著者 茂木健一郎
発行所 学研プラス
発行年月日 2017.05.02
価格(税別) 1,300円
● 本書の主旨は「はじめに」の次の文章に要約されている。
そもそも「生まれ持った才能がすべてを決める」とか「天才なら何をやっても成功できる」といった考え方には“才能さえあれば,特別な努力などしなくても,何かを成し遂げられるはず”という都合のいい願望が隠れています。(p3)
「真の才能とは,結果が出るまでやり抜く努力ができる“脳の筋力”である」 この結論を脳科学的に説明すると,脳の神経回路というのは,何かしらの活動によって負荷をかけ続けなければ,その回路は強化されないということです。(中略)結果が出るまであきらめず,創意工夫をこらしながら,やり抜くための努力ができること。それも,イヤイヤではなく,毎日を楽しみながら。(p4)もうひとつ,「おわりに」から。
物事のスピードが速く,多様化したいまの時代において“やり抜く”というテーマを考えた時,ただひとつのことを黙々とやり抜くという感覚では物足りない感覚があります。むしろ「自分が変わることを楽しみ抜く!」という表現が一番しっくりくるのではないでしょうか。(p209)● ほかに,いくつか転載。
自分が社会に出てからほとんど使わない能力に,限られた時間とエネルギーを注ぐよりも,得意なことに集中し,それを個性として磨きをかけたほうが,人生は開けていくのではないでしょうか?(p27)
この井戸を掘ることは,アルファベットの「I」の字のように,垂直に掘り進むだけの行為に思われるかもしれませんが,実は違います。物事を深く考え,掘り下げていく行為の裏には,思考の力だけではなく,幅広い知識や見識が求められるものです。ちょうど画びょうのように,垂直に降りていく思考という一本の針があり,そこを支える広い平面が知識見識という具合です。(p61)
人間の脳は,「勝つ」という行為に反応してドーパミンが分泌するようにできています。(p75)
「自分が思っているほど他人は自分のことを気にしていないのだ」ということを肝に銘じてくださ。重要なのは他人の目ではなく,必要以上に背伸びせず,ありのままの自分でいることなのです。(p90)
多くの日本人は,いったんやめると戻ってこれません。なぜなら,「一度やると決めたらやめてはダメ」と強烈な決意を持つ人たちほど,やめてしまった後に罪悪感を持ってしまい,自信喪失のあきらめ状態に陥ってしまうのです。(p93)
「頑張ったらこの先,どんなに素晴らしいものが手に入るか」と考えるのではなく,「いま,ここで頑張っているこの瞬間こそが,かけがえのないもの」と考えたほうが,意外なことに努力というものは続く。(p101)
脳というのは飽きっぽい性質を持っているということです。(中略)さらに付け加えると,飽きるということを動物行動学的に分析した結果,エネルギーが有り余っている動物によく見られる状態であることがわかっています。(p119)
スポーツにしても,現代のスポーツ科学の見地から,練習のし過ぎによる問題点を検討する時代に入っています。(p123)
目標を公言してしまうと,その公言自体が脳の報酬となってしまうため,それ以上成長を望むことができない場合があります。(p126)
私は常々,努力は他人に見せないほうがうまくいくと考えています。なぜなら人は努力を公表した時点で満足してしまうのです。(p136)
プロのアスリートが小さな子どもたち向けに,自分の専門種目でコーチングイベントを開催します。(中略)これほどまでに彼ら,彼女らが情熱を持って取り組む理由として,原点回帰で自分自身にエネルギーがもらえることがあるのは間違いないと思います。(p142)
ビジネスの世界でも,芸術の世界でも,やり抜いた人はみんな,思い込みの強い人だという感覚を私は持っています。(p162)
ずるずると「凹みの谷」が続いている人と,そこから抜け出せる人には,ある違いがあります。(中略)それは「やるべきことを,いろいろつくってみる」ということです。実際,「凹みの谷」をすぐに抜け出せる人は,常に動き回っているという特徴があります。忙しいので落ち込んだままではいられない,というわけです。(p189)
昨年,私がケンブリッジ大学での恩師に当たる教授の95歳の誕生パーティーに出席した時の話ですが,そこには世界各国で研究者として成功を収めている豪華なメンバーが揃っていました。そして,その場のみんなが口を揃えていっていたことが,驚くべきことに,彼らの毎日が「雑用だらけ」ということだったのです。(p197)
本当のところをいうと,物事の成果と,向き・不向きには因果関係がないというのが私の結論です。なぜなら,自己評価とは,あまり当てにならないものだからです。(p199)
勉強や仕事といっても,ただひとつのことだけに専念していることは,いまの時代においては非常にリスクが高いといわざるを得ません。(中略)私自身もいま,さまざまな大学から「専任教員になってください」というお話しをいただくことがあるのですが,それらはすべてお断りしています。なぜなら,大学の授業や研究だけをやる人生というのは,私にとってはリスクが高過ぎますし,何より刺激的な毎日が送れないからです。(p205)
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