2017年10月7日土曜日

2017.10.07 日経デザイン編 『文具と雑貨づくりの教科書』

書名 文具と雑貨づくりの教科書
編者 日経デザイン
発行所 日経BP社
発行年月日 2016.03.23
価格(税別) 3,300円

● 日本の文具は世界に冠たるもの。車と同じ。高級感をまとわせるのはドイツやイタリアに遅れを取っているけれども,安心して使えて,ここまで考えているのかと驚かされるのは日本製の方。
 というか,日本人が勝手にドイツ製やイタリア製に「高級」を感じたがっているだけかもしれない。バカは外国製品を使っていろ,と,かなり本気で思っている。

● 本書はその日本製品について,メーカーの責任者や担当者にインタビューをしたり,製品を解析したりして,その成果をまとめたもの。

● 以下にいくつか転載。
 多くのメーカーが高い海外販売率を実現しており,日本の文具・雑貨は一目置かれる存在です。その秘密は,潜在的な不満やニーズをいち早く見つける観察力と,その観察から導かれた豊かな発想力にあります。そして絶え間ない技術開発を続ける姿勢です。(p3)
 消しゴムだってそう。きちんと消せないとそこにとらわれてしまい,考えが止まる。いわば,思考の用心棒のような存在が文具なんだと思っています。だから,最小限の機能であっても品質が良いものでないといけません。(小川晃弘:トンボ鉛筆社長 p24)
 「これは,本当に使えるのだろうか」というものはダメです。ユーザー自身も気付いていない,「こうだったらいいな」という気付きを形にして見せ,習慣さえも変えてみせるのがプロの仕事です。(中略)行動を観察することはもちろん,人間そのものをよく知ることが,文具の開発には欠かせません。(小川 p25)
 ヒット商品というと,いかにも大勢の人から支持を受けているような感じがしますよね。でも,皆が皆買っているわけではないモノがほとんどなんです。(中略)ヒット商品というのは「10人に1人」が買ってくれるモノなんだと気付いたんです。(宮本彰:キングジム社長 p68)
 「これが欲しかった」「出たら,必ず買う」という,“待ちに待った”商品でなければ売れない。裏を返せば,「まあま欲しい」という人が10人中7人いる商品ではなく,9人が「全然欲しくない」と言っても,「必ず買う」という強烈な支持者が1人いる商品の方が可能性はずっと高い。(宮本 p70)
 文房具は身近な商品だから,「自分だったら欲しいか」という観点で皆が判断しがちです。それが間違いのもの。自分の気持ちは置いておいて「『これが欲しい』と言う人がどれくらいいるか」という計算をできないといけません。(宮本 p70)
 自分として理解できる商品だと「イケるんじゃないのか」とつい思ってしまう。でも,「イケるんじゃないのか」程度の商品なんて,今は誰も買いませんよ。(宮本 p70)
 皆さんに結構ほめていただいているのに,全然売れない商品というのは多いんですよ。「欲しい」と言われても,「買うほど欲しい」とは限らない。(宮本 p71)
 「失敗したら社名に傷が付く」などと言いますけれど,全然,傷なんて付きませんよ。失敗したら売れないわけですよね。そんな商品,すぐに忘れられて商品名すら人の記憶に残らないでしょう。だから,失敗しても誰にも何にも傷なんて付きません。(宮本 p71)
 リサイクルペーパーの用途が限られているのは,紙がオフィスの中に留まっているためと分析した。つまり,上手に「運ぶ」ことができれば,リサイクルペーパーの用途が広がると考えたのだ。(p87)
 海外製品でも,評判のいいノートはいろいろあります。そういう製品はなかなか考えられているとは思いますが,いろんなことを細かく煮詰めていない製品が多い。(名児耶秀美 p121)
 日本の文具の特徴は,商品の良さをきちんと評価できる市場と,それに応えて改善や改良を重ねていくメーカーのモノづくりの姿勢が,うまく合致している点にあると言えるでしょう。(高畑正幸 p122)
 それはメーカーのインハウスのデザイナーたちの努力を抜きにしては語れません。(高畑 p125)
 デジタル機器の普及が,かえって紙とペンの持つ本質的な特性の見直しを促し,(中略)書く行為そのものを楽しむ商品が多数登場してきました。(高畑 p125)
 Y2のデザインの発想は,今ある「モノ」や「仕組み」を何も否定しないことから始まる。(中略)企画を依頼するメーカーも,依頼されるデザイナーも大抵は「何か新しいことをしなければ」と思う。しかし,今を単純に否定すれば,無理が生じ,見当違いな商品になる。(p145)
 消費者はモノを買うとき,伝統工芸品だから買うのではない。素敵だと思うから選ぶ。(p149)
 アイデアを持っているのは我々ではない。そこで,外からのアイデアをどう吸収して商品に生かせるか,ということに集中してきた。(p197)
 自分たちには,マスキングテープしかない。ならばやれることは1つ。テープ1つで世界がこんなに変わる,こんなにいろんな楽しみ方ができる,という圧倒的な体験を顧客に絶え間なく提供し続けることだ。(p200)
 人気商品が常に抱える問題として類似品が多いことも事実だ。(中略)そうした状況で,一般消費者はどのように違いを見出すのか。ゼブラに聞いたところ,意外なことに「価格だ」と言う。(p246)

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