2017年9月16日土曜日

2017.09.16 茂木健一郎 『最高の結果を引き出す質問力』

書名 最高の結果を引き出す質問力
著者 茂木健一郎
発行所 河出書房新社
発行年月日 2016.11.30
価格(税別) 1,300円

● 副題は「その問い方が,脳を変える!」。人に問うのではなく,自分に問うというのが,本書の主題。
 自分にどんな問いを発することができるか。それによって,事態への対応力や時間あたりの生産性がかなり変わってくる,と。

● ではなぜ,問い方が重要なのか。まず,この世に正解のある問題などないということ。その他,具体的には次のようなことだ。
 世界には,「問題を解いた人」よりも「問題提起をした人」のほうが偉いという認識が,確かにあります。日本はもしかするとその逆で,「与えられた問題をなるべく早く解ける人」が偉いと思っているところがあるのではないでしょうか。(p20)
 もっといいアイデアはいくらでもあるのかもしれません。しかし,とりあえず思いつくことをやってみる。世界を変えるイノベーションは,「少しでもいい方向に進む可能性があるならやってみる」という軽さから生まれます。(p24)
 あなたは,たいていの問題について,「こうしたらいい」「こうすべきだ」ということが決まっていると思ってはいないでしょうか。まだ自分が知らないだけで,正しいことは決まっているから,誰かにそれを教えてもらえばいいと思っていませんか? 実は,この世の中で,われわれが遭遇する問題のほとんどに正解はありません。(p31)
 「科学的真実」という言葉がありますが,そえは絶対の真理を意味するものではありません。「こうだと仮定して,こういう手段を使うと,こうなるというだけで,その仮定がすべてではないし,その手段がすべてでもありません。科学の答えすら,「絶対」ではないのです。(p40)
 人間は,自分の感情をもとにして,信念をつくっています。(中略)自分が「こうだ」と信じ込んでいることは,実は感情をベースにつくられた偏見にすぎません。(p58)
 感情がすべての基本です。こんな感情を持っていて恥ずかしいと邪険にしたり,ムリな正当化をすることなく,ありのままにメタ認知して自分の育つ種にすることが必要なのです。(p64)
 河合(隼雄)さんは,カウンセリング中,そういう共感的態度を絶対にとりませんでした。「私はこうだけど,あなたはこうだったのね」自分の中心を絶対にずらさないのだそうです。そういう聞き方をしないと,実際に患者さんが治らなかったのです。大事なのは,「自分とまったく同じように感じてくれること」ではなくて,「自分の話をよく聞いてくれるけれども,自分とは違う存在がいること」なのではないでしょうか。(p90)
 私がケンブリッジ大学に留学していたとき,よく経験したのが,「ナイーブな質問は無視される」という経験です。(中略)席を立たれてしまうのは,「人間に対する見通しが,あまりにも陳腐だから」です。(中略)データを真に受けて,そのとおりに実行することが正しいと思い込んでしまう人は,「他人に基準を求める人」です。「朝やるのがいい」と聞いて,朝8時から勉強して,実際に「いい大学」の入試に通ったとしても,その人の人生は,他人に従っていくだけかもしれません。独自に考えて,工夫して,イノベーションを興していくような人とは違う。そういう意味で,この人は「ナイーブ(単純で未熟)」と判断されてしまうのです。(p92)
 「世の中は複雑で,その複雑なパラメータ(変数)の中でものごとが決まっていく」これは絶対に身につけるべき教養です。(p97)
 他人と自分はまったく別の存在です。自分がその人の楽器になってこそ,その人の一番奥を引き出すことができます。(p113)
 意外なことに,自分と他者を切り離せる人のほうが,最終的に他者の気持ちを推し量る力が高くなるのです。(中略)多くの人が,困った人に対して間違ってしまうのは,「なぜ自分はこの人に共感できないのだろうか?」と思ってしまうことにあります。(中略)共感できない相手に対しては,いったん自分と切り離して,「この人はなぜこういう言動をとっているのだろう」と冷静に分析して理解する必要があります。(p138)
 ふだんわれわれは,なにかに気づくと,すぐに「いい」「悪い」を言いたがります。(中略)マインドフルネスでは,ただ起こっていることに「気づく」だけに留めて,一切「いい」「悪い」の判断をはさまないようにします。(中略)「いい」「悪い」でなく,「気づく」ことに重点を置いています。世界には複数の文脈があることに自然に気づき,一つのことにこだわらなくなって,受け流す力がついてきます。(p143)
 自分の生活を本当に変えたいと思ったら,問題をありのままに認識することが必要です。自分の「本当の問題」を知りたいと思ったら,意識に邪魔をさせないほうがいいのです。無意識はすでに答えを知っています。だからこそ,それを「なかったこと」にしようと合理化するのではなく,自覚するように努めます。(中略)欠点であれ,汚点であれ,醜さであれ,能力不足であれ,暗い過去であれ,素直に意識化ができている人の人生は,少なくとも精神的に安定しているように見えます。自分で自分を許せています。(p148)
 たいていの大事なことは,すぐには分からないものです。本当に大事なことを教えてくれていても,今の自分と違う考えは,やはり受け入れるのが難しいものです。(中略)すぐには分からないで,拒否感を覚えるものこそ,判断を停止してずっと覚えておくという努力をするとよいでしょう。(p151)
 どんな新しいものでもすぐに陳腐化してしまう。つまり,終わりがないのです。だから私たちは「次はなに?」と質問そして常に移動し続けていくわけです。(中略)「次はどんな挑戦をしようか?」というのが,本来,脳の求める質問だとも言えます。(p154)
 どんなに熱中できることがあるとしても,脳は一つのことだけをやっていると行き詰まってしまう性質があります。仕事でも,勉強でも,行き詰まってきたら,次のものに移ってしまいましょう。(中略)同時並列的に,少しずつ進めて,行動を止めないようにしていきます。(p157)
 自分なりに徹底して考えていったら,あとはリラックスして,いわば完全に脳にお任せするのがいいのです。(p161)
 なにか気になることがあったら,「自分の外に出してみる」ことが重要で,それによって客観的に眺められるようになります。(中略)問題は,分かって初めて口にできるのではなく,口にして初めて見えてきます。脳は,一度外に出さないと,自分自身と対話できないのです。(p171)
 トヨタの現場で,カイゼンすべきポイントを見つけるためにとられた方法--。それは「なぜ?」を5回繰り返すことです。問題が見つかったら,5回くらい問わなければその真の原因を突き止めることができないと言います。(中略)繰り返し問うていくことで,原因となるものが見えてきます。1回で真の原因を見つけることもありますが,それはまぐれと言っていいでしょう。(p175)
 自分の問題を見極めるにはやはり,容赦なき実質の追求が必要です。(p180)
 努力しているのに,その方法では一向にうまくならないなら,「もっと違う方法があるのではないか?」と質問をするべきです。(p184)
 人生には,絶対に解けない問題もあります。たとえば,「老い」は誰にもどうすることもできません。どうすることもできないものほど,人間は悩むものです。絶対に解けない問題に向き合うために,私は芸術を観ることをおススメします。(p187)
 世界で活躍するためには,英語と自分の行こうとしている国の言語と,世界共通の感覚を身につけることは必要です。(中略)しかし,それだけで国際的に活躍する人にはなれません。この質問が必要です。「自分だけが持っているものはなにか?」(中略)自分だけが持っているものがなぜ必要かと言えば,それが世界に対する贈り物になるからです。世界から与えられるものを学ぶだけではなく,自分も世界の一員であり,「これだけは得意だ!」と自分から世界に与えるものを持っているから,必要とされるのです。(p195)
 私たちは世界で活躍している人たちを,「英語が話せて,国際感覚が豊かなのだろうな」という単一のイメージでとらえがちですが,実はさまざまなバックグラウンドを持った人たちがお互いに力を生かすからこそ世界の問題に対処できるし,面白いものがつくれるのです。(p197)
 「こんなものはローカルで活かしようがない」と捨ててしまいがちなものほど,実は大事なものです。(p198)
 「こうすればできるようになる!」というセオリー,固定したノウハウでなく,生きた情報収集をしてください。セオリーは「誰でも同じようにやれ」という方法ですが,成功した人に誰一人として同じ人はいません。(p200)
 違いというのは,相手に対するリスペクトとして表れなければなりません。たとえば,外国からの旅行者は,ほとんど日本文化を知らないでやって来ます。(中略)しかし,「日本には違う文化があるのだ」というリスペクト,そして「それを学ぼう」というオープンな姿勢があれば,われわれはこの人を素敵な人だと思うでしょう。(p203)
 どんなに最悪な状況でも,小さな工夫をして,自分と他人が気持ちいいと思う一瞬をつくるように心がけてください。それが結局は,あなたの生きる力になってくれます。(p210)

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