2020年6月9日火曜日

2020.06.09 出口治明 『人生の教養が身につく名言集』

書名 人生の教養が身につく名言集
著者 出口治明
発行所 三笠書房
発行年月日 2016.07.25
価格(税別) 1,400円

● そもそもの釈迦の教えというのは,宗教というよりも,いかに生きるべきかを説いたものだと聞いたことがある。処世訓のようなもの。薄っぺらなハウツーではなかったろうけど。
 本書もそれに近い。上手に生きるにはどうすればいいかを説いている。古くなる類のものではない。若い人が読むべきだと思う。

● 以下に多すぎる転載。
 人の人生が80年として,その中で経験できることなど,たかが知れています。自分の人生から学ぶには限界があるのです。だからこそ,プロイセンの名宰相・ビスマルクは「愚者は経験に学び,賢者は歴史に学ぶ」と喝破したのです。(p4)
 「この名言によって,私の人生は大きく変わった!」などと,びっくりするような出会いを期待しないこと。(p5)
 傍目には,同じように不運と思われる状況に置かれていても,毎日を充実した気持ちで暮らしている人もいれば,「なんとつらい人生なんだ」とわが身の不運を嘆きながら暮らす人もいます。つまり「捉え方」-人生観と言ってもいいでしょう-次第で,人生はいかようにも変わるのです。では,こうした捉え方の違いは,どうして生まれてくるのでしょうか。(中略)大きな影響を与えるのは,「知識あるいは教養」だと私は考えています。(中略)理解している範囲が広く,かつ深くなるほど,自分の勝手な思い込みを捨てて,物事をよりクリアな目で見られるようになっていきます。(p22)
 面白いことに,今も残る古典作品の多くは,その作者が左遷されているときに書かれていたりするのです。(中略)というのも,左遷されて時間があったからこそ,優秀な彼らが十分な時間をとって,後世に残るすばらしい作品が書けたのです。(p24)
 この世の「リアル」とはまさにそういうものではないでしょうか。人間や,、その人間がつくった社会への甘い期待は捨てたほうがいい。(p27)
 歴史を知れば知るほど,偶然こそが「この世のリアルだ」と確信します。(中略)「運がいい」というのは,フィンレイソンが指摘しているように,「適切なときに適切な場所にいる」ことなのです。この世は偶然の産物だということに,あらためて気づかされます。(p29)
 「人生を楽しむ」という姿勢は,すべての人にとっての「いい人生」に共通しているのではないでしょうか。(中略)今の自分が幸せか不幸かなどは,極論すればどうでもいいのです。そのようなことをいちいち考えずに,毎日毎日を楽しむ。私自身,いつやってくるかわからない「死」というゴールに向かって,そうやって時を重ねていきたいと考えています。(p39)
 歴史を見ても,人々は「笑い」の持つ,とてつもないパワーを認め続けてきたと言えるでしょう。そして,ときにそのパワーに脅威を感じ,それを封じ込めようとしてきました。宗教がいい例です。(中略)笑うとスッキリするはずです。スッキリしたら宗教にすがる必要もなくなります。だから,宗教指導者たちは「笑い」を封じ込めようとするのです。(P44)
 とくに仕事や公式の場では,ひたすら「真面目」が尊ばれ,「笑い」や「おふざけ」や「いたずら心」などの遊び心はタブー視される傾向があります。しかし,あらゆるイノベーションの生まれる素地は,じつはこうした遊び心からなのです。(p46)
 仕事でもプライベートでも,深刻にならないほうがいい。(中略)真面目に考えすぎるのは不幸の元なのです。(p47)
 『オセロー』の中にも,こういうセリフがあります。 『過ぎてかえらぬ不幸を悔やむのは,さらに不幸を招く近道だ』(p56)
 可能性がいっぱいあると,人は夢見がちになります。(p58)
 愚痴もぐっと飲み込んでしまって,振り返らないのが一番です。(p60)
 人間は,そのときどきの関係性によって,いい人にも悪い人にもなるのです。そうした人間の有り様を,私は「接線思考」と名づけています。円に引いた接線は,円をちょっと回転させただけでも大きくその角度を変えます。(中略)目先の状況や関係性次第で人間は白にも黒にも瞬時に変われる。この傾向は,集団になるとおもっとひどくなります。(p67)
 人間関係においてけっして忘れてはいけないのが,基本的に人と人とを結びつけているものは「利害」だということ。人はお互いなんらかのメリットがあるから,相手とつながっているのです。(p69)
 人間関係はつねに入れ替わっていく。「一生を通じた友情」など,基本的にはあり得ない。もし,そういう関係を築けたら,自分は本当にラッキーだと考えたほうがいい。こうした考え方に立つ私にとって,人間関係の基本は,「去る者は追わず 来る者は拒まず」だと考えています。(p72)
 人間関係は,ときにこじれることがあります。その原因を探ってみると,どちらかに悪意があった場合より,どちらかがついうっかりしてコミュニケーションを怠けてしまったがゆえに起こってしまった場合のほうが,はるかに多いのではないでしょうか。(p85)
 他人が自分のことを真剣に見てくれる機会は,それほど多くはないのではないでしょうか。(中略)なので,「良く見られたい」とか,「ほめられたい」と願っても,なかなか叶うものではありません。極論すれば期待するだけムダです(中略)そうであれば,いつ気づいてくれるかもわからない「他人」は,はなからあてにはしない。それよりも,天と地と自分が「知っている」ということに満足する。「この3つがあれば,十分じゃないか」と考える。(p97)
 解決方法は簡単です。今やっていることを面白くするのです。人からよく見られたい,ほめてもらいたいというのは,結局のところ,自分が今取り組んでいることに熱中できていないからです。(p99)
 考えるとは,何が「枝葉」で,何が「幹」かを見極めることだと言ってもいいでしょう。「この件でもっとも大事なことはなんだろうか」という質問を自分に向けて発し,思考し続ける。「そういうことか」と腹落ちするまで考える。(p119)
 なかなか意思決定ができないという人は,岩盤まで掘り下げていない段階で答えを出そうとしているのです。だから,「もっと別の方法があるかも」などと迷ってしまう。(p130)
 「勉強する」あるいは「学ぶ」という人間の営為は,インプットとアウトプットがセットになっているのです。(中略)アウトプットとは何か。その基本は,母語による「言語化」です。しかも,インプットしたままの他人のことばではなくて,それを自分の頭で咀嚼して,自分の言葉に引き直して言語化する。(p136)
 ただ呼んで満足しているだけの状態は,「この店から過去に何回も5億円の宝くじが出ました」と言われて,そこでひたすら買い続けるような営為です。言葉をそのまま鵜呑みにして,まったく自分の頭で考えていない。これでは,一生宝くじを買い続けても,当たらないまま死んでいく確率のほうが高いと思います。ドラッカーに限らず,インプットした知識は,あくまでも自分の人生の参考にすぎません。それを材料にして,自分の頭で考える。そこではじめて,獲得した知識が自分の血となり,肉となる。(p139)
 この法顕という僧侶。記録によると,変えは399年に長安を旅立ちます。そのとき,なんと60歳すぎ。(中略)この時代の60代は今の70代,80代くらいをイメージしたほうがいいと思います。そのような高齢になっても,法顕は「自分は仏教の基本がわかっていない」と,本場のインドに勉強に向かうわけです。(中略)なんと足かけ14年もの長旅です。法顕は70代半ばになっていたと考えられます。しかも,この旅は最初は,何人かのお伴を連れていたのですが,最後まで生き残ったのは高齢の法顕ただ1人。ほかの人たちは旅の途中で命を落としています。この明暗を分けたものは何かと言えば,目標が遭ったか否かだと私は思います。「これを成し遂げたい」という強い思いがあると,人間はなかなか死なないものなのです。さらに,法顕の偉業は続きます。帰国後,人生最後の大仕事として,自らの旅を『仏国記』として記す。やりたいことがある人は本当に強い。枯れることのない,すさまじいまでの学びへの情熱です。(p147)
 わからないときは,何事であれグチャグチャとしていて複雑です。ところが,わかることでグチャグチャしていたものがほどけて,シンプルになっていきます。これが「わかる」ということ。学ぶとは,この世界をよりシンプルにみるための手段なのです。(p150)
 その人が書いたものを読むことは,その人の考えを知ることです。それは,その人に「直接会って話を聞く」こととほぼ同じです。しかも,なかなか直接会うことが叶わない有名な人とも,本を通じてであれば,簡単に会うことができます。(中略)たとえば,リンカーンと会おうと思ったら,岩波文庫の『リンカーン演説集』を買って読めばいい。しかも,金額にして700円ちょっと。これほど安い金額で,誰にも邪魔されずにリンカーンをひとり占めにして,その考えを聞くことができるのです。本はすごいと思いませんか。(p153)
 ゼロからすべてを自分で考えることは,とてつもなく大変なことだし,そもそも不可能です。ところが,ありがたいことに,私たちには先人が残してくれた知見が膨大に残っています。その力を借りれば,より広くより深くこの世界を見ることができるのです。アインシュタインは,ニュートンの肩の上に乗って相対性理論を発見したのです。(p159)
 「速読をする」という営為は,目の前の相手に,丁寧に長々と話していただかなくて結構です。要点だけ,かいつまんで述べてください」と話すようなものです。一所懸命話している最中に,相手にそう言われたら,あなたはどう感じますか? いい気持ちはしませんね。怒りさえ感じるかもしれません。自分がされて嫌なことは,相手にもしないほうがいい。これは,本の著者に対するときも同じです。(p164)
 木田(元)先生は「古典を一行一句丁寧に読み込んで,その人の思考のプロセスを追体験することによってしか,人間の思考力は鍛えることができない」と常々おっしゃっていました。この考え方は圧倒的に正しいと思います。丁寧に読むことは,まさに思考力を鍛える訓練になるのです。(中略)著者から教えてもらうという姿勢で,一行一句丁寧に読み込んでいく。わからないところがあったら,もう一度数ページ戻って,くり返し読んでみる。そうやって自分の中でしっかり腹落ちするまで読み込むことを,私は非常に大切にしています。(p165)
 高齢者が若い人の意見を聞かず,自分たちの時代のやり方のままつき進んでしまうと,その社会はとんでもない方向に行きかねません。そのような失敗例は歴史上,いくらでもあります。(p170)
 ビジネスにおいて,その成否を決める大きな要因は何でしょうか? それは,最初の段階の「計画(プラン)」が,しっかりと練られているか,どうかにかかっていると思います。(中略)講演などの場で「PDCAサイクルの「C(評価)」と「A(改善)」がうまくいかない」という相談をよく受けることがありますが,それは極論すれば,そもそもの「P(計画」がなっていないからです。(中略)ところが,人間はどうもせっかちなのか,多くの人は,頭では「計画」の重要性を理解していても,ついつい先に急ごうとしてしまいがちです。(p200)
 人間は相手の「言葉」ではなく,その「行動」を見るのです。人間は自分のためにどれくらい時間を使い,行動してくれているかで,その相手の本気度を見極めます。(p208)
 そもそも,人間は本気であれば簡単に行動に移せます。(中略)「これが大切だ」とか「こうしたい」といった思いが本当に腹落ちしていたら,自然と体がその方向に動くものです。(p208)
 人間が100%働くと思っていること自体が間違っている。だいたい仕事は退屈なものだ。ほとんどの人は2割か3割程度の力しか出していない。100%で働くなんてことはあり得ない。「100%の力を発揮してほしい」なんて言ったら従業員にそっぽを向かれるだけだよ。2~3割を大前提にして,30%のところを33%で働いてもらえるようにするのがチップの仕事だ。(p214)
 私自身,長年生きてきてつくづく感じるのが,どんな事柄であれ怒ったら負けだということです。なぜなら,怒りの感情に心が支配されてしまうと,ものの見事に判断力が鈍ってしまうからです。(p219)
 ベンチャーを経営するようになって気がつきましたが,気ままに怒れるのは,大きな組織で時間的な余裕が十分あるからなのです。(p221)
 個人も組織も,多様性のあるものほど強い。私はそう考えています。(中略)個人で言えば,多様性とは,引き出しの多さと言えるでしょう。(中略)偏見なく,「いい」と自分で思ったら,どのようなものでも貪欲に受け入れていく。そうした姿勢で生きている人は,その懐の深さゆえに,自ずと物事にも幅広く精通していくし,経験も豊富になります。つき合っている人たちを見ても,多種多様です。(中略)こういう人たちは,非常に魅力的だし,人間としても非常に強いと思います。彼らのように,自分の周囲に多様性を持ち続けるために大切なことは,自分の世界に閉じ込もってしまわないことではないでしょうか。とりわけ,年を重ねるにしたがって,このことは強く意識する必要があると感じています。(p224)
 こうして,ダレイオス1世は撤退を決断します。これはすばらしい能力だと思います。圧倒的な大軍を持っていならが,引く決断ができる。(p232)
 人間の人生は,回転木馬のようにつねにまわっています。(中略)だから,誰にだってチャンスはあるのです。もし,あなたが,「そうは言うが,俺の人生はちあがいツイていない」と思っているとしたら,それは,ツキが来ないのではなくツキのタイミングを見逃してしまっているからなのです。(p234)
 これまで生きてきてつくづく感じるのは,「人生はタイミング」だということです。何かを感じたとき,「また,明日にしよう」と,決断や行動を先延ばしにしてしまえば,あっという間にチャンスは逃げていってしまいます。(p235)
 では,どうすれば,そうした流れをいち早く察知し,タイミングよくその流れをつかむことができるでしょうか。残念ながら,上手い方法はないと思います。唯一,やっておくべきは,つねに「I'm ready」の状態にしておくことではないでしょうか。(中略)そのために必要なのは,「勉強」と「自己管理」です。(p237)
 私自身は,規模の大小を問わず,起業する上で大事なことは2つしかないと考えています。それは「強い思い」と,「算数」です。(中略)「算数」とは,収支計算です。(p240)
 恋をしている相手にはとてつもなく忍耐強く,そして,寛容になれます。(中略)それだけ「恋」は,すべての人間にとって「がんばりどき」だということでしょう。(p251)
 私は,「恋」の時期を過ぎたカップルを結びつけるものは,何よりも一緒にいることの「面白さ」だと考えています。(中略)その際,圧倒的に重要になってくるのが「会話」の力です。(p254)
 老後対策の最たるものは,お金を貯めることではなく健康であることであって,健康でありさえすれば,これからの日本では日々の糧を稼ぐことはけっして難しいことではないのです。(p265)
 モノは,使わないとどんどん錆びていきます。ボロボロになります。(中略)これは,人間の体と頭も同じです。(p280)

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