなことじゃ勉強する気にならないよ。(p187)
人生っていうのは,どうなるか分からない不安というのと楽しみっていうのがある。どっちが強いかでその人の脳の健康さが決まってくる。不安が強い人というのは安全基地が足りない。楽しいだけの人は大丈夫なの。(p194)
自分の欠点とかダメなところをユーモアのセンスで笑える男はなぜモテるのかというと,そういう男性は逆境に強い。例えば,リストラされてもくじけない。(p201)
劣等感って隠しちゃってると,こじれてきます。だから言っちゃえばいいのよ。(p208)
自分の欠点のすぐそばに,最大の長所があるもんなんだよ。だからこそ欠点を冷静に見つめることが大事なんです。(p208)
大人にとっての安全基地というのは(中略)友達との絆,他人との絆です。ホリエモンとか,ああいうベンチャー企業をやる人っていうのは,1人で全部やってると思われるけど,違うの。友達がたくさんいる人ほど,新しいことに挑戦できる。(p215)
ある研究によると,人間の会話の7割は,うわさ話なんです。(中略)アベノミクスについて議論しても絆は深まらない。本当にどうでもいいこと,そういうのをしゃべることによって気持ちいい時間をもって,それで絆を深くする。(p219)
だいたい「天才」っていわれている子供の中で英才教育を受けたケースは非常に稀といいますか。(中略)だいたいの子供の場合,天才的素質は偶然発見されています。才能ってそういうものなんですよ。(p249)
理論物理って,最も専門性が高くて,学問的に狭いものだと思われているわけだけど,その分野でさえ,やっぱりいい仕事をしている人って幅広い教養があるってこと。(p250)
結局どの時代でも,その時代で珍しいことができる人,貴重なことができる人が求められるので,今はもう,メモリの問題に関してはコンピュータに任せておこうっていう流れに時代が変わりつつあるんじゃないかな。(p255)
(ボケないために)大事なのは,新しいことに挑戦することなんですけど,もうひとつすごく大事なことは,体を動かすことです。僕がお勧めしているのは,歩くこと。(p264)
勉強の達成感ということでいえば,遊びのようにやれる勉強がいちばんよく学ぶことになるんですね。だから,仕事でも勉強でも,遊んでいるのと同じような脳の状態になればいちばんいいわけです。(中略)勉強と遊びは決して別々のものじゃなくて,遊びを通しても勉強できるし,勉強を通しても遊べるというのがいいと思います。(p265)
集中って細切れでもいいんです。自分で時間を決めればいいんです。1時間とかまとめてやる必要はなくて,本当に1分でも2分でもいいから。(p267)