著者 成毛 眞
発行所 日経BP社
発行年月日 2015.06.22
価格(税別) 1,400円
● あとがきに,読んであぁ面白かったで終わらせるな,という著者の言葉がある。ぼくは,あぁ面白かったで終わらせてよいと思う。
ここに登場する人たちのように,みんながなってしまっては,世の中が立ち行かなくなる。多数の凡人が必要なのだ。あなたやぼくのような。
● 決断もできないし,度胸もないし,逆境には弱いし,頭の回転もゆっくりしている平々凡々な人々がいるからこそ,世の中が世の中たり得ているのだ。その上でのイノベーションであり,新たな業態の成立であるのだ。
彼らの活躍譚を読んで,あぁ面白かったで終わらせるのは,凡人の特権というものだ。
● そうして,ぼくらは「勝者には何も与えるな」というヘミングウェイの言葉を憶えておこう。勝者は勝者というそれだけで充分な報酬を得ているのだ。
● 以下に多すぎる転載。
今回は新たな試みもした。学生にはゲスト講師への質問を課し,いい回答を引き出せた質問者にはいい成績を付けたのだ。そうした理由は,学生にとって質問を考えることが,学びになるからだ。(p9)
起業前,出口さんは日本生命に勤めていた。いかにも日本的な大企業の中にこれだけの人物がいたこと,そして,今もおそらくいるであろうことを,我々は常に意識する必要があると思う。(p16)
何かを前に進めるのは,ロジックではなくて情熱や勇気なんです。彼らが持ってきたビジネスプランが,エクセルのしーとにまとまった精緻なものであったら,僕は熱くならないし,それに,そういう分析はたいてい外れます。(加藤崇 p29)
僕が2人の技術のすごさに気がついたのも,大した話ではないんです。ある閾値を超えたすごいものに反応できただけです。素直に反応するには,悪い方,難しい方に考えなければいいだけのことです。(加藤崇 p30)
ベンチャーキャピタルはリスクを取る機関です。(中略)それなのに,大きな花火が打ち上がってから投資するのでは遅い。そのタイミングになったら,小学生だって投資した方がいいとわかります。(中略)僕はそれがクソだとは思いません。それが普通です。だから,もし大きな一打を打ってやろうと思うなら,普通になってはいけない。先に何かをつかまないといけない。(加藤崇 p32)
早稲田は東大の劣化コピーではないのだから,早稲田の卒業生は,自分を東大と比べるのではなく,東大とは別軸で勝負してほしい。早稲田は東大の次のポジションだと思った瞬間,早稲田卒業生の人生からは,何もなくなってしまいます。(加藤崇 p38)
他人のものを右から左へ動かしてさやを抜くのではなく,クリエイトをしろ,ということです。これはとても重要なことで,みんながピケティを信じて資産転がしをやり始めた瞬間に,GDPは縮小します。そういう世界でも何人かは,リスクをテイクしてクリエイトする方向へ行かなくてはならないんです。(加藤崇 p39)
スティーブ・ジョブズがアップルに戻ったとき,「Think different.」というキャンペーンを行いました。人と違うことを考えよう,という意味ではありません。(中略)「I Think it different」,「俺,それは間違っていると思うよ」ということ。つまり,世の中は間違っている,ということ,もっと言えば,俺が正しいという意味です。(加藤崇 p40)
彼の息子には好きな女の子がいて,でも,その気持ちをなかなか伝えられずにいます。そしてそれについての相談を,父親にする。すると,父親はこうアドバイスをします。20秒間だけ恥をかく勇気を持てれば,必ずうまいく。人生はその連続だと。(加藤崇 p41)
議論は大半がマクロです。日本企業ってダメだよねとか,あの会社はダメだよねとか。しかし,そのマクロの中にいる人が成功するかしないかというミクロの話とは別です。難しいことですが,僕はその違いを意識するようにしています。(加藤崇 p45)
(選択を迫られたとき,決め手となるものは何ですか)直感です。では,その直感は何でできあがっているかというと,哲学です。では僕の哲学は何かというと,フェアであることであり,判官贔屓です。弱い者の味方です。これには僕が小さいときに貧乏生活をしていたことも影響しているでしょう。(加藤崇 p47)
台風の規模は,発生する海域の海水温の温度が0.4度上がるだけで,平均して2倍にも大きくなります。(出雲充 p75)
ベンチャーは,最初に手を差し伸べてくれた企業のことを一生忘れないということです。ご恩は必ずお返しします。(出雲充 p86)
ベンチャー,アントレプレナーに最も必須の素養は何かと聞かれれば私は必ず,それは1番にこだわることだと答えるようにしております。(出雲充 p87)
たった一度の挑戦で成功する可能性は低いです。うまくいく可能性は1%,ということはうまくいかない可能性は99%ですから,ほとんどの人が挑戦しません。では,2回挑戦したらどうなるでしょう。2回続けてうまくいかない可能性は,0.99の二乗で98.01%となり,成功する確率は1.99%に上がります。(中略)100回繰り返すと,63%になります。(出雲充 p91)
僕は1981年生まれで,グーグルの誕生に立ち会った世代です。(中略)あんなにシンプルな検索ボックスにキーワードを入れるだけで,世界中の情報に簡単にアクセスできることに,とても感動しました。にもかかわらず,仕事になった瞬間に,気合と根性の世界です。なぜ,こんな非合理的なことがまかり通るのか,(中略)他社の友人に聞くと,やはり同じような問題を抱えていました。日本だけでなく,UBS証券のロンドンオフィス,ニューヨークオフィスの同僚も同じです。(梅田優佑 p105)
お金を儲けたいから,起業したいからと起業することを否定しませんが,そういう人たちが大変な時期に何をよりどころにしているのか,不思議です。柱になるのはビジョン。それは『ビジョナリー・カンパニー』に書いてあることで,その大切さに気がついたのは,読むのを投げ出して8年くらい経ってからでした。(梅田優佑 p118)
最初に決めるべきは誰と一緒にバスに乗るかなんです。このメンバーの人選が間違っていると,勝てる試合にも勝てません。(梅田優佑 p119)
交渉の際に心がけていたのは,すぐに航空券を買ってすぐに飛ぶこと。電話やスカイプでは絶対にダメです。(梅田優佑 p129)
ニュースと,ニュースによって起こる周辺の反応がセットになることで,ニュースの価値が上がる。これをなんとかネット上で再現できないかと考えた結果が,今の(NewsPicksの)設計につながっています。(梅田優佑 p131)
そのときにリアルビジネスとはこういうものだと実感し,論理の積み重ねでは新しいものは生まれないことを知りました。ゼロからイチを作るのは,感性なのです。では感性はどこから出てくるかというと,五感をフルに刺激することで生まれます。勉強をするのではなく,五感を刺激するインプットを得ること。これに尽きます。(梅田優佑 p132)
もうひとつ,厳選の価値を高めます。情報過多な時代だからこそ「これだけを読め」と言ってくれるならいくらか払うというニーズはあるはずです。(梅田優佑 p135)
さて梅田さんが課題としている英語について,私は一昨年『日本人の9割に英語はいらない』という本を書きました。梅田さんも英語が不要かと言えば,NO。ビジネスで英語を必要とする1割の人は,バイリンガルのレベルの英語が求められます。実は私もマイクロソフトに入ったときは英語がまったく話せませんでしたが,現在はバイリンガルのレベルです。そのためにやったことは,英語をひたすらに聞くこと。3000時間が目安です。1000時間は学生時代に聞いているとして,残り20000時間を聞き続けると,少しずつたまったコップの水がこぼれるように,英語が出てくるようになります。CNNがオススメ。(p139)
人間は社会の中で生きているので,脳は,その社会の常識を無意識のうちに反映してしまいます。だから,自分の頭で考えることはなかなか難しい。(出口治明 p146)
日本の伝統的な企業では,ボードメンバーが10人いたとしても,おそらくその全員が50代,60代のおじさんばかりです。そうすると,個人個人がいくら優秀であっても,会った人,読んだ本,行った場所はかなりオーバーラップしているはずです。(出口治明 p152)
ダイバーシティという言葉は,多様な情報交換のしやすさと言い換えてもいいと思います。情報交換しやすい方が,勉強ができて,いい仕事ができます。(p153)
楽をしたい,いい思いをしたい,サボりたいという気持ち,怠け心が,実はイノベーションを生み出すのです。これは,真面目に仕事をしていてはあかんということではなくて,真面目に仕事をしているだけでは新しい発想が出てこないということです。(出口治明 p154)
僕は6年間経営をやってきて,自分の商売のことは自分で発信しなくてはならないという当たり前のことを改めて学びました。ほかの誰も代わって発信してくれません。(出口治明 p160)
経営をしていてつくづく思ったのは,人間の社会で生き残るのは,賢い者や強い者ではなくて,変化に対応した者だけだということです。これはダーウィンが進化論で言っていることですが,その通りだと思います。(出口治明 p161)
20世紀はものがない時代,21世紀はものが溢れる時代です。(中略)ものが溢れた時代には,ファンをつくることがキーになると思っています。(出口治明 p166)
機械は人間に勝てない,どれだけ機械が進化しても,人間は人間の影響しか受けないのだ(出口治明 p168)
死ぬほど考え抜いて起業を決めるなどというのは,出来の悪いビジネス書に書いてある幻想です。(中略)歴史もそうで,劇的なことがあって時代がステップアップすると思いがちです。(中略)世の中は,徐々に変わっていくんですね。(出口治明 p171)
唐の太宗・李世民は,将来,何が起こるかは誰にもわからないが,悲しいことに教材は過去にしかないという趣旨のことを言っています。歴史を学ぶ意味はこれに尽きると思います。(出口治明 p176)
どんな能力も頑張れば身につくというように,傲慢に考えてはいけないと思っています。ただ,ボルトのように走るよりは,ビジネスの方がはるかに簡単だとは思うのですが。(出口治明 p178)
高槻亮輔さんの話からまず学んでほしいのは,「リアルオプションを増やせ」ということです。(中略)それは人生においても,そう。例えば,多様な人と付き合う。そこで,自分だけでは知り得ない世界や知識に触れることができます。そして,多様な力を組み合わせることで,新たな可能性に挑むことができます。(p205)
ビジネスにはリアリティとディテールが必要です。マクロで全体感を捉えることも大事ですが,しかし,特に消費財を売るビジネスの場合は,いかに消費者に財布を開いてお金を払ってもらうかという話なので,現地に何度も,いろいろな時期,いろいろな時間帯に行って,いろいろな情報を得ないと,うまくいきません。(高槻亮輔 p208)
(ハラールファンドの次にやりたいことは何ですか)何も考えていません。事業開発のしごとは,計画してできることではないからです。ハラールファンドはあと9年ありますが,その9年間でどんな経験や人脈を築けるかはまったくわかりません。今の時点で9年後のことを考えると,非常に狭い未来しか見えてこないと思います。(高槻亮輔 p208)
未来は過去の延長線上にはありません。(中略)15年前と言えば,IT起業ではiモードが普及し始めた頃です。当時はマイクロソフトもインターネットに対しては半信半疑でした。15年前と今とでは社会は大きく変わりました。(田中栄 p215)
グローバルではすでに手数料0円のネット決済サービスもいくつか登場しています。こなってくると,わずかな手数料よりも,その人が何を買ったか,という情報の方が価値を持つようになるのです。(田中栄 p222)
人工知能が本当に使えるようになったのはつい最近。理由は人工知能に必要なストレージのコストが極端に下がり,コンピューティングの分散処理ができるようになったからです。これによって,認識や判断の領域でもコンピューターが人間を超え始めました。(田中栄 p230)
オキュラスリフトを使ったことのある人はどれくらいいますか。(中略)360度広がる映像,その没入感は今までとは別世界です。そしてこれは,光ファイバーによるブロードバンド環境があるからこそ実現できるのです。こういう環境が生まれると,今まで平面上で楽しむしかなかったゲームやコンサートなどが,圧倒的なリアリティで体験できるようになります。(田中栄 p234)
そういうコンテンツやサービスを誰がつくるのでしょうか。私はこの分野を日本がリードすると予測しています。(中略)なぜなら日本人は,面白いプラットフォームがあると,その上にいろいろなソフトをつくってしまうアマチュアのプログラマーやクリエイターがたくさんいるからです。(田中栄 p234)
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