著者 和田秀樹
発行所 PHP新書
発行年月日 2007.03.01
価格(税別) 700円
● 現役といっても仕事で現役というに限定しない。趣味で現役でもいい。が,高齢になっても仕事をしている人の方が長命だというデータはあるらしい。
元気でいるために,人間関係を絶やさない,道徳にしばられない,勉強を続ける,家の中に籠もらない,我慢を少なくする,コレステロールが高いことを気にしない,ブログやSNSをやってみる,などが推奨される。
● ただし,本書は2007年の発行なので,まだFacebook疲れなどという言葉はない。ブログやSNSにも向き不向きがある。向かないと感じたらサッサとやめることという1項目を加えたい。我慢を増やすことになるからだ。
自分はまだ機能のごく一部しか使っていない,もう少し使い込めば違う光景が見えてくるかもしれない,などと考えないでサッとやめること。使い込んでみても,見える光景が変わるなんてことはないから。
● 人間関係も然り。それがストレスになるなら切り捨てることが必要。それができるのが年寄りのアドバンテージだ。
それ以前に,組織を場とする人間関係は,組織を離れれば消失するのが自然だ。場を越えて移植できるものではない。中には移植できるものもあるかもしれないが,基本はそういうことだ。
● なおかつ,人間関係を絶やすなというのが一般解になるかどうかも疑問だ。一般解は存在しない。自分の場合はどうかと考えなければならない。
ぼく一個は森博嗣さんの「孤独の価値」にシンパシーを感じる。自分が絶対にこれだけはと思う人間関係(ぼくの場合だと配偶者との関係しかない。あとは老母との関係)以外は捨ててしまった方が快につながるのであれば,そうした方がいい。
周りを見て右往左往しないこと。自分にとっての快はどちらか冷静に考えること。
● もちろん,やってみたら見込みと違ったというのはありそうなことだ。「孤独の価値」といっても,それはよほど強い人でなければ体現できないもので,安直にそこに走るなという意見もある。
たしかに,そこは考えなければいけないところだ。言葉を転がすだけで考えた気になってはいけない。
● で,自分はどうだろうかといえば,「孤独の価値」に傾きたいと思っているわけだ。ひとり遊びができることが重要だと,若い頃から言われていた。その種の本を好んで読んできたということだが。なぜかといえば,あまり人間が好きではない自分にとって,その教え(?)が好都合だったからだ。
ずっとそれを心がけてきたのだから,それなりの成果・蓄積があるはずなのだ(と思いたい)。それを活かせる時期がいよいよ来るということだ。
● 読む,聴く,見る,という受け身の趣味で老後を乗り切る。それをするのに人間関係は必要ない。
加えて,若い頃には考えることすらなかったインターネットが今はある。受け身の趣味であっても,それについてひとり語りをして,それをブログやTwitterで公開することができる。
したがって,没世間に落ちることはない。ぼくが理想とするコミュニケーションは“君子の交わりは水のごとし”というものだ。それを実現するには,リアルよりネットの方が向いている。
● 年寄りの社会貢献願望は社会の迷惑だと思っていたが,これについて修正を迫ってくる。何せ,年寄りがメジャーになるのだ。年寄りが年寄りに貢献する社会活動はありなのかもしれない。
● 以下に転載。
いつまでも現役でいたいと思っている人は多いはずだが,現役でいるために重要なことは二つある。一つは,「自分はもう若くない」という発想をやめることだ。(中略)もう一つは,矛盾するようだが,「衰え」と上手につき合っていくことだ。(p14)
医者は,病気についてはよく知っているものの,健康についてはあまりよく知らないものである。(p26)
フィンランド症候群という言葉をご存じだろうか。フィンランド症候群とは,簡単にいえば「健康オタクの人のほうが早死にする傾向がある」というフィンランドでの調査結果だ。(p36)
高齢になってくると,血圧が低すぎると脳に酸素が行きにくくなるし,血糖値が低すぎると脳に栄養が行きにくくなる。脳に酸素や糖分が送られなくなると,脳が十分に働けない。そいういう意味では,少し血圧が高めで,血糖値がやや高めの人のほうが,脳に栄養が行きわたって元気になっても不思議ではない。副作用のある薬を常用してまで,無理に血圧や血糖値を下げる必要はないのである。(p44)
人間の能力特性,特に脳の能力特性を見てみると,中高年になれば新しいことを覚える能力よりも,古いことをより発展させる能力のほうが断然高いということがわかっている。(中略)つまり,これまでやってきた仕事が自分の能力を最も発揮できる仕事であるということなのである。(p64)
これらのデータからいえることは,働くことは健康のためになる可能性があるということだ。高い会費を払ってフィットネスクラブに通わなくても,「働けば働くほど健康長寿になる」と思えば,耳栓をしてエクササイズをしているつもりになればいい。(中略)逆にいえば,仕事を辞めてしまうことは,健康に悪いことだと思ったほうがいい。次に働く先の見込みもないのに,早期退職するなどということは,絶対してはいけないことである。(p68)
携帯電話にしても,若い人に発想をさせると,「年寄りは機械の操作が苦手だから,簡単にすれば売れる」と思い込みがちだが,それは大きな間違いではないだろうか。(p73)
年齢は問題ではないし,下がつかえているというようなことも,勝負の世界ではまったく関係がない。それが本来の実力主義である。(p79)
野球であれサッカーであれ、ありとあらゆるプロスポーツの世界において,選手より監督のほうが報酬が高いことは,まずない。(中略)心と脳の元気を保つためには,お金よりも,自分が活躍できる場所を見つけることを選ぶほうがいい。(p80)
小泉内閣が誕生したときも,塩川正十郎宇治が財務大臣として入閣し,国民から「塩じい」の愛称で呼ばれた。長老が一人入ると,みんなが安心感を持てるのだ。(p87)
定年後に自ら起業をして,他の人の起業も支援している人に聞いたのだが,定年後に起業してうまくいっている人は,みな四〇代のときから起業について考えていたそうである。(p99)
ストイックな生活をすることは,必ずしも健康にはつながらない。それに明らかにQOLを下げてしまう。人生においては,ストイックな生活をしなくても,つらいことや,厳しい状況がたくさん押し寄せてくる。だから,せめて意識としては「生活を楽しもう」と考えておいたほうがいい。(p105)
若いときには好きでなかったことが,人生経験を積んだ中高年以降になって好きになることはよくあることだ。ところが,中高年を過ぎてしまうと,好みが変化することは少なくなるようだ。(p106)
現役年齢をのばしたい人は,「年がいもなく」とか「いい年をして」などという言葉に負けてしまってはいけない。周囲の冷たい視線と戦うべきだ。周囲の若い人から,「あんな派手な高齢者になりたい」と思わせるくらいの生活を楽しんではどうだろうか。(p110)
「余裕資金を使い,生活資金は投資しない」という鉄則を守っていれば,株式投資に熱中するこてゃ,中高年以降の有力な時間の過ごし方になると思う。(p116)
毎日同じ店で,決まったものしか食べないと,脳の活性化が妨げられてしまう。(p117)
頭を使っている人のほうが長生きできる可能性は高そうである。(中略)昔から,政治家や大学教授など,頭を使い続けている人は,高齢になってからも元気だと言われている。いくつになっても頭を使い続けることが,若さを保ち,現役年齢をのばすことにつながるはずである。(p129)
昔,私たちが学校で世界史などを勉強したときには,あまり質の高い参考書はなかった。しかし,その後の受験技術の発達で,世界史にしても日本史にしても,とてもわかりやすい参考書がたくさん発売されている。今は新しいことを学ぶときに,まず高校の参考書を読んでみるというのは,かなり効果的な方法の一つといえる。(p134)
「ブログを書く」ことで,脳が刺激され,脳の若さが保たれて,とてもよい効果が生まれてくる。(中略)体験記にせよ,オピニオンにせよ,マニアックな情報にせよ,若い人に比べて中高年以降の人のほうが多くの情報を持っている。(中略)中高年が本気でブログを書こうとすれば,若い人よりも,圧倒的に深みのあるブログを書くことができるだろう。(p156)
恋愛をして楽しむことは,脳の前頭葉にとって大きな刺激となる。前頭葉は,感情や自発性をつかさどる部位でもあり,若さを保つうえでは必須の部位だ。(中略)性的関係があれば,性ホルモンが分泌されて,肉体的な面でも若さが保たれやすくなる可能性がある。免疫機能も保たれて現役年齢はのびる。(p165)
芸能界では年齢を重ねてもとても美しい女性たちがいる。そういう女性の旦那さんは,奥さんが外で不倫をすることをある程度許しているのではないかと思う。(p167)
アダルト映像を見ても脳の画像処理機能しか使わないので,大して脳の活性化にならない。(中略)アダルト本を読んでイメージを膨らませることは,脳のなかの画像処理,言語処理,そして感情をつかさどる部位などに働きかけることになるので,脳の活性化につながっていく。(中略)アダルト小説は,実は文化程度の高い国にしかない(中略)実際にアダルト小説が普及した国は,フランスと日本くらいである。(p172)
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