2019年4月27日土曜日

2019.04.27 春山 満 『僕はそれでも生き抜いた』

書名 僕はそれでも生き抜いた
著者 春山 満
発行所 仁パブリッシング
発行年月日 2013.06.21
価格(税別) 952円

● ひれ伏すしかないという読後感を持つ本がある。フランクル『夜と霧』は典型的にそうだった。
この本もそうだ。著者は人間の可能性を最大限まで具現化した人。ひれ伏すしかない。
この強さがどこから来るのか。それが解けない謎だ。神様に見込まれた人だから,という以外に推測すら広がらない。

● 以下にいくつか転載。
 手も足もまったく動かなくなった。今では寝返りもできない。だけど,しゃべることができる。見ることもできる。聞こえる,感じられる,何よりも考えることができる。こんなにありがたいものが残されている。首から下はまったく動かないが,目の見えない人って,どんなに辛いだろう。耳が聞こえないって,どんなに恐ろしいだろう。(p37)
 小さいころから,僕はどんなことでも1等賞にならないと気が済まない性格だった。1等になるには何をすればいいか,ということしか考えなかった。(p43)
 実の子である僕を,親父は騙して金策に走らせた。(中略)実の子を騙してでも生き残ろうとした親父。結果的には,この驚異的な粘りが僕を泥沼へと引き込んでいった。(中略)手痛い実習を通じて,とんでもない仕打ちを僕に与えて,世の中の裏側を徹底的に叩き込んでくれた。(中略)生涯一度の反面教師との出会い。親父はまさに人生の恩師だった。(p51)
 立ち退きの裁判や悪徳金融業者とのつきあいを通じて,いろんな悪徳弁護士にも出会った。彼らは僕を徹底的にイジメ,徹底的に鍛えた。弁護士なんて,正義の法の番人でも正義の代理人でもない。彼らは利益を誘導するための,国家公認の「事件屋」だという顔もあることを教わった。(p57)
 常識の中には,大きな非常識が潜んでいる。それを見つけると,大きなビジネス・チャンスにつながることもある。(p94)
 医療や介護,福祉の世界では,サービスを提供する側の論理がまかり通っている。ほとんどタダでサービスを受けるお客は,無料だから,どこか遠慮している。タダだから痛みを感じない。ここに,とんでもないお金が介在する。(p98)
 私たちは意外にまっすぐ,素直に見ていない。先入観に支配されて,物事を自分勝手に解釈して,聞きやすいところだけを,見やすいところだけを拾っている。だから,常識に騙される。(p99)
 「ニーズ」とは、消費者が今,目の前で求める最低限の要求。その裏には,本当は望んでいるのに気づかない「ウォンツ」がある。これが大きなビジネスにつながる。(p106)
 こちらから売り込んだら,買い叩かれるぞ。大事なのは,相手に「買いたい」と思わせることだ。「買いたい」と言ってきたら,いろいろな提案をさせてもらえる。(p110)
 僕は松下電工と提携するまではエレベーターのことについては,何も知らなかった。トヨタとの自動車開発を始めるまでは、自動車の開発工程がどんなものかすら,まったく知識はなかった。(中略)1回の出会いと1回のチャンスを掴んだら,僕は必死で勉強して,自分を高め,自分を磨いた。当時を例えるなら,高額のコンサルティング料をいただきながら,アメリカのビジネススクールでMBAを取得していくようなものだった。(p119)
 「諦め」という蓋を外すと爆発するような欲求が溢れだすことがある。(p122)
 病院や施設の関係者は医療機器のことはほとんど知らない。補助金で施設を建て,補助金や保険で売り上げが守られているので,設備費を効率的に使おうという意識が薄い。だから,これまでの常識を疑わずに,新しい施設や病院を建てるたびに,設計士や業者から指定されたものを疑わずに買い続ける。(p130)
 商品が本物であるということは,大事なことだ。ただ,いい商品だから売れる,と考えるようではビジネスは成功しない。「情報」の流れ方,伝え方,これも忘れてはいけない成功への鍵。(p135)
 安いものは徹底的に安く,高いものはブランドと価値を大事にして。中途半端のロクデナシはみんなダメになる。時代は大きく二極化してきていることを,僕は見抜いていた。(p138)
 歴史を越えて生きる知恵は,現代にも通じる。むしろ,現代にこそ通じる。いくらインターネットやデジタル技術が発達しても,人と人が織り成す物語は,その心理にある。(中略)この心理が,家庭も仕事も,国も時代も動かしていく。(p145)
 「上3年で下を知る。下3日で上を知る」(中略)部下は3日で上司を見抜くんだったら,上司は4日間,自らが率先して断固たる態度で行動すれば,組織は変わる。(p150)
 いい時代,悪い時代。そんなものは,ない。大事なのは,今をどう生きるかだ。どんな環境の中でも,どんな時代でも,今をどう生きるか。ここに運気がさす。ここで知恵と力がつく。(p166)
 この辛さをわかってもらいたい,という思いにかられることもあった。でも,ここで泣いたらダメだ。ここでしかめっ面をしたらダメだ。ここで弱音を吐いて,本当の話をしたらダメだ。僕は生きる術をまとった。(中略)同情してくれるかもしれない。しかし,ビジネスの世界はそんなに甘くない。それは「バイバイ,退場」と同じ意味なのだ。いわば,死刑宣告だ。僕はこれを直感した。(p170)
 見つけるのではない。次から次に見つかってしまう「憧れ」。それを追いかけるのが,苦しくてもおもしろくて,ずっとそうやってきた僕の半生。(p176)
 私たちの頭の中には,可能性が眠っている。まだ使われていない「引き出し」がたくさんある。(p185)
 正確に言うと,記憶力が上がってきた。いつから上がったのか? それは手が動かなくなって,メモが取れなくなってからだ。(p186)
 一度興味を持つと,僕はガムシャラに努力する。人の2倍も3倍も努力する。寝ても醒めても努力する。こうして僕が英語の勉強を始めたのは,手が動かなくなってから。辞書が繰れなくなってからだ。(p186)
 実は,高齢者の医療費の大半は,「ムダな医療」と「入院という名の療養」に使われている。(中略)こういった終末期の医療で「臨終前の二週間はドル箱」と一部の医療関係者は笑って話す(p199)
 デンマークで,僕が最も驚かされたのは「命の見切り」という考え方だ。(中略)デンマークでは老人ホームに入ると,ほとんどの医療行為は行われない。カゼ薬や睡眠導入剤などは提供されるが,治すための医療は行わない。その代わりに生活の質を守り,人としての尊厳を持ったまま「枯れる」のを待つ。(p203)
 おっしゃるとおり! ご立派! 3年半の民主党政権では,責任政党として何の決断も判断もできなかったのに,野党に落ちてボロボロになると,口ではこんな立派な言葉が飛び出す。「力のない善意の小心者は,力のある悪意の輩より,始末が悪い」とはよく言ったもの。(p206)
 「最期まで家で」という思いの一方で,体も心もボロボロになって,親の命を疎みだす。そして,いよいよ迎えた看取りのとき。本当にヘトヘトになって疲れ切った家族の目からは涙はこぼれない。その代わりに,溜め息が落ちる。「これで,やっと終わった・・・・・・」 僕はこういうシーンを数多く見てきた。親が死んで,溜め息をつく家族。ここまで家族をボロボロにする在宅介護のどこが尊いのか。僕はそう思う。家族を支えないといけない。(p214)

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