著者 茂木健一郎
発行所 日本実業出版社
発行年月日 2016.09.10
価格(税別) 1,300円
● 脳を自在に操る習慣といっても,なかなかね。本書で説かれているのは,自分に無茶ぶりをしろとか,リミッターをはずせとか,行動の基準を他に求めるなとか,集中しろとか,そういうことだ。
それをできる人とできない人がいる。できない人は縁なき衆生かなぁ。もちろん,著者は誰にでもできることだと言うわけだ。
● 以下にいくつか転載。
私たちの脳のパフォーマンスというものは,日々の習慣によって成り立っているので,やる気という特別な感情は脳自体が必要としていないのです。(中略)やる気というのは“雨上がりに見る虹”のような幻覚でしかありません。(p13)
日本人が陥りがちなもののひとつに,「客観性の病」というべきものがあるような気がしてなりません。(中略)自分がどう感じているか,どう判断しているかではなく,外部の基準にその根拠を求めることで,自分で判断しなくてもよくなってしまう。一種の思考停止状態です。(p16)
このメタ認知を利用するポイントとして,「本番中はメタ認知を外して集中し,それが終わったときにメタ認知を起動する」というのが正しい方法だということを知っておいてください。(p29)
世界のトップクラスが実践している,本物のパフォーマンスの基準を上げていく方法とは何でしょうか。それは,「真に良質なものに触れてセンスを磨く」ということに尽きます。東大卒にしても,意識高い系にしても,私が一緒に話をしていて「こいつ,なかなか感性がいいな」と思う人は99%いないと断言できます。(p43)
芸術大学や美大などに行くと,「あ,こいつはセンスがいい」と思える学生が意外にも多いのです。(中略)なにも単純にアートなどに多く触れているから,芸術的センスが磨かれているという意味ではありません。芸術大学や美大に進んだほとんどの学生は,「アートでは食えないでしょ?」と周囲から一度は反対をされた人間です。すなわち,それでもなお自分の“基準”を貫きとおしている強い意志を持っている人たちなのです。(p43)
センスを磨くためには,まずは一般に正しいとされているルールや基準を疑ってみるというところから始めなければなりません。(p47)
岸見(一郎)さんいわく,『ソクラテスの弁明』をギリシャ語で読むと,いままで白黒の世界にいたのが一気にカラーの世界になる,それくらいの強烈な違いがあるとおっしゃっていたのがとても印象的です。著書が翻訳出版されている中国,タイ,ブラジルやポルトガル,そしてスペインといった国の言語をこれから勉強して,現地で講演をする際には現地の言葉で話をしたい,と仰るのです。(p49)
「決める係」の自分をつくるときに,何かしらの根拠を求めてしまいがちですが,根拠など求めなくてもいいのです。ここで肝心なのは,決める係の自分は直感に従って物事を決めていけばいいということ。だからこそ,普段でも小さなことから決断をするという訓練をしてみてください。その繰り返しによって,自分の直感による決断がゆくゆくは根拠を生み出すようになっていきます。(p66)
理想のワーキングメモリをつくるためのとっておきの秘訣をご紹介しましょう。それは,脳のワーキングメモリに蓄えている情報をリスト化するのではなく,まるで一枚の絵のように描いてみるということです。(p68)
これは,私自身のやり方でもあるのですが,手帳やスマホなどで管理するToDoリストはなく,常に頭のなかでダイナミックに内容を更新できるToDoリストをつくって,優先的にやるべきことをそのつど決めて行うようにしています。(p80)
私たち人間の脳というのは,自分の限界に挑戦した瞬間から,変わり始めているのです。(中略)仕事でも勉強でもなんでもそうですが,「自分が変わる」ということ以上に,脳が感動することはありません。(p98)
自分にリミットを設けてしまっている人というのは,予測能力が高い人でもあります。たしかに,予測する能力というのは大事な脳の働きですが,自分勝手なリミットに関しては外した方がいいということ。そこで,「自分はこの程度だ」という脳の予測回路をオフにしてみてください。それに尽きると思います。そのためには,次のような心がまえを持ってみてはいかがでしょうか。「とりあえず,目の前のことを刹那的にがんばってみよう!」(p107)
なぜ脳が筋肉と似ているのかといえば,確実にできることをやっているだけでは成長しないからです。(中略)「レベルが高すぎて自分にはついていくのはムリだ」といっている子というのは,私の経験上,そのあとグングン伸びていくことが多いものです。その理由は,成長が止まったのではなく,その子の脳がいままでに経験したことがないようなレベルの負荷をかんじているだけだからです。(p115)
私たちの脳というのは,何歳になっても成長し続ける性質があります。つまり,脳はいつまで経っても完成を迎えることのない,まさに「青天井の構造」をしているといえます。他人との比較ではなく,自分自身の脳の中で少しでも進歩があれば,それは脳にとって大きな喜びになります。そして喜びを感じると,脳の回路がつなぎ変わってさらに強化されていくのです。(p116)
「努力賞ではダメ。狙うは場外ホームラン」 私は,そんあことをいつも思いながら,自分に無茶ぶりをするようにしています。(中略)現在の事情などはいっさい無視して,自分に無茶ぶりをすることで脳が強化され,やがてはガラスの天井を突き破ることができるようになるからです。(p123)
私たち人間の脳とうのは,さぼっていると次第に「落ちていく喜び」に目覚めてしまうものです。(p137)
よく誤解されるのですが,脳というのは疲れないのです。脳が疲労を感じるときというのは,ずっと同じことに没入して脳が退屈しているというだけに過ぎません。(中略)裏を返せば,「文脈」を変えて違うことをやれば,脳は常に高いパフォーマンスで仕事や勉強に向き合えるということです。(p170)
現代における創造性に関する科学的理論は一貫して,「創造性とは組み合わせの探索である」と考えられています。つまり,人はゼロから何かをつくれるわけではなく,その人のなかにある何かと,その人のまわりにいる人のなかにある何かが組み合わさったり,並べ替えが起こって,新しいものが生まれるという考え方です。(p175)
常識が通用しない世界でこそ,脳は強化されていくということがあるからです。つまり,不確実性こそが順応性を生み出し,どんなときでも冷静沈着に高いパフォーマンスを発揮することができるようになっていくというわけです。(p189)
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