2018年11月15日木曜日

2018.11.15 成毛 眞 『日本人の9割に英語はいらない』

書名 日本人の9割に英語はいらない
著者 成毛 眞
発行所 祥伝社
発行年月日 2011.09.06
価格(税別) 1,400円

● 7年前の出版。楽天とユニクロが社内公用語を英語にすると言い出したことに対して,小気味よく一刀両断。言語を明け渡すことは,文化や思想を乗っ取られることであって,わざわざアメリカの植民地になってどうするのか。
 社内言語の英語化って,その後どうなったんだろうね。なし崩しにチャラにした?

● 以下に多すぎるかもしれない転載。
 英語は普通の科目ではいい成績を取れない人のための救済科目になっている可能性がある。得意科目を聞かれて「英語」と答える人は,自分は物覚えがいいだけのバカだと公言しているのだと自覚したほうがいいかもしれない。(p19)
 必要だから覚える。それが自然であり,必要でないのに覚える人は自分のしていることの無意味さに気づいていないのだろう。(p22)
 追いつけ追い越せで先進国を追いかけている途上国は英語が重要だが,日本は追われる立場なのである。日本はこれから成熟を目指すべきであり,どこかの国をまねて追いかける必要などない。(p32)
 外資系企業とつきあいのある私ですら,この1年で外国籍の人と交流したのは数えるほどである。外国人はおろか,九州の人ともさほど交流などしていない。(中略)同じ国民同士ですら交流をもたないのに,なぜグローバル化が進むと,アメリカ人やイギリス人と交流するという発想になるのか不思議でならない。(p38)
 語学に関しては“泥縄”でいいのではないかと思う。(中略)英語はペットボトルの水とは違い,備えにはならない。(中略)英語はいつか話すであろうときのために習っておいても,ずっと覚えてはおけない。普段使わない語学は,使わないとあっという間に忘れてしまうのである。(p41)
 そもそも中国の非識字率は今でも増え続け,2000年から2005年の間に3000万人増え,2005年末時点で1億1600万人に達し,世界の非識字率の11.3%を占めている。英語ができる・できない以前に大きな問題を抱えている国なのである。(p45)
 英語を母国語としない人が,自国にいながら易々と他国の言語を受け入れるのは,想像以上に危険な行為である。言語を受け入れたら,文化も受け入れることになる。(p46)
 日本に何十年も住みながら,日本語を一切使わないのをプライドのようにしているアメリカ人もいる。(p47)
 英会話スクールは日常英会話を教えるのがきわめて下手である。英会話スクールの講師は,日常会話で使われる単語やセンテンスを覚えさせず,英語で会話をしているフリをさせているだけである。(p51)
 母国語がしっかりできていれば,何歳で学んでも外国語は習得できる。20歳を過ぎてからの語学は,いつスタートしても同じだろう。(p58)
 ツイッターでは楽天社員だと思われる人が,「『重要なことなので日本語で失礼します』という言葉が流行ってきた」とつぶやき,ネットではちょっとした騒ぎになっていた。これが本当のことなら,最高のギャグだと思う。(p67)
 幹部社員はともかく,一般社員にまで社内で英語を使わせることに,何の意味があるのだろう。おそらく,海外赴任を経験しないまま会社人生を終える社員が大半である。なぜそんな社員まで社内で英語を使わなければならないのか,まるで拷問のような企画である。年に1回しか乗らないのに,マイカーを買うのと同じぐらいムダな行為である。(p68)
 それでももし語学を学びたいなら,マイナーな言語を覚えるほうがまだ付加価値になる。(中略)誰もやらないことにこそ,成功の芽が隠れているのである。(p77)
 まじめに話そうとするから英語が出てこなくなるのである。(中略)「まだサムライはいるのか?」と聞かれたら,「ああ,この間日光で会ったよ」とさらりと答えればいい。(中略)気楽に構えているほうが,海外でも人と打ち解けられる。そのために人とコミュニケーションをとるのではないだろうか。(p80)
 外資系企業のトップの3%はネイティブと同じレベルの英語力を求められるが,それも体当たりで学んでいくしかない。実際,デリケートな交渉などは事前に学んだ英語で乗り切れるものではなく,コミュニケーション力を駆使して解決するしかない。英語はコミュニケーションを補完するものであり,TOEICのスコアなどほとんど当てにならないのである。(p83)
 どこに国内の本社で自国の若者より他国の若者を多く採用する国があるのだろう。ほかの大企業もこれに追随したら,間違いなく日本国内は荒廃する。(中略)日本の若者を見捨てている企業は,こちらから見捨てるぐらいでいいと思う。(p86)
 森本(正治)シェフは,客は30%しか味が分からない,残りの70%は予約の電話から始まって店員の対応や店の雰囲気によって評価されると言い切っていた。(中略)森本シェフはまさにグローバルな視点を持っている。(中略)商機をつかむ才能に長けているのではないか。結局,どこの世界でもそういう人が勝ち残る。(p93)
 学問とは学び問うこと。ただ暗記するだけの授業は学問ではないし,テストで1番をとるための授業も学問ではない。日本の学校は学問をするために通う場所ではなく,学問の楽しみを奪うためにあるような場所である。だから大人になった今,学問に目覚めよう。(中略)六十の手習いということわざもあるように,学ぶのに遅すぎることはない。(p99)
 英語は単なる道具であり,身につけても生きる力までは養えない。学び問えない勉強なのである。(p100)
 学校教育にすっかり洗脳された日本人は,通って学ばないと身につかないと想いこんでいる。だが,歴史の研究家の講釈を聞くより,書物を読むほうが自分なりの歴史観を養える。基本的に,スポーツ以外は人から習わなくても自分自分の力で学べるものである。学び問うのは教師に問うのではなく,内なる自分に問いかけるのである。(p100)
 私は洋書をほとんど読まない。(中略)理由は単純明快であり,日本の翻訳文化が優れているからである。海外の面白い本はほとんどが翻訳されているし,翻訳されるまでのタイムラグも驚くほと短くなってきている。(p127)
 雑誌に関しては『ロンドン・エコノミスト』『モデル・エンジニア・マガジン』など,英語雑誌を月に4~5冊取り寄せて読んでいる。(中略)『モデル・エンジニア・マガジン』というのは,イギリスで出版されているミニチュア模型の雑誌だ。(中略)不思議なもので,自分の趣味に関するものとなると,たとえ単語がわからなくても,どんなことが書かれているのかが完全に理解できる。(p129)
 現地の言葉を早く習得したとしても,その時点での日本語の理解度に合ったレベルでしか習得できないのである。(p138)
 幼いころから多言語と接しているために,どの言語もまともに話せない,理解できないようになる状態を「セミリンガル」,最近では「ダブルリミテッド」ともいう。(p138)
 受験英語の弊害は,テストに関係ないことには見向きもしなくなるという点である。(p143)
 学生時代に何も考えずに暗記するという習慣が身につくと,自分の頭で考えようとしなくなる。考えるより,暗記の方が数倍も数十倍も楽だからである。受験勉強はいかに効率よく覚えて処理するかをトレーニングする勉強である。物事を味わい楽しむ余裕はなくなり,すべてがタスク(仕事)になる。(p144)
 インターナショナルスクール出身の人で,日本で成功した人の話などほとんど聞かない。(p154)
 英文が読めたり,書けたり,会話ができるだけで役に立つものではない。何を読むのか,何を話すのかというところで価値が生まれる。(p157)
 もし自分の世界観を広げたいのなら,本を広げればいい。世界中を旅して回るより,短時間で未知の世界に触れられる。(p160)
 直訳英語ではネイティブをカチンとさせてしまうのである。(p163)
 グーグルもいつかは陳腐な大企業になり,それについれて被害者であるメディア業界や広告業界も気を取り直して反撃に転じ,創業期のメンバーが退職し,やがて若い会社と新しいビジネスモデルの出現に呆然と佇むであろうことを確信した。それはまさにマイクロソフトが辿った道なのだ。(中略)マイクロソフトに比べ,グーグルは成長も早かったが,老化も早いのかもしれない。(p171)
 日常会話をマスターするなら,日常的によく使われるフレーズを覚えるのが効率的である。単語をひとつひとつ覚えるより,フレーズで覚えてしまうのである。(p198)
 英語の字幕付きまたは字幕なしの映画は,ヒアリング力を鍛えるのに使える。海外のテレビドラマもいいテキストである。(p201)
 語学の場合,実際に使ってみて恥をかくことで上達するような部分がある。現地でなら,自分は外国人なのだと開き直って話してみよう。(中略)コミュニケーションとは互いにわかり合うところから始めるのではなく,分かり合えないからコミュニケーションをとるのである。(p202)
 まったく知らないことはいくら説明されても分からない。(p203)
 未知の世界に踏み込んだとき,自然と人は能動的に情報を得て取り入れようとする機能が働くのである。(p204)
 日本人から見ると,傍若無人で何にでも積極的に首を突っ込む人のほうが,喜んで受け入れられる。郷に入らば郷に従えということわざのように,海外では,オーバーアクションで意思表示をハッキリとし,傍若無人キャラに切り替えてみる。(p206)
 多くの物事は多数派に有利になっていく。だから,英語のルールも通じればOKという実用主義になり,難しい語彙やネイティブ独特の言い回しを使ったりしないシンプルな「グローバル英語」が台頭してきている。英語が母国語であるネイティブより,非ネイティブに主導権が移っているという面白い構図である。(p210)
 仕事で英語を使うのは,そのほうが便利だというだけで,本当はドイツ人もイタリア人も母国語のほうがやりやすい。仕事で使うだけなので,彼らは正しい英語や完璧な英語を目指すつもりは全然ない。そのようなことを気にするのは日本人くらいだろう。(p212)
 アメリカ人は偉い人の前では徹底的にへりくだり,意向を聞く場合は「Yes」ではなく「No」と言わせるように質問をする。それがビジネス界の鉄則であり,出世には欠かせない技術なのである。(p215)
 語学は女性より男性のほうが上達するのは遅い。それは単純に話す量が違うからだろう。一般的に男性同士はそれほどおしゃべりをしない。アフター5に居酒屋で愚痴を言い合っているビジネスマンもいるが,それは酒の力を借りておしゃべりになっているのである。女性はしらふであっても,他愛のない会話を何時間でもできるので,圧倒的に話す量が違う。(p233)
 恋愛やケンカで言葉が上達するのは,感情が裏側にくっついているからである。相手にぶつけたい感情がたくさんあり,それを言葉で表現しようと懸命になるから,言葉を覚えるし,言い回しも工夫する。それはコミュニケーションの基本である。(p234)

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