書名 花森安治のデザイン
編者 暮しの手帖社
発行所 暮しの手帖社
発行年月日 2011.12.19
価格(税別) 2,200円
● こんなエピソードが披露される。
シャッター直前に,セットした位置を,部員が誤ってずらしてしまったことがある。花森は怒らず,元に戻すことはせず,全てを取り払って,真っ白の状態から配置し直した。(p44)こういう上司がいたら,胃が痛くなるほどピリピリしてなきゃいけないね。ものを作るってのは,そういうことなんだろうけどさ。
● 「暮しの手帖」の表紙も花森さんがデザインしてたんですな。絵も自分で描き,写真も自分で撮っていた。もちろん,取材もすれば記事も書く。そのうえで,前代未聞の広告なしの雑誌を売る。とんでもない人だ。
いつも思うんだけど,こういう怪物とぼくのようなその他大勢との違いってどこから来るんだろうねぇ。
● その表紙をすべて並べてみると,さすがに圧巻。当然ながら,これは花森さんの作品集であって,美術書を残せるほどの仕事を彼はしていたってこと。
花森さんって,スカートをはく男ってイメージで,奇人変人としか思っていなかった自分の不明をいまさら恥じるしかない。女性を描いた絵の表紙がいくつも続く。彼は女性の感性を持っていた男っぽい人だったのかもしれない。
● 「暮しの手帖」の創刊は1948年。戦後の混乱期にこの雑誌は華やかにハイカラに映ったろうねぇ。同時に,この雑誌を買えたのはアッパークラスに限られたはずだ。都会のほんの一部の人たち。田舎人(当時は日本のほとんどが田舎だった)には縁のないものだった。
ぼくらが普通に雑誌を買えるようになったのはいつ頃だったろう。戦後(高度成長以後ってことになるね)の大衆化に思いを馳せることになる。いろいろ言われるけれど,昭和30年代からの高度成長って,たいしたものだったんだなぁって。
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