2019年6月9日日曜日

2019.06.09 池谷裕二 『ココロの盲点』

書名 ココロの盲点
著者 池谷裕二
発行所 朝日出版社
発行年月日 2013.12.20
価格(税別) 880円

● 「認知バイアスと呼ばれる脳のクセを,ドリル風に解説したもの」。
 ジンクスを作ったり,ゲンを担いだり,反省過多に陥ったり,そこから教訓を引き出そうとしたり。それらは脳のクセによるものだったのか。
 これって偶然だと思えます? と問われたときに,偶然だよと躊躇なく答えれるようになる本。

● 以下にいくつか転載。
 脳の判断は思い出しやすさに影響されます。脳裏に浮かびやすい情報は「これほど簡単に実例が思い出せるのだから,その通りだろう」と確信が強まります。(p6)
 脳の判断はちょっぴり複雑です。「自分の仮説や信念」に一致する例を重要視する傾向があるのです。(p10)
 事が起こってから振り返ると「前もって予測できた」「本当なら実行できたのに」と思いがちです。これを「後知恵バイアス」と言います。「あのとき株を売っておくんだった」(中略)など様々な場面で現れます。(中略)このバイアスの悪しき点は「あれが兆しだった」と,ありもしない因果を創作して,妙な信念を導いてしまうことです。(p22)
 すばやく判断しなければならないとき,全体の判断は,冒頭部分の情報に影響されます。(p30)
 損失が連鎖する傾向は,教育や習い事,あるいは投資でもよく見られます。「せっかくここまでやってきたんだから」とこれまでの努力が失われることを惜しむあまり,やめるタイミングを逸してしまいがちです。(p34)
 脳は対象の全体をくまなく観察して判断することはありません。目立つ特徴に着目して,全体を判断します。ハロー効果です。(p42)
 脳は数少ない経験でも法則化しがちです。偶然の出来事が二,三回重なったら,「次もきっと・・・」と一般化したい感情を抑えるのは難しいものです。これが「迷信」が生まれる理由です。(p50)
 脳は入ってきた情報を「記憶すべきかどうか」と品定めします。このときの判定基準は「出力」の頻度です。(p54)
 新しいものを手に入れる快感よりも,すでに持っているものを失うことへの不快感に敏感なこの傾向を,「保有効果」と言います。(p58)
 記憶は未来に向けたメッセージです。将来の自分に役立ってはじめて意味を持ちます。だから役に立つように記憶内容が歪められます。(p66)
 脳は理由を問われると,「作話」します。しかも,でっちあげたその理由を,本人は心底から「本当の理由」だと勘違いしています。(p71)
 人は,他人が下した評価を無意識のうちに吸収して,あたかも「自分の意見」であるかのように振舞います。私たちの知性は傀儡です。(p83)
 脳はなぜか秩序を好みます。無秩序であることを認めるのは勇気のいることです。ついでに,ストーリーも大好きです。(中略)試合には「流れ」があって,シュートが決まりやすい「ノっている時間帯」と,そうでない「我慢の時間帯」があるような気がします。しかし,実際の試合データを統計的に解析した結果,シュートの成功と失敗の順列は,ランダムと区別がつかないことがわかっています。(p86)
 一般に,過去の自分に起こった実際の変化に比べ,将来の自分に起こる変化を少なく見積もります。(中略)つまり「もう変化は終わった」と勘違いするのです。これが「歴史の終わり錯覚」と呼ばれる理由です。(p90)
 年配者は「歳をとると記憶力が落ちる」と信じています。すると,その信念通りに記憶力が低下します。(p94)
 たとえば,「忘れっぽい」「しわ」「孤独」など老齢をイメージさせる単語を見ると,若い人でも歩く速度が老人のように遅くなることが知られています。(p95)
 もちろん失敗すればショックは受けます。しかし実際には,想像していたほどにはクヨクヨしないことが知られています。(p98)
 脳は確率がわからない選択肢を嫌います。曖昧であることが不快なのです。(p111)
 感情は,表情よりも,姿勢に強く引っぱられます。(中略)脳は顔よりも体との結びつきが強いのです。(p119)
 驚くなかれ,「押そう」と決める前に,脳は「押す準備」を始めています。無意識の脳回路が押す準備を整えたところで,ようやく「押したい」という感情が立ち上がります。(中略)どんな活動にも原因,つまり源流となった活動があるはずです。無からは何も生まれません。「押そう」という意志が発生したからには,その源流である「押そうという意志」を準備する事前活動が脳のどこかに存在しているのは自然なことです。(p122)

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