書名 漂流
著者 筒井康隆
発行所 朝日新聞出版
発行年月日 2011.01.30
価格(税別) 1,300円
● 副題は「本から本へ」。幼少年期,演劇青年時代,デビュー前夜,作家になる,新たなる飛躍,の5つに年代を区切って,そのときに読んだ本(のごく一部)を取りあげて,その本を語り,本との関連で自分を語る。
● 「幼少年期」に読んだのは次のとおり。
田河水泡『のらくろ』
江戸川亂歩『少年探偵團』
弓館芳夫訳『西遊記』
ボアゴベ『鐵假面』
謝はな凡太郎・画『勇士イリヤ』
坪田譲治『子供の四季』
江戸川亂歩『孤島の鬼』
デュマ『モンテ・クリスト伯』
夏目漱石『吾輩は猫である』
メリメ『マテオ・ファルコーネ』
手塚治虫『ロスト・ワールド(前世紀)』
マン『ブッデンブロオク一家』
サバチニ『スカラムッシュ』
ウェルズ『宇宙戦争』
宮沢賢治『風の又三郎』
バイコフ『牝虎』
アプトン・シンクレア『人われを大工と呼ぶ』
イプセン『ペール・ギュント』
イバーニェス『地中海』
● 「演劇青年時代」に読んだのは。
アルツィバーシェフ『サアニン』
ショーペンハウエル『随想録』
ケッラアマン『トンネル』
チェーホフ『結婚申込』
ズウデルマン『猫橋・憂愁夫人』
クリスティ『そして誰もいなくなった』
フロイド『精神分析入門』
井伏鱒二『山椒魚』
メニンジャー『おのれに背くもの』
横光利一『機械』
飯沢匡『北京の幽霊』
高良武久『性格学』
福田恆存『堅壘奪取』
ヘミングウェイ『日はまた昇る』
ハメット『赤い収穫』
カフカ『審判』
カント『判断力批判』
● 「デビュー前夜」では。
フィニイ『盗まれた街』
三島由紀夫『禁色』
メイラー『裸者と死者』
ディック『宇宙の眼』
ブラウン『発狂した宇宙』
シェクリイ『人間の手がまだ触れない』
セリーヌ『夜の果ての旅』
ブーアスティン『幻影の時代』
● 「作家になる」では。
生島治郎『黄土の奔流』
リースマン『孤独な群衆』
川端康成『片腕』
オールディス『地球の長い午後』
つげ義春『ねじ式』
ビアス『アウル・クリーク橋の一事件』
東海林さだお『トントコトントン物語』
ローレンツ『攻撃』
ル・クレジオ『調書』
阿佐田哲也『麻雀放浪記』
新田次郎『八甲田山死の彷徨』
山田風太郎『幻燈辻馬車』
● そして「新たなる飛躍」では。
コルタサル『遊戯の終り』
大江健三郎『同時代ゲーム』
トゥルニエ『赤い小人』
フライ『批評の解剖』
マルケス『族長の秋』
ドノソ『夜のみだらな鳥』
イーグルトン『文学とは何か』
ディケンズ『荒涼館』
丸谷才一『女ざかり』
ハイデガー『存在と時間』
● 漫画から文学,哲学,社会科学書まで。
特に,「幼少年期」は戦前を含みますからね。その当時,本を読む人は今よりずっと少なかったはずだ。読める環境にいたことじたい,それなりの階層にいたってことでね。
父親が京大理学部卒。圧倒的少数の上流だったんだなぁ,と。家にたくさん本があったんだもんなぁ。
疎開で農家の子供に苛められた話が出てくるんだけど,これねぇ,農家の子供にすれば苛めたくなるのかもなぁ。自分とは隔絶した世界に住んでたやつだと思うだろうからねぇ。それがのっぴきならない事情とはいえ,ノコノコと自分たちのテリトリーにやってきたんだからね。飛んで火に入る夏の虫って思ったかもなぁ。農村と都市の生活格差って,たぶん,今よりずっと大きかったろうしね。
● 読める環境にいても読まない人も当然いるわけで,ここで読むっていうのがね,そこを分けるものって何なんですかねぇ。
「幼少年期」には「その頃まだ,夢にも思っていない」という記述が頻出する。
0 件のコメント:
コメントを投稿