著者 堀江貴文
茂木健一郎
発行所 小学館
発行年月日 2011.06.19
価格(税別) 1,500円
● 堀江さんが収監前に茂木さんと行った対談をまとめたもの。本は畢竟,面白ければそれで良い。という雑な基準しかぼくは持っていない。本書は充分に面白いので,それで良いのだ。
“アラブの春”をもたらしたのは,若者の性欲だという,言われてみればそうかもと思わせる意見も,他では読めないだろう。
● 以下に多すぎる転載。
多数決の「勝ち」側に寄り添うことは,自己保身だけを考えれば楽だが,絶対に自分のためにはならないと思う。何よりも,自分の魂の成長にはならない。(茂木 p1)
既存の価値観を壊す人こそが,私たちを次のステージへと連れていってくれるのだ(茂木 p2)
そのためには予定調和では無理だ。インターネットとともにやってきた新しい経済の文法の下では,少数派,異端者こそが次の大きな波を創り出すからである。(茂木 p4)
一見「敵」に見える人が,その懐に飛び込んでみれば実は恵みの泉だったということは,しばしばあるのである。(茂木 p5)
ひとつのことをやっているように見えても実は本当のプロは,日々新しい発見や体験をしている。何十年も刀鍛冶をやっている人でも,彼の中では日々変わり続けて,新しいことにチャレンジしていたりする。(茂木 p19)
現状を説明するのって楽なんですよ。今自分が知っていることを述べるだけだから。それに対して新しいことは未知のことであるので説明しづらい。説明しづらいことを逆手にとって現状肯定をし,それで未来をディスった気になっているんですね。(茂木 p20)
そもそも,国家というもの自体が信用に値すべきものかどうかって疑念もあるんだ。(茂木 p26)
人の仕事や新しい産業を虚業と決めつけて見下すメンタリティには反吐が出る。(茂木 p29)
記事を書かれる対象である堀江さんにしても安藤美姫にしても,自分の存在を世間にさらして,自分の一挙手一投足について批評される覚悟を持って生きているわけ。リクスを負っていると言ってもいい。それに対して日本の新聞記者は署名記事をほとんど書かずに会社の陰に隠れて匿名で好きなことを書いている。個人としてのリスクを負っていないんだ。無責任なんだ。そんなやつらが2ちゃんねるに対してネットの匿名性の危険とか書いている。危険なのはお前らの方だろうって思うんだよ,俺は!(茂木 p37)
この国で「私はとても性格がいいです」と見せている人間ほど,この国の社会の抑圧に加担している人間にしか思えない。(茂木 p39)
僕は日本の新聞記者の優秀さって,限られた文字数の中でどれだけどうでもいい当たり障りのない記事を書けるか,っていうところに一番表れていると思う。(茂木 p53)
1日1回の弁護士の接見意外は人とも会えないから,すごく殺伐としてくるんですね。あまりにも気分が殺伐となって,「あれ? なんで自分はこんなに殺伐としているんだろう」と考えたら・・・・・・いや,女性に会ってないからだって気づいたんですよ。(堀江 p70)
資本主義社会の中の企業のトップでありながら,資本の仕組みを尊重していないから。(堀江 p81)
個人としてリスクを負いつつなにかをやる強さがない人は,往々にして自分という存在を国家というものにすぐ結びつけてしまう。(中略)弱い立場の人が自分を国家と結びつけることによってパワーアップした気になれる。自分がいきなり強い立場になったようなイリュージョンを得られるわけで,この中毒性はかなり強いから,なかなかそこから抜け出すことが難しい。(茂木 p102)
覚悟を決めた個人は国家よりも強い。それが今は科学技術の発達と情報の流通によってさらに強固なものになっている。(中略)情報と暗号技術ですね。(堀江 p105)
あの辺り(チュニジアやエジプト)で暮らす若者の最大の不満はセックスなんじゃないかと思ってるんです。(中略)彼らはイスラム教で婚前交渉が禁止されているじゃないですか。(中略)インターネットを通じて,外国がいかに自由奔放かがわかるじゃないですか。でも,肝心のエロ画像とかは規制されているから見られない。これは不満が溜まりますよ。(中略)セックスって,生き物としての人間の根幹にかかわる部分だから,ここを抑圧されると本能的に反抗せざるを得ないと思うんですよ。(中略)こういう根源的な生き物としての不満に比べると,新卒一括採用なんかへの不満というのは,重要度からして違う気がするんですね。(堀江 p108)
自分が勝てるルールを作るってすごくクリエイティブなことだけどね。(茂木 p131)
ニーチェの『ツァラトゥストラはかく語りき』で言及される“超人が超人になる瞬間”って,自分の咽の奥に噛み付いているヘビを,超人が逆に噛みきってしまう瞬間なんですよ。自分の咽に噛み付くヘビなんていう恐ろしいものは,それまで普通の人々を抑圧していたものの象徴。(茂木 p135)
みんな,子どもは同じスピードで成長していくっていう幻想にとらわれすぎだと思うんですよ。そういう前提にもとに教育制度も作られているから,18歳になるまで高認の受験資格がないなんてバカみたいなことになる。(堀江 p147)
あるとき友達がこう言うわけ,「おい,茂木,大学に自宅から通っていない,下宿している女子大生って銀行とかに就職できないんだぞ」って。俺はもう,その話を聞いてものすごく怒って,(中略)本当に血管が切れそうになるぐらい腹が立って仕方なかった。(茂木 p149)
小さい頃から優等生で先生の言うことをなんでも聞いて・・・・・・という人じゃ革命は起こせない。(中略)「いい子」とか「優等生」って,そうした摩擦がない分,社会との関係を根本から考え直す機会がないから怖いんですよ。(茂木 p150)
人生には安定なんて絶対にないんですよ。ないものを追い求めすぎているんです。(堀江 p154)
川のように常に流れていくものを,無理にせき止めて「ほら,なにも流れない,変わらない」ってことにしていれば,やがて水は淀むし,活気も失われるよなぁ。(茂木 p154)
とくに原発や節電については,あまりにも科学的な事実からありえないようなデマも流れていて,それに反論すると一斉に非難されて叩かれちゃうみたいなところもある。(中略)とくに過剰な自粛を,自分だけじゃなくて他人にも求めるというのは副作用の最たるものだと思うんです。(堀江 p178)
僕はライブドア事件での検察とのやり取りでよくわかったことがあるんです。それは,結局,みんな自分を基準にして物事を考えて,思い込みで動くっていうこと。それと人は何回言ってもわからないもんだということなんです。(堀江 p183)
ツイッターの仕組みがとてもよくできているとわかるんです。ツイッターってタイムラインがどんどん流れていくじゃないですか。あれって人の意識がどんどん流れていくのと一緒なんです。みんな,一度言われたことを忘れちゃうのと同様に,ツイッターでの意見もどんどん流れて見過ごされていく。だから,“無理解”に対して繰り返し同じようなことをつぶやくんです。そうやって,自分のフォロアーの全員に,僕の思っていることを伝えられたら勝ちだと思っているんですよ。(堀江 p184)
僕みたいに神経質な人間は,自分のタイムラインを全部追って読もうとするんですけど,大抵の人はツイッターにアクセスしたときに画面に出ているタイムラインをさっと眺めて終わりなんです。自分の言いたいことを言って終わり。なにか反論されてもそれすら見ていない。僕はそういう人にも自分の意見はちゃんと伝えなきゃと思っているんですね。(堀江 p184)
ルール原理主義も,要はロジックで考えてないってことだもんね。だから情緒的反応と一緒。(茂木 p187)
試験の点数で測られる集団の合理性っていうのは,人生全体の合理性から見たらすごく小さい(茂木 p195)
あの京大のカンニング事件を必要以上に怒る人って,自分のアイデンティティーが受験に受かったことにしかない人なんじゃないかな,とは思いましたね。(堀江 p197)
でもやっぱり,パーティーに呼ばれるかどうかこそが,本当の意味でガチンコの世界だよね。(中略)カネや地位がなくても,「なんかこいつは魅力があるな」と思われる人物になれるかということだよね。そしてこれからは,レベルの高いパーティーにはリヴァイアサンしか呼ばれない。そいういう時代なんだと思う。で,東大や京大に行くっていうのは,まったくリヴァイアサンであることと関係ないっていうか,むしろリヴァイアサンから離れることなんだけど。(茂木 p198)
(マスコミは)人の不幸をメシの種にするわけですから,どうしてもそうなりますよね(事件で盛り上がる),だから戦争が起きた方が盛り上がるし,実際,かつて日本が戦争を始めたときは新聞の部数も伸び,メディア全体で喜び勇んで,どんどん応援していたわけです。(堀江 p212)
老舗の古い企業の経営者,創業から何代目の社長みたいは人は必ず言うんですよ。「官には絶対に逆らうな」と。(堀江 p218)
みんな簡単に過去のことは忘れちゃうんだな,というのは身にしみて思いましたね。(堀江 p223)
僕は,世の中を変えるものは政治ではないと思ってますから。世の中を変えるのはテクノロジーですよ。(堀江 p224)
あの事件(ソニーの情報流出事件)はなにかを象徴しているような気がしますね。ソニーと,たとえばグーグルの違いみたいなものがはっきり出た気がするんです。おそらくソニーはハッキングされたネットワークの作業を外注しているでしょう?(堀江 p231)
もう大学で義務的に何かを学んだり教えたりっていう時代じゃないんですよ。スキルと意欲の高い人が一緒になって何かを研究する,そんな私塾がこれから必要だと思うんです。(堀江 p237)
技術者だけでやっていたら,絶対にロケットは飛ばない。僕がいなければロケット開発は成功しないってわかるんです。(中略)データ云々じゃなく,とにかく打ち上げを成功させ続けてチームのモチベーションを上げていかないとロケットは成功しない。(堀江 p240)
北海道大学もロケットの研究をやっているんですが,彼らには申し訳ないですけど,「絶対にロケットを打ち上げてやる」って情熱が感じられないんです。論文を書ければいいやぐらいに思ってるんじゃないかな。ロケットを打ち上げるよりも論文を書いてアカデミックな地位を上げていくことが主目的に思えてならない。でもそれじゃあ,ロケット打ち上げなんて成功しないですよ。(堀江 p242)
ロボットの分野だったら,「俺が絶対にガンダムを作ってみせる!」ぐらいの執着がないと成功しないんですよ。そこそこじゃダメなんです。(堀江 p243)
日本は変わらないんじゃんくて,変われない,変わる能力を持たないんじゃないかっていう絶望ですね。日本の社会に意味のないシステムや価値観が変わらず残り続けているのは,悪意や怠慢のせいではなく実は無能だからなんじゃないか,と。(中略)日本の社会が変わることは期待できないから,今後は日本全体に期待せずに個々人がそれぞれスキルを上げてサバイバルしていくしかないのかもしれない,って思い始めたんです。(茂木 p246)
人間とは自分以外の者に対して,実は全く興味を抱いていないのも事実だ。(堀江 p250)
テレビの情報収集力というのはやはり半端ないのである。魅力的な人物でないと競争の激しいテレビの世界で主役を張ることは出来ないことくらい私は知っていたはずなのだ。つまり,茂木健一郎が魅力的な人物であることは,ちょっと考えればわかることなのであった。(堀江 p250)
世の中の多くの人たちは八方美人である。嫌われないことを最優先に空気を読む。だから,大審査が起きたら「自粛」する。多くの人は被災地の人を想って自粛するというよりは,周りに自粛していないことで後ろ指を指されないように自粛しているのではないか。(堀江 p251)
グローバル化を日本だけが拒絶することは許されない。国際社会が許さないからだ。(堀江 p254)
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