著者 和田秀樹
発行所 新講社
発行年月日 2017.10.27
価格(税別) 900円
● 著者が定義する“頭のよさ”とは「いろいろな考え方や知識を受け入れる柔軟性と,昨日より今日,今日より明日へと前進を続けられる能力と意欲」であり,最終的には「生き延びられる」能力。そのために大切な徳目は謙虚。
問題を前にしてすぐに答えを出すことには疑問を呈している。答は1つとは限らない。
● 以下に転載。
「わたしはあの人みないに頭がよくないから」といった言い方の裏側には,「だから同じようにできなくても仕方ない」といった諦めの気持ちが混じっているからです。わたしはこの「諦め」ことが,頭のいい人になるためのいちばんの障害だと思っています。(p18)
どんなに頭のいい人でも,そのときそのときの状況によってはバカになることがあるのです。(中略)ところがほどんどの人は,「頭のよさ」を固定的なものとして受け止めています。(中略)その思い込みから,あなたは自由になってください。(p20)
道具はいまあるもので十分です。あなたのいまの知識や語彙力,それさえ活用できればいいのです。活用することで,新しい知識が自然に見についていくからです。(p26)
頭のいい人は脳のスペックを最大限に発揮できる人だということはわかってもらえると思います。では,頭のソフトって何でしょうか?(中略)わたしは心理学がその鍵を握っていると考えています。(中略)心の働きこそが,頭をよくする大切なソフトになると考えています。(p27)
本を読んだり勉強したりして身につける知識はもちろん大切です。でもその知識は,人と話したり,教えたり教わったりというやり取りの中で本物の知識になっていきます。(p36)
わたしはかつて,勉強するのは正解にたどり着くためだと思っていました。(中略)いまは逆です。勉強するのは「いろいろな考え方があるんだ」ということを知るためです。(p40)
わたしは,頭のよし悪しを最終的に決めるのは,生き延びられるかどうかだと思っています。(中略)いま身につけたい頭のよさは,これからずっと生き延びていくための考える力や応用力になってきます。(p63)
詐欺師の手口を調べていくと,すべての事件に共通点があります。彼らや彼女たちは,相手を頭の悪い人間にしてしまう術をよく知っているのです。たとえば「結論を急がせる」,「不安を煽る」,「情報から遮断する」といったことです。(中略)つまり詐欺師は頭がいいからだませるのではなく,相手の頭を悪くしてしまうからだませるのです。(p68)
答をすぐに出せないのは,それだけ考える範囲が広いからということもできるはずです。すぐに答えを出せる人はどうでしょうか?(中略)思考の幅はものすごく狭いのです。いくら知識があっても,それを応用して考える力がないから答えがすぐ出せるのです。(p75)
大切なのが,もっと賢くなりたいという気持ちではないでしょうか。なぜなら,賢くなりたいという気持ちに終わりはありません。(p81)
頭のいい人ほど謙虚なのです。(中略)こういった態度はすべて,自分が権威ではなく,まだまだ勉強中の人間だと思っているから自然な振る舞いとして出てきます。(p82)
すべての地位はいつか失います。社長だって大臣だっていつまでも務まる地位ではありません。(中略)そのとき,謙虚さを失わない人なら周囲と幸せな人間関係を築いていけます。(p89)
ほんとうに頭のいい人は,結果に満足できたときでも「なぜうまくいったのか」を考えます。(p94)
なぜ,そういった自信家や自慢するタイプの人は頭が悪く見えてしまうのでしょうか? わたしの答えは単純です。自慢する人には謙虚さがないからです。(p98)
頭のいい人にはまず,いろいろな方法を思いつく知性があります。この知性というのは,特別な能力のことではありません。とにかく「考えてみる」という習慣です。つぎはそれを実際に試してみる体力です。(p118)
「あれこれ試すより,一つのことを我慢強く続けたほうがいい」 こういう考え方も,「知的体力」を衰えさせるとわたしは思っています。(p121)
要は「試してみる」ことさえ忘れなければいいのです。(中略)日常生活のいろいろな場面で,気軽な気持ちで「この方法,どうだろう」と試してみることです。(p124)
仕事の場合でも,頭のいい人ほど楽しそうだというのがわたしの実感です。「この方法は使えるよ」とか,「もう一工夫するとうまく行きそうだ」とか,自分が試していることを嬉しそうに教えてくれるからです。(p125)
焦りや不安が大きくなったときの考え方として,ぜひ身につけていただきたいものがあります。「ムダなことなんて何一つない」という考え方です。いまの仕事がどんなに自分のやりたいkととかけ離れていても,現実の仕事です。現実ですから,いろいろな人と会って話し,いろいろな考え方を知ることができます。知識や経験も積み重ねられます。(p134)
2つとか3つの顔を持つ人は,それぞれに合わせた世界や人間関係を持つことができます。(中略)一つの世界にこだわってしまえば,そういった広がりやチャンスは生まれません。(p137)
ときどき,「この人,どうやって食べているんだろう」と思わせる人がいます。わたしの気のせいかもしれませんが,かつてに比べればずいぶんそういう人が増えています。でもほとんどの場合,食うための仕事はどこかで確保していることが多いのです。(p141)
思い切った決断を必要とすることほど,迷うのは当然です。(中略)いつまで迷っても答えは出ません。答えが出ないなら,答えが出るまで迷っていていいはずなのに,それは煮え切らない生き方だとか,優柔不断すぎると考える人がいます。若い人ほど,そういう傾向があるようです。(中略)でもわたしは,決断こそいつでもできるのにと思っています。(p145)
むしろ,「とりあえず」の答え,「ひとまず」の答えが出ればいいし,そのほうが失敗してもダメージが少ないはずです。それに,次の答えも出しやすいですね。(p148)
頭のいい人は,他人の頭のよさを素直に認めます。(中略)学歴はもちろん,経験とかポジション,あるいは周囲の評価を鵜呑みにすることはありません。というより,気にしないのです。(p156)
社会や周囲の価値観とか考え方が強固であればあるほど,そこから抜け出せなくなるという心理がわたしたちにはあります。(中略)いつも感じることですが,自己啓発の難敵は現実の環境そのものだと言うこともできるはずです。(p166)
みんなと違うことをして失敗すれば自分の責任ですが,みんなに合わせて動いていれば失敗してもだれのせいでもありません。しかもみんなで言い訳することだってできます。やっぱり楽なのです。そのかわり,協調性を優先させれば考える力はどんどん弱くなります。(p169)
全会一致でトップの提案が可決されたとします。こういう会議の成り行きは「危険だ」と教えるのがアメリカの教育です。なぜなら,仮に10人の出席者がいても,全会一致ならひとりしかいないのと同じだからです。(中略)10人の人間がそれぞれの知恵を出し合い,それぞれの考えをぶつけ合うというプロセスは省略されていますから,最初から結論ありきの会議と同じになってしまいます。開いた意味がないのです。(p173)
退屈とかヒマというのは,そんなに悪いことなのでしょうか? 約束もノルマも義務もない,自由な時間です。何もすることはないけど,何をやっても許される時間です。本来だったら,こんな幸せで恵まれた時間はないはずです。そのことに気がついていない人は,退屈のありがたさもわからないのではないでしょうか。(p184)
自由になる時間が少しずつ増えてきたら,どんな分野でもいいですから勉強することだけは忘れないでください。飽きてもいいし長続きしなくてもいいです。(中略)役に立たないことでもいいです。そもそもヒマつぶしですから,自分が面白ければそれで十分です。(p186)
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