2018年8月26日日曜日

2018.08.26 竹内 薫・丸山篤史 『99.996%はスルー』

書名 99.996%はスルー
著者 竹内 薫
   丸山篤史
発行所 講談社ブルーバックス
発行年月日 2015.02.20
価格(税別) 860円

● 著者の一人は「調子が良ければ,新書を1時間かからず読んでしまえるから,僕は見開き30~40秒で読んでいることになる」と言うんだけど,ぼくはこの新書を読むのに3時間かかった。
 ぼくの黙読は音読より遅いのだ。何か文句ある?

● 以下に転載。
 商品の売り上げランキングでも,爆発的に売れるのは「1番だけ」と相場が決まっている。ランキングの2番以下は,1番を目立たせて,さらに売れるようにするための応援団。(中略)恋愛にせよ新発売の商品にせよ,スルーされたらそれでおしまい。そして,スルーされないためには勝者,すなわち「1番」にならなければいけない。(p4)
 すごく確率の低い「何か」が起きることこそ,重要で貴重な情報なのだ。(p67)
 「エントロピーは増える一方で,宇宙は『秩序から無秩序へ』という方向に進む」というのが巷間に広がった「エントロピー増大則」だろう。しかし,このようなイメージでエントロピーを理解していると,とても情報量との関係など思い浮かばない。(p87)
 科学リテラシーを持つことで情報評価の精度を高めることができるだろう(個人的には,中学校から高校くらいまでの数学・理科の知識で充分だと思う)。(中略)信じようが,疑おうが,事実は揺るがないはずだ。揺らぐのは,常に,人の解釈なのである。(p114)
 実際,僕らは,割と機械的に,環境からの影響を受けて,感情を動かされることが,実験で示されている。例えば,温かい飲み物を持ちながら会話すると,僕らは優しい気持ちで対応してしまう。(p129)
 初期のサブリミナル刺激に関する研究結果は,捏造されたものである(研究者が,自ら白状した)。だから,都市伝説が一人歩きしている部分もある。(p130)
 僕らに知覚される情報は,知らない間に(知る前に?)検閲されていて,「無意識のスルー」によって意識されないだけではなく,「意識されないまま」意識に影響していたりもするようなのだ。(p135)
 入力される感覚の情報量は,毎秒千数百万ビットであり,意識が処理している情報量は,なんと,毎秒たった数十ビットなのである。(中略)意識は,99.9999%の感覚情報をスルーしているのだ!(p136)
 もしかしたら,そもそも意識が生まれるためには,意識の100万倍の情報量が,背後に控えている必要があるのかもしれない。(p138)
 意識は,情報量で評価されるべきではないのかもしれない。意識は,外から観測される対象としては,情報量が極端に少ないのだ。(中略)おそらく意識の評価に重要なのは,スポットライトの「当て方」なのだ。(p139)
 僕らは,流通している情報量の約2.7万分の1しか消費できず,消費したといっても,その1000分の1しか知覚できていない。その上,知覚した情報の100万分の1しか意識していないのだ。(中略)ようすうるに,意識で全ての情報を処理しきるのは,事実上,無理だ。諦めて,無意識に頼るしかない。その無意識でも消費している情報の99%をスルーしているのだ。(p140)
 僕らの無意識は,文字や単語に注目して文を眺めると,意識の中に,文の意味を浮かべてしまうのである。(中略)僕らの持つ,こうした能力に,物理化学者にして科学哲学者のマイケル・ポランニーは「暗黙知」と命名した。(p149)
 僕ら人間を含めた生物の,進化を含む生命のメカニズムの中には,そもそも情報を大量に蓄積しつつ,情報の処理にはスルーが基本,という流れがあるように思うのだ。(p156)
 遺伝情報は,生物にとって,ある種の初期条件と考えるべきなのかもしれない。(中略)生物は,生き続ける限り,次から次へと自分自身の情報量を増やし続け,限りなくネゲントロピーを増大させていくのだ。DNAを読み取るだけでは,生命のことは分からない。(p159)
 ハイギョやシーラカンスは,姿かたりが化石と変わらないから,一見,進化していないと思われていたけど,実はゲノムの大きくして(遺伝情報を増やして)環境の変化に対応するような進化を選んだのかもしれない。(p165)
 どうやら,僕らは,身体的な痛みと同じ神経回路で,社会的なコミュニケーションのストレスを処理している可能性がありそうだ。だからこそ「無視されること」のダメージが大きいのかもしれない。これが本当だとすると,イジメで「誰かを無視すること」は,暴力で身体を傷つけることに匹敵するくらい,罪深いものだろう。(p186)
 少なくとも,ブロックされないようにしたいなら,他人をコントロールしようと思ってはいけないのだ。情報に接したときの不快感の源泉は,おそらく,「コントロールされること」や「不自由さを感じさせること」の漠然とした予感にあると思う。(p190)
 文字に意味を託することは,文字にできない何かをスルーすることでもある。ソクラテスは,そのスルーされてしまう「何か」にこそ,考えを深めるヒントがあると考えていたのかもしれない。(p191)
 仏教・禅宗の教えは「不立文字(言葉にできない)」という。(中略)しかし,そうはいいつつ,数多くの禅籍があるのはなぜだろうか。ようするに,言葉で語れないものは,言葉で語り尽くした果に残るものだから,ではないだろうか。(p191)
 たとえば,アイデアが行き詰まったとき,「それ,めっちゃすごいアイデアやんか! このアイデアやったら,問題解決やで!」と,アイデアが出ないまま,先に喜んでしまうのだ。(中略)おもむろに休憩に入る。(中略)わざと思考を中途半端に打ち切って,気分転換するのだ。行き詰まっていたことなど忘れてしまうくらい,リラックスしよう。(p203)

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