2017年9月8日金曜日

2017.09.08 森 博嗣 『MORI Magazine』

書名 MORI Magazine
著者 森 博嗣
発行所 大和書房
発行年月日 2017.08.01
価格(税別) 1,200円

● 森博嗣が雑誌を作るとこうなるというわけなんだけど,この雑誌が一般受けするかというと,もちろん,そうはいかない。
 売れる雑誌には下世話なところがないとね。男性誌なら女性のヌード。女性誌ならセックス記事と占い欄。そういうものは本書にはないのでね。

● が,面白いですよ。読み始めれば,たぶん終わりまでノンストップで行くと思う。まず,読んでみてくれと言うほかはない。

● 以下にいくつか転載。
 僕は,そんじょそこらの厭き性ではありません。心底,根っからの厭き性です。厭きると,頭が疲れます。そういうときは無理をせず,すぐに別のことをやり始めます。じっと集中して一つのことを続けるなんて,まったく無駄なことだと考えている人間なのです。(p2)
 小説にはキャラがいるのです。このキャラが,読む人の身近な存在になり,物語が読者の頭の中で展開します。人は,自分が好きな人の言うことはしっかりと理解しようとする傾向があります。だから,キャラさえ好きになってもらえば,どんな嘘も通してしまえるようになるでしょう。小説には,そんな有利さがあります。(p3)
 黙っているのが,年寄りの嗜みではないでしょうか。(p12)
 日本の都市は,こういったインフラストラクチャの歴史が浅く,ほとんどは前後に急ピッチで整備されたものです。一度に築き上げたものですから,老朽化などの問題も一度に押し寄せてきます。新しい道路や橋を造っている場合ではない,ということですね。(p19)
 かつては常識的だったことも,今では問題になります。常識的だったというのは,問題がなかったのではなく,もみ消されていたり,泣き寝入りしていた,ということです。問題として出てくることは,良い傾向だと思います。(p20)
 だいたい,(ポケモンが)ニュースになったのは,半分は宣伝ですよね。思ったほど流行っていないから,やっきになって宣伝したのではありませんか?(p23)
 AIに関して,唯一の心配は,人間がAIを悪用する危険性です。(p30)
 もの凄くクリーンで良いイメージだった期待のオバマ氏が,結局何をしたのか,という失望感がすべてだったでしょう。オバマで駄目だったのに,オバマに負けたクリントンでは駄目だ,というまっとうな判断ですよ。(p37)
 この選挙で特徴的だったことは,マスコミが自分たちの願望をニュースにして流していたことです。これは,日本でもしばしば見られる傾向です。ようするに,マスコミは自分勝手な報道をするのだと,大衆が知ることができたのは大きな成果だったでしょう。年寄りは,まだ気づいていませんが,若者はしっかりと見届けたのではないか,と思います。(p37)
 世間がどう思っているかを意識するのが,もう大人なんですね。子供はそんなことを気にして遊んでいません。(p46)
 大人は,ある意味で,頭が不自由な人なのです。子供は知識もない,ルールも知らない,だから自由に思いつける。そこが大人が失っている要素です。知識なんて,発想の障害になるといっても過言ではありません。(p53)
 周囲の理解を超えた新しい発想と,未知の分野へのチャレンジ精神こそが必要なのではないかと。言われたことをやればいい,仲間と一緒にしていれば良い,という人ばかりでは,人類の文明はここまで発展しなかったのではないか,とも思います。(p47)
 今世紀になってから,言いたいことが自由に言えない空気が,急速に立ち込めてきた感じはありますね。主として,ネットの普及で,コミュニケーションが短絡的になったためです。まるで,近所の人が何倍にも増えたみたいな効果です。(p48)
 屈しても良いのですが,執念深く忘れないことです。自分の正しさを,みんながいずれ知ることになるだろう,と自信を持っていれば良い。自分で考え抜いた理屈であれば,それくらいは信じられるはずです。(p63)
 理系の人間は,「知らない」ことを恥じないし,また「知らない人」を蔑まない。それは単に,ポケットにたまたま持っている小銭くらいの価値だと考えているからだ。知識は人間の能力ではなく,状態にすぎない。(p83)
 人生の役に立つのか,と敬遠される数学ではあるが,役に立たないものとは,つまり私利私欲,人間関係,歴史に無関係な純粋さにほかならない。そんな不毛ともいえる大地に,人間は興味を抱き,エネルギィや時間を捧げて,開拓してきた。その精神こそが,人間という生き物の崇高さを示している。(p99)
 「この成功にはこんな苦労があった」という物語は,結果がわかっているから安心して聞ける,お子様向け,あるいは年寄り向けの「ありきたりの物語」でしかない。まさにそこが,つまらないのである。(p103)
 野生の動物でも群れを成す場合は,ボスに服従する。そのボスも,自分に餌を持ってくる奴を引き立てたりはしない。自分に迫る力の持ち主を恐れ,いずれは地位を明け渡すことになる。 この習性は,もちろん人間でも同じだ。世話になったり,借りのある人間に従うわけではない。(中略)人間らしさの多くは,自然の本能に逆らったものなのである。つまり,その種のモラルは,人間に生来備わっているものではない。教えられて身につく。(p106)
 僕は,小説を読まない。この十年で読んだ小説は,十冊もない。八割は,吉本ばなな氏の本である。小説を書くのに,小説を読むことは障害になる。(中略)小説以外であれば,一ヵ月に二十冊くらいは本を読む。これは,雑誌を含まない。(中略)読むものは,ほぼノンフィクションで,ジャンルはさまざまである。古いものはあまり読まず,新刊を読んでいる。ちなみに,そうやって読んだ本から,自作品の引用文に使うことも滅多にない。(p166)
 一言でいえば,人間嫌いだろう。人ごみの空気が生理的に合わない。他者がすぐ近くにいたり,座っているような場所は駄目である。そういうものの最後は,七年くらいまえのボブ・ディランのライブだったか。(p172)
 声を出して話したり聞いたりするよりも,文字を書いたり読んだりすることの方が圧倒的に多い。なにかを買いにいっても,店員と話すようなことはない。(中略)よく,英語が話せないから外国には住めないという人がいるけれど,誰も話なんかしていませんよ。(p171)
 しゃべるよりも書いた方が速いし,楽です(p186)
 自分のやりたいこと,好きなことを仕事にするなんて,ろくなことがありませんよ。金を稼ぐ手段は,割り切ってやるのが一番健全だと思います(p183)
 仕事は純粋に,ニーズに応え,新しい製品,ほかにない商品を,いち早く提供していく,ということに尽きます。自分の好みを入れたら,それだけ不純なものになるだけです。(p183)

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