著者 忌野清志郎
発行所 太田出版
発行年月日 2009.08.14
価格(税別) 1,680円
● この本の元になった雑誌の連載は,2000年から2002年のこと。主には2001年。
忌野清志郎が半生を語るというものだったと思う。この本が出たのは亡くなったあとになるんだろうか。この連載はやっといてくれて良かったなぁ。
● といって,ロックにはとんとゆかりがない。著者については,高価なロードバイクが盗まれて話題になったことを知っているくらい。
ロック界における忌野清志郎って,漫画界における赤塚不二夫の位置にいる人なのかな,と思う程度だ。
● 以下に,多すぎるかもしれない転載。
(ロック専門学校では)作曲なんかは既成の曲を教材にして教えたりするんだろうか。この名曲のこのコード進行のココがポイント,とか。そういうことを一ヵ所に集まって完全にプログラムされた授業を受けたいと思う人たちから,何か新しい音楽や才能が生まれてくるような気が全然しないんだけど,偏見かな。(p28)
迷わずどこでも演奏できたのは,仕事を選べなかったからじゃなくて,どにかく自分たちの作品や演奏に自信があったから。とにかく自信だけ過剰なほどあった。全然不安はなかった。「自分を信じる才能」というか「思いこみ」というか,とにかく「自分はダメかも」とか「まあまあかな」とかって思ってる人より,「オレが一番強いんだ」って思ってる人が強いですよ,どう見ても。(p29)
そう簡単に反省しちゃいけないと思う。自分の両腕だけで食べていこうって人が。それがひとつの落とし穴で,そこにはまったら,なかなか元にもどれない。そういうケースって実はすごく多いし,その問題ってすごく大きいと思う。(p30)
とにかく「すでにその世界にいる人間」におうかがいを立てなきゃ決断できないようなヤツは,最初からやめておいたほうがいいだろう。どうせろくなことになりゃしない。(p40)
たった一曲だって,他人に最後まで聴かせるということは,けっこうすごいことなんだ。(p41)
歌詞にしても「他人がまだ何を歌っていないか」を探してほしい。まだまだ「歌われていないこと」は山ほどあるはずだ。(p44)
表現するネタは,自分の中にいっぱいあったほうがいいに決まっている。少なくともオレは,あの時代に本を読んでおいてよかった,と思ってる。音楽しか聴いてないミュージシャンは,たぶんすぐに涸れちゃうんじゃないか? 過去の音楽の領域から出られなくなっちゃうような気がする。(p48)
いわゆる『楽典』だけ教わった。そうしたら,なんだ簡単じゃないかってわけで,いきなり譜面が読めるようになって,音楽の成績も「3」にアップした。もっとも譜面が読めることが,その後の実際のバンド活動に役立ったかといえば,かなり怪しい。はっきり言って「譜面が読めてよかった」と思ったことは,あんまり記憶にない。(p67)
個性というのは,ようするにある種の欠陥から生まれるもんだから。(p71)
ステージのMCでならムチャクチャやれるのに,なぜかラジオやテレビでは全然ダメなんだ。たぶnステージMCは,あれは演奏の一変形なんだろう。(p73)
基本的にインタビューってそういうものなんだろうな。だって三〇年間ずっとそうだったんだから。「聞かれたことに正直に答えても納得されない。相手がこっちに言わせたがっていることを想像して答えてやるとやっと納得してくれる」---このパターンの繰り返し。(p116)
ミュージシャンの虚像と実像も確かにわかりづらいけど,こちら側から見れば,ファンの虚像と実像はもっとわかりづらい。(p136)
とにかく曲が出来ちゃう時ってのは,ほんとに“天から降ってくる”としか言いようのない時があるんだ。頭の上からスイスイ降りてきちゃう,降って湧いちゃうみたいなね。(中略)そんな時は,ノートに書き留めたりするヒマもなくて,あわててラジカセに録らなきゃいけなくなる。そりゃもうスリリングな瞬間だね。(p186)
「何がウケるか」っていうマーケティングの発想で曲をつくってたら,とてもじゃないけど何も作れやしないよ。少なくとも自分に関しては,そうだね。(中略)ファンという正体不明のものに振り回されて,疲れ果ててしまうミュージシャンもいる。(中略) だったら,もう自分が歌いたいことを歌うのが一番正しいし,健康にもいいんだよ。それがファンであろうとなかろうと,とにかく声が届いた人だけが受け取ってくれればいい。(p195)
0 件のコメント:
コメントを投稿