編者 ピエール=アンリ・ヴェーラック
発行所 ハマハミュージックメディア
発行年月日 2012.04.10
価格(税別) 3,500円
● 現在の音楽評論家や音楽愛好家の間では,カラヤンの評判はすこぶるよろしくない。その多くは有象無象で,かけ算九九もろくろくできないのに,微積分を答案を見て,これは出来がいいとかイマイチだなと言っている類だろうし,評論家というのは,分野を問わず,間違えるのを商売にしているようなものだ。
では,おまえは有象無象じゃないのかと言われると,考えるまでもない。その他大勢の一人にすぎない。
カラヤンがけっこう好きな有象無象の一人なんですよ。だから,こういう本を手にとってみたりもする。
● 巻頭で,アンネ=ゾフィー・ムター(ヴァイオリニスト)が序文を寄せている。カラヤンに引き立ててもらった人ってことになるんだろうけど,引き立てられるだけの実力があったわけでもある。
リハーサルでは自分を厳しく律し,作品にとことん向き合うことによって,コンサートの本番では完全な自由と権威を獲得した。私には,楽譜のほんのこまかい部分にも非常に重要な意味が隠されていることを教えてくれた。(p3)● 続いて,ユルゲン・オッテンがカラヤンの伝記をまとめている。
カラヤンほど集中的にリハーサルに取り組み,取り憑かれたようにスコア・リーディングに没頭した指揮者はいない。(p5)● 人当たりが良くて性格円満な天才などあり得ないものだろう。カラヤンは円満なほうではないか。フルトヴェングラーに嫌い抜かれて鍛えられたのかもしれないが。
それでも,人との衝突を恐れなかったようだ。音楽に対する没頭がその前提なのだろう。それだけではきれい事にすぎるか。名誉欲・名声欲も並外れていたんだろうけど。
● 恋多き男だった。スピード狂であり,スポーツマンでもあった。快を求める欲が旺盛だったと総括できるか。
これが少ない多くの男と,旺盛な少数の男がいる。
● カラヤンの次の言葉が掲載されている。
君に指揮を教えることはできないが,リハーサルのやり方は教えられる。そのとおりにすれば,本番を迎えたとき,ほどんど指揮をしなくて済むだろう。(p160)
0 件のコメント:
コメントを投稿