著者 和田秀樹
発行所 朝日新聞出版
発行年月日 2019.03.30
価格(税別) 1,000円
● 前頭葉の萎縮は40代から始まる。放っておくと老化に加速度がつく。ゆえに,抗わなければいけない。その方法論を具体的に教えてくれる。何だか元気が出てくる本だね。
でも,たぶん,本当にこの情報を必要とする人にはなかなか届かないものでしょうね。
● 以下に転載。
私は,20年以上にわたって老年精神医学に携わり,数多くの高齢者と接してきました。その中で常々感じていたのが,「個人差の大きさ」です。(中略)見た目に関してはその差がもっと大きく,実年齢プラスマイナス10~15歳は決して珍しくありません。その差はやはり「感情年齢」にあります。(p8)
若者とシニアで一番違うのは,感情を揺り動かす「ときめき」や「やる気」などのモチベーションの大きさです。(中略)何に対しても意欲が沸き起こるのが「若者脳」なら,なかなか気持ちのボルテージが上がらず,意欲不足に陥るのが「シニア脳」といえるかもしれません。(p16)
従来の老化モデルは,高齢になると徐々に健康度が落ちていくというものでしたが,最近の老化モデルは,死ぬ数年前までは元気で,最後の数年間でいきなり衰えるというように変わってきています。(p23)
男性ホルモンが減少すると,判断力や記憶力が低下したり,集中力や積極性が損なわれたりすることがわかっています。(p32)
人間のメンタルが老化するスピードは,筋力が衰えるより早いのです。(p35)
閉経して女性ホルモンは減ったままなのに,なぜ元気になるのか。そこには,驚くべき事実がありました。(中略)以前は,加齢とともに女性は女性ホルモンが減ることで,相対的に男性ホルモンの割合が増えると考えられていたのが,そうではなく,男性ホルモンそのものが増えていることがわかったのです。(p53)
女性に対してまめな人は,案外同性に対しても付き合いが良いものです。つまり,男性ホルモンには「人付き合いがよくなる」という要素があると考えられます。また,男性ホルモンと「意欲」には密接な関係があります。(中略)一般論でいうのなら,知的好奇心が高い人は性的好奇心も高いのです。(中略)男性ホルモンには,「人に対して優しくなる」という要素があることが実証されています。(p54)
恋多き女に豊富なのは女性ホルモンではなく,男性ホルモンです。(p57)
「性」は「生きること」に直結した大変重要なことです。また,頭も体も使わなければ衰えるように,性的なことも使わなければどんどん衰えるのです。(p63)
それこそ,「これは絶対にダメ!」「これ以外は認めない」という考え方は,感情の老化が始まっているのかもしれません。感情を老化させないためには,まず,自分が正しいと思っていること,常識とされていることを疑うのが肝心なのです。(p78)
感情老化を促進するのは,いわば決まりきったことを続ける刺激のない生活で,これを変えない限り感情の老化も止まらないというわけです。(中略)詳しくいうと前頭葉の中の「前頭前野」という部分が感情をつかさどる中枢なのですが,実はこの前頭前夜の大好物は「ときめき」なのです。(p86)
脳の若さを保ちたいなら「まあ,いいや」「これでいいや」という言葉はもう封印したほうがいいでしょう。(中略)「まあ,いいや」という消極的な気持ちは,脳が楽をしている状態です。(p88)
暖色系の色は男性ホルモンを刺激しながら増やす効用もあります。(中略)特に男性ホルモンの増加が期待できる赤系の服は,ぜひトライしてほしいものです。(p90)
もともと前頭葉は,いつもとは違う状況や変わったシチュエーションで底力を発揮する部位ですから,ルーティン通りの生活ではあまり働かないのです。(p91)
誰かに命令されてイヤイヤ創作をしたのでは,前頭葉にとってほとんど意味がありません。自ら望んで変化を楽しむから,高価が倍増するのです。(p94)
たとえば,トランプが大統領になった時,大方の予想で「株が下がる」といわれていたのに,実際にふたを開けてみれば,株価はどんどん上昇しました。このように想定外のことが常に起こるのが相場やギャンブルですから,刺激は満点。そして,想定外のことに前頭葉は激しく刺激されるのです。(p98)
健康にいいつもりで高たんぱく質の食品を避けていると,脳の栄養が不足して,感情の老化を早めてしまいます。精進料理のような食事が健康的だというのは誤解ですから,ぜひたっぷりと肉や魚を召し上がってください。(p105)
日本人のメタボ恐怖症やダイエット信仰には,いつも頭をかかえてしまいます。(p110)
自分の意見と似たような本をいくら読んだところで,前頭葉への影響という点ではあまり効果は期待できません。(p121)
いつも同じ作家の本ばかり読む人は,たまには全然違うジャンルの本を読んでみるのも良いでしょう。そして,その振り幅が大きいほど脳は活性化します。(p122)
実は,小腸には体の免疫細胞の8割もが集まっているといわれ,免疫機能として重要な役割を担っているのです。(中略)つまり,老化防止には腸の健康を保つことがとても大切なのです。(p146)
昔は,心のありようは内面から湧き出るものだと考えられていましたが,現代の行動療法や認知科学の世界では,「人の心のありようは,外側から規定される」という考え方が強まっています。(中略)心も体も,もちろん感情も若々しくいたいと思うなら,まず外見から変えていくのも一つの方法です。(p148)
人生は長いのですから,早々とお楽しみをやめてしまう手はないのです。(p163)
よく「ひとり言はよくない習慣」などという説がありましたが,それはまったくの迷信です。(p171)
意識的に外に出る週案づけをしておくことが大事です。たとえば,毎月,最低1本は映画を見るとか,図書館で本を借りるようにするとか,生活の中の小さなことでも構いません。インターネットの発達により,家に居ながらにして映画を見たり,電子書籍で本を読んだりできる世の中になりましたが,外出して得られる情報や刺激とでは雲泥の差があります。(p174)
日本人には「新しいことを学び,知識量を増やすことが勉強」という固定観念があります。そのため,「常に知識不足であり,そのためにもっともっと勉強すべきだ」という思いにとらわれがちなのですが,人生後半の勉強では,従来の知識詰め込み型ではなく,アウトプットにこそ意味があると思うのです。(p184)
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