2019年5月31日金曜日

2019.05.31 千田琢哉 『さあ,最高の旅に出かけよう』

書名 さあ,最高の旅に出かけよう
著者 千田琢哉
発行所 総合法令出版
発行年月日 2015.08.08
価格(税別) 1,200円

● タイトルには“最高の旅”とあるけれど,旅行本ではない。むしろビジネス書,自己啓発本の範疇に入るもの。

● 以下にいくつか転載。
 間違いなんて当たり前だし,間違いを楽しむ姿勢が旅には不可欠なのだ。計画通りにキッチリと辿るだけの旅なんて,まるで模範解答通りにそのままマークシートを塗り潰している人生のように退屈だ。(p33)
 この間違いをどのように正すのかではなく,この間違いをどのようにそのまま楽しむかを考えるのだ。(p34)
 群れているより独りでいたほうが断然魅力的に映る(p39)
 豊かな人は外出せずに部屋でボーっとする贅沢を知っている。(p46)
 旅で楽しいのはメイン通りではなく,裏通りだ。人生も旅もメイン通りより裏通りにいつもチャンスが転がっているのだ。(p68)
 マイナーコースでトップになれば,メジャーコースの補欠よりも遥かにいい待遇を受ける。(p71)
 旅先で地元の住人と話す際には,あえてバカのふりをすることも必要だ。(中略)知ったかぶりをしないのは教わる側の最低限のマナーだ。(p80)
 運は,大原則として,不要なものを抱え込んでいると悪くなるという特性がある。(中略)そもそも不要だということは,それ自体運が悪いということに他ならない。(p93)
 大人になってからも私たちは他の何かで枕投げの代わりをしてハイになることを求めているものだ。(p98)
 率直に申し上げて,一流ホテルのマネージャーや支配人クラスでもドンマイで冴えない人材が多い。(p111)
 もともとサービスというのは,お客様の召使いとして尽くすということだ。召使いというのは一般に身分が低いが,プロなら堂々と召使いに徹することだ。(p114)
 ホテルを利用する側にも注意点がある。それは自分がご主人様扱いされるにふさわしい言動を身につけることだ。(p115)
 ピンの旅館・ホテルというのは,人の人生を変えてしまうほどの絶大な影響力を秘めている(p116)
 「語学なんて切羽詰まれば誰でも簡単に話せるようになるわよ」と笑われた。「あの人たちは日本語が話せなければ極貧生活になるの。でも足し算と引き算はできても,掛け算と割り算はできないのよ」と言われて,ハッとした。(p158)
 一期一会の旅でも,スタッフは名前で呼んだほうがいい。名前で呼ぶと,一瞬で相手との距離が縮まるのだ。(中略)綺麗事を抜きにするとスタッフの名前を呼ぶことによって,ご主人様と召使いの関係を構築することができるのだ。(p168)

2019年5月29日水曜日

2019.05.29 箕輪厚介 『死ぬこと以外かずり傷』

書名 死ぬこと以外かずり傷
著者 箕輪厚介
発行所 マガジンハウス
発行年月日 2018.08.28
価格(税別) 1,400円

● 大変な熱量。キ○タマの裏側まで見せているよう。名宛人は若者だが,ロートルほど読んでおいた方がいいかもしれない。
 しかし,本書で説かれていることは100mを10秒以内で走れということ。わかっていてもできる人はそんなにいない。そんなことは著者も先刻ご承知。できる人はやれということだ。

● ぼくらが犯しがちなミスは,これほどのスピードで量をこなすのは,それが自分の好きなことだからだと考えてしまうことだ。
 おそらく,そうではない。対象が何であれ,できる人はできる。著者は編集者でその技を発揮しているのだが,別の業界に行っていても,そこでひとかど以上の実績をあげていたろう。

● 以下に多すぎる転載。
 僕はよく「ここ数年で一気にブレイクした」と言われるが,それは編集者にハマったからだ。そして,編集者という仕事自体が,今の時代に求められる能力を培うためにベストな職種だったからだと思う。(p6)
 編集者は,一生に一度会えば人生が激変するレベルの変人や天才たちと毎日のように会って,時にぶつかりながら本を作り,戦友のようになる。読者には申し訳ないが,一冊の本を通して一番成長するのは間違いなく編集者だ。(p6)
 いまの時代,商品の機能や価格は大体似たり寄ったりだ。これからは,その商品にどんなストーリーを乗っけるかが重要になる。(中略)実はそれは,編集者の一番得意なことなのだ。(中略)ぼくがお客さんが買いたいと思うようなストーリーを作ることで,アジア旅行で買った,タダでもいらないような大仏の置物を数万円で即売させることができる。(p7)
 「世の中の人が日々,何に悩み,何に歓喜しているのか」が肌感覚で分からなければ,売れる本なんて作れない。最近はビッグデータを分析すれば売れる本のネタが分かる,みたいなことを言う人もいるが,そんなことで売れる本は生まれないと僕は思う。(p8)
 その営業マンはランチに何を食べるのか。唐揚げ定食なのか,コンビニ弁当なのか。特定の誰かを自分に憑依させるがのごとく,そこまで徹底的に想像し,その一人の人生が変わるようなものを作る。そういった超個人的に作ったものが,結果的にマスに広がっていく。(p8)
 自分が読者として絶対に読みたいと思うものを作る。面白い,面白くないかの基準なんてないんだから,偏愛でいい。自分が「この原稿を世に出せたら編集者を辞めても良い」と思えるようなものを作る。まずはそこが大事。(p9)
 常に「こんなものだろう」という予定調和を壊しに行かなくてはおもしろいこと,新しいことはできない。ロジックから感動は生まれない。(p15)
 ごちゃごちゃ言う前に,とにかく動く。スピードと量で圧倒する。変化の時代には,とにかくよく動く人間が勝つ。(p16)
 デジタルの時代こそ丸裸になって本物の関係を作れる人間の価値は増す。(p16)
 ロボットが人間の大半の仕事を代替するようになると,我々人間は自分の内的欲望に忠実に,何かに入れ込んで,ただ熱狂する時間ができる。むしろ,そうやってしか人間が生み出すべき価値は作れなくなる。(p16)
 しかし,そこで思ったのは「今すぐネットカフェを探してミクシィ日記を書かなきゃ」。こんなおもしろい体験をしたのだ。一刻も早く旅行記を書き殴り,日本の友人たちに読ませたい。下手すれば殺されていたかもしれないのに,僕の脳内は「この体験を誰かに伝えたい」という衝動で疼いていた。恐怖より高揚感が勝っていた。(p29)
 思いっきりバットを振れば,熱狂は伝播する。バカにして笑っていた人たちも次第に巻き込まれていく。無難にやっていたら人はついてこない。人は危うさに魅せられる。(p33)
 おっさんは昔からの習慣を守りたがる。当たり前だ。そっちのほうが自分が変わらずにすんで都合がいいからだ。しかし若者はそんなものはまやかしであると喝破し,新しい秩序を創らなければいけない。(p41)
 世の中にインパクトを与える起業家やアーティスト,アスリートには共通点がある。「狂ってこそ人生」。みんな3歳児のように本能丸出し,好奇心剥き出しだということだ。(中略)彼らを見ると,人生とは3歳児のままどこまで走れるのかというレースだと感じる。(p43)
 民衆は「正しい情報」よりも「楽しい情報を求めている。これは江戸の瓦版のころからの真理だ。(中略)「正しい情報」をありのままに伝えたところで,人々は幸せにはならない。そして「正義」ほど曖昧で,一方的で,暴走しやすいものはない。(p49)
 スマホによって世間は分断された。昔のように家族で同じテレビ画面の前に座り,会社や学校で昨日の番組について話題にすることはなくなった。今の人はスマホという小宇宙の中で生きている。スマホは飼い主が見たいものしか差し出さない。(中略)バカはますますバカになる。(中略)分断された世の中だからこそ,情報を浴び,知を獲得しろ。意識くらい,高く持て。(p59)
 基本的には会社も個人も「金」と「感情」で動く。この二つをしっかりとおさえていれば,凝り固まった会社でも前例を変えていくことは可能だ。(p65)
 イノベーションは常に辺境から生まれる。若者や変人が隅っこで遊びながらやっている小さなことがいつしか体制を揺るがすものになっていく。会社というのは社員を抱えているから目の前の利益を取りにいかざるを得ない。(p66)
 よく社内で戦おうとする人間がいるが,勘違いだ。戦うべきは会社の外だ。自分が自由になりたければ,「金」と「感情」をおさえて会社とはズブズブの関係になるのが理想なのだ。(p67)
 僕はサラリーマンの仕事を誰よりもこなしている。締め切り前になると朝3時ごろに会社に出かけ,たった一人しかいないフロアで必死にゲラに赤字を入れている。当然寝てしまいそうになる。窓を全開にして冷たい風を浴びながら立って作業する。他の社員が出勤してくることには外に打ち合わせに出かける。死ぬほど働いているだけに時給換算すればアルバイトとそう変わらないかもしれない。オンラインサロンやコンサルなどの仕事は本業の合間にささっとやっている。時間としては短い。それでも今は本業の20倍ほどの月収がある。(中略)だが僕は会社を辞めない。(中略)幻冬舎の社員であるおかげで,僕はこれらのインフラと人と金,会社が築き上げてきた信頼,そしてノーリスクで勝負する権利を利用できる。(中略)どれほど優秀なフリーランスでもこうはいかない。まだこの国では結局は社員でないというだけで出入り業者のようになってしまう。(中略)これだけの資産が使えるのだ。幻冬舎の給料をゼロ円まで下げられたとしても,僕は幻冬舎に籍を置きたい。いやむしろお金を払ってもいいくらいだ。会社には感謝しかない。会社の文句を言うサラリーマンが僕には信じられない。(p73)
 僕はそれを口に出す。「ホリエモンの本は世の中にあるホリエモンの発言をさっとまとめたコピペ本だ。『他動力』なんてほとんど僕が書いている」と言ってしまう。この僕の発言はネットニュースにもなって大きく報道されてしまった。しかし,それで本の価値が下がったり読者が逃げたりはしない。ホリエモンも怒らない。消費者は会社や大人の都合から出た言葉では動かない。むき出しのリアルを求めているのだ。(p79)
 実力だけで何者かになれるなどという甘い考えは捨てたほうがいい。実力がある人間など世の中に掃いて捨てるほどいる。しかも,上位1%の本物の天才以外は代えのきく存在だ。「実力よりも評判」「売上げよりも伝説」。極端に言えばそんなパンクな生き方をする人に大衆は魅せられる。僕より編集という技術が上手い編集者などごまんといるだろう。しかしムーブメントを起こし熱を生むことができる人はほとんどいない。(p83)
 作業は熾烈を極め,メンバーは不眠不休でふらふらになりながらもイベントを成功させた。しかし,直後に僕はイベントリーダーに言った。「成功するまでにどんな苦しいことがあったのか,今すぐおもしろおかしくブログに書いたりインタビューを仕込んで,自分の名前を売ったほうがいい」 イベントを上手に仕切る人はどいくらでもいる。この人にプロデュースしてほぢいという存在にならなければ意味がない。(中略)伝説を伝えるまでが仕事である。(p85)
 物が溢れる時代。もはや物を選ぶこと自体に疲れる。自分が信頼する人のおススメを選ぶようになるのは時代の必然だ。インフルエンサーの力はどんどん強くなるに決まっている。(p88)
 だからツイッターでは本の宣伝だけではなく,自分の人間性を丸出しにして,人生丸ごとさらけ出していくことに決めたのだ。箕輪の生き方が好きだ,共感する。だから彼が編集した本を読みたい。そうなるしかないと確信した。(p88)
 やってみれば分かるが,フォロワーはそんな簡単には増えない。ツイートにオリジナリティがなければ赤の他人をフォローしようなどと誰も思わない。だから他の人間が言わないようなことを言わなければいけない。しかし,それが単なる言葉だけであっても見透かされる。SNSでは嘘は付けない。つまり,誰も言わないことを言えるようになるために,誰もやっていないことに挑戦し,誰もしていない経験をし,誰も成しえていない実績を作らなければならないのだ。結局,自分は何者で,何がやりたくて,今何をしているか。自分という者が激しく問われる。(p89)
 編集者は黒子などというのは,ほとんどの場合自分が血を流さないための言い訳でしかないと僕は思う。著者は血を流している。裏側の人間が自分という人間を丸出しにしなければ,モノなんて売れない。(p89)
 もはや人はお金では動かない。夢を見させられる言葉と実行力,そして何より本人が楽しそうにしていることが大切だ。(p93)
 誤解を恐れずに言えば,これからのビジネスはほとんどが宗教化していくと思っている。信者を集めることができなくてモノを売ることなどできない。その背景は人が孤独になったことと,物資的にみたされたことの2つだ。(p95)
 これからはあらゆるビジネスが思想を売るようになる。(中略)分かりやすく言うと昔は金を稼いで高いワインで美女と乾杯するのが幸福だったのが,今は自分が意味を感じることを,好きな人たちと,ただ没頭することに幸福を感じるのだ。そういう人たちに時価総額世界一と言っても共感は得られない。金ではなく,意味合いに共感してもらい,同じ価値観を持った人と,没頭してもらうしかないのだ。(p95)
 真面目にバイトしているところを見出されて社員編集者になる。それは年功序列,終身雇用が機能していた時代のサラリーマン的な発想だ。そんな考え方はすぐに捨てたほうがいい。(p101)
 一流のサッカー選手になりたければ,誰よりもボールを蹴る以外に方法はないのだ。部活動での球拾。そこで流す汗は美しい汗はプロになるために何の役にも立たない。その汗が報われると思っているのだとしたら可哀そうだが勘違いだ。(p101)
 人間はみな平等に24時間しか持っていない。不眠不休で働いたとしても,時間で考えるとせいぜい人の2倍しか努力はできない。では,どこで差がつくか。それは,「昨日までできなかったことをできるようにする」ということを日々積み重ねることだ。(p103)
 「スピードは熱を生み,量は質を生む」 尊敬する週刊文春編集長・新谷学の言葉だ。(中略9普段ならあり得ないスピードで走り抜けることで書き手との間にものすごい熱が生まれる。そして,その熱によって本に魂が入るのだと思う。(p105)
 暇な人は思考停止したまま習慣を踏襲する。本当に忙しくすれば,無駄なことはどんどん切り捨てざるを得なくなる。本質的な仕事だけが残っていく。次第に生産性が上がっていく。(中略)成約がイノベーションを生む。追い込め。ダラダラと居心地の良いスピードで仕事をしていては,この世にあらざるものは作れない。(p106)
 どうにか乗り越えられる量ではだめだ。それでは能力爆発は起こらない。絶対に無理,どんな方法を使っても不可能だというくらいの負荷を自分にかける。すると苦境を乗り越えようという防衛本能が芽生え,進化する。進化は危機からやってくるのだ。(p110)
 1年間で100の力が使えるとしたら,最初の2か月で90を使い切ってしまうくらいの気合いで走るといい。そこにインパクトが生まれる。圧倒的なまでに量をやるとキャパシティが増えて,また100の力がプラスされる。(p111)
 そこそこ優秀。そこそこ目立っているうちは周りから可愛がられる。すば抜けると評論家気取りの連中に,そのスタイルを批判,非難される。しかし,それがブランドになったという証拠だ。(p111)
 熱狂できることに出会うためには,自然消滅上棟であれこれ手を出せばいい。まずは口癖を変えるのが有効だ。(中略)なにか声がかかったとき,「やりたい」「行きたい」という言葉を禁句にする。そして「やります」「行きます」と言うようにするのだ。これだけで行動の量とスピードが飛躍的に上がる。(p113)
 そもそも誰か一人が熱狂していない企画などうまくいかない。消えていく運命にあるのだ。(p114)
 何が当たるか分からない時代は,完走することよりも,とにかく一回ダッシュしてみることのほうが大切だ。(中略)気が変わったら,走るのをやめてしまえばいいだけだ。(p115)
 あらゆることを手掛け何でも屋さんに見えるような人でも,トップに居続ける人は地味なことを誰よりもやり続けている。(中略)いわゆる成功者を見るとき「勝ち組でうらやましいな」と思うかもしれない。だが彼らの本を作りながら,間近で見ていて僕はいつも思う。「これだけ血の滲むような圧倒的努力をしていたら,そりゃ成功するに決まっているわ」と。(中略)多動力の本質は,あれこれ手を出すことではない。まず何か一つで突き抜けるということだ。なにか一つのジャンルで日本のトップになるから,横展開が可能になるのだ。何らかのトップだから他のトップから声がかかるのだ。(p118)
 人は変わることをやめたときに腐る。変わり方はこの際,いいだろう。「変わり続けることをやめない」という意思を持ち続けられるかどうかがまずは問われるのだ。(p122)
 相手に装備を解除させ丸裸にするためには,まずこちらが,そこまで脱いでしまって大丈夫なのかと心配されるくらい,無防備になることが大事だ。(中略)自分の恥ずかしい部分も醜い性格もわがままさも生意気さも全部出してしまう。嫌われることなど恐れるな。全てを見せて嫌われるなら,それまでだ。(p128)
 自分に実績がなくても「こいつとならやってもいいかな」と思わせる言葉を捻りだして相手の感情を動かすことができれば,チャンスはあるはずだ。そのために重要なのは,どれだけ相手の心を想像し寄り添えるかだ。(p131)
 インタビュー中に盛り上がって100聞いたとしても,いざ原稿になり本となる過程で削られて80になることが多い。だから削られた結果としても100になるように,インタビューの場では120まで踏み込んで,エグイくらいに聞いたほうがいい。相手のご機嫌など伺わず,急所に切り込めなければ意味がない。(中略)編集者は書き手のファンではなく,読者の代表なのだ。(p135)
 絶対に言ってはいけない秘密なのに,「この人には言ってしまいたい」と思われる人間になれるかどうかが編集者としては重要だ。僕は口が軽くて有名だが,日本中のタレコミ情報が集まってくる。形式的な仕事をしている人間に人は心を開かない。(p136)
 結果が出ないいい人より,強引にでも結果を出す変態に仕事は集まる。(p137)
 『ドラゴン桜』や『宇宙兄弟』の編集者・佐渡島庸平が語るコミュニティ論をぼくはずっと参考にしていた。「箕輪編集室」のコミュニティ設計もNewsPicksBookの読者の囲い方も佐渡島さんのアドバイスに大きく助けられている。(p141)
 僕は売れる,売れないを理由に本を作ることはない。あくまで自分が読みたいかどうか。(中略)ただひたすらに自分の感覚で自分が読みたいものを作る。こっちから読者や時代に合わせに行くことはない。(p142)
 会社の金を使って赤字を垂れ流して「作りたい本を作ればいい」などというのは甘えに過ぎない。自分の金でやれ。そして,そういった人間が作るものはたいていの場合,おもしろくもない。覚悟がないからだ。覚悟が甘い人間のコンテンツはゆるい。(p145)
 自分が好きなことをやるために,自分が好きな本を作るために,わがままで自由でいるために数字を戦わなければならない。(p145)
 「変われ変われ」と読者に訴えているビジネス書の編集者が,10年前と同じスタイルで仕事をし,変わっていなければ僕は詐欺だと思う。しかし,はっきり言ってビジネス書の編集者ほどビジネスができない人たちも珍しい。(p150)
 周りが引くくらい著者と本に没入する。誰よりも感銘を受け,実行し,自ら本の化身となりながら,その本のメッセージを生き方をもって体現する。言葉の羅列を見せるだけでは人は動かない。僕自身が誰よりも原稿に入れ込んでいるから読者も熱狂してくれるのだ。(p151)
 僕は本を書きたいと思っている人に本を書いてほしいとは思わない。眼の前の仕事に熱狂し,本なんて書く時間のない人を強引に口説いて本を書かせたい。(p154)
 情報の価値がかぎりなく0円になっている今,本は体験を売るしかない。この本で意識が変わる,見方が変わる,行動が変わる。これらの体験までデザインすることが重要だ。(p155)
 毎日のように人身事故が起こり電車が止まる一方で,獄中に堕ちてすべてを失っても,あっけらかんと人生をエンジョイしている人もいる。そういう人が世の中にいることを知るだけで,心が楽になればいい。(中略)水と油のようにどんなにかき混ぜても世間と混ざり合わない異物を世に出して「いろんな生き方」があるんだな,と思ってもらえばそれでいい。(p159)
 どれほど努力をしても夢中な人には勝てない。(中略)だから僕は自分が夢中になれるかどうか,その心の動きを大切にする。(p161)
 もし「これがオマエの仕事だ」と上司から命令されてやっているのであれば,ノイローゼになってしまうだろう。僕は好きでやっているだけだから,ここまで狂えるのだ。(p161)
 今まではお金を稼ぐのが上手な人が豊かであったが,これからは夢中になれるものを見つけている人が豊かになる。(p162)
 リスクと思っていることは全部,仮想的なものだ。人生など長いドラマであり,ロールプレイングゲームに過ぎない。失敗もトラブルも全部,話をおもしろくするためのイベントだ。今ほど挑戦する人が楽しい時代はない。死ぬこと以外かすり傷と叫びながら,ただ狂え。(p163)
 編集者として100年後も読みつがれる本を作りたい。そういう想いが僕には,どういうわけだか一切ない。(中略)時代のあだ花でいい。(p165)
 こうして一冊の本を世に出した時点で,今までの僕は死んだも同然だと思っている。自分の経験やノウハウを語ったり,本にしたりした時点でもう,腐り始めている。(中略)その時点で僕の腐敗は始まっている。居心地がいいということは挑戦していないということ。成長していないということだ。(p166)
 飲み会で正気な人はいつも損をする。あと片付けしたり,会計をしたり,人を送ったり。この際,楽しく酔って騒ぎまくろう,歌いまくろう,踊りまくろう。そして,また翌日,しれっと反省して,ケロッとしてまた同じことを繰り返せばいいのだ。この世は酔いがさめた人間,まともになった人間から脱落していく愉快なレースだ。(p170)
 あなたがやりたくないことはあなたがやめても実は誰も困らないことだ。明日から何事もなかったかのように世界は続いていく。しかし,あなたが心の底からやりたいと願うことは,あなたにしかできない素晴らしいことだ。明日からの世界を変える可能性がある。(p172)

2019年5月25日土曜日

2019.05.25 伊集院 静 『誰かを幸せにするために 大人の流儀8』

書名 誰かを幸せにするために 大人の流儀8
著者 伊集院 静
発行所 講談社
発行年月日 2018.11.05
価格(税別) 926円

● テーマはずっと「大人の男」。185万部というのはシリーズ全体での数字だろうけど,それでもかなり読まれているといえる。
 「週刊現代」に連載されているわけだから,週刊誌は毀誉褒貶あるけれども,なかなかどうして大したものだ。
 本書を読んで変われる人はしかし,どれほどいるものだろうか。グウタラは何を読んでもグウタラで,その筆頭が自分だ。

● 以下にいくつか転載。
 3・11の時,東北にいた人たちは,津波で自動車が堤防を越えて流されている映像を誰一人見ていないのである。悲惨な街の姿を見るのは一ヶ月も先のことだ。災害にしても,戦争にしても,巻き込まれた人たちは,その実態を知らないのが本当のところだろう。(p22)
 人間は少しでも,それが他人事と感じると,敢えてそれをしない生きものだ。私は備えをしないことを悪いと言っているのではない。人間はそういう生きものにできていると思っているだけだ。(p23)
 己のしあわせだけのために生きるのは卑しいと私は思う。己以外の誰か,何かをゆたかにしたいと願うのが大人の生き方ではないか。(p29)
 鳥井(信治郎)と藤沢(秀行)の共通点は「わてら,わしらのやっとるもんは無限の可能性がある世界や,知ってることを教えれば,皆がさらに高みに行けるやないか」人間の格が違うのだ。(p74)
 風潮,風評というものは,昔から根拠なき所から,唐突に生まれ,知らぬまに,それが当たり前のごとく受け入れられるものだ。始末の悪いことに,根も葉もない話の方が世間にひろがり易いという側面を持っている。(p83)
 この事件,私たちが見逃しがちなのは,被害に遭った関西の大学が,事件の状況を把握し,すぐに謝罪を求める記者会見をしたことにある。最初は,珍しいことだ,と思ったが,ビデオなどを見て,ほどなく悟った。--これは初めてのプレーではないはずだ。これまでも,これに似た状況があり,選手の生命を守らねば,と監督,ディレクターは会見の場をつくり,挑んだと言って良い。(p109)
 若い人から(子供でもいいが),何か一言と頼まれると,男子なら“孤独を知れ”と書くことがある。人と人の間と書いて人間だ,わかるかね? と口にする人がいる。何を言ってやがる。それは理屈で,道理,真理とはかけ離れたものである。理屈は,やることをやった後での無駄口の類いのものだ。(p124)
 雨の日の煙草の美味さは,絶妙である。煙草を吸う人がいなくなった国は,私は必ず滅びると思っている。(p124)
 プロスポーツは天才でない限り,若い時にいかに苦しく辛いことをどれだけやれたかで,登る山の形が変わる。大人の男の仕事もそうである。(p131)
 失敗を顔に出せば勝負事は敗れる。(p131)
 小説を書くには才能があるだけでは上手く行かない。むしろ才能,才気は邪魔になる方が多い。根気,丁寧,誠実と言いたいが,そんな立派なことではない。良質の小説と,良く売れる小説はまったく違うものだ。昭和,平成を眺めても,よく売れた作品を書いた作家を見ると,大半は性格が良くないのが多い。では売れないものを平然と書く作家はどうか? もっと悪い,かもしれない。(p153)
 私は,或る時から,物と金を所有せずと決めた。だから所有者とか,預金者というのは愚か者と読むようにしている。(p158)
 私は海外へ旅する時は,事前に,その国の地図を求め,取材ノートにまず自分で地図を描いてみることにしている。地図は国全体だけでなく,街や村でもそうする。これが訪ねた土地を歩くのにとても役に立つし,記憶がより鮮明になる。さらに言えば,街なり村なりに着くと,まず一番高い所で車で行き,土地全体を見回してみる。(p168)
 私は物というものは,使われてこそ活きるもので,家の奥に仕舞われているうちは,価値がないと思っている。物とは違うが(私にすれば物そのものだが)お金なんぞもその典型で,使ってやればいいのだ。スパッと使ってしまえば,風通しも良くなり,せいせいした気分になる。(p173)
 私の短い半生の,半分近く,私は世間からガラクタのように見られて来た。こう書くと嘘と思われるかもしれないが,事実である。「あんな男見るのも嫌だ。ただの酔い泥れの博打打ちでしょう。ガラクタよ」そういう目で私を見た男と,女はゴマンといた。承知で歩いて来た。同じ目で見られる人に逢うと,気が合うかというと,これが本当にゴミだったりするから不思議だ。それでも“かがやくガラクタ”と数人出逢った。(p178)

2019年5月21日火曜日

2019.05.21 東海林さだお 『偉いぞ!立ち食いそば』

書名 偉いぞ!立ち食いそば
著者 東海林さだお
発行所 文藝春秋
発行年月日 2006.06.15
価格(税別) 1,095円

● 「富士そば」の全メニューを制覇する試み。ぼくも「富士そば」にはお世話になっているので,楽しく読んだよ,と。
 著者の文章の滋味を味わうものでしょうね。

● 以下にいくつか転載。
 もうほとんど座る店に変えているんです。(中略)座るほうが売り上げがあがるんですよ。一店で一日七万円から多いところは一〇万。(中略)女性客が増えて売り上げも上がってきた。(丹道夫 p128)
 立ち食いだとアイドルタイムにお客さんが入らない。(中略)十一時半から二時頃までをピーク,三時から四時をアイドルタイムというんです。(座るようにしたら9女性やサラリーマンがどんどん入ってくる。(丹道夫 p129)
 うちのかき揚げはその辺のフランス料理よりうまいと思ってる。(丹道夫 p132)
 かつ丼セットは,ざるそばかかけそばにかつ丼でしょう。こっちでそばを茹でてる間にかつ丼ができてこなくちゃいけない。いかに両方のタイミングを合わせて出すか,ものすごく研究した。(丹道夫 p134)
 立ち食いそば屋はどんな高級そば屋よりもおいしいダシがとれるんですよ。うちは一日,二,三回とるんですけど,一回に四百人分つくる。お米だって一合や二合炊くより,たくさん炊くほうがおいしいでしょう。しかも,そのダシを一晩寝かせて使ってる。そばのダシって,そってすぐのは香りがいいんです。あんまり香りがいいのは寝かせてないと思ってください。ごまかされないように。(丹道夫 p135)
 あんまり熱いと本当のダシの味が抜けちゃうんですね。それに,熱すぎるとどんどん煮詰まってダシが本当の味じゃなくなっちゃう。これが一番の強敵なのね。(丹道夫 p138)
 日本人はそばを食べなくなるんじゃないかと思う。(丹道夫 p148)
 母音語である日本語が一番自然に近くて,人間にストレスを与えない言語だし,言語というのは民族の魂と一緒なんですよ。(黒川伊保子 p268)

2019年5月20日月曜日

2019.05.20 桐山秀樹 『奇跡のおやじ・デジタル入門』

書名 奇跡のおやじ・デジタル入門
著者 桐山秀樹
発行所 マガジンハウス
発行年月日 2014.03.27
価格(税別) 1,400円

● 糖質制限で糖尿病を克服。返す刀でパソコンとSNSもマスター。集中力だ,諸君。

2019年5月19日日曜日

2019.05.19 池上 彰 『日本がもし100人の村だったら』

書名 日本がもし100人の村だったら
著者 池上 彰
発行所 マガジンハウス
発行年月日 2009.11.26
価格(税別) 952円

● 2001年に出た『世界がもし100人の村だったら』が大ヒットし,以後,類書がたくさん出たようなのだが,本書もその流れの中にあるものだろうか。
 たしかに,100人の村だったらという措定を置くと,マクロの理解がしやすくなる。自分のようなバカでもわかったような気分になれるというか。

● 64人は大人で13人は子供,23人はお年寄り。そのうち75歳以上は11人。2009年の時点でそうなので,2050年には子供は9人に減り,お年寄りは38人に増える。
 今の年金制度はそのままでは維持できるわけないね。国だって打ち出の小槌を持っているわけじゃないんだから,さてどうなっていくんだろうか。その頃,自分はたぶん生きていないと思うけど。

● 個人の金融資産は1,400兆円あるらしい。その8割を50歳以上の人が持っている。年寄りはお金を使わないから,これではお金がどこかに眠っちゃって,金回りが悪くなるのは当然か。
 金融政策の有効性はかなり減殺されるだろう。ひょっとして,デフレの一因は年寄りがお金を握っていることにある?

● 本書が出版されたのは,まさに民主党政権が誕生した直後。池上さんと池田香代子さんの“あとがき対談”で,「動くということを実感した今,10年後が楽しみです」と池上さんが語っているのだが,動けばいいというものではないことが明らかになった。
 バブル崩壊後,失われた20年などと言われたが,あれは時代の転換期に世界に先駆けて日本が対応した例だった。先駆的体験でもあって,“失われた”をあまり強調すべきではないように思う。
 しかし,民主党政権時代に失ったものは,まさに失っただけで,何の見返りもない。民主党の面々は政治家のなかの言論人的な色合いが濃かったと思うのだが,言論人に政治はできないことが明らかになった。国民はさすがに学習していると思う。

2019年5月11日土曜日

2019.05.11 落合陽一・堀江貴文 『10年後の仕事図鑑』

書名 10年後の仕事図鑑
著者 落合陽一
   堀江貴文
発行所 SBクリエイティブ
発行年月日 2018.04.13
価格(税別) 1,400円

● AIが人間に代わって仕事をしてくれる→いい未来がやってくる。そう考えていいようだ。そりゃそうだよなぁ。そうじゃなかったらおかしいよ。

● 以下に転載。
 好きでやっているのならまだしも,やらされていやっているような職業である場合,その時間の浪費は人生の損失であり,好きなことや楽しいことを突き詰めてニッチトップを目指したほうが人生が楽しくなるのではないかと思う。(落合 p21)
 インターネットが社会を刷新し,誰もがスマートフォンを持つ時代は,何を意味しているのだろうか? 世界が急速に小さくなり,これからは“日本のあなた”ではなく,“世界のあなた”として生きていかなければならないのである。周りの顔色を見て自分を演じているようでは,当然「価値のない人間」になってしまう。(堀江 p23)
 現在のAIは「人間の目と耳を代替する機能を持っている」に過ぎない。この先一番の鍵となるのは,AIが「“手”を持ったとき」だと思う。(中略)たとえば人間も,目と耳があるだけでは急速なスピードで進化することはできない。(堀江 p26)
 会社勤めを望む人間の多くはネガティブであり,組織にネガティブ脳の人間がいていいことはない。(堀江 p37)
 みんな「炎上」をネガティブに考えているようだが,議論を喚起するという点において,本来それは正しいことなのではないだろうか。「炎上」はポジティブな議論の契機と捉える視点が肝要に思える。(落合 p51)
 この世の中には「働く」ことが不得意な人間が一定数いる。そうした人たちに労働を強いるより,働くのが好きで新しい発明や事業を考えるのが好きで本気で働きたい人間にのみ,どんどん働かせたほうが効率がよい。(堀江 p54)
 やりたいことや,ハマれるものが見つかったら,毎日自発的に思いを発信し続けることが大切だ。(中略)稚拙でもいいから,読み手に「熱さ」が伝わるものでなければならない。(堀江 p57)
 SNSやネット記事を見て情報収集するだけの「情報メタボ」が非常に多い。得た情報をSNS上でアウトプットし,多くの人の意見を取り入れることで,より多角的な視座を手に入れることができる。「インプット」と「アウトプット」,両方のバランスがとれているとき,人は格段に成長できるのだ。(堀江 p58)
 僕は大学教員として,就活を経てから目が死んでしまった学生を何人も見てきた。あの場で一体,何が行われているのだろう。(落合 p65)
 むしろ修行期間を長く積めば積むほど型にはまり,「それしか作れない」事態が起こるのではないか。一番よくないのは,10年修行したこと自体をありがたがることだ。(堀江 p67)
 「研究」のルーツも,古代ローマかギリシャの貴族層が余暇時間をつぶすためにはじめたことにある。ほかにも音楽など,貴族が考えることは大体が遊びを元にするアートの追求だ。(落合 p69)
 デジタル空間の中では転移学習が可能なはずだが,現状人間は,誰かが学習したデータを他人からもらうことはできない。それゆえ人はムダを繰り返す。(落合 p69)
 “本屋”は,昔は本を置いていればそれだけでお金が生まれた。そういう「昔栄えた業界」の多くは“文化”という体のいい言葉を盾にして言い訳をしている。(堀江 p112)
 目まぐるしいスピードで社会が変化していくのだから,誰も数年後の未来を正確に言い当てることはなどできない。(中略)10年後の未来を想像することに何の意味があるのだろうか。そんなの暇人がやることだと思っている。(堀江 p124)
 特に高級店なんて,利益から考えたら半分趣味みたいなものだろう。(中略)儲からなくても好きでやっているのだから,もはや労働ではなく,趣味の延長だ。(堀江 p126)
 イケてる職人たちは,自分たちの技術や能力をいかに機械で再現できるかを考え,研究・実践している。自分にしかできなかった技を機会に代替させることで,自分の作業効率を上げようと,“AIを使いこなす”考え方をしているのだ。(堀江 p128)
 僕は,これからの幸福の指標は「感情のシェア」だと考えている。「楽しい」「うれしい」「気持ちいい」といった感情をシェアすると,そこにたくさんの賛同者が集まる。(堀江 p139)
 日本は,富裕層向けの宿泊施設が非常に少ない。そのため,海外の超がつく富裕層たちは,他のアジア地域に訪れている。(堀江 p140)
 まだわからないという人には,「ウサイン・ボルトを見習え」と言いたい。(中略)ボルトは,足が速いという,誰にも真似ができないが,社会にとっては不必要な仕事をしている。しかし,彼は世界中で人気があり,高収入だ。(中略)つまり,この代替不可能性に人は熱狂し,価値を見いだしているのだ。(堀江 p145)
 そもそもお金は何かをしたい人のためにあるもので,貯めたいと思っている人のところにただ貯まっていても,少しも世の中のためにならない。(堀江 p155)
 スマートフォンで会計ができる今,現金を持つことは盗まれるリスクしかない。そのことを考えれば,もはや貨幣なんて現在の社会ニーズに合致していないことがよくわかるだろう。(落合 p159)
 「時給○○円」と明示的に定型化された労働に自分を当てはめるのではなく,自分固有の価値や信用を生み出すことに時間を使おう。(落合 p175)
 新しいことに興味を失ってしまえば10代でも老人だし,新しい刺激を求め続けるのならば60歳でも若者だ。(堀江 p189)
 労働力を確保するための選択肢に移民はないだろう。だって,すでに日本の魅力は低くなっているのだから。(堀江 p198)
 僕から言わせてもらえば「副業はダサい」。この一言に尽きる。(中略)中途半端な思いで打ち込む「副業」とやらのクオリティなんて,まったく信用できない。「そこには,ピュアな情熱や社会的な使命感なんて存在しないだろう」と思えてならない。(堀江 p210)
 よく学生から「やりたいことがありません」などと言われるが,正直なところ,その姿勢ではこれからの未来はおぼつかない。(落合 p213)
 波は座していてもやってこない。すごく単純な話だが,自分で波を起こしながらものづくりができる人にこそ価値があるのだ。(落合 p214)
 たくさんのことが満遍なくできる「ジェネラリスト」なんかより,1つのことに強みを持っている人のほうが,圧倒的に魅力的だ。(堀江 p222)
 「幸せな結婚式」なんていうものはほとんど宗教に近い。「皆がそうしているから,よさそうに見える」といったただの刷り込みにすぎない。(落合 p231)
 資格なんてほとんど無意味な肩書に陳腐化する。スキルのコモディティ化はコンピュータによって加速するし,その速度が昔のコモディティ化の速度とまったく異なってきていることに気づいたほうがいい。(落合 p232)
 先生に教わらなくたっていい。自分から動き,情報を取りにいけ。SNSを利用すれば,自分が「面白いな」「この人の話聞いてみたいな」と思う人たちの情報に一瞬でアクセスできる。(堀江 p234)
 批判してくるような人の多くは,次の日には批判したことすら忘れてしまっている。そんなものに振り回されているなんて,本当にバカらしい。(堀江 p235)
 やりたいことをやって成功する人は,「リスク」なんて,あまり考えていない。それができない小利口な奴は失敗することばかり考えていて,結局リスクをとれないのだ。実現可能性をまず考えて尻込みするような人間は,リスクをとらないこと自体が最大のリスクだということに気づいていない。(堀江 p237)
 今の社会をみていると,人々が映画「マトリックス」のエージェント・スミスになりつつあると感じる。みんながりんごつきのノートパソコンと携帯電話を持っている状況に,オリジナリティは見いだせないだろう。(堀江 p244)
 一方で,エージェント・スミスになる生き方が必ずしも間違っているわけではないことも覚えておいていい。なんにせよ,社会に溶けるのは楽だ。生活コストは年々安くなっているし,レジャーだって安価に提供されている。それはそれで,悪いことだとは思わない。(堀江 p245)
 商売が成功する基本的な秘訣は1つだけだ。すなわち,成功するまでやり続けるということ。市場原理があるようでないので,100回もやれば大体成功するのだ。(堀江 p248)

2019年5月9日木曜日

2019.05.09 浅見帆帆子 『あなたは絶対!運がいい3』

書名 あなたは絶対!運がいい3
著者 浅見帆帆子
発行所 廣済堂出版
発行年月日 2018.03.30
価格(税別) 1,300円

● 引寄せの法則って本当にあるんだろうか。そんなの,わかるわけがない。が,ぼく一個は,あるんじゃないかと思ってる。もちろん,根拠はない。
 が,だからといって,それを人為で操作できるかというと,残念ながら無理なのじゃないかとも思っている。神に選ばれた人にはできるのかもしれないけれども。
 そう思っている人は,選ばれた人にしかできないという結果を引寄せるというのが,本書の趣旨。

● 以下に転載。
 引き寄せの法則とは,「あなたが意識を向けたことを引き寄せる」というシンプルな仕組みです。中でも,強い感情を伴ってなにかを考えているときは,引き寄せる力が強まります。強い感情とは,気持ちが大きく揺れることです。(中略) 同じように力強いけれどベクトルの向きが逆の思い,たとえば「アレだけは嫌だ!」という強い拒絶や,考えただけでお腹が痛くなるような心配や不安の感情にも強力な引き寄せが働きます。(中略)あなたがそれを望んでいるか拒絶しているかは関係なく,「意識を向けていること」が引き寄せられるのです。(p22)
 「今ないこと」に意識を向けていれば,いくら行動しても「今ないこと」を引き寄せるだけなのです。(p28)
 「これはこうあるべき」と頭で考えたときにモヤッとするということは,その考えは今は必要ない,ということなのです。(中略)宇宙からの情報を活用することは,「こうあるべき」という枠を外すことなのです。(p35)
 モヤモヤしたり,暗い気持ちになる意味は「そっちに考えるのは間違っているよ」ということを知らせるためなので,なにかを考えて途中でモヤモヤしてきたら,その時点ですぐにそれに気がついて考えるのをストップさせることが大切です。(中略)そのモヤモヤを感じた時点で「考えるのはそこまで!」です。(p49)
 心配する,というエネルギーをなくしただけで解決するのです。そこにエネルギーが注がれなくなるので,「こうなってしまったらどうしよう」というマイナスの創造も止まるのです。ということは,ややこしい問題であればあるほど考えなくていい,ということになります。(p52)
 その望みが大きいか小さいかという基準は人間が決めていることで,引き寄せの法則からすれば,あなたがそれを心から望んで意識を向け続けるのであれば,どんな種類のことでも引き寄せるからです。(中略)実はここにも引き寄せの法則が働いているのです。「高尚な望みはかなって,物欲はかないにくい」と思っている人はそうなるし,「これは小さいから簡単だけど,あれは大きいから難しい」と思っている人はそうなる,というだけです。(p64)
 引き寄せの法則が働く対象は常に自分なので,相手に対して「引きずりおろしたい」と思っても,その事柄を体験するのは自分です。(p78)
 望みの内容によっては,細部がはっきりわからないことがありますが,このときも自分の感覚をガイドにしてください。細かく考えようとするとわからなくなってモヤモヤしてくる,と思ったら,それ以上は考えなくていいということです。(p85)
 頭で考えた常識的なその日の優先順位は「明日が締切の作業A」だとしても,来週が締切の作業Bを考えたときのほうが気持ちが乗る・・・・・・こういうときには迷わずBから始めるのです。気持ちが乗るというのは,「そっちから始めたほうがいい」という宇宙からのサインです。(p127)
 反省をしていいのは,それが起きたとのときだけ,です。(中略)後悔は,起きたことに後から意識を向けて悔やむことなので,それをしてもなんの発展もありません。それどころか,そのときの波動に再び浸るので,当時と同じように望まないものを引き寄せます。(p182)

2019年5月6日月曜日

2019.05.06 日経デザイン編 『無印良品のデザイン2』

書名 無印良品のデザイン2
編者 日経デザイン
発行所 日経BP社
発行年月日 2016.06.14
価格(税別) 2,200円

● 無印の海外展開を解説している。上海やニューヨークの旗艦店が盛りだくさんの写真で紹介されている。無印は基本,進出国に合わせたローカライズはしない。日本発の無印が中国やアメリカで支持されているのは,何だか嬉しい。

● 以下にいくつか転載。
 私どもは,海外に出るときにマーケティングリサーチをしません。(中略)その理由は,提供している商品がハレの日の商品ではなく,日常で使うものだから。(松崎暁 p48)
 マーケティングやパブリシティーは店舗を通して行うのが基本です。(中略)そのうえでくらしの良品研究所のような仕組みを使って意見を吸い上げていきたいと思っています。(松崎暁 p51)
 まず,生活に必要なものは何かを考えました。そこで感じたのは,暮らしの中で無駄な物を排除していくと本当に必要なものは驚くほど少ないことです。そこで新しい商品を開発するときのルールを,『自己主張はしないが凛とした存在感があるか』『使い方を押し付けない汎用性があるか』『商品寿命は長いか』としました。(加賀谷優 p89)
 ご飯を一杯よそうにも,昔に比べれば随分と量が少なくなったんじゃないかと思います。時代には丁度いい分量がその都度あって,それはある時代の区切りとともに変化します。(藤原大 p110)
 無印良品は「定番を磨く」と日常に美しさが生まれると思っている。(藤原大 p110)
 MUJIがもし日本ではなく他の国で誕生していたら,どのようなアイテムが求められるだろうか? そんな仮説からも新しい商品が考えられそうです。(コンスタンチン・グルチッチ p169)
 実際の暮らしは,カタログやパンフレットの写真のように何もない空間ではなく,他のものとの対話や調和といった関係性のなかで成立しています。どんなものであれ,自分だけの世界ではなく,必ず他のものとの関係性--ある文脈の中で存在しているのです。(サム・ヘクト p177)
 アップルには厳格なデザイン言語があって,ガイドラインもあって,ブランドのルールがある。それらは当然魅力的なものです。しかしMUJIの場合は違います。基本となる哲学はあるけど,原則が決まっているわけではありません。(サム・ヘクト p179)

2019年5月4日土曜日

2019.05.04 日経デザイン編 『無印良品のデザイン』

書名 無印良品のデザイン
編者 日経デザイン
発行所 日経BP社
発行年月日 2015.05.25
価格(税別) 2,200円

● 無印良品を甘く見ていた。包装を排して,商品に商品名やブランド名を入れないだけじゃん的に思ったら大間違いだった。
 無印の世界を体感するなら,銀座にできるMUJIホテルに泊まってみるのが良さそうだ。一度泊まってエデュケイトされてみたい。

● 以下にいくつか転載。
 これらの家電は,国ごとのローカライゼーションはせず,世界同一仕様で販売する。押しつけではなく,控えめに,しかし力強く「無印良品は,家電を,それを通した豊かな生活とは何かを,このように考えています」というコミュニケーションツールでもあるのだ。(p25)
 例えば食パンのように,ずっと大きさが一定のものを扱うトースターなどは,決して小さくなることはありません。必ず食パンと同じだけの大きさが必要になるので変わることはありません。こうした家電こそ,無印良品が開発すべきものです。(深澤直人 p31)
 家電量販店で目立つようにするには,外観を派手にする必要がありますが,それを自宅のキッチンに置くと各メーカーのデザインが異なるので,ごちゃごちゃした感じがします。(深澤直人 p31)
 創造性の省略は優れた商品につながらないことを学びました。(p55)
 無印良品の最も強い力は説得力ではなく,「感化力」だということです。商品を手に取った瞬間に「ああ,こういう世界があったんだ」「これでいいんだ」と気付かせる力です。(原研哉 p64)
 無印良品の商品は今,7000アイテム以上ありますが,特定の商品を見て「すごい」と思うのではなく,膨大な商品が集積しているお店に入った瞬間に,全体として無印良品の考え方が響き渡っている--そういう感じが理想です。突出したものがあってはいけないのです。(原研哉 p66)
 ミーティングで否定的な話はあまりしないようにしています。重箱の隅をつつくようなことをやり始めると無限にある。(原研哉 p66)
 無印良品は,単に装飾を削ぎ落としてきれいにしていくとか,モダンにしていくとかではなく,究極のエンプティを作っていくことにあります。用い方やイメージを限定しないで受け入れられる余白が多い方がいいのです。(原研哉 p67)
 流行から距離を置くということがとても大事ですね,エンプティであるためには。古臭くなってもいけないし,流行になってもいけないという,一番難しいポジションです。(原研哉 p69)
 生活者の希求の水準,こうなりたいなと思う欲望のレベルを上げていくことが必要だと思っています。そこに影響力を持てれば素晴らしいと思うのです。やはり無印良品のレベルというのは,顧客のレベルなんですね。顧客の生活リテラシーやマインドが上がってくると,無印良品に対する欲求も要求も高まってくる。顧客の欲求の水準が高い,ということが何よりも大切なんです。(原研哉 p69)
 時代の流れに棹を差してやれ,という意識がありました。「消費者」ではなく「生活社」の視点でどうありたいか,どう生きたいか・・・。人はいろいろな願望を持つわけですが,それとモノの関わりはどうあるべきか・・・。そんな話をしょっちゅうしていたんです。田中一光さんや堤清二さんたちと。(小池一子 p84)
 やっぱりインハウスのデザイナーだけだと,得てしてその企業のオーダーがデザインのオーダーになっちゃうじゃないですか。(小池一子 p89)
 さまざまな国や地域に進出してコンセンサスを得るということは,逆に言えば個性的でない商品ばかりになってしまう危険もあるということ。もし無印に危険があるとしたら,そこじゃないでしょうか。(小池一子 p91)
 スタートした頃は「わけあって,安い」というキャッチフレーズがあって,割れたせんべいとか,折れたうどんとか,分かりやすい商品が多かった。(杉本貴志 p115)
 みんなある程度は分かっているんだけど,そうやっていつも議論していかなきゃ駄目なんです。(杉本貴志 p117)
 デザインも,欧米人がやると何かを作ろうとするんですね。でも,僕らが無印良品で使う古鉄とか廃材はそうじゃない。もう廃棄されている素材だから,価値はない。花を持ってくるとか,そんなことをしなくても,僕らはその廃材を自然の1つの代弁者として置いているだけ。それで十分に出せる情感というものがあって,そこを狙ったんですね。(杉本貴志 p119)
 大型店改革のキーワードは2つある。『発見とヒント』のある売り場,そして土着化だ。(p126)
 世界旗艦店と言っても,デザインの基本は今までと変わりません。顧客が日本人だとか中国人だとか,国民性の違いや好みなどもほとんど考えていないんです。あえて意識しないようにしている,と言った方がいい。(p158)
 長い間には紆余曲折があって,一時,アドバイザリーボードとの関係が形骸化した時期もあるんです。その結果として資本の論理に向かったときは,必ず業績が落ちる。(金井政明 p180)
 中小企業じゃないと,「売るためのモノなんか作るなよ」などと本気で言い続けられません。結果的に大きくなろうが,現場との距離感も含めて精神は中小企業じゃないと。(金井政明 p180)
 もともと無印良品は狭い意味でのデザインというものに対するアンチテーゼとして生まれました。モノを売るためのデザインやデザイナーの個性を発信するためのデザインに対して,1980年「本来のデザインは違うでしょう」と言ってスタートしたわけです。(金井政明 p183)
 田中さんたちの時代は,ある意味でデザインを省く,素なものにするというデザイン活動でした。「途中下車の商品開発」と言って,ごみ箱を作る15の工程のうち,最後にキャラクターを印刷する3工程を省いて商品化するというやり方です。ところが(中略)工程を省くとむしろコストが高くなるようなことも出てきたんですね。もう省くだけじゃ通用しなくなってきた。(金井政明 p183)
 著名なデザイナーの名前が前面に出ることは,無印良品にとってはリスクだったんです。とがったデザインが店頭で目に付き過ぎることにも恐怖を感じていました。洗練され過ぎた,格好いいものが売り場に増えたら嫌だな,と。(金井政明 p184)
 良品計画側のボードにピュアな思想,強い軸がないといけません。「先生,お願いします」という構造になってしまったら駄目ですね。(金井政明 p185)

2019年5月2日木曜日

2019.05.02 出口治明 『おしえて出口さん! 出口が見えるお悩み相談』

書名 おしえて出口さん! 出口が見えるお悩み相談
著者 出口治明
発行所 ウェッジ
発行年月日 2017.10.31
価格(税別) 1,300円

● 「自分が好きなことをやる。僕は人間の幸せはそれに尽きると思っています」
 「極論すれば,ワークはどうでもいいもの。その意味では出世はしあわせの条件にはならない」
 非常に明快。が,同じことをぼくが言っても説得力皆無だろう。言うべき人が言っているから,耳を傾ける気になる。

● 以下に転載。
 言わなければ,世の中は絶対に変わりませんから。すべてはそこからです。(p16)
 決断がつかないということは,どちらにもそれほどのメリット,デメリットの差がないということ。そういう問題を延々と考え続けていたら,疲れてしまって,時間が経つばかりです。(中略)悩み続けても答えの出ない問題を10円玉に決めてもらうというのは,(中略)昔から人間がやってきた,ごく普通の意思決定の仕方です。(p31)
 職場を出たら「はい,じゃあまた次に職場に来るまで」というように,職場で起こったことは全部忘れるように努めてみましょう。そううまく割り切れば,意外と人間は意識の切り替えができるものだと思います。(p70)
 また聞きや噂ベースの情報は,一切無視をしていいと思います。(p75)
 「本からのアイデアをどう仕事に結びつけるか」ということについでですが,そんなしょうもないことは考えないほうがいいと思います。面白い古典や小説,ノンフィクションを読んで,楽しい時間を過ごせれば,それで十分です。(中略)“ビジネスに役立てよう,アイデアを得よう”と思って本を読み,それで立派なアイデアが得られた試しはない,というのが世間の常識だと思います。(p105)
 何が人生で大切なのか,二人が楽しい時間を過ごすことに勝るものがあるはずはありません。仕事はその次です。(p145)
 人間は,嫌なことや自分が好まないことをやると自分も傷つきますし,気づかないままに周囲の人にもそれが感染します。どちらにとってもマイナスですから,やりたいことだけをやる,つまり自分の気持ちに正直になることが,何事においてもいちばん大事だと僕は思います。(p164)
 尖っている部分を徹底的に伸ばして,“あの人はああいう人だ”と思われてしまったほうが,人生ははるかに楽になります。(p166)
 洋の東西を問わず,沈む船から救命ボートを下ろすときは,まず子ども,次に女性,男性,最後に高齢者の順で救命ボートに乗せます。なぜならば,そうしないとその群れ全体が滅んでしまうからです。これが人間社会の真実です。(中略)この順序は歴史的に変わったことは一度もありません。むしろ現在,その当たり前のルールが歪んでいるから,社会に閉塞感が生まれているのだと思います。(p169)
 1年は8760時間ありますが,そのうち仕事はせいぜい2000時間前後です。ライフワークバランスは7:3。極論すれば,ワークはどうでもいいもの。その意味では,出世は幸せの条件にはならないと僕は思います。(中略)自分が好きなことをやる。僕は人間の幸せはそれに尽きると思っています。(p183)
 「済んだことを愚痴る。人をうらやましいと思う。人にほめてほしいと思う。人生を無駄にしたければ,この3つをたくさんどうぞ」という言葉がとても好きです。(p199)
 “社会の常識と合っていないんじゃないか”“組織の平均と合っていない”“みんなと同じように動いたり考えたりできない自分が,おかしいんじゃないか”と自分を責める人,不安に思う人が非常に多い。でも,それは根本から間違っています。人はみんな顔がそれぞれ違うように,考えが違っていて当たり前です。ただ,真ん中にいる人を平均と読んでいるだけで,そこには何の意味もありません。人や周りに合わせる必要は何もない(中略)平均という中心から離れれば離れるほど,じつは社会に役立っているのです。それに,そのほうが,人しても魅力的です。もっと自信を持ちましょう。(p236)
 イノベーションを起こすには,常識とされてきたこと,従来のこととは違ったことを考えなければなりません。近いものを結びつけても,イノベーションは起こらないのです。時間内に一所懸命働いて仕事を済ませ,時間外は(中略)仕事から離れれば離れるほど,すごいイノベーションが生まれる確率が高まります。(p238)
 みんなと同じようにして角を削ってしまったら,みんなと同じ小さい○になってしまう。それではつまらないと思いませんか?(p238)

2019.05.02 松浦弥太郎 『1からはじめる』

書名 1からはじめる
著者 松浦弥太郎
発行所 講談社
発行年月日 2018.09.13
価格(税別) 1,300円

● 内容はタイトルが代表している。コピー&ペーストして使い回せるようなものは捨ててしまえ。
主には仕事についての話なのだが,技術ではなくて態度の問題と思われるので,人生万般に通じる話。

● 以下に転載。
 それをある人は,「成功する方法」と呼びます。もしかしたらある人は,「すてきな人になる秘訣」と言うかもしれません。「なりたい自分になる方法」という表現がぴったりくると言う人も,少なからずいるでしょう。僕は,その答えを見つけたのです。 まだ,本のはじまりですが,もったいぶらずに書いてしまいます。それは,「1からはじめる」ということ。(p1)
 「売れる,売れない」よりも,「困っている人を助けることができるかどうか」が重要なのです。(p26)
 とても忙しくて,夕方のたった二時間で,買い物も食事の支度も子どもの世話もあれこれの雑用もこなさなければならないとき,「ここで自分が果たすべき役目はなんだろう?」と考えてみるのです。(中略)それを忘れて,やるべきことに番号を振ってこなしていくというような態度でいると,一つひとつに確実にあったはずの「それをやる理由」が消えてしまいます。それどころか,自分自身が消えてしまいます。(p27)
 ソフトバンクで孫正義さんの部下だった友人から,孫さんが何度もおっしゃっていて,一番印象に残っている言葉を教えてもらったことがあります。「登る山を見つければ,もう半分登ったのと一緒だ」僕の解釈では,「山」というのはビジョンです。(p35)
 仕事というのは合理性の追求のように見えますが,それだけでうまくいくものではありません。(中略)情熱。懸命さ。本気。これはすべての原動力ではないでしょうか。(p39)
 じっくりと考えて,確実な方法で計画を立ててからはじめるのではなく,とりあえずスタートするのが大切です。これは,今の時代に寄りそったやり方でもあります。(中略)スタートアップは,これまでの世の中になかったものを生み出してこそ存在意義があるのに,アイデアをゆっくりあたためていたら,他の人も同じようなことを思いつくかもしれません。(p44)
 人の見ているところならばできることが,人が見ていないところでできるかどうか。これが本当に「1からはじめる」ことができるかどうかの分かれ道です。(p56)
 僕たちにはみな,多かれ少なかれ「人に好かれたい」という気持ちがありますが,人に好かれようとしてやることは,たいていは「よくないこと」です。(p62)
 いつもにこにこして感じがいいけれど,好かれようとして無理はしない。気軽なおしゃべりはするけれど,しゃべりすぎない。みんなと仲はいいけれど,特別に親しい人は誰もいない。この絶妙な距離感を保ちながら,やるべき仕事を淡々とこなしていると,距離感がいつしか尊敬に変わります。(p65)
 五〇歳になって「もういいや」と言っている人は,実は若いときから「もういいや」と思っていた人なのです。(p69)
 自信とは,どうすれば生まれてくるのでしょうか。その一つの方法は,自分の中に「答え」を持っているかどうかだと僕は思います。たとえば,生きるとは何か,ということに対して。たとえば,働くとは何か,ということに対して。たとえば,暮らしをいとなむとは何か,ということに対して。(p75)
 年齢を問わず,自分を信じられない人は,自分をわかっていないのではないか,そんな気がしてなりません。(中略)自分を観察するというのは,怖いことです。なぜなら誰でも,弱いところ,汚いところ,人に言えないようなところを持っているから。それを直視するのはつらいし,完全に直すというのもむつかしいけれども,「僕という人間は,こういう人間なんだな」というのをわかっているかどうかで,自分とのつきあい方も変わってくると思うのです。(p76)
 贅沢品で自分を大きく見せても,いいことは一つもありません。(中略)僕のまわりには,何百億もの資産のある人たちが大勢いますが,そういう人ほど「お金のにおい」を見事なまでに消しています。(中略)おそらくそうした人も,お金持ちになる途中では,派手なものを買ったりしたと思います。しかし,徐々に学んでいったのでしょう。「自分を大きく見せようとしないことが,人間関係においては大切だ」と。(p82)
 ルーティンでこなせるようなことは,全力でやらないほうが,最終的にはうまくいくのです。いつも一生懸命にやっていたら,トータルで一生懸命になれない。(p90)
 あらゆる仕事は生身の人との関係性だから,もっと「人の感情」を深く理解しなければいけないと僕は思っています。世の中には,いろいろな人のいろいろな感情が日々生まれています。人の感情をいつも観察し,できるだけ早く「新しい感情」を察知して,その理由を調べて言語化していく。僕の仕事は,これに尽きると言っていいほどです。(中略)世の中の人の感情を理解するとは,「みんなが何に困っているかに,好奇心と愛情をもって気づく」ということでもあります。(p101)
 嫌いな人のすごいところから,何かを学ぶ。好きな人の弱いところから,何かを学ぶ。見えていないところから学ぶには,並大抵の観察では足りませんが,それが楽しいのです。(p105)
 仕事にしても暮らしにしても,すべての起点は熟知だと思っています。プロジェクトをはじめるにしても,料理をするにしても,最初にそのことについて人一倍詳しくならないと,アイデアも出てこないのです。(p110)
 熟知に至るために,僕自身が心がけているのは,オールマイティを目指さないこと。ところが世の中には,僕と反対のことを思う人が多数派のように感じます。つまりみんな,「いろいろなことに長けていないといけない」と思っているのです。(中略)全方位でパーフェクトを目指したら,なりたい自分になるどころか,へとへとにくたびれて潰れてしまう。あれもこれもそつなくできる人は,熟知することはできません。(p113)
 かつては,「なんでも平均より上の人」が求められていました。100点はないけれど10点もない。全部70点でそろえられる人がいいとされていたのです。しかし,僕は自分の経験値に照らしてみて,それはやっぱり違うと思います。今の時代はとくにその傾向が強くなっています。「100点が一つあって,あとはみんな20点」くらいでいいのです。(p115)
 自分より若い人や自分より立場が下の人にも,頭を下げて「教えてください」とお願いする。これも「1からはじめる」ということであり,熟知のための基本です。(中略)頭を下げて「教えてください」と言えない大人が多いのは,ほとんどの場合,プライドが邪魔をしているような気がします。(中略)プライドというのは大事なものだけれど,大事なときにだけ使うものです。普段は折りたたんで,しまっておく。そのくらいでちょうどいいと思います。(p118)
 手っ取り早く「知る」だけでいいという姿勢でスタートしたら,データチェックやウェブの斜め読みで終わってしまい,決して熟知には至りません。そのゴールに感動はないのです。だからこそ,熟知からはじめましょう。(p125)
 あなたが料理について熟知し,100のことを知ったなら,いずれ料理について200のことを知っている人に出会います。その人は快く教えてくれますから,それでさらに詳しくなります。この場合の詳しくなるとは,「100+200=300」ではありません。「100×300=20000」という,飛躍的に熟知が深まるイメージ。そのくらい,詳しい人と詳しい人が会うとすごいことが起きます。(p128)
 ある記事では,二四時間走り続ける正解最高峰の耐久レース「ル・マン」で優勝した一流ドライバーが,こんなことを語っていました。レースに勝つためのコツは非常にシンプルで,つねに次のコーナー,次のカーブのことだけを考え続けることだと。(中略)あとはいっさい,考えない。僕はこの話を知り,「まさにこれだ」と思いました。(p135)
 どんなに気前よく人に明け渡しても,本物の熟知であれば,いくばくかは自分だけの情報としてしっかりと残るということです。熟知をするならば,何事も,その域を目指したいと考えています。(p138)
 僕は,自分のヴィジョンに向かうための方法を発見し,その実行と検証を習慣化させることを「勤勉」と定義しています。(中略)僕が憧れているすてきな人,何かをなしとげた人は,みな勤勉です。淡々と単調な毎日を過ごしています。遊ばないし,よけい物欲に流されない。(中略)やろうと思えばいくらでもできるのに,決してしない。(p144)
 本人は,「短い時間で容量よくやっている」と悦に入っているのかもしれません。でも,要領よくやればやるほど,実は時間を無駄に使っていることが多いのです。(中略)「とにかくこなせばいい」という気持ちでやったことは,仕事でも,料理でも,ものづくりでも,愛情不足のあまり,からからに干からびて見えます。(p153)
 何かを知ろうとしてインプットしてばかりでは,やがて行き詰まります。そこであえて「ちゃんとアウトプットしないと」と意識し,実際にアウトプットすることで,新しい知恵や経験が入ってきます。(p155)
 アウトプットが「今まで誰も言葉にあらわしていないことを言語化(図式化)すること」である以上,それはパッチワークであってはなりません。本に書いてあることや,誰かが言った言葉を,上手にパッチワークしてそれっぽく仕上げるのが得意な人はたくさんいます。(中略)「コピー&ペーストはぜず,1からはじめる」と自分で決められるかどうかが,良質のアウトプットができるかどうかの分かれ道です。(p156)
 別に無理をして,仕事を好きになる必要はない。ただ,仕事を嫌いにならないためには,「好き」というよりも「楽しい」と思えることが大事だと考えています。仕事を好きになるのはむつかしいけれど,仕事を楽しいと思うことは意外に簡単です。仕事を楽しむ方法は,工夫をすること。自分なりの仕事のやり方を1から自分で考えれば,それで不思議なくらい楽しくなります。(p160)
 どんなにルールが決まっている仕事でも,必ず自分の立ち入ることのできる部分が半分以上あります。(中略)とても過酷な単純作業であっても,黙々とやる人と歌を歌いながらやる人がいて,仕事を楽しめるのは歌を歌いながらやる人です。歌うという自分なりのカスタマイズが加わることで,同じ単純作業が違うものになる。すると仕事は楽しくなるのです。(p162)