著者 水野 学
発行所 朝日新聞出版
発行年月日 2010.10.30
価格(税別) 1,400円
● この本はもちろん,売れると見込まれて出版に至ったものだろう。で,実際,売れたのだと思うが,書き手としては,ここで自分の来し方をまとめておきたいと思ったんだろうか。要するに,本書は著者の半自叙伝的なものだ。
非常に失礼なんだけど,たぶん,少しく飾っているところがあるように思われる。あるいは,わざと書かないでおいたことがあるように思われる。
● タイトルは,すでにある断片を接着することによって,新しいデザインを生みだすのが自分の仕事という,著者の宣言でもある。
どう接着すればいいのかも語られるわけだが,これは言葉で説明を尽くすことはできないものだろう。
● 「センスが悪い服を着ていたら嫌われる覚悟で「その服はみっともない。デザイナーはセンスがよくなければダメだ」と注意します」(p35)という一文があって,なるほど厳しいものだと思った。
が,これって,いかにもデザイナーらしい装いをしているデザイナーがいいデザイナーということでは,もちろんないだろう。わりとそういう人が多いような気がしていて(先入観か),そうした人から受ける印象って,あんまりいいものじゃない。
デザイナーになりたいと思っているアマチュアが,そういう恰好をしているのかもしれないけれど。
● 次の文章にも注目。
デザインの世界ではMacの導入によって,鉛筆と手と三角定規を使っていた時代から比べれば,五〇倍ほどの速さであらゆる作業がこなせるようになりました。 おそらく企業の事務的な作業も,昔に比べたらはるかに効率化され,何倍ものスピードで処理できるようになっていると思います。 ところが,デザインをして仕上げるまでの所要時間は変わっていません。ビジネスパーソンの勤務時間も,変わっていません。これはどう考えてもおかしなことです。(p64)パソコンの前でダラダラしている時間もあるからだというのが著者の分析。さよう,しかり。もうひとつ,要らない情報がたくさん来るようになったのも一因かも。
意味なく細部にこだわるようになったってのもあるな。見切りが下手になった。パソコンのおかげで。
● ほかに2つほど引用。
センスがある人はいるが,センスがない人はいない。 これは僕の持論です。もし「自分にはセンスがない」と思っている人がいたら,ないのは知識です。(p132)
インプットは頭でするものというイメージがあるかもしれませんが,体を動かしてこそ,脳にダイレクトに届くことがあります。(p153)
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