2019年4月29日月曜日

2019.04.29 塚本 亮 『「すぐやる人」のノート術』

書名 「すぐやる人」のノート術
著者 塚本 亮
発行所 明日香出版社
発行年月日 2018.01.22
価格(税別) 1,400円

● タスコンノート,リフレクションノート,トリニティノート,クレンジングノート,トリガーノートと,5種類のノートが紹介される。
 ぼくは奥野宣之『情報は1冊のノートにまとめなさい』の刷込を受けていて,複数のノートを使い分けるなんて曲芸のようなことは,とてもじゃないけどできる気がしない。

● 以下にいくつか転載。
 時短するために一番効果的な方法は,時間制限を設けることです。私たちは,時間に制限がないといくらでも時間をかけてしまって,気づかない間に浪費してしまうのです。(p30)
 失敗してしまうことが問題なのではなくて,そのまま放っておくことで,せっかくの成長の糧,成功の糧を無題にしてしまうことが何よりももったいないのです。(p93)
 すぐ伸びる人と伸びない人の違いは全て振り返り,簡単に言えば復習にあると思っています。伸びない人は前に進むことばかりを考えて,新しいことばかりに取り組んでいきます。(p119)
 いい表現に出会わなければ,いい表現力は身につかないのです。(p146)
 感情を抑え込むことは,自分をどんどん追い込んでいくことに他なりません。忘れたければ,忘れようとして目をそらすのではなく,どんどん素直な気持ちを書き出していくこと。(p156)
 書くときは絶対にかっこいい言葉を使ったり,自分を飾ってはいけません。他人に見られたらまずいような言葉で書いていいのです。(p166)

2019年4月28日日曜日

2019.04.28 高塚苑美 『超一流の手帳はなぜ空白が多いのか?』

書名 超一流の手帳はなぜ空白が多いのか?
著者 高塚苑美
発行所 SBクリエイティブ
発行年月日 2017.10.17
価格(税別) 1,400円

● 手帳術とかノート術の本を読むのが趣味。が,そういうものが役に立つかといえば,立った記憶はない。
 複数の手帳を使っている人は,手帳を使うことが趣味なのだろう。悪いことじゃない。

● 以下にいくつか転載。
 使える時間をすべてアポイントやタスクで埋めていくのは,まさに,お給料すべてを使い切っている計画性のない人ということになります。(中略)手帳は,自分の時間を可視化することで持ち時間を把握し,スケジュールを「埋めないこと」を前提に使うもの。(p21)
 生産性の高い人の手帳には共通点があります。それは,手帳の中身がシンプルなこと。(p24)
 その方は,「僕はね,毎年同じ手帳しか使わない」と,手のひらサイズのコンパクトな手帳を開きながらこう言いました。大体さ,予定って見たこともないようなものは入らないから,ほどんとは繰り返しでしょ。趣味だって,もう年間でこれだけって決めてあるから,予定を管理するって言ったって,これくらいでいいんだよね」(p26)
 大事なのは,予定が埋まるのを待つのではなく,予定を自分で決めることです。(p62)
 私にとって手帳とは時間を管理するものでした。それが,3ヶ月後からの逆算で手帳に書き込むようになって,「手帳=自分の行動を管理するおの」という捉え方に変わったのです。(p64)
 超一流が同じ型の手帳を使い続けるのは,大きく2つの理由があります。1つ目は,買い換えるために費やす時間そのものが無駄ということ。2つ目は,昨年の自分との比較をするためです。(p85)
 私の好きな言葉に,TTP(徹底的にパクる)という言葉があります。(p96)
 3分以内で終わるものはその場で終わらせてしまう(p99)
 上手くいかなかったときに反省するのではなくて,上手くいったらそのプロセスを振り返る(p115)
 男女問わず,素敵な人は筆まめだなと感じます。(p123)
 超一流が大きな仕事やプロジェクトのハンドリングができるのは,タスクレベルまで分解する力があり大きなゴールだけを示されても,頭の中でプロセスを描き,それを可視化して工程にすることができるから。(p147)

2019年4月27日土曜日

2019.04.27 春山 満 『僕はそれでも生き抜いた』

書名 僕はそれでも生き抜いた
著者 春山 満
発行所 仁パブリッシング
発行年月日 2013.06.21
価格(税別) 952円

● ひれ伏すしかないという読後感を持つ本がある。フランクル『夜と霧』は典型的にそうだった。
この本もそうだ。著者は人間の可能性を最大限まで具現化した人。ひれ伏すしかない。
この強さがどこから来るのか。それが解けない謎だ。神様に見込まれた人だから,という以外に推測すら広がらない。

● 以下にいくつか転載。
 手も足もまったく動かなくなった。今では寝返りもできない。だけど,しゃべることができる。見ることもできる。聞こえる,感じられる,何よりも考えることができる。こんなにありがたいものが残されている。首から下はまったく動かないが,目の見えない人って,どんなに辛いだろう。耳が聞こえないって,どんなに恐ろしいだろう。(p37)
 小さいころから,僕はどんなことでも1等賞にならないと気が済まない性格だった。1等になるには何をすればいいか,ということしか考えなかった。(p43)
 実の子である僕を,親父は騙して金策に走らせた。(中略)実の子を騙してでも生き残ろうとした親父。結果的には,この驚異的な粘りが僕を泥沼へと引き込んでいった。(中略)手痛い実習を通じて,とんでもない仕打ちを僕に与えて,世の中の裏側を徹底的に叩き込んでくれた。(中略)生涯一度の反面教師との出会い。親父はまさに人生の恩師だった。(p51)
 立ち退きの裁判や悪徳金融業者とのつきあいを通じて,いろんな悪徳弁護士にも出会った。彼らは僕を徹底的にイジメ,徹底的に鍛えた。弁護士なんて,正義の法の番人でも正義の代理人でもない。彼らは利益を誘導するための,国家公認の「事件屋」だという顔もあることを教わった。(p57)
 常識の中には,大きな非常識が潜んでいる。それを見つけると,大きなビジネス・チャンスにつながることもある。(p94)
 医療や介護,福祉の世界では,サービスを提供する側の論理がまかり通っている。ほとんどタダでサービスを受けるお客は,無料だから,どこか遠慮している。タダだから痛みを感じない。ここに,とんでもないお金が介在する。(p98)
 私たちは意外にまっすぐ,素直に見ていない。先入観に支配されて,物事を自分勝手に解釈して,聞きやすいところだけを,見やすいところだけを拾っている。だから,常識に騙される。(p99)
 「ニーズ」とは、消費者が今,目の前で求める最低限の要求。その裏には,本当は望んでいるのに気づかない「ウォンツ」がある。これが大きなビジネスにつながる。(p106)
 こちらから売り込んだら,買い叩かれるぞ。大事なのは,相手に「買いたい」と思わせることだ。「買いたい」と言ってきたら,いろいろな提案をさせてもらえる。(p110)
 僕は松下電工と提携するまではエレベーターのことについては,何も知らなかった。トヨタとの自動車開発を始めるまでは、自動車の開発工程がどんなものかすら,まったく知識はなかった。(中略)1回の出会いと1回のチャンスを掴んだら,僕は必死で勉強して,自分を高め,自分を磨いた。当時を例えるなら,高額のコンサルティング料をいただきながら,アメリカのビジネススクールでMBAを取得していくようなものだった。(p119)
 「諦め」という蓋を外すと爆発するような欲求が溢れだすことがある。(p122)
 病院や施設の関係者は医療機器のことはほとんど知らない。補助金で施設を建て,補助金や保険で売り上げが守られているので,設備費を効率的に使おうという意識が薄い。だから,これまでの常識を疑わずに,新しい施設や病院を建てるたびに,設計士や業者から指定されたものを疑わずに買い続ける。(p130)
 商品が本物であるということは,大事なことだ。ただ,いい商品だから売れる,と考えるようではビジネスは成功しない。「情報」の流れ方,伝え方,これも忘れてはいけない成功への鍵。(p135)
 安いものは徹底的に安く,高いものはブランドと価値を大事にして。中途半端のロクデナシはみんなダメになる。時代は大きく二極化してきていることを,僕は見抜いていた。(p138)
 歴史を越えて生きる知恵は,現代にも通じる。むしろ,現代にこそ通じる。いくらインターネットやデジタル技術が発達しても,人と人が織り成す物語は,その心理にある。(中略)この心理が,家庭も仕事も,国も時代も動かしていく。(p145)
 「上3年で下を知る。下3日で上を知る」(中略)部下は3日で上司を見抜くんだったら,上司は4日間,自らが率先して断固たる態度で行動すれば,組織は変わる。(p150)
 いい時代,悪い時代。そんなものは,ない。大事なのは,今をどう生きるかだ。どんな環境の中でも,どんな時代でも,今をどう生きるか。ここに運気がさす。ここで知恵と力がつく。(p166)
 この辛さをわかってもらいたい,という思いにかられることもあった。でも,ここで泣いたらダメだ。ここでしかめっ面をしたらダメだ。ここで弱音を吐いて,本当の話をしたらダメだ。僕は生きる術をまとった。(中略)同情してくれるかもしれない。しかし,ビジネスの世界はそんなに甘くない。それは「バイバイ,退場」と同じ意味なのだ。いわば,死刑宣告だ。僕はこれを直感した。(p170)
 見つけるのではない。次から次に見つかってしまう「憧れ」。それを追いかけるのが,苦しくてもおもしろくて,ずっとそうやってきた僕の半生。(p176)
 私たちの頭の中には,可能性が眠っている。まだ使われていない「引き出し」がたくさんある。(p185)
 正確に言うと,記憶力が上がってきた。いつから上がったのか? それは手が動かなくなって,メモが取れなくなってからだ。(p186)
 一度興味を持つと,僕はガムシャラに努力する。人の2倍も3倍も努力する。寝ても醒めても努力する。こうして僕が英語の勉強を始めたのは,手が動かなくなってから。辞書が繰れなくなってからだ。(p186)
 実は,高齢者の医療費の大半は,「ムダな医療」と「入院という名の療養」に使われている。(中略)こういった終末期の医療で「臨終前の二週間はドル箱」と一部の医療関係者は笑って話す(p199)
 デンマークで,僕が最も驚かされたのは「命の見切り」という考え方だ。(中略)デンマークでは老人ホームに入ると,ほとんどの医療行為は行われない。カゼ薬や睡眠導入剤などは提供されるが,治すための医療は行わない。その代わりに生活の質を守り,人としての尊厳を持ったまま「枯れる」のを待つ。(p203)
 おっしゃるとおり! ご立派! 3年半の民主党政権では,責任政党として何の決断も判断もできなかったのに,野党に落ちてボロボロになると,口ではこんな立派な言葉が飛び出す。「力のない善意の小心者は,力のある悪意の輩より,始末が悪い」とはよく言ったもの。(p206)
 「最期まで家で」という思いの一方で,体も心もボロボロになって,親の命を疎みだす。そして,いよいよ迎えた看取りのとき。本当にヘトヘトになって疲れ切った家族の目からは涙はこぼれない。その代わりに,溜め息が落ちる。「これで,やっと終わった・・・・・・」 僕はこういうシーンを数多く見てきた。親が死んで,溜め息をつく家族。ここまで家族をボロボロにする在宅介護のどこが尊いのか。僕はそう思う。家族を支えないといけない。(p214)

2019.04.27 出口治明 『本物の思考力』

書名 本物の思考力
著者 出口治明
発行所 小学館新書
発行年月日 2017.04.04
価格(税別) 800円

● 人と本と旅から学び,“数字・ファクト・ロジック”で考えよと説く。
 情報過多と言われるけれども,必要な情報は昔も今もそんなにたくさんあるわけではない。
 時間は戻らないのだから,過ぎたことを悔やむのはムダ。
 見聞を記憶するには言語化することが大切で,一番いいのは人に話すこと。

● 以下に多すぎるかもしれない転載。
 鎖国をプラスに捉える考え方が根強くありますが,僕は愚策だったと思っています。理由は単純で,鎖国のせいで日本は世界の発展に取り残されて世界に占めるGDPシェアがほぼ半減し,人々を土地に縛りつけたので,日本人の身長・体重が著しく小さくなったからです。(p17)
 当時の日本人は,中国などの先進億と同様にビビッドな朱色と緑色のコントラストをこそ「美しい」と感じていたのです。(中略)現代を生きる僕たちが,「日本人の特性」とか「日本的な価値観」などと評している事柄の大半は,戦後日本の高度成長社会で醸成されたものです。はなはだしきは,「江戸しぐさ」のひょうに,戦後につくられた偽りの伝統すらあるのです。(p20)
 とてもおもしろいデータがあります。新聞・雑誌に対する信頼度が,わが国では約70%と,先進国のなかでは突出して高いのです。(p28)
 泣く子どもを「うるさい」と指弾し,親に「すみません」と謝らせるような社会は,ホモサピエンスの歴史から見て,どう考えても不健全であるとしかいいようがありません。(p60)
 本当に情報は溢れすぎているのでしょうか。僕は,けっしてそうは思いません。人間にとって本当に大切な情報は,本来,限られていると思うからです。(p63)
 インターネットは,持たざる人の最良の武器です。数字・ファクト・ロジックを容易に検証でき,また自分の気持ちの持ち方ひとつで,さまざまな機会にアクセスができるからです。SNSを見て,他人と自分を比較し,劣等感を抱えて鬱屈としてしまう人は,公平に与えられているその機会を生かしていない,と考えてもいいでしょう。(p69)
 日本の官庁や大企業では,優秀な人材を大学院に通わせたりしていますが,ほとんどが海外留学です。これはつまり,自国の大学院ではハイレベルな教育が期待できないということにほかなりません。(p93)
 英語力はそのまま,国際競争力とイコールで繋がるといっても過言ではありません。(中略)人口が減少していく日本には,今後,長い目で見れば海外から優秀な人材が流入してくるでしょう。彼らはおそらく必死に日本語を学ぶでしょうし,英語は当たり前のように使いこなす人がほとんどです。他の能力が同じであっても,語学力で劣れば,国内ですら競争に負けてしまう可能性があると思います。(p100)
 インターネットも結局のところは,人間社会の縮図でしかないからです。人間がつくるものはすべて人間に似ています。言い換えれば,人間にはその程度の想像力しか備わっていないのです。(中略)バーチャル空間にも悪い人がいるのはごく当たり前のことなのです。その意味で,僕はインターネットで流布されている言説に問題があったとしても,中長期的に見れば自浄作用が働いて,正しい方向へ進んでいくと考えています。(p111)
 王政においては,市井の人々が無知で従順であるほど治めやすく,為政者にとって都合がいい環境になるので,“民は愚かに保て”という方向に進みがちです。(p117)
 どんなに後悔したところで,過去は取り戻せません。ですから,後悔しても意味がないのです。そして「もう遅いのでは」などと悩む暇があるのなら,四の五の言わずに,いますぐ勉強を始めればいい。(中略)今晩から勉強をスタートすれば,明日には1日分成長することができます。(p124)
 選挙に多額の税金が投入されるのは,民主主義を正常に機能させるためのコストです。もし「選挙にかかる税金がもったいないから,続投させよう」ということになったら,それこそ民主主義の原点が問われます。(p158)
 同じ書くのであれば,日記よりもブログやSNSなどをおすすめします。自分しか読まない日記だと,どうしてもメモや箇条書きのような形式で書いてしまうので,記憶に残りにくい。一方,ブログやSNSだと,他者に読まれることを意識するので,自分の思いが伝わりやすいよう,わかりやすく書こうとするインセンティブが働きます。(p178)
 むしろ,みんながチョボチョボだからこそ,人間の社会はここまで成長したのだと思います。(中略)仮に人類のあいだに,どう頑張っても超えられないような,10倍,100倍単位での圧倒的な能力差が存在していたら,大半の人は努力することを早々に諦め,おそらく集団は崩壊していたことでしょう。(p183)
 人間は,アホですぐにサボる生き物です。だから,サボれないような状況をつくってしまえばいいのです。(p199)
 数字・ファクト・ロジックで物事を捉え,自分の頭で考える習慣が身に付くと,周囲の人や物事から受けるノイズで判断に迷ったり,あとで悔やんだりすることが圧倒的に少なくなるので,精神的にも時間的にも余裕が出てきます。(p208)
 まずひとつ目は,「ロクな候補者がいない。ロクな政党がない。だから投票に行く気になれない」というものです。僕は,この意見に大きな違和感を覚えます。なぜなら,よく考えれば,この見方は「政党は優れた組織であらねばならないし,選挙に立候補するような人物は立派でなければならない」という,およそありえない幻想を前提にしているからです。(p212)
 地位や権益が固定化されて,どうしても覆らないのであれば,社会に閉塞感が生まれます。人々は既得権益層を憎悪し,努力することを諦めてしまうでしょう。そのような格差は社会の害悪にしかなりません。しかし,流動性が十分に担保されていて手の届くところにある格差は,むしろ社会に成長と活力をもたらしてくれるのです。(p228)
 一息入れたところでアイデアが浮かんできたりするのは,それまでのインプットや考え抜いたことの積み重ねが,再整理された結果。つまり,日ごろの積み重ねがなければ,何も浮かんではきません。(p233)
 僕はいつも「いま,この瞬間がいちばん楽しい」と思って生きています。過去にあった楽しい出来事も,つらい出来事も,正直あまり興味はありません。(p233)
 同じことをやるにしても,どうしたらもっと楽しくなるかというチャレンジに取り組むほうが,人生はより充実するものなのです。(中略)バカバカしくなるような単純作業でも,やるしかないなら,どうすればおもしろくなるかを必死に考える。同じことをするにせよ,イヤイヤやるよりは楽しんだほうが得です。(p234)
 手垢のついたような常套句や,定型化された主義主張は,新聞や雑誌などメディアに溢れ返っていますが,そのようなものを鵜呑みにしても,ぜんぜん楽しくはありません。でも,物事を根本から見つめて,自分の頭でラディカルに考えるようになると,あらゆる事象が興味深く思え,かつシンプルな輪郭が浮かび上がってきて,考える作業そのものが楽しくなります。(p235)
 日本社会の不幸な点は,社長は偉い,部長は偉い,課長は偉い・・・・・・といった具合に,単なる機能にすぎない組織内でのポストが,社会的評価と同一視されていることだと思います。そうした価値観が根底にあるから組織にしがみつきたくもなる。(p240)
 恋人ができた場合,その喜びは100ポイントのプラスになったとします。でも,不幸にして振られてしまった場合,今度はマイナス100ポイントに相当しそうです。つまり,プラスマイナスゼロ。(中略)でも,僕はそうは考えません。その経験を絶対値で捉え,恋人ができたのも,振られたのも100ポイント。合計すると経験値が200ポイント上がったと考えるのです。つまり,喜怒哀楽の総量として,人生を捉えるようにしています。(p243)

2019年4月21日日曜日

2019.04.21 渡部昇一 『終生 知的生活の方法』

書名 終生 知的生活の方法
著者 渡部昇一
発行所 扶桑社新書
発行年月日 2018.11.01
価格(税別) 850円

● サラッと読める。ということは,情報量はそんなに多くない。要は惚けないで長生きするための方策如何ということなんだけど,はたして方策が効くのかどうか。75歳を過ぎた自分がどうあるかは,人為を超えた神のみぞ知るの領域かもしれないね。

● 以下に転載。
 家庭での主人は,理屈より行動の人でした。(p5)
 主人はよく言っていました。「世間のご夫婦は,喧嘩すると納得するまでやってしまうからいけない」と。(p8)
 人間というものは究極的に何であるか,自分とは何であるかと考えると,私は,「自分とは記憶である」と思うのです。(p29)
 子供は小さい頃から育てて,かわいかった記憶があります。この記憶のために遺産を残したくなるのです。よく考えると,ばかばかしくなってしまいます。(p30)
 人文系は記憶さえ失わなければ,年をとるほど有利です。なんといっても読んだ本の数は,二十代のどんな秀才よりも何倍もあります。(p31)
 私は,騒音に対して敏感でなければ,知的ではないと考えています。(p57)
 パソコンやインターネットは情報を集めるには便利ですが,情報を集めるのと自分の頭の中身をつくるのとは,また別物です。(p70)
 谷沢先生は,雑本のようなもののほうが意外に正直なことを書き,堂々たるもののほうが案外ウソを書いていることがあるという発見をします。(p72)
 今は,インターネットでどんな知識も網羅的に集めることができます。でも,インターネットでは補えない分野が,実は一番核心的ではないかと思うのです。(p76)
 人生論は,英雄伝と似ているところがあると思います。英雄伝は,必ずしも英雄が書かなくてもいいのです。(p101)
 奥さんも現役の亭主と一緒に行っているから嬉しいのです。多くの場合,退職後の亭主と初めて外国まで出かけても,なんてつまらないことかとがっかりするのがオチです。足腰が達者で,外国の食事がおいしい時に行かなければダメです。(p107)
 体がやわらかいというのは,若さです。死後硬直といいますが,死ねば体は硬くなります。赤ちゃんはフニャフニャです。人間の老化は,体がだんだん硬くなるプロセスと考えてもいいわけです。(p123)
 眠りのために一番いいのは疲れることです。夜,散歩をすればすぐ眠れます。疲れないで寝ようというのは無理です。(p129)
 普通の農村でも,朝起きるとすぐに農作業をやって,一仕事してから朝食をとっていました。ですから,都市に住んでいて肉体労働もしない人が朝食を重視したら,ちょっとまずいという気がします。(p131)
 朝起きて大きな声を出すのがいいということは,作家の寺内大吉さんに聞きました。寺内さんは,浄土宗のナンバーワンかツーの方です。「なまぐさ坊主は早く死ぬ,いい坊さんはそう早く死ぬわけはない」という説でした。なぜなら,真面目な坊さんは早く起きて,大きい声でお経を上げる。(p136)
 カネというのは,持つにすれて利口になるという傾向があります。だから結局,失われた二十数年の出来事を見ても,日本はみんなアメリカの金持ちにはぎ取られた感じです。(p145)
 「恒産なければ恒心なし」で,大きな財産を持っている日本人がいなくなると,みんな小物になってしまいます。それが怖いのです。「美田が悪」という考え方は,西郷隆盛級の革命機の英雄以外は有害と考えてよいのではないでしょうか。(p147)
 その文章の中にあった「豊臣秀吉の偉いところは,その一生に恐怖感がなかったことだ」という一説を読み,子供ながら,事に当たって恐怖感を持たないということは重要だなと感心し,以来,「事に当たって恐るるなかれ」という言葉を繰り返し自分に言い聞かせてきました。(p162)
 私は自分の子供の教育にカネをかけました。トータルでは大学の退職金の十倍もの金額です。もちろん,それは借金で賄いました。ですから,定年近くまで銀行には億もの借金がありました。しかし,そのおかげでうちの子供は好きな道で生計を立てるに至っていますから,もって瞑すべしです。(p167)
 今までの日本は能力差別がむしろ忌避される社会でしたが,グローバル化の時代はいや応なしに,能力差別をしないと不正とみなされるアメリカ型に向かっています。われわれはそのことを知って腹をくくらなければいけません。(p170)
 定年定職する人は能力差別ができない社会にいるから定年になるのであって,能力がまさ十分にある人は,無能力者に合わせて犠牲になっているといえましょう。(p171)
 ライフ・スタイルの古風さは頭脳の硬化とは別物です。(p177)
 中高年になって死後を保障するような人生観を与えてくれる主教を信じることができれば,その人は非常に幸せだと思います。(p192)
 死後の世界においては,霊魂はその人の達し得た最高の発達段階にとどまるとされています。(中略)となると,死ぬまでおのれを高める自己修養の努力をしたほうがいいということになります。(p199)

2019年4月20日土曜日

2019.04.20 『無印良品の文房具。』

書名 無印良品の文房具。
発行所 G.B.
発行年月日 2018.02.28
価格(税別) 1,500円

● 無印文具はいくつか使ってきたし,これからも使っていく。目下,常用しているのは,アルミ製のカードケースだけだけど。その無印文具について製作側にも取材してまとめたのが本書。
 製造しているメーカーがどこなのかはもちろん明かされていない。たとえそれが公然の秘密であっても,秘密は秘密。

● 以下にいくつか転載。
 その姿勢とは,「ユーザーに使い方を委ねる」というもの。(中略)だから,必要最低限のガイドにしてシンプルにし,自由に使えるものにする。(p86)
 先取りしすぎると売れない。だから,少し遅いくらいがちょうどいい(p146)
 商品開発に携わるのは,無印良品の生活雑貨部に所属するステーショナリー担当の9名(うち,品質チェックや数値チェック担当も含む)。デザイナーは,ステーショナリー意外のデザインも兼務して,わずか4名。これほどの少人数で,現行品や開発品など合計1000SKUほどの商品数を抱えているわけですから,驚きの一言です。(p163)

2019年4月16日火曜日

2019.04.16 和田秀樹 『「現役年齢」をのばす技術』

書名 「現役年齢」をのばす技術
著者 和田秀樹
発行所 PHP新書
発行年月日 2007.03.01
価格(税別) 700円

● 現役といっても仕事で現役というに限定しない。趣味で現役でもいい。が,高齢になっても仕事をしている人の方が長命だというデータはあるらしい。
 元気でいるために,人間関係を絶やさない,道徳にしばられない,勉強を続ける,家の中に籠もらない,我慢を少なくする,コレステロールが高いことを気にしない,ブログやSNSをやってみる,などが推奨される。

● ただし,本書は2007年の発行なので,まだFacebook疲れなどという言葉はない。ブログやSNSにも向き不向きがある。向かないと感じたらサッサとやめることという1項目を加えたい。我慢を増やすことになるからだ。
 自分はまだ機能のごく一部しか使っていない,もう少し使い込めば違う光景が見えてくるかもしれない,などと考えないでサッとやめること。使い込んでみても,見える光景が変わるなんてことはないから。

● 人間関係も然り。それがストレスになるなら切り捨てることが必要。それができるのが年寄りのアドバンテージだ。
 それ以前に,組織を場とする人間関係は,組織を離れれば消失するのが自然だ。場を越えて移植できるものではない。中には移植できるものもあるかもしれないが,基本はそういうことだ。

● なおかつ,人間関係を絶やすなというのが一般解になるかどうかも疑問だ。一般解は存在しない。自分の場合はどうかと考えなければならない。
 ぼく一個は森博嗣さんの「孤独の価値」にシンパシーを感じる。自分が絶対にこれだけはと思う人間関係(ぼくの場合だと配偶者との関係しかない。あとは老母との関係)以外は捨ててしまった方が快につながるのであれば,そうした方がいい。
 周りを見て右往左往しないこと。自分にとっての快はどちらか冷静に考えること。

● もちろん,やってみたら見込みと違ったというのはありそうなことだ。「孤独の価値」といっても,それはよほど強い人でなければ体現できないもので,安直にそこに走るなという意見もある。
 たしかに,そこは考えなければいけないところだ。言葉を転がすだけで考えた気になってはいけない。

● で,自分はどうだろうかといえば,「孤独の価値」に傾きたいと思っているわけだ。ひとり遊びができることが重要だと,若い頃から言われていた。その種の本を好んで読んできたということだが。なぜかといえば,あまり人間が好きではない自分にとって,その教え(?)が好都合だったからだ。
 ずっとそれを心がけてきたのだから,それなりの成果・蓄積があるはずなのだ(と思いたい)。それを活かせる時期がいよいよ来るということだ。

● 読む,聴く,見る,という受け身の趣味で老後を乗り切る。それをするのに人間関係は必要ない。
 加えて,若い頃には考えることすらなかったインターネットが今はある。受け身の趣味であっても,それについてひとり語りをして,それをブログやTwitterで公開することができる。
 したがって,没世間に落ちることはない。ぼくが理想とするコミュニケーションは“君子の交わりは水のごとし”というものだ。それを実現するには,リアルよりネットの方が向いている。

● 年寄りの社会貢献願望は社会の迷惑だと思っていたが,これについて修正を迫ってくる。何せ,年寄りがメジャーになるのだ。年寄りが年寄りに貢献する社会活動はありなのかもしれない。

● 以下に転載。
 いつまでも現役でいたいと思っている人は多いはずだが,現役でいるために重要なことは二つある。一つは,「自分はもう若くない」という発想をやめることだ。(中略)もう一つは,矛盾するようだが,「衰え」と上手につき合っていくことだ。(p14)
 医者は,病気についてはよく知っているものの,健康についてはあまりよく知らないものである。(p26)
 フィンランド症候群という言葉をご存じだろうか。フィンランド症候群とは,簡単にいえば「健康オタクの人のほうが早死にする傾向がある」というフィンランドでの調査結果だ。(p36)
 高齢になってくると,血圧が低すぎると脳に酸素が行きにくくなるし,血糖値が低すぎると脳に栄養が行きにくくなる。脳に酸素や糖分が送られなくなると,脳が十分に働けない。そいういう意味では,少し血圧が高めで,血糖値がやや高めの人のほうが,脳に栄養が行きわたって元気になっても不思議ではない。副作用のある薬を常用してまで,無理に血圧や血糖値を下げる必要はないのである。(p44)
 人間の能力特性,特に脳の能力特性を見てみると,中高年になれば新しいことを覚える能力よりも,古いことをより発展させる能力のほうが断然高いということがわかっている。(中略)つまり,これまでやってきた仕事が自分の能力を最も発揮できる仕事であるということなのである。(p64)
 これらのデータからいえることは,働くことは健康のためになる可能性があるということだ。高い会費を払ってフィットネスクラブに通わなくても,「働けば働くほど健康長寿になる」と思えば,耳栓をしてエクササイズをしているつもりになればいい。(中略)逆にいえば,仕事を辞めてしまうことは,健康に悪いことだと思ったほうがいい。次に働く先の見込みもないのに,早期退職するなどということは,絶対してはいけないことである。(p68)
 携帯電話にしても,若い人に発想をさせると,「年寄りは機械の操作が苦手だから,簡単にすれば売れる」と思い込みがちだが,それは大きな間違いではないだろうか。(p73)
 年齢は問題ではないし,下がつかえているというようなことも,勝負の世界ではまったく関係がない。それが本来の実力主義である。(p79)
 野球であれサッカーであれ、ありとあらゆるプロスポーツの世界において,選手より監督のほうが報酬が高いことは,まずない。(中略)心と脳の元気を保つためには,お金よりも,自分が活躍できる場所を見つけることを選ぶほうがいい。(p80)
 小泉内閣が誕生したときも,塩川正十郎宇治が財務大臣として入閣し,国民から「塩じい」の愛称で呼ばれた。長老が一人入ると,みんなが安心感を持てるのだ。(p87)
 定年後に自ら起業をして,他の人の起業も支援している人に聞いたのだが,定年後に起業してうまくいっている人は,みな四〇代のときから起業について考えていたそうである。(p99)
 ストイックな生活をすることは,必ずしも健康にはつながらない。それに明らかにQOLを下げてしまう。人生においては,ストイックな生活をしなくても,つらいことや,厳しい状況がたくさん押し寄せてくる。だから,せめて意識としては「生活を楽しもう」と考えておいたほうがいい。(p105)
 若いときには好きでなかったことが,人生経験を積んだ中高年以降になって好きになることはよくあることだ。ところが,中高年を過ぎてしまうと,好みが変化することは少なくなるようだ。(p106)
 現役年齢をのばしたい人は,「年がいもなく」とか「いい年をして」などという言葉に負けてしまってはいけない。周囲の冷たい視線と戦うべきだ。周囲の若い人から,「あんな派手な高齢者になりたい」と思わせるくらいの生活を楽しんではどうだろうか。(p110)
 「余裕資金を使い,生活資金は投資しない」という鉄則を守っていれば,株式投資に熱中するこてゃ,中高年以降の有力な時間の過ごし方になると思う。(p116)
 毎日同じ店で,決まったものしか食べないと,脳の活性化が妨げられてしまう。(p117)
 頭を使っている人のほうが長生きできる可能性は高そうである。(中略)昔から,政治家や大学教授など,頭を使い続けている人は,高齢になってからも元気だと言われている。いくつになっても頭を使い続けることが,若さを保ち,現役年齢をのばすことにつながるはずである。(p129)
 昔,私たちが学校で世界史などを勉強したときには,あまり質の高い参考書はなかった。しかし,その後の受験技術の発達で,世界史にしても日本史にしても,とてもわかりやすい参考書がたくさん発売されている。今は新しいことを学ぶときに,まず高校の参考書を読んでみるというのは,かなり効果的な方法の一つといえる。(p134)
 「ブログを書く」ことで,脳が刺激され,脳の若さが保たれて,とてもよい効果が生まれてくる。(中略)体験記にせよ,オピニオンにせよ,マニアックな情報にせよ,若い人に比べて中高年以降の人のほうが多くの情報を持っている。(中略)中高年が本気でブログを書こうとすれば,若い人よりも,圧倒的に深みのあるブログを書くことができるだろう。(p156)
 恋愛をして楽しむことは,脳の前頭葉にとって大きな刺激となる。前頭葉は,感情や自発性をつかさどる部位でもあり,若さを保つうえでは必須の部位だ。(中略)性的関係があれば,性ホルモンが分泌されて,肉体的な面でも若さが保たれやすくなる可能性がある。免疫機能も保たれて現役年齢はのびる。(p165)
 芸能界では年齢を重ねてもとても美しい女性たちがいる。そういう女性の旦那さんは,奥さんが外で不倫をすることをある程度許しているのではないかと思う。(p167)
 アダルト映像を見ても脳の画像処理機能しか使わないので,大して脳の活性化にならない。(中略)アダルト本を読んでイメージを膨らませることは,脳のなかの画像処理,言語処理,そして感情をつかさどる部位などに働きかけることになるので,脳の活性化につながっていく。(中略)アダルト小説は,実は文化程度の高い国にしかない(中略)実際にアダルト小説が普及した国は,フランスと日本くらいである。(p172)

2019年4月10日水曜日

2019.04.10 松浦弥太郎 『考え方の工夫』

書名 考え方の工夫
著者 松浦弥太郎
発行所 朝日新聞出版
発行年月日 2018.10.30
価格(税別) 1,200円

● 「知的生産の技術」とか「思考の技法」を説いているのではない。仕事に臨むときの心構えを説いている。
 核は,常識に流されるな,ということだろうか。または,最短距離を行くな,ということ。

● 以下にいくつか転載。
 いまは「考えなくてすむ時代」です。なんでも調べられるから,自分で考えて答えを見つける前に,わかってしまったりします。僕にはこれが,とてもおそろしく,自分をそこなうものに思えるのです。(p7)
 これに関しては,今も昔も変わらないと思っている。ネットがない頃でも調べ魔はいた。ネットがあっても検索の手間を惜しむ人はたくさんいる。
 いつだって「考えなくてすむ時代」なのだ。 
 「今日,誰をどうやって助けようか?」(中略)僕の場合,この思考を支えているのは,「親切とまごころと工夫」です。(p26)
 「その指示よりも,実はもっと良い方法があるかもしれない」という視点が抜け落ちると,自分が成長できなくなります。いつまでたっても仕事が「自分ごと」にならず,「やらされているひとごと」のままでは,やがてモチベーションもなくなっていくでしょう。(p32)
 道具というのは,時には鉛筆を使ったりパソコンを使ったりと,使い分けてこそ役に立ちます。(p33)
 みんながいいと思って定着している,一見なんの問題もなさそうな部分を疑ったり否定したりするのですから,メインストリームからはずれたものの見方をすることになります。(p39)
 ぼくは,問題がないなら変える必要はないのではなくて,変えてはいけないと思っていた。じつは今でもそう思っている。
 部分は部分だけで存在しているのではなく,常にシステムの一部だ。問題がないのに部分を変えると,全体がギクシャクしてくる。コンサルタントに頼んでもたいてい上手くいかないのは,そのあたりに理由がある。
 自分で見つけて自発的にやる仕事は,人に頼まれてやる仕事とは比べ物にならないほど工夫の余地がありますし,自分をひとまわり大きくしてくれます。そして,その仕事を探すには,愛情不足を探すのが一番なのです。(p46)
 自分のやっていることは,みんなが現実逃避できるものかどうか?(p51)
 「社会貢献=いま,社会で起きている大きな問題」というとらえ方には,首をかしげることが多いのです。社会貢献とは,もっと身近なものではないでしょうか?(p56)
 いくらAIが発達したとしても,人をしあわせにできるのは人だけです。いかにして人々に愛と希望をを与えるか。愛と希望を提供するために,自分が何を生み出していけるのか。(p57)
 考えることは,希望である。僕はそう信じていて,だからこそ日々,考えつづけています。(中略)考えたあとは,必ずそれを自分の外に出し,表現すると決めています。(中略)しかし注意したいのは,そのアウトプットが単なる情報の伝達になっていないかどうかです。(中略)アウトプットの一番の目的は,人と関わることです。それならアウトプットするべきものは,感動ではないでしょうか。(p64)
 注意しなければいけないのは,無関心。斜に構えた冷めた態度でいると,感動のアンテナが折れてしまいます。子どものように喜んだり,驚いたり,感情豊かに暮らすことが,決して古びない感動をアウトプットしていく一番の方法です。(p69)
 僕は,自分自身が相手になりきることにしています。たとえば五〇代の男声である僕が,二〇代の女性になり一〇代の少年になり,おばあさんにも子どもにもなり,時には外国人にもなります。(p74)
 SNSを見て「大学生にいま人気なのはこれか」と知るよりも,街に出かけて行って,実際に大学生を観察したほうが,はるかに大きな学びとなります。(p76)
 「こんなの恥ずかしい」とか「つまらなそう」と思ったとしても,それがいま,世の中に受け入れられていることならば,何かしら理由があります。「どうせつまらないだろう」と疑ったり,「くだらない」と決めつけたりする前に,話題のもの,はやっているものは自分で試そうと,僕は決めています。(p77)
 相手の問題をどれだけ考えられるかが,自分を他の人と差別化する方法ではないかと僕は思っているのです。(p86)
 もしも成長したいなら,全勝してはいけません。競争において,勝つことだけにこだわっていると,小さくまとまってしまいます。(中略)負けるということはプライドが許さなかったり,苦しかったりつらかったりしますが,負けることでしか学べないことが数多くある。(p99)
 会社にいる時間が八時間だとしたら,八時間,精いっぱい働かなくてもいい。僕はそう思っています。八時間ずっと全力投球するのは「考えない働き方」のような気がするのです。(p104)
 生産性にこだわり過ぎると,小さくまとまってしまう。僕はそんな気がしてなりません。(p134)
 これからお伝えする一二の言葉は,僕の成功哲学であり,ゴールデンルールです。誰かの何かを引用した,尊敬する人に教えてもらったなど,そういうことはまったくない,自分自身のオリジナルで考え出したものです。(p141)
 人は,自分の知らないことには興味をもちません。逆に言うと,人は自分が良く知っていることには興味をもちます。(p153)

2019年4月7日日曜日

2019.04.07 川島蓉子・糸井重里 『すいません,ほぼ日の経営。』

書名 すいません,ほぼ日の経営。
著者 川島蓉子
   糸井重里
発行所 日経BP社
発行年月日 2018.10.22
価格(税別) 1,500円

● サラリーマン(ウーマンも)は読んだ方がよいと思う。頭がスッキリする。
 大量に付箋を貼ってしまった。もう一度読み返して,貼った付箋を剥がす必要があるかも。

● その大量に付箋を貼ったところを以下に転載。
 ほぼ日手帳は,社員のひとりが「ほぼ日読者の生徒手帳をつくろう」と言い出したところから始まりました。(p22)
 当時,若くて一番ひまそうなスタッフに「担当をやってみたら」と言ったら,その人がすごくたくさんの手帳を買ってきて,事務所の一室に広げて,うんうんと考えていました。ぼくは「そんなことはすぐにやめなさい」と言いました。ほかにないものをつくろうとしているのだから,ほかのものを見て考えても意味がありません。(p23)
 たとえば試験の問題を解くとき,秀才はすぐに解ける問題を片づけて六〇点くらい確保してから,答えのわからない問題にかかるそうです。(中略)うちはどちらを選ぶかというと,取れるかどうかわからない四〇点を大事にしているんです。もっと言えば,誰にも解けない一%の難問に,あえてつっこんでいくことが重要だと考えています。(p25)
 じぶんがお客さんになったら本当によろこぶかどうかを,本気で考えることにしています。(p26)
 「いい」「悪い」で判断するようになると,みんながどんどん同じになります。なぜかというと,「悪い」より「いい」を選ぶからです。だから,「いい」「悪い」で判断しなくていいんです。「好き」と言っているものは,やっぱりどこかに魅力の分量がたっぷりとあります。(p27)
 手帳に書くことは,スマートフォンのアプリを立ち上げて書くのとは少し違います。すぐに生の言葉が手帳に乗っかる。(p30)
 大企業がうちの手帳と同じものをつくって,一〇〇倍の量を売ろうとしたとします。「ほぼ日よりもはるかに安くすれば,みんながほしがるよ」というビジネスモデルも描けます。けれど,それは間違いです。どうしてダメかというと,その手帳には「心」の問題が抜けているからです。(p32)
 手帳は毎日のように接するものだし,手帳にものを書いている時間はじぶんひとりです。そんな時間を持っている人たちがお客さんであるというのは,ものすごくありがたいことです。「いい時間」を過ごすお客さんと,ぼくらはつながることができていますから。共有しているものの広さと深さが大きい。(p39)
 たとえば成功した八百屋さんの本があったとして,ほかの人がそのノウハウを読んでも,おそらくブレるだけだと思います。八百屋さんで成功した人は,ほかの道を選ばずにそれだけをやってきたから成功できたわけです。けれど,その八百屋さんの成功物語を読んだ人はまだなにも選んでいない。その違いは実はものすごく大きいんです。(p40)
 チームで仕事をするようになって,「ゼロから生み出すクリエイティブなんて案外ないぞ」と気づいたんです。クリエイティブにはやっぱり「供給源」が必要です。それは成功しているものを模倣することとはまったく違う話です。(p42)
 ぼくはいつもなにかを始めると,枠を決めてその中でやるのではなくて,「もっといい考え方があるんじゃないの」と,言葉を超えてものを言いたくなるんです。(p56)
 買いものというのは面倒や手間ではなくて,実は楽しみなんです。じぶんのポテンシャルの表現であり,自由のシンボルでもある。選挙に近いものがあるんです。(p57)
 株式上場して経済系のメディアから取材を受けると,「経済人」としてのコメントを求められます。そういうときも,どうにか「生活人」として放そうとしてきました。(中略)「ほぼ日」は買いものの場でもありますが,それを楽しむ街でもある。人が幸福に暮らしている状態,あるいは人が幸福に暮らしている場をつくりたい。そして,それに参加していたと思って,ほぼ日をやってきたんです。(p73)
 洪水のように情報があふれている中で,本当に知っておきたいことはなんだろう,知っても知っても飽きないものはなんだろうと考えたときに,やっぱり古典だと思ったんです。(中略)じぶんひとりで古典を勉強してもいいけれど,じぶんたちが主催したほうがもっと勉強できると思ったんです。いままでのような方法ではなく,学ぶ時間に浸れるような楽しみ方で,うちができないかと考えました。(p74)
 普段の仕事の中で漫然と過ごしている時間がとにかくもったいないと思ったからです。そんな時間があるなら遊べよ,と。(p92)
 「働き方改革」といっても,額に青筋を立てて,息を止めて集中するような働き方がいいと思ったら大間違いです。(中略)「もっといい考えがあるんじゃない?」と繰り返し問い続けることが大事なのであって,それは集中力とは違います。(p93)
 その難しいことをやるから給料がもらえていると,みんなが思っています。でも,難しいことに直面する大変さそのものは,本当のところなにも稼いでいません。そこではなく,考えれば考えるほどおもしろくなって,みんなのよろこぶものになっていく。それが稼ぎを生むんです。(p94)
 どんなミーティングだって「じぶんだったらこうする」と考えてから集まらないと意味がありません。個人が一生懸命に考えたことを集めるから,お互いに「ああ,それはいいな」とか,「じゃあ,そこは頼むぞ」と言い合ってチームプレーになるはずです。(中略)ひとりで考える時間がないと,なにも始まらないし,ひとりで考える時間が基礎だぞ,ということをもっと前面に打ちだそうと思ったんです。(p95)
 企業の風土を決めるのは,「なにがかっこいいか」ということです。「ダラダラして見えるけれどなんとかなっている」ことがかっこいいと思われれば,それがその会社の社風になります。(p97)
 (おもしろいアイデアがどんどん出る会社をつくるための糸井さんの役割は)あえて言えば,消極的でいたほうがうまくいくような風土をなくすことかもしれません。(p99)
 好きなものについて考え続けたり,興味のあることを続けたりすることが,人の能力を伸ばしていきます。それを邪魔されないことが「集中」ということの本当の意味なのではないでしょうか。(p100)
 いまの時代,給料というエサだけで人は本気で働かないのではないでしょうか。お金で人材が釣れる時代は終わったような気がしています。(p102)
 会社の中で女の人が働きづらく,伸び伸びとできないのが一番つらいことですよね。ルールでは「どうぞ」と書いてあっても,ルールでないところで「どうぞじゃない」ということもあって,それでは意味がないと思うんです。(p106)
 「きちんと時間を守って遅刻をしない人が,だらしない人を非難しないように」とみんなに言ったことがあります。「きっちりできる」ということだけが,ほかに増してなによりも大事なことではないんです。(中略)「身を粉にしてすべてを捧げられます」という人がえらくなってはダメなんです。(p106)
 ぼくは,ハンディを負っている人に対して,そうじゃない人が意地悪になるのがとてもいやなんです。「じぶんは子どもがいる人のぶんまで責任を持たされました」ではなくて,「よーし,俺がやるよ。頑張ろう」となってほしい。いつ,じぶんが支えてもらう側になるかわかりませんから,じぶんが支えられるときは支える。それが社会というものです。(p109)
 「面接用の人格」が現れてしまうんです。たとえば「明るくはきはきしている人」と書くと,明るくはきはきした演技ができる人が来てしまう。(p112)
 これ見よがしなのはダメで,そういうことはじぶんから言うべきではないと思っているかどうかが,センスなのだろうなと思います。(p113)
 少なくともうちでは,「いい人ではないけれど力がある」という理由だけで人をとることはないようにしています。(p114)
 採用基準に「一緒に働きたいか」という気持ちのようなものを入れてはいけないというのが,いいルールをつくりたい人たち,いわば昔の官僚のような人たちの言ってきたことなのでしょう。なぜそんな理由を入れてはいけないかというと,説明しきれないからです。(p118)
 ルールや基準を決めるときに,完成形には達しないまでも,いい点を取ろうとするから苦しくなるんです。その一番大きな原因は「不平等ではないか」という問題に応えようとするからです。けれど,そこには永遠に答えがありません。(中略)(平等には)できませんよ。それをわかっていない人とは,そもそも付き合えないと思います。たとえば,「なぜぼくを落としたんですか。理由を聞かせてください」という問い合わせをしてきた人がいたとしたら,それを聞いてきたことがすでに失格です。(p119)
 うちには,伝家の宝刀のような言葉が二つあって,「誠実」と「貢献」です。「誠実」については,「誠実は,姿勢である。弱くても,貧しくても,不勉強でも誠実であることはできる」ということ。「貢献」については,「貢献は,よろこびである。貢献することで,人をよろこばせることができる。そして,じぶんがよろこぶことができる。貢献することにおいて,人は新しい機会を得る」です。そして,「誠実」と「貢献」では,「誠実」のほうが重要です。(p130)
 効率を優先したり,じぶんの成果を期待しすぎたりすると,「信頼」は失われてしまいます。(p136)
 「誰がつくったか」よりも,「どんな場がつくったか」のほうが大事だと思っています。(p168)
 信頼できる先輩から「お前はできるよ」と言われたら,「できないかもしれない」と考える時間はなくなりますよね。そこがとても大事なんです。(中略)一方で,「一度は小説を書きたいんだよね」と言っているけれど,実際にはなかなか書かない人もいますよね。あれは,「お願いします。あなたはきっとできるから」と頼まれていないからだと思うんです。(p170)
 「上が聞いてくれない」と文句を言っている人が,「上がどんどん聞いてくれる」ようになったときにどうするか。その人の本気度が問われます。(p177)
 俳優さんたちが,舞台を見事につとめたカーテンコールで,右,左,正面,上,と見回して手を広げるときのうれしそうな顔。あれは,誰かから「お金を出すから,好きに遊んでこいよ」と言われて得られるものではありません。そういう楽しみを会社の中でつくっていけたらいいなと,いつも考えています。(p180)
 これからの時代のおもしろさというのは,誰かひとりがおもしろいと思ったものと,何億人がおもしろいと思ったものが重なるところにある。(p195)
 ぼくが感じたのは「人は口で言えないことを書けるようになったときに,じぶんがわからないことを言えるようになってしまった」ということです。それを,どこまでじうんがわかることだけを言うように戻せるか。(p206)
 あらゆることにおいてぼくは「これは正しくて,これは正しくない」と対立的に考えるのはつまらないと思っています。(p208)
 「こんなことがあったらうれしい」ということが実現したら,そこに人が集まり,たくさんのやりとりが生まれる。新しい顧客が創られるとはそういうことだと思ったんです。(p215)
 ぼくらは「スペック」や「情熱」の競争は避けたいと考えてきました。(中略)そんなことばかりしてきたから,会社が生き生きしているかどうか,社員がよろこんでいるかどうかは,あまり関係のないこととされてしまったのかもしれません。(p218)
 うちに入社する人の大半は,ほかの会社を辞めてほぼ日に来てくれるわけですから,それだけの魅力がないといけないと思います。(p230)
 ぼくの思う社長の役割は,社長がいなくても大丈夫なようにするにはどうするかを考えることです。(p239)
 みんなが渋い顔をしているところから,いいものは生まれません。「うわー,みんながよろこんでいるぞ」といった笑顔が見られるのが最高なことで,いいに決まっています。(p246)
 三年先を考えるには,一〇年先のことも考えていないといけません。そんな先のことが見えるはずがないと言いたいところですが,「いい方向」はあるわけですから,そこに向かう航海図を描くようにしています。そして,「こっちに行こう」と決めたら,勝算を証明できなくても行っていい。(p255)
 ぼくが大事にしているものは肯定感のようなものです。同じものを見たときにおもしろいと肯定するか,つまらないと否定するかは,人それぞれです。ぼく自身は否定感を抱えている人間ですが,「生まれてよかった」と思える人が集まる社会のほうが人を幸せにするはずです。だから肯定感につながるものを提供することが,ほぼ日のベースにあるのだと思います。(p259)
 魚を治療するより水の問題を考えて,できるだけなにもしないようにすること。魚を飼うということは,水を飼うことだという結論にたどり着きました。組織にも,同じように自然治癒力があるのだと思っています。一つひとつの問題に向き合って,「きみの言いぶんを言ってみろ」とやるよりも,環境を整えたほうがずっとよくなる。(p263)
 以前は社員みんなと順番にご飯を食べたりもしていましたが,それがまぁ,つまらなかった。全然楽しくありませんでした。お互いに義務になってしまいますから。社員全員と面談したこともあります。そのときも楽しいことは一つもありませんでした。みんな結局,おもしろいことを言わなくなってしまいますから。(p265)
 チームの仕事をやっていくということは,フリーであることと決定的な違いがあります。それは,とても簡単に言えることでもあります。「なにかあったとき,投げ出せない」ということです。(p279)

2019年4月6日土曜日

2019.04.06 西田文郎 『8つの実話が教えてくれた「最幸の法則」』

書名 8つの実話が教えてくれた「最幸の法則」
著者 西田文郎
発行所 ダイヤモンド社
発行年月日 2009.12.10
価格(税別) 1,200円

● こんなものも読んでみた。意地悪く言えば,昔の“一杯のかけそば”的な話を8つ集めたもの。

2019.04.06 田坂広志 『自分であり続けるために』

書名 自分であり続けるために
著者 田坂広志
発行所 PHP
発行年月日 2006.01.09
価格(税別) 1,100円

● 2006年の発行。心静かにこういう本を読むことがあってもいいでしょ。
 箴言とは言わないだろうけれど,それに近いものなので,こういうものを読んでリコウになったと勘違いしないように,そこだけは気をつけないといけないけどね。

● こういうものから転載するのもアレなんだけど,2つほど。
 我々が,相手との相性が悪いと感じるとき,それは,相手に対して寛容になれないときなのでしょう。そして,その理由を考えるとき,我々は,しばしば,一つの事実に気がつきます。自分に似ている。(p93)
 極限の意思決定を前にして,最も大切なことは,いかなる「選択肢」を選ぶかではない。いかなる「心境」で選ぶかなのです。(p105)

2019.04.06 堀江貴文・茂木健一郎 『嫌われ者の流儀』

書名 嫌われ者の流儀
著者 堀江貴文
   茂木健一郎
発行所 小学館
発行年月日 2011.06.19
価格(税別) 1,500円

● 堀江さんが収監前に茂木さんと行った対談をまとめたもの。本は畢竟,面白ければそれで良い。という雑な基準しかぼくは持っていない。本書は充分に面白いので,それで良いのだ。
 “アラブの春”をもたらしたのは,若者の性欲だという,言われてみればそうかもと思わせる意見も,他では読めないだろう。

● 以下に多すぎる転載。
 多数決の「勝ち」側に寄り添うことは,自己保身だけを考えれば楽だが,絶対に自分のためにはならないと思う。何よりも,自分の魂の成長にはならない。(茂木 p1)
 既存の価値観を壊す人こそが,私たちを次のステージへと連れていってくれるのだ(茂木 p2)
 そのためには予定調和では無理だ。インターネットとともにやってきた新しい経済の文法の下では,少数派,異端者こそが次の大きな波を創り出すからである。(茂木 p4)
 一見「敵」に見える人が,その懐に飛び込んでみれば実は恵みの泉だったということは,しばしばあるのである。(茂木 p5)
 ひとつのことをやっているように見えても実は本当のプロは,日々新しい発見や体験をしている。何十年も刀鍛冶をやっている人でも,彼の中では日々変わり続けて,新しいことにチャレンジしていたりする。(茂木 p19)
 現状を説明するのって楽なんですよ。今自分が知っていることを述べるだけだから。それに対して新しいことは未知のことであるので説明しづらい。説明しづらいことを逆手にとって現状肯定をし,それで未来をディスった気になっているんですね。(茂木 p20)
 そもそも,国家というもの自体が信用に値すべきものかどうかって疑念もあるんだ。(茂木 p26)
 人の仕事や新しい産業を虚業と決めつけて見下すメンタリティには反吐が出る。(茂木 p29)
 記事を書かれる対象である堀江さんにしても安藤美姫にしても,自分の存在を世間にさらして,自分の一挙手一投足について批評される覚悟を持って生きているわけ。リクスを負っていると言ってもいい。それに対して日本の新聞記者は署名記事をほとんど書かずに会社の陰に隠れて匿名で好きなことを書いている。個人としてのリスクを負っていないんだ。無責任なんだ。そんなやつらが2ちゃんねるに対してネットの匿名性の危険とか書いている。危険なのはお前らの方だろうって思うんだよ,俺は!(茂木 p37)
 この国で「私はとても性格がいいです」と見せている人間ほど,この国の社会の抑圧に加担している人間にしか思えない。(茂木 p39)
 僕は日本の新聞記者の優秀さって,限られた文字数の中でどれだけどうでもいい当たり障りのない記事を書けるか,っていうところに一番表れていると思う。(茂木 p53)
 1日1回の弁護士の接見意外は人とも会えないから,すごく殺伐としてくるんですね。あまりにも気分が殺伐となって,「あれ? なんで自分はこんなに殺伐としているんだろう」と考えたら・・・・・・いや,女性に会ってないからだって気づいたんですよ。(堀江 p70)
 資本主義社会の中の企業のトップでありながら,資本の仕組みを尊重していないから。(堀江 p81)
 個人としてリスクを負いつつなにかをやる強さがない人は,往々にして自分という存在を国家というものにすぐ結びつけてしまう。(中略)弱い立場の人が自分を国家と結びつけることによってパワーアップした気になれる。自分がいきなり強い立場になったようなイリュージョンを得られるわけで,この中毒性はかなり強いから,なかなかそこから抜け出すことが難しい。(茂木 p102)
 覚悟を決めた個人は国家よりも強い。それが今は科学技術の発達と情報の流通によってさらに強固なものになっている。(中略)情報と暗号技術ですね。(堀江 p105)
 あの辺り(チュニジアやエジプト)で暮らす若者の最大の不満はセックスなんじゃないかと思ってるんです。(中略)彼らはイスラム教で婚前交渉が禁止されているじゃないですか。(中略)インターネットを通じて,外国がいかに自由奔放かがわかるじゃないですか。でも,肝心のエロ画像とかは規制されているから見られない。これは不満が溜まりますよ。(中略)セックスって,生き物としての人間の根幹にかかわる部分だから,ここを抑圧されると本能的に反抗せざるを得ないと思うんですよ。(中略)こういう根源的な生き物としての不満に比べると,新卒一括採用なんかへの不満というのは,重要度からして違う気がするんですね。(堀江 p108)
 自分が勝てるルールを作るってすごくクリエイティブなことだけどね。(茂木 p131)
 ニーチェの『ツァラトゥストラはかく語りき』で言及される“超人が超人になる瞬間”って,自分の咽の奥に噛み付いているヘビを,超人が逆に噛みきってしまう瞬間なんですよ。自分の咽に噛み付くヘビなんていう恐ろしいものは,それまで普通の人々を抑圧していたものの象徴。(茂木 p135)
 みんな,子どもは同じスピードで成長していくっていう幻想にとらわれすぎだと思うんですよ。そういう前提にもとに教育制度も作られているから,18歳になるまで高認の受験資格がないなんてバカみたいなことになる。(堀江 p147)
 あるとき友達がこう言うわけ,「おい,茂木,大学に自宅から通っていない,下宿している女子大生って銀行とかに就職できないんだぞ」って。俺はもう,その話を聞いてものすごく怒って,(中略)本当に血管が切れそうになるぐらい腹が立って仕方なかった。(茂木 p149)
 小さい頃から優等生で先生の言うことをなんでも聞いて・・・・・・という人じゃ革命は起こせない。(中略)「いい子」とか「優等生」って,そうした摩擦がない分,社会との関係を根本から考え直す機会がないから怖いんですよ。(茂木 p150)
 人生には安定なんて絶対にないんですよ。ないものを追い求めすぎているんです。(堀江 p154)
 川のように常に流れていくものを,無理にせき止めて「ほら,なにも流れない,変わらない」ってことにしていれば,やがて水は淀むし,活気も失われるよなぁ。(茂木 p154)
 とくに原発や節電については,あまりにも科学的な事実からありえないようなデマも流れていて,それに反論すると一斉に非難されて叩かれちゃうみたいなところもある。(中略)とくに過剰な自粛を,自分だけじゃなくて他人にも求めるというのは副作用の最たるものだと思うんです。(堀江 p178)
 僕はライブドア事件での検察とのやり取りでよくわかったことがあるんです。それは,結局,みんな自分を基準にして物事を考えて,思い込みで動くっていうこと。それと人は何回言ってもわからないもんだということなんです。(堀江 p183)
 ツイッターの仕組みがとてもよくできているとわかるんです。ツイッターってタイムラインがどんどん流れていくじゃないですか。あれって人の意識がどんどん流れていくのと一緒なんです。みんな,一度言われたことを忘れちゃうのと同様に,ツイッターでの意見もどんどん流れて見過ごされていく。だから,“無理解”に対して繰り返し同じようなことをつぶやくんです。そうやって,自分のフォロアーの全員に,僕の思っていることを伝えられたら勝ちだと思っているんですよ。(堀江 p184)
 僕みたいに神経質な人間は,自分のタイムラインを全部追って読もうとするんですけど,大抵の人はツイッターにアクセスしたときに画面に出ているタイムラインをさっと眺めて終わりなんです。自分の言いたいことを言って終わり。なにか反論されてもそれすら見ていない。僕はそういう人にも自分の意見はちゃんと伝えなきゃと思っているんですね。(堀江 p184)
 ルール原理主義も,要はロジックで考えてないってことだもんね。だから情緒的反応と一緒。(茂木 p187)
 試験の点数で測られる集団の合理性っていうのは,人生全体の合理性から見たらすごく小さい(茂木 p195)
 あの京大のカンニング事件を必要以上に怒る人って,自分のアイデンティティーが受験に受かったことにしかない人なんじゃないかな,とは思いましたね。(堀江 p197)
 でもやっぱり,パーティーに呼ばれるかどうかこそが,本当の意味でガチンコの世界だよね。(中略)カネや地位がなくても,「なんかこいつは魅力があるな」と思われる人物になれるかということだよね。そしてこれからは,レベルの高いパーティーにはリヴァイアサンしか呼ばれない。そいういう時代なんだと思う。で,東大や京大に行くっていうのは,まったくリヴァイアサンであることと関係ないっていうか,むしろリヴァイアサンから離れることなんだけど。(茂木 p198)
 (マスコミは)人の不幸をメシの種にするわけですから,どうしてもそうなりますよね(事件で盛り上がる),だから戦争が起きた方が盛り上がるし,実際,かつて日本が戦争を始めたときは新聞の部数も伸び,メディア全体で喜び勇んで,どんどん応援していたわけです。(堀江 p212)
 老舗の古い企業の経営者,創業から何代目の社長みたいは人は必ず言うんですよ。「官には絶対に逆らうな」と。(堀江 p218)
 みんな簡単に過去のことは忘れちゃうんだな,というのは身にしみて思いましたね。(堀江 p223)
 僕は,世の中を変えるものは政治ではないと思ってますから。世の中を変えるのはテクノロジーですよ。(堀江 p224)
 あの事件(ソニーの情報流出事件)はなにかを象徴しているような気がしますね。ソニーと,たとえばグーグルの違いみたいなものがはっきり出た気がするんです。おそらくソニーはハッキングされたネットワークの作業を外注しているでしょう?(堀江 p231)
 もう大学で義務的に何かを学んだり教えたりっていう時代じゃないんですよ。スキルと意欲の高い人が一緒になって何かを研究する,そんな私塾がこれから必要だと思うんです。(堀江 p237)
 技術者だけでやっていたら,絶対にロケットは飛ばない。僕がいなければロケット開発は成功しないってわかるんです。(中略)データ云々じゃなく,とにかく打ち上げを成功させ続けてチームのモチベーションを上げていかないとロケットは成功しない。(堀江 p240)
 北海道大学もロケットの研究をやっているんですが,彼らには申し訳ないですけど,「絶対にロケットを打ち上げてやる」って情熱が感じられないんです。論文を書ければいいやぐらいに思ってるんじゃないかな。ロケットを打ち上げるよりも論文を書いてアカデミックな地位を上げていくことが主目的に思えてならない。でもそれじゃあ,ロケット打ち上げなんて成功しないですよ。(堀江 p242)
 ロボットの分野だったら,「俺が絶対にガンダムを作ってみせる!」ぐらいの執着がないと成功しないんですよ。そこそこじゃダメなんです。(堀江 p243)
 日本は変わらないんじゃんくて,変われない,変わる能力を持たないんじゃないかっていう絶望ですね。日本の社会に意味のないシステムや価値観が変わらず残り続けているのは,悪意や怠慢のせいではなく実は無能だからなんじゃないか,と。(中略)日本の社会が変わることは期待できないから,今後は日本全体に期待せずに個々人がそれぞれスキルを上げてサバイバルしていくしかないのかもしれない,って思い始めたんです。(茂木 p246)
 人間とは自分以外の者に対して,実は全く興味を抱いていないのも事実だ。(堀江 p250)
 テレビの情報収集力というのはやはり半端ないのである。魅力的な人物でないと競争の激しいテレビの世界で主役を張ることは出来ないことくらい私は知っていたはずなのだ。つまり,茂木健一郎が魅力的な人物であることは,ちょっと考えればわかることなのであった。(堀江 p250)
 世の中の多くの人たちは八方美人である。嫌われないことを最優先に空気を読む。だから,大審査が起きたら「自粛」する。多くの人は被災地の人を想って自粛するというよりは,周りに自粛していないことで後ろ指を指されないように自粛しているのではないか。(堀江 p251)
 グローバル化を日本だけが拒絶することは許されない。国際社会が許さないからだ。(堀江 p254)

2019年4月2日火曜日

2019.04.02 福島槙子・寺井広樹 『もし文豪たちが現代の文房具を試しに使ってみたら』

書名 もし文豪たちが現代の文房具を試しに使ってみたら
著者 福島槙子
   寺井広樹
発行所 ごま書房新社
発行年月日 2018.03.16
価格(税別) 1,019円

● 面白い読みもの。最終章の“試し書き”はなるほどと思って読んだ。こういうものに着眼するのかという驚きも。意外なところに宝があるんだな。

● 以下にいくつか転載。
 彼(安部公房)が晩年に仕事場としていた箱根の山荘には,「発想メモ板」というアイデア出し用のボードがありました。そのボードには細長く切ったメモに様々な言葉が書かれ,ひとつひとつが画鋲で板に固定されていました。中にはひとつの画鋲で2枚,3枚のメモが放射状に固定されていたりもします。(p45)
 極度のメモ魔だったエジソンは「エジソンノート」と呼ばれる大量のメモを残しています。その量,なんと大学ノート3500冊分。それもが発明のアイデアや実験の結果,他の研究者の論文の内容など,細かなメモでびっしり埋め尽くされています。エジソンのすごいところは,メモをメモしっぱなしにするのではなく,随時読み返してきちんと活用していたところ。(p69)
 母が書き初め用の新しい筆を買ってくれました。その筆が,なんと5千円以上の高価な筆だったのです。これまで使っていた筆は2千円ほどのものでしたから,2~3倍もの値段です。(中略)その筆を使ってみると,なんと書きやすいことか。(中略)この時,いい道具を使うと気持ちにも大きな変化が起こり,それによって結果がついてくるのだということを肌で実感したんです。(p106)
 さりげなくペンの書き心地を確認する試し書きの紙の上にこそ,さまざまは色彩と濃度をもった人間模様が浮かび上がっている気がします。(p131)